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解説記事2010年12月27日 【税制改正解説】 “源流”から辿るグループ税制 第5回 平成18年度改正(2010年12月27日号・№384)

企業再編税制、連結納税……
~ルーツを知らずして真の理解なし~
“源流”から辿るグループ税制
第5回 平成18年度改正
 taxMLグループ

 平成22年度税制改正で導入されたグループ税制について、その考え方を“源流”から解き明かすことを目的とする連載の第5回となります。今回は、平成18年度改正をテーマに、会社法の制定とグループ税制の関係を明らかにしていただきます。(編集部)
○これまでの連載掲載号  第1回 平成11年度改正 株式交換・移転制度・時価主義会計の導入(368号14頁)
 第2回 平成13年度改正(1) 組織再編成税制との関係(371号18頁)
 第3回 平成13年度改正(2) 自己株式の取得等との関係(375号18頁)
 第4回 平成14年度改正 連結納税制度とグループ税制(380号21頁)

●会社法の制定
 税理士 白井一馬

1.会社法の制定
 会社法施行以前の商法は、金庫株の解禁や、いわゆる確認会社制度による実質的な最低資本金制度の廃止によって、資本充実の原則や債権者保護の原則が維持されているとはいえなくなっていた。また、部分的な改正の積み重ねから、わかりにくい法律になってしまっていた。度重なる改正によって複雑になってしまった商法を、有限会社法や、商法特例法と統合・再構築したのが、平成18年5月に施行された会社法だった。

2.株式会社の基本構造  会社法は、株式会社を、全株式を譲渡制限株式として発行する非公開会社と、それに該当しない公開会社に区分した上で、次のように会社類型を分類した。
 1つ目が、有限会社を基本とした会社類型だ。非公開会社には、取締役会を設置せず、監査役も置かない会社を認めた。株主と取締役1名だけの株式会社が誕生することになったわけだ。2つ目が、旧商法の譲渡制限会社を基本とした会社類型だ。この場合は、取締役会と監査役、または取締役会と会計参与を設置し、譲渡制限のある株式のみを発行することになる。3つ目が、それ以外の、旧商法の原則型の会社だ。すなわち取締役会を設置し、譲渡制限がなく自由に譲渡できる株式を発行する会社類型だ。
 会社法では、多様な機関設計が可能になったが、会社法が読み難いといわれる原因は、有限会社型を基本型とし、他の会社類型を応用型としたことにある。
 バブル崩壊の後に成立した会社法は、積極的な資本の受入れを目標にしていた。そのために採用されたのがファイナンスに利用される配当優先、残余財産分配優先などの種類株式だ。旧商法時代の株式譲渡制限や他の株式への転換予約権や強制転換条項、あるいは種類株主総会の決議を要する事項の定めを積極的に種類株式として構成し、株主を、経営支配に関心のある株主と、投資にしか関心のない株主に分類した。
 旧商法でも古くから種類株式は認められていたが、異なる種類株式間では、配当優先の場合に限り無議決権にするなど株主全体の公平を目指していた。しかし、平成13年の金庫株改正以降の旧商法や会社法では、同じ種類株主間では権利の平等は守られなければならないものの、異なる株主間における形式的平等は失われ、異なった取扱いを許容し、株主の間に階層を創りだしてしまったわけだ。この意味で、古き時代の株主平等の原則は失われてしまったと思う。
 また、会社法は、資本の増減や組織再編成などの計算規定を会社計算規則に委任した。会社計算規則は、会計基準の理論を全面的に受け入れたが、会計基準の理解を前提とし、具体的な定義を置かない規定が多かったことで、条文が非常に難解で曖昧なものになってしまった。

3.合同会社の創設  会社法では、合名会社と合資会社に加え、合同会社という会社類型が認められ、持分会社としてグルーピングされることになった。無限責任社員が存在する合名会社や合資会社と異なり、合同会社の構成員は全員が有限責任社員であることから資本金制度が要求された。しかし、持分会社同士の間には垣根が無く、相互の移動が自由に、かつ自動的に行われることから、資本金制度の位置付けが難しくなった。さらに、持分会社が株式会社に組織変更することを可能にするなど、社団法理である株式会社と組合法理である持分会社の垣根も引き下げられることになった。

●グループ税制に関連する会社法の改正
 税理士 江崎一恵

1.債務超過の組織再編成が可能に
 旧商法では、実質債務超過の会社を吸収合併することができないとされていたが、実務上は、営業権を認識することで可能だった。
 会社法では、消滅会社が簿価純資産で債務超過の場合はもちろんのこと、実質債務超過会社を吸収合併することも可能との解釈が示された。存続会社の株主には反対株主の買取請求権が認められ、債権者には債権者保護手続がとられている以上、株主総会での決議を尊重するというのが会社法の思想だ。

2.会社分割の改正  会社法では、会社分割によって交付される承継会社の株式は、分割会社に対してのみ割り当てることができることとされ、分割会社の株主に直接株式を割り当てることができなくなった。会社法においては人的分割が廃止され、会社分割はすべて物的分割と捉えることになった。しかし、効力発生日に分割会社が、承継会社の株式を剰余金の配当として分割会社の株主に交付することにより、従前の人的分割は可能とされた。この場合には、例外的に剰余金の財源規制はかからないものとされた。
 また、従来、分割の対象は「営業」単位となっていたが、会社法では、分割対象が「事業に関する権利義務の全部又は一部」とされたことから、特定の資産のみの分割も可能になった。

3.合併等の対価の柔軟化  会社法では、合併等の対価として、自社の株式以外にも現金・社債・新株予約権などを割り当てることが可能になった。
 この改正で、消滅会社の株主に親会社の株式を交付する三角合併や、消滅会社の株主に金銭のみを交付するキャッシュアウトマージャーが可能になった。これらの手法を利用すれば、少数株主の追出しが可能となったわけだ。

4.現物配当の明確化  会社法では、金銭以外の財産を配当できることが明確化された。現物配当は株主総会の特別決議が原則だが、株主に金銭分配請求権を与える場合は普通決議でよい。また、現物配当では1株あたりで端数が生じる場合には、基準株式を定め、基準未満となる株式については、金銭を支払うことができる。平成22年度税制改正では、現物配当は法人税法上、組織再編成と位置付けられることになった。

5.純資産の計数の形式化・形骸化  会社法では、最低資本金規制が撤廃され、資本金1円でも会社を設立できることになった。また、平成13年の金庫株改正で額面株式制度が廃止され、資本金と株数が切断されていたが、会社法でさらに完璧に切断され、資本金をその他資本剰余金に振り替えて、配当原資にすることも可能になった。資本金0円の会社で株式が発行されていても矛盾は生じないわけだ。
 純資産の部は、「資本金・資本準備金・その他資本剰余金のグループ」と「利益準備金・その他利益剰余金のグループ」に区分し、同一区分内の増減は、単なる計数の変動として自由に行うことができることとなった。しかし、資本剰余金と利益剰余金の混同は損失処理の場合を除き禁止された。さらに利益の資本組入れも禁止されたが、平成21年度には再び認められることになる。
 会社法においては、減資は資本金を減少させる行為であり、払戻しとは完全に切り離された。従来の有償減資を行う場合には、まず、資本金をその他資本剰余金に振り替え、その他資本剰余金を原資とする配当という手続を行うことになった。
 また、株式数の減少手続も資本金とは完全に切り離された。減資において株式数を減少させるためには、株式併合の決議を別途とるか、自己株式の取得決議を行って、取得した自己株式を消却する手続をとることになった。

●法人税法の改正
 税理士 国田修平

1.会社法が与えた法人税法への影響
 平成13年度税制改正による組織再編成税制導入は、改正を重ねる商法に対し、法人税法の資本の取扱いを明らかにしたものといえた。
 平成18年度の会社法では、種類株式制度や合併等対価の柔軟化など、規制緩和的な制度が多く創設されたが、実務の運用は、法人税法がどのような手当をするかで決まる。平成18年度税制改正でも、合併等対価の柔軟化が、税制非適格とされるなど法人税の手当がされず、充分に利用できない制度も存在することになった。そして、難解な会社法は専門家でも理解し難く、税理士にとっては、税法での取扱いを理解してはじめて会社法が理解できるという実務の構図ができた。
 また、合併などの組織再編成と、自己株式の取得や現物配当などの資本等取引は、同様の経済効果があるにもかかわらず、異なる課税関係が生じるという問題が目立つようになった。つまり、同一の効果が生じる手法でも、資産の簿価承継と時価承継との違いが生じるという問題だ。
 資本に関する取引そのものを組織再編成税制を含め整理・統合させるための改正が、平成22年度におけるグループ法人税制に繋がったのだといえる。

2.資本等取引に関する改正  従前、法人税法では株主拠出金を資本金と資本積立金額に区分し、その合計を資本等の金額としていたが、会社法では、資本金と資本準備金、その他資本剰余金を単なる計数とし、相互の行き来を自由にしたため、これを機に、法人税法は、資本金の額と資本積立金額を区別することなく、資本金等の額として整理した。また、種類株式を発行した場合には、資本金等の額を種類株式ごとに管理することとされた。
 現物出資の際に増加する資本金等の額については、従来株式の発行価額となっていたところ、会社法の文言に沿う形で、給付を受けた資産の価額と改めたため、債務超過会社がDESを受けた場合には、債務免除益が計上されることが明確になった。
 自己株式については、法人税法上、自己株式の取得代金のうち、資本金等の額に対応する部分は株主拠出金の払戻しとし、これを超える部分は課税済利益の配当が行われたものとされていたが、保有する自己株式は有価証券の範囲に含まれており、資本のマイナス項目とする会計や旧商法とは異なっていた。平成18年度税制改正後は、みなし配当に相当する部分だけ一致しないものの、法人税法も自己株式を資本金等の額のマイナス項目と改正されたことで会社法と足並みが揃うことになった。
 また、会社法は、有償の減資手続を、減資と同時に行うその他資本剰余金の配当と位置付けた。法人税法は、資本剰余金を原資とした配当について、全額が利益剰余金の配当と取り扱っていたが、改正により、プロラタ計算により資本の払戻し部分と利益の配当部分に区分すると定めた。
 つまり、自己株式の買取りと資本剰余金の払戻しとでは課税上の処理が統一されたわけだ。

3.組織再編成税制の改正
(1)非適格組織再編成における調整勘定の整備
 非適格合併等で発行する新株の時価と移転を受けた時価純資産価額との差額を資産調整勘定とした。逆に新株の時価が時価純資産価額を下回る場合は負債調整勘定を計上することになった。また、引き継ぐ従業員の退職給与債務も負債計上することにした。これらは、法人税法における「正ののれん」「負ののれん」といえるものだ。
(2)債務超過会社の組織再編成への対応  会社法では実質債務超過会社の組織再編成が認められたが、グループ内の債務超過会社を吸収合併することは債務の引受けだという一面は否定できない。経営判断に基づくとはいえない適格合併等の場合に、実質債務超過部分について債務消滅益を計上した上で承継する必要があるのか否かという疑問は、平成22年度税制改正においても解決していない。巷間、新しい寄附金税制により問題は解消したといわれるが、それは法人による完全支配という限られたグループ内での組織再編成に限る。
(3)欠損等法人の買収による租税回避行為を規制  従前、青色欠損金を保有する会社を安く買収し、黒字事業を行わせたり適格合併するといった、青色欠損金を利用した租税回避行為が指摘されていた。そこで、休眠会社を買収後に黒字事業を開始したり、買収した会社で新事業を始めるため旧事業規模の5倍超の資金調達をする、欠損等法人を買収後に適格合併するなど、青色欠損金活用目的と思われる企業買収では、青色欠損金の繰越控除を禁止した。
(4)現物配当と会社分割  会社法では、旧商法時代の営業概念を廃止し、特定の資産のみを対象とした会社分割が可能になった。たとえば、孫会社を子会社化するために、子会社が保有する孫会社株式を親会社へ移転する手法は、無対価の分割型分割でも現物配当でも可能になったわけだ。法人税法上、現物配当は無償の資産譲渡として時価譲渡課税となるが、100%の持分関係にある企業グループ内での分割型分割は、事業の移転がなくても適格分割となる。100%親子会社間では、現物配当か分割型分割のいずれを選択するかで、時価譲渡か簿価承継かの選択が可能になった。平成22年度税制改正後は、適格現物分配は強制的に簿価承継になるが、この改正の真因の一つは、恣意性の介入余地の排除だといえる。
(5)株式交換・株式移転が組織再編成税制に組み入れられる  平成11年度税制改正で租税特別措置法として株式交換・移転が創設された。株式交換・移転は、完全親会社が完全子会社となる会社の株主に95%以上の株式を割り当てるだけで完全子会社となる会社の株主に対し課税の繰延べが認められたため、合併等の税制と比して公平とはいえなかった。例えば非適格合併による課税を逃れるために株式交換を選択することが許されてしまう。そこで、他の組織再編成と足並みを揃えるため、適格要件を定め、非適格なら、株主に譲渡損益課税を課した上で、完全子法人の保有資産を時価評価課税することに改め、本法として組織再編成税制に組み入れた。
 平成22年度税制改正で創設された100%グループ内での資産の譲渡損益課税の繰延べ措置は、非適格合併等にも適用される。これと整合させるため、非適格株式交換・移転でも、資産の評価損益の計上は不要とされた。

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