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解説記事2010年12月20日 【「会社法制の見直し」と論点】 組織再編における株式買取請求権の問題点──株主保護の視点から──(2010年12月20日号・№383)

「会社法制の見直し」と論点
組織再編における株式買取請求権の問題点
──株主保護の視点から──
 大阪市立大学大学院法学研究科教授 高橋英治

Ⅰ はじめに

 株式買取請求権は、昭和25年に米国法をモデルとして導入された制度である(脚注1)。株式買取請求権は、導入当初、営業譲渡・合併等の場合にのみ認められていたが(昭和25年商法245条ノ2・408条ノ2)、その後平成における組織再編行為の多様化の流れの中でその適用範囲を広げた。現在では、株式買取請求権は、事業譲渡・合併・株式交換・株式移転・会社分割等の会社の組織再編行為には欠かせない株主の権利保護手段となっている。
 この株式買取請求権を行使するための要件は2つ存在する。すなわち、①株主総会に先立ち、決議に対し反対の意思を会社に対して通知し、②総会の場で、組織再編決議に反対することである(会社法785条2項1号イ等)。
 株式買取請求権は、立法当初、評判の悪い制度であった。株式買取請求権は、特に実務の立場から批判に晒されてきた(脚注2)。昭和27年に法務次官名で、株式買取請求権制度を廃止するべきか各方面に意見照会がなされたが、実務界を始めとして削除賛成の意見が多数を占めた(脚注3)。株式買取請求権制度に対する立法論上の批判の最も重要なものが、株式買取りに伴う出資の払戻しが資本維持原則に反するというものであったが(脚注4)、会社法は、一定の場合、財源規制(会社法464条)および組織再編に際しての会社債権者保護のための手当てを設けている(会社法789条等)。実務界の反対の理由として形式的には多数決原理と矛盾する等が挙げられているが(脚注5)、その反対の実質的理由は、この権利の濫用的行使を防止するとともに、株式買取りには財務上の負担がかかるため、できるだけこの適用範囲を制限したいという点にあるのであろう。
 現在、会社法の改正のための審議が法制審議会において行われている。その議論の中心課題の1つとして、株式買取請求権の適用範囲を制限するべきかという論点がある(脚注6)。本稿では、特に組織再編における株式買取請求権を取り上げ、株式買取請求権は株主の財産権を保障する機能を担う重要な権利であるという立場から、その改正論には株主保護の視点からどのような問題があるのかを明らかにしたい。

Ⅱ 株式買取請求権の制度趣旨

1 株式買取請求権の立法趣旨
 株式買取請求権の立法趣旨は、2つある。第1が、投下資本の回収という趣旨である。すなわち、株式の買取りには持分の払戻しという意味がある。組織再編が経営判断上の誤りであり、不合理なものである結果、マイナス効果しか生まない場合、企業再編決議がなかったならば有していたはずの株式の価値は、株式買取価格の最低限を画するものである(脚注7)。
 第2が、組織再編から生ずるシナジー効果の分配という趣旨である。これは、新会社法が株式買取請求権が行使された場合の株式買取価格を単に「公正な価格」とすることにより、新たに付加された目的である。すなわち、平成17年会社法は、株式買取請求権が行使された場合の株式の買取価格につき、「決議ナカリセバ其ノ有スベカリシ公正ナル価格」(平成17年改正前商法245条ノ2第1項)に代えて、単に「公正な価格」とした(会社法785条等)。会社法立案担当者は、この文言の変更は、株式買取請求権を行使する者が組織再編に伴うシナジー効果を享受することができるように、行われたものであると説く(脚注8)。この解釈に従うと、組織再編からシナジーが発生する場合、裁判所は、組織再編により生ずるシナジー効果を考慮して公正な買取価格を決定することになる。これは消極的意味での財産権保障機能を超え、組織再編に伴う富の増加への積極的参加機会を確保するものである。
 以上の2つの立法趣旨によって決まる買取価格の中で、いずれか高い方が「公正な価格」であると一般的に解される(脚注9)。

2 株式買取請求権の憲法上の意義  株式買取請求権は、少数派株主の財産権保障の機能を有する。例えば、親会社(A)に対し子会社(B)が株式交換(会社法2条31号)する場合を考える。平成11年改正により導入された株式交換という制度は、しばしば強制株式交換とも呼ばれるように(脚注10)、B社の株主が保有するB社株がA社株に強制的に交換されることを意味する。これはB社の株主の意思に関わりなくその財産権を剥奪する行為である。B社の株主にとって、従来のB社株に代わって与えられるA社株の交換比率が適正であれば、B社株主の財産権剥奪に対する補償は十分になされているといえるが、現行法上交換比率の適正さを確保する制度は十分でない(脚注11)。したがって、B社の株主の財産権を補償する制度なしには、かかる制度を導入した立法府の行為は日本国憲法29条1項違反となる可能性がある(脚注12)。
 また、現在その導入が検討されているキャッシュ・アウト(現金を対価として行う少数株主の締出し)も(脚注13)、株主の同意なくその株主の地位を否定する制度であるから、その補償を十分に行う制度が確保されていなければ、制度自体が日本国憲法29条1項違反となる可能性を有する。
 これらの組織上の行為の合憲性を担保する制度が株式買取請求権である。B社の株主は、かかる株式交換があった場合、事前に決議に反対の旨を通知し、かつ決議で反対票を投じれば、その株式を公正な価格でB社に買い取ってもらうことができる(会社法785条1項)。会社法上の組織再編に伴う株式買取請求権は、組織再編制度が合憲性を保つために不可欠な制度である。ドイツ法にも同様の考え方から、代償(Abfindung)という制度が存在する。例えば、代償については、株式法あるいは組織変更法等に規定があるが(脚注14)、憲法上の要請からも生ずると解されている(脚注15)。
 ただし、株式買取請求権の財産権保障機能という憲法上の要請が反対株主の株式買取請求権制度に対して与える制約の範囲は大きくない。憲法上、法律による財産権の侵害については、完全補償の原則がある(脚注16)。ここから、組織再編に際して株主が被る不利益が完全に補償される仕組みが導入されていなければならないということが導かれる。株式買取請求権を株主の財産権保障の1つとして位置付ける立場からは、組織再編がなかったとしたら株主が享受していた財産的地位(持分価値)を完全に回復させることが、最低限度行われなければならない。その回復の基準としては、上場会社の株主については、当該株主の有していた株式の市場価格(時価)が基準となる(脚注17)。
 憲法学は完全補償の基準時については明確な指針を提供しない。反対株主の株式買取請求権の財産権保障の制度趣旨からするならば、その基準時は、侵害行為がなされた時点であり、組織再編決議時を原則とするということになろうが(脚注18)、上場株式につき市場価格とは別の価格で会社に買い取ってもらう権利を株主に与えることは望ましくないという見地に立てば、基準時は買取請求権行使時にできるだけ近接した時点に設定すべきであるということになる(脚注19)。基準時の設定については会社法により「公正な価格」の認定権者として定められた司法府の裁量が認められているというべきであろう(脚注20)。

Ⅲ 株式買取請求権制度の当面の課題

1 問題の所在
 株式買取請求権制度には、株主に対して会社法政策上望ましくないインセンティブを与えるという批判が向けられている。本来会社法上の理念からすると、組織再編に際して、これが株式価値の増大につながる場合には賛成し、これが不合理で株式価値の減少につながる場合には反対するというインセンティブを与えることが望ましい。
 しかし、反対株主の株式買取請求権制度が存在するために、組織再編が行われようとする場合、それがどのような条件でも決議において一応反対し、その後株価が下がった場合には、株式買取請求権を行使して、自己の株式を会社に買い取らせるという、株主の議決権行使におけるインセンティブの歪みが生じる(脚注21)。
 ここから、組織再編についての反対株主の株式買取請求権制度の適用範囲を限定するという考え方が生じている。

2 簡易組織再編における適用除外  現在の立法上の主要論点の1つとして、株主に対する影響が小さく、かつ会社の基礎に変更もない簡易組織再編(会社法796条3項等)の存続会社の株主に対し、株式買取請求権制度の適用除外とするべきかという点が挙げられる。
 株式買取請求権制度の制度趣旨は、株主の利益に特に重大な関係のある組織再編等の決議がなされる場合、それに不賛成な株主の利益を保護し、投資回収の機会を与えるという点にある(脚注22)。株主の利益に重大な影響を与えない行為である場合には、それが組織法上の行為であっても、株式買取請求権を与える必要がないとすることは、本制度の立法趣旨に反しない。ただし、債務超過会社を消滅会社として吸収合併することは、現行法上認められると解されているところ(脚注23)、この場合、消滅会社の株主にはまったく株式を与えないことになるが、財産がマイナスの会社を吸収合併することにより、存続会社の株主にとって、合併比率の調整では補いえない不利益が生ずるおそれがある(脚注24)。
 したがって、簡易合併の存続会社の株主に対し株式買取請求権を付与しない制度を設ける場合、同時に当該簡易合併につき、存続会社株主に対し株式買取請求権を付与しないとできるのは、消滅会社が債務超過でないか、債務超過であるとしても法令で設定した一定の基準を超えない債務超過である場合に限られるとするべきである。

3 組織再編公表後の株式取得に係る適用除外  立法上の第2の論点が、組織再編の公表後に株式を取得した者に対し、株式買取請求権を認めないとすることの可否である。かかる主張は、昭和25年の株式買取請求権の制度導入当初から解釈論として存在したが(脚注25)、株式買取制度が不当な投機のために利用されるおそれに配慮して提起された(脚注26)。かかる論者は、株式の取得価格以上の価額をもっての買取りを会社に要求することは、それにより特別の利益を得ようとする行為であるから、反誠実の行為であると説く(脚注27)。この問題は、上場会社にあっては株式買取請求権の行使により保障される「公正な価格」が当該請求権行使時の市場価格と乖離する場合に生ずる。下級審裁判例は、組織再編行為公表後に株式を取得した者に対しても、株式買取請求権を認めている(脚注28)。
 一般的に、組織再編の公表後は、その発表によりシナジー効果が期待できる組織再編ならばそれに伴い株価が上昇しているはずであるから、発表を知って取得した株主は市場が決定した価格を投じて株式を取得している。したがって、組織再編発表後、株式買取請求権が付いていることを前提として形成された市場価格を対価として支払って株式を取得して、決議に際して組織再編に反対して株式の買取りを会社に求めるのは、当該株主にとっては正当な権利行使であり、これを「濫用的権利行使」とするには足りない。さらに、計画公表後でも善意で株式を取得した者にとっては、公表後の取得であるという理由から株式買取請求権が行使できないというのは明らかに不合理である。また、かかる立法提案によると、組織再編決議に反対するために買い集めた株式については株式買取請求権がないということになるが、これでは組織再編に反対する株主が、反対票を集めることが困難になってしまう。
 立法論として、組織再編の公表後に株式を取得した者に対し、株式買取請求権を認めないという提案がなされているが、組織再編発表以降に株式取得した株主を、それ以前から株主となっている者と区別して取り扱う根拠として不当な投機防止を挙げるのみでは、株式買取請求権という株主の財産権保障の機能を果たしている重要な権利を制限するのに十分ではない。
 なお、ドイツ法上は、株主総会決議取消訴訟の提起権につき、総会の議事日程の通告前に株式を取得したことを当該権利行使の条件とする(株式法245条1号)。また、株主代表訴訟提起権について、義務違反または損害を公表により知る前に株式を取得したことを裁判所により当該権利が許可されるための条件とする(株式法148条1項1号)(脚注29)。しかし合併に際しては、日本法の株式買取請求権制度と機能的に類似する「公正な現金代償(angemessene Barabfindung)」を反対株主に与えてその株式を会社が取得することを申し出る義務が定められているが(組織変更法29条1項)、合併の公表前に株式を取得したことは、当該反対株主がこの権利を行使するための条件とされていない。ドイツ・オスナブルク大学法学部のDirk A. Verse教授は、日本法が将来合併に際しての株式買取請求権の行使に関し、合併公表時の株式取得を、当該権利を行使する条件とすることが必要であるのか疑問であるとされる(脚注30)。

Ⅳ 株式買取請求権制度の将来の課題

1 親会社による子会社株式買取義務
 子会社の財産的利益の確保を目的とした企業結合規制の柱は、親会社の子会社に対する損害賠償責任規制、親子会社内部の監督が適正に行われることを確保する規制(ガバナンス規制)および開示規制から成り立つが、かかる子会社の財産上の利益確保の制度が機能不全に陥る場合も想定される。かかる場合、子会社の財産的利益の確保という理念から離れて、配分的正義の原則に基づき、子会社の少数派株主の親会社に対する株式買取請求権を認めるべきであるという考え方がある(脚注31)。
 近時、株式買取請求権の制度根拠を多数派株主の忠実義務違反に基づく損害の填補に求める見解が主張されている(脚注32)。もしも株式買取請求権の制度根拠が多数派株主の少数派株主に対する忠実義務にあるというならば、多数派株主と少数派株主との間にも法律関係が存在するということであり、前者の後者に対する株式買取義務も理論的に存在可能である(脚注33)。親会社が子会社少数派株主に対しその利益に配慮する義務を負っているというべきならば、親会社による継続的侵害行為または包括的影響力行使により子会社の株主保護のための管理体制が機能しえない状態にある場合、親会社が継続的に忠実義務に違反している状態を認め、親会社に子会社株式の買取義務を課すのが適切である(脚注34)。なぜなら、子会社の株主保護のための管理体制が機能しえない状態にしているのは、親会社である多数派株主であり、子会社に留まる全株主の負担において、子会社が退出の補償をするのは妥当ではないからである(脚注35)。

2 閉鎖会社における一般的退社制度の創設  株式買取請求権の制限を目的とした立法に反対する理由として、株主の投資回収の機会を保障するべきであるという意見が、経済界からも主張されている(脚注36)。株式の売却による投下資本の回収の機会が限定されている閉鎖会社の株主保護の観点から、公開会社でない株式会社を対象として、やむことを得ない事由による退社の制度を認めるべきではないか。
 比較法的にみると、ドイツ法では、人的資本会社とも呼ばれる有限会社において、判例・通説上重要な事由による退社が認められ(脚注37)、多数派社員と少数派社員とが対立する局面における少数派社員の保護のための重要な機能を有している。2008年6月25日ヨーロッパ私会社法案も、社員の退社制度を設ける(欧州私会社法に関する理事会規則案18条)(脚注38)。
 日本では、合同会社では退社の制度が認められているが(会社法606条3項)、株式会社では認められていない。合同会社の設立数が少なく(脚注39)、退社制度を導入したいと望むなら合同会社を設立しなさいという
理屈はもはや現実的ではない。ヨーロッパ法およびドイツ法における有限会社に相当する制度は、日本では公開会社でない株式会社であるといえる現状の下では、公開会社でない株式会社の少数派株主に対して投下資本を回収する機会を与えるためにも、株式買取請求権制度とは別に、やむことを得ない事由による株主の一般的退社制度を設けるべきである(脚注40)。

Ⅴ おわりに
 最後に、本稿の主張を提言の形式でまとめる。
① 株式買取請求権は株主の財産権保障の機能を有する重要な権利である。
② 簡易組織再編(会社法796条3項等)の存続会社の株主に対し、株式買取請求権制度の適用除外をすることができるのは、消滅会社が債務超過でないか、債務超過であるとしても法令で設定した一定の基準を超えない債務超過である場合に限られるとするべきである。
③ 組織再編の公表後に株式を取得した者に対し、株式買取請求権を認めないとすることは、望ましくない。
④ 親会社による継続的侵害行為または包括的影響力行使により子会社の株主保護のための管理体制が機能しえない状態にある場合、親会社に子会社株式の買取義務を認めるべきである。
⑤ 公開会社でない株式会社を対象として、やむことを得ない事由による退社の制度を認めるべきである。

脚注
1 鈴木竹雄=石井照久『改正株式会社法解説』132頁(日本評論社、1950年)、大隅健一郎=大森忠夫『逐条改正会社法解説』221頁(有斐閣、1951年)。
2 株式買取請求権をめぐる立法当初の議論状況につき、神田秀樹「資本多数決と株主間の利害調整(1)」法学協会雑誌98巻6号812頁以下(1981年)、島本英夫「株式買取請求権について」同志社法学15巻4号14頁以下(1964年)参照。
3 法務省民事局編『商法改正に関する意見集』(法務省民事局、1953年)。その回答の分析として、中東正文「株式買取請求権と非訟事件手続」名古屋大学法政論集223号237頁以下(2008年)、大森忠夫=矢沢惇編集代表『注釈会社法〔旧版〕第4巻 株式会社の機関』154頁以下(有斐閣、1968年)〔長谷川雄一〕参照。
4 鈴木竹雄=竹内昭夫『会社法〔第3版〕』253頁注11(有斐閣、1994年)。
5 大森=矢沢編集代表・前掲書注(3)154頁以下〔長谷川雄一〕、上柳克郎=鴻常夫=竹内昭夫編集代表『新版注釈会社法(5)』283頁(有斐閣、1986年)〔宍戸善一〕。株式買取制度に対する批判の根拠は、①多数決原理と矛盾する、②投下資本の回収は株式譲渡によればよい、③資本維持原則に反する、④買取株式の評価が困難である、⑤悪質株主の濫用の弊害がある等にあった。④は近時大きな実務上の問題となっており、上場会社につき、裁判所に価格決定の申立てがなされる事例が急増している(神戸地決平成21・3・16金融・商事判例1320号59頁、東京地決平成21・3・31金融・商事判例1315号26頁、東京地決平成21・4・17金融・商事判例1320号31頁、東京地決平成21・5・13金融・商事判例1320号31頁、東京地決平成22・3・5法律時報2087号12頁、東京高決平成22・7・7法律時報2087号3頁等)。
6 法制審議会会社法制部会第7回会議(平成22年11月24日開催)会社法制部会資料6「親子会社に関する規律に関する検討事項(3)──企業結合の形成過程等に関する規律──」4頁参照。
7 高橋英治「株主と憲法上の財産権──会社法改正に憲法上の限界はあるのか」同『ドイツと日本における株式会社法の改革──コーポレート・ガバナンスと企業結合法制』40頁(商事法務、2007年)、奥島孝康=落合誠一=浜田道代編『新基本法コンメンタール 会社法3』292頁(日本評論社、2009年)〔家田崇〕参照。
8 相澤哲『一問一答 新・会社法〔改訂版〕』210頁(商事法務、2009年)参照。
9 相澤哲=葉玉匡美=郡谷大輔『論点解説 新・会社法』682頁(商事法務、2006年)、弥永真生「反対株主の株式買取請求権をめぐる若干の問題」商事法務1867号9頁(2009年)、藤田友敬「新会社法における株式買取請求制度」江頭憲治郎先生還暦記念『企業法の理論(上巻)』283頁(商事法務、2007年)、田中亘「組織再編と対価柔軟化」法学教室304号80頁(2006年)、今井宏=菊池伸『会社の合併』240頁(商事法務、2005年)ほか。
10 川濵昇教授は「わが国でも、share exchangeを直訳するより、強制株式交換と名付ける方が妥当であるように思われる」と論じられる(川濵昇「株式交換制度の創設とその問題点」法律のひろば51巻11号5頁(1998年))。
11 高橋・前掲書注(7)36頁以下。
12 川濵・前掲注(10)6頁、高橋・前掲書注(7)37頁参照。
13 前掲注(6)1頁参照。
14 株式法305条・320b条・327a条以下、組織変更法125条1文の準用による同法29条以下・122i条・207条以下、ヨーロッパ株式会社施行法7条・9条、有価証券取得買収法39a条、Klohn, Das System der aktien- und umwandlungsrechtlichen Abfindungsanspruche, Tubingen 2009, S. 3.
15 BVerfGE 100, 289 ”DAT/Altana“; Klohn, a.a.O.(Fn.14), S. 77; Raiser, Anlegerschutz in der Rechtsprechung des Bundesverfassungsgerichts, FS Kumpel, Berlin 2003, S. 444 ff.; Schmidt-Asmann, Der Schutz des Aktieneigentums durch Art. 14 GG, FS Badula, Tubingen 2004, S. 1021 ff. ”DAT/Altana“とそれ以降の連邦憲法裁判所の判決につき、高橋・前掲書注(7)14頁以下参照。
16 芦部信喜、高橋和之補訂『憲法〔第4版〕』226頁(岩波書店、2007年)、佐藤幸治『憲法〔第3版〕』575頁(青林書院、1991年)、米澤広一「財産権と正当補償(農地改革訴訟)」別冊法学教室『憲法の基本判例〔第2版〕』128頁(有斐閣、1996年)。
17 東京高決平成22・7・7法律時報2087号11頁、関俊彦『株式評価論』259頁(商事法務研究会、1983年)、上柳克郎「合併」同『会社法・手形法論集』230頁(有斐閣、1980年)、大隅健一郎=今井宏『会社法論(上)〔第3版〕』503頁(有斐閣、1991年)。なお、憲法上の完全補償説は、法律による財産権の規制に際し、当該財産の客観的市場価値が全額補償されるべきであると説く(芦部・前掲書注(16)226頁)。
18 神田秀樹教授は、決議によって、組織再編行為が行われ、損害が生じうることになるから、損害填補としての意味を有する株式買取請求権の買取価格の基準時は、株主総会決議時であると解する(神田秀樹「株式買取請求権制度の構造」商事法務1879号9頁(2009年))。なお、基準日のあり方をめぐる下級審判例・学説上の争いにつき、判例時報2087号5頁参照。
19 神戸地決平成21・3・16は、公正な価格とは、株主が会社に対して株式買取請求の意思表示を行い、それが会社に到達した日の市場価格であるとする(神戸地決平成21・3・16金融・商事判例1320号63頁)。これに対し、楽天対TBS株式買取価格決定申立事件抗告審決定は、基準時を買取請求権の行使時とすると、反対株主はこれを前提として株価の変動を見込んで買取請求権の行使をするという投機的行動が可能になるとして、基準時を、投機的行動の余地が制限される買取請求期間満了時とする(東京高決平成22・7・7法律時報2087号9頁)。
20 楽天対TBS株式買取価格決定申立事件抗告審決定は、反対株主の株式買取請求権制度における公正な価格につき、「法が価格決定の基準について格別規定していないことからすると、法は価格決定を反対株主の買取請求権制度の趣旨を踏まえた裁判所の合理的裁量に委ねていると解される」と判示する(東京高決平成22・7・7法律時報2087号8頁)。
21 藤田・前掲書注(9)294頁、松尾健一「株式買取請求権」ジュリスト1346号57頁(2007年)。郡谷大輔弁護士は、株式買取請求制度は、現在の運用によると、市場価格とは別の価格で買ってもらう権利、いわばプット・オプションのようなものを無償で株主に与えることになるという点に、制度上の欠陥があると論じられる(葉玉匡美=郡谷大輔「マール対談 会社法見直しへの提言──立法担当経験者の視点から」MARR12月号18頁(2010年)〔郡谷大輔発言〕)。
22 鈴木=竹内・前掲書注(4)251頁、上柳=鴻=竹内編集代表・前掲書注(5)282頁〔宍戸善一〕。
23 江頭憲治郎『株式会社法〔第3版〕』797頁注5(有斐閣、2009年)、森本滋編『会社法コンメンタール第17巻 組織変更、合併、会社分割、株式交換等(1)』31頁(商事法務、2010年)〔森本滋〕。ただし、平成17年改正前商法における登記実務上、資本充実の観点から、債務超過会社を消滅会社とする合併は認められていなかった(森本滋編・前掲書31頁〔森本滋〕)。
24 前田雅弘法制審議会会社法制部会委員の発言、法制審議会会社法制部会第3回会議(平成22年6月23日開催)議事録(平成22年8月23日訂正)23頁参照。
25 西島彌太郎「株式買取請求権」田中耕太郎編『株式会社法講座 第3巻』1002頁以下(有斐閣、1956年)。
26 弥永真生「合併発表後に取得した株式の買取価格」江頭憲治郎=岩原紳作=神作裕之=藤田友敬編『会社法判例百選』別冊ジュリスト180号191頁(2006年)、家田崇「価格申立権による事後的救済」法律時報82巻12号11頁(2010年)参照。
27 西島・前掲書注(25)1002頁。株式買取請求権の原因となる組織再編行為の計画発表後に株式を取得した株主については、買取価格はその株式取得価額を超えるべきでないとする裁判例として、東京地決昭和58・10・11下民集34巻912号968頁。
28 大阪地判平成22・3・30資料版/商事法務314号31頁。
29 高橋均『株主代表訴訟の理論と制度改正の課題』199頁(同文舘、2008年)、高橋英治「ドイツ法における株主代表訴訟の導入──UMAG報告者草案とわが国法制への示唆」高橋・前掲書注(7)252頁。
30 筆者の照会に対して2010年11月24日付メールにより示されたDirk A. Verse教授の見解。
31 高橋英治『企業結合法制の将来像』185頁(中央経済社、2008年)(以下において「高橋・将来像」と引用する)、高橋英治『会社法概説』8頁(中央経済社、2010年)(以下において「高橋・概説」と引用する)。江頭憲治郎教授も、支配会社の影響力行使により従属会社が繰り返し損害を被る等の場合には、支配会社に対する株式買取請求権を従属会社少数株主に認めるべきであると提案される(江頭憲治郎『企業結合法の立法と解釈』318頁以下(有斐閣、1995年))。
32 神田秀樹教授は比喩的表現であるとした上で、このように主張される(神田・前掲注(18)商事法務1879号5頁)。
33 高橋・概説19頁、高橋英治「ドイツ法における株主および会社の誠実義務の発展――誠実義務の時代依存性と普遍性」関俊彦先生古稀記念『変革期の企業法』2011年商事法務より刊行予定参照。田中亘法制審議会会社法制部会幹事は、第三者割当増資のような形で会社が他社の支配下に入る場合に支配株主に対して株式買取請求権を認めるという制度も十分にありうると論じられる(法制審議会会社法制部会第3回会議(平成22年6月23日開催)議事録(平成22年8月23日訂正)22頁)。
34 高橋・将来像185頁参照。
35 Takahashi, Japanese Corporate Groups under the New Legislation, ECFR 2006, 309.
36 経営法友会・会社法制見直しに関する研究会「会社法制見直しに関する経営法友会アンケート調査結果」商事法務1911号69頁以下(2010年)参照。
37 RGZ 128, 1; Windbichler, Gesellschaftsrecht, 22. Aufl., Munchen 2009, S. 248; Hirte, Kapitalgesellschaftsrecht, 5. Aufl., Koln 2006, S. 237.
38 高橋英治=新津和典「ヨーロッパ私会社規則の現状――日本法への示唆」国際商事法務38巻11号1486頁(2010年)参照。
39 関口智弘=西垣建剛「合同会社や有限責任組合の実務上の利用例と問題点」法律時報80巻11号19頁(2008年)参照。
40 高橋英治「日本における閉鎖的資本会社の発展と法」商事法務1914号10頁(2010年)、Takahashi, Zur Reform des Gesellschaftsrecht in Japan und deren Wirkung auf geschlossene Kapitalgesellschaften in der Praxis, AG 2010, 823.
[付記]本稿は、平成2024年度科学研究費基盤研究(C)「少数派株主保護の特別規制と一般条項の比較研究」(課題番号21530091)による研究成果の一部である。

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