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解説記事2011年04月11日 【ニュース特集】 設備投資や節税対策に変更も! 「つなぎ法」と「遡及適用」の影響(2011年4月11日号・№398)

廃止予定の制度が1年存続、改正法案成立でも遡及適用なし……
設備投資や節税対策に変更も! 「つなぎ法」と「遡及適用」の影響

 つなぎ法の成立により3月末に期限切れとなる租税特別措置の適用期限が3か月間延長されたが、その一方で、平成23年度税制改正法案が成立するかどうかは依然微妙な状況となっている。
 例年であれば、税制改正法案の成立を前提に、企業は予算を策定したり設備投資計画を立て、税理士はタックスプランニングを練るところだ。しかし、つなぎ法案によって本来は平成23年度税制改正で廃止されるはずだった制度が1年間存続するようなイレギュラーなケースが生じているほか、仮に平成23年度税制改正法案が成立したとしても、その一部は遡及適用が行われないなどにより、思わぬ判断ミスをおかしかねないおそれが出てきている。
 そこで本特集では、具体例を用いながら「つなぎ法」および「遡及適用」の影響を整理してみた。

平成23年度税制改正法案、関係者からは成立を絶望視する声も  いわゆる「つなぎ法」が平成23年3月31日に成立し、平成23年3月31日をもって期限切れとなることとなっていた措置のすべてについて、平成23年6月30日まで適用期限が延長されているが、その一方で、平成23年度税制改正法案が成立するかどうかは依然不透明となっている。
 民主党・財務金融部門は、平成23年度税制改正案について「法人実効税率引下げなど、企業立地環境改善のための税制も含まれているが、これを前提に設備投資計画を組んでいる企業も多いことから、引き続き法案成立に向けた努力を続けるべきである」との考えを示した。
 しかし、法人実効税率の引下げをはじめ、ただでさえ与野党間および野党各党間で税制改正の方向性について意見が異なるうえ、衆議院における民主党の議席数が2/3に満たず、“60日ルール”を活用した税制改正法案の衆議院での再可決もできない。さらに、現在は大震災関連の対応を優先すべき状況がある。
 大震災を受け、民主党と自民党の「大連立」の動きも出てきているが、仮に大連立が実現したとしても、上記のとおり、平成23年度税制改正の内容に関しては民主党と自民党のスタンスが大きく違うため、法案の修正は避けられない。こうしたなか、関係者の間では平成23年度税制改正法案の成立を絶望視する意見が日に日に強まりつつあるのが現状といえる。
 したがって、企業や税理士等は、平成23年度税制改正法案が成立するケースとしないケース、両方を想定しながら各種の意思決定を行っていく必要がある。

つなぎ法を巡る留意点~「廃止」が一転、1年適用延長も~  このように平成23年度税制改正法案の成立が不透明ななか、現時点で確定しているのは、平成23年3月31日をもって期限切れとなることとなっていた租税特別措置の適用期限を「平成23年6月30日」まで延長するつなぎ法が成立(平成23年3月31日)したということのみだ。
 本誌394号6頁でもお伝えしたとおり、今回のつなぎ法の最大の特徴は、平成23年3月31日で期限切れとなる「すべて」の租税特別措置の適用期限を延長したことにある。平成20年度税制改正時のつなぎ法がそうであったように、元来つなぎ法とは、年度改正により適用期限の延長が決まっている措置を対象とするのが通常だ。しかし、今回のつなぎ法では「すべて」の租税特別措置が対象とされたことにより、本来は平成23年3月31日をもって廃止することが決まっていた租税特別措置までもが、「平成23年4月1日~6月30日」の3か月間、あるいは「1年間」存続することとなった。前者は「取得ベース」で適用されるような措置であり、後者は「事業年度」ベースで適用される措置である。
6月末までに設備取得なら即時償却  「取得ベース」で適用される措置の1つが、エネ革税制(エネルギー需給構造改革推進投資促進税制)の即時償却制度(措法42の5⑥)だ。平成23年度税制改正ではエネ革税制自体が廃止され、エネ革税制の後継措置として「グリーン投資減税」が創設される予定となっており、その一環で、エネ革税制の特例である即時償却制度も平成23年3月31日をもって廃止されるはずだった。しかし、今回「平成23年3月31日に適用期限が到来する租税特別措置のすべて」がつなぎ法の対象とされたことにより、つなぎ期間においてこの即時償却制度が存続することが確定している。
 企業にあっては、平成23年度税制改正で導入される予定のグリーン投資減税の適用を前提に設備投資計画を立てていたところもあろうが、グリーン投資減税は「30%の特別償却又は法人税額(所得税額)の7%特別控除(中小法人のみ)」とされており、エネ革税制の即時償却よりも節税効果は小さい。したがって、節税効果を求めるのであれば、設備投資を「平成23年4月1日~6月30日」のつなぎ期間に前倒しして、エネ革税制の即時償却の適用を受けるべきだろう(図1参照)。

 ただし注意したいのは、グリーン投資減税とエネ革税制では、対象設備が一部異なっている点だ。グリーン投資減税の適用対象となる設備は平成23年度税制改正法案成立後に告示により明らかにされることになるが、本誌取材により両制度の対象設備の違いが判明している(表1~3参照)。

【表1】グリーン投資減税に引き継がれる設備
低炭素法関連
太陽光発電設備・風力発電設備・雪氷熱利用設備・バイオマス利用装置(紙パルプ製造工程バイオマス燃焼ボイラー)・バイオマス利用装置(リグニン燃焼ボイラー)・バイオマス利用装置(バイオマスメタンガス製造装置)・バイオマス利用装置(バイオマスエタノール製造設備)・水熱利用設備(河川水又は海水を熱源とするもの)・水熱利用設備(供給・回収導管)・熱供給型動力発生装置・高効率複合工作機械・断熱強化型工業炉・高性能工業炉廃熱回収式燃焼装置・エネルギー回生型ハイブリッド自動車・ガス冷房装置・高効率型電動熱源機・コンバインドサイクル発電用ガスター・高効率配線設備・電気自動車
省エネ法関連
高断熱窓設備(高断熱窓装置)・高断熱窓設備(高断熱窓ガラス)・高効率空気調和設備(吸収式冷温水器)・高効率空気調和設備(吸収式冷凍機)・高効率空気調和設備(空冷式ヒートポンプチリングユニット)・高効率空気調和設備(水冷式ヒートポンプチリングユニット)・高効率空気調和設備(蓄熱式空気調和装置)・高効率空気調和設備(ボイラー)・高効率空気調和設備(真空間接加熱式温水器)・高効率空気調和設備(熱電併給型動力発生装置)・高効率空気調和設備(冷凍機組込型空気調和機)・高効率空気調和設備(氷蓄熱式冷凍機組込型空気調和機)・高効率空気調和設備(ガスエンジン式ヒートポンプ空気調和機)・高効率空気調和設備(エアハンドリングユニット)・高効率空気調和設備(全熱交換器組込型空気調和機)・高効率空気調和設備(ファンコイルユニット)・高効率空気調和設備(全熱交換・換気ユニット)・高効率空気調和設備(送風機)・照明設備(高周波点灯専用形蛍光ランプ)・照明設備(発光ダイオード照明装置)・測定装置・中継装置・アクチュエーター・可変風量制御装置・インバーター・電子計算機

【表2】グリーン投資減税に引き継がれない設備
エネルギー有効利用製造設備等
旋回流教科型離解装置・高性能脱燐炉・高性能機械組立設備
エネルギー有効利用付加設備等
省エネルギー型クラウン制御ロール・銅片板幅制御装置・高効率工業炉(原材料予熱式)・サーボ駆動式プレス機・生型造型機(枠付生型造型機)・生型造型機(無枠生型造型機)・高断熱窓設備(高断熱窓装置)・高断熱窓設備(高断熱窓ガラス)・物流用蓄熱式保冷装置(車載保冷装置)・物流用蓄熱式保冷装置(蓄熱式保冷剤製造装置)・外部電源式車載空調装置・外部電源式車載空調装置用給電設備
新エネルギー利用設備等
太陽熱利用集蓄熱装置・未利用エネルギー利用設備(中水または下水を熱源とするもの)・未利用エネルギー利用設備(地下水を熱源とするもの)・バイオマス利用装置(木質バイオマス発電装置)・バイオマス利用装置(木質バイオマス熱電併給型木材乾燥装置)・バイオマス利用装置(木質バイオマス利用加湿装置)
エネルギー使用合理化設備
高効率給湯設備(ヒートポンプ式給湯器)・高効率給湯設備(潜熱回収型給湯器)・高効率給湯設備(ボイラー)・高効率給湯設備(真空間接加熱式温水器)・高効率給湯設備(熱電併給型動力発生装置)・交流変周波数制御方式エレベーター
その他設備
配電多重化設備

【表3】グリーン投資減税で新設される設備
低炭素関連
バイオマス利用装置(下水汚泥燃料利用関連施設)・ハイブリッド建設機械・高効率電気式工業炉(誘導加熱炉)・高効率電気式工業炉(金属溶解炉)・プラグインハイブリッド自動車・電機自動車用急速充電設備
 即時償却の適用を受けるには、あくまでエネ革税制の適用対象設備(表1および表2の設備)を取得する必要がある。
3月決算法人等、試験研究税制<総額型>の控除限度はもう1年30%に  「事業年度」ベースで適用される措置の1つとしては、試験研究費税制<総額型>に係る税額控除限度額の特例(措法42条の4の2。以下「試験研究税制特例」という)がある。これは、通常の試験研究税制<総額型>では法人税額の20%までの税額控除が認められているところ、平成21年6月の経済対策により、時限措置として、10%の税額控除を上乗せし、30%とするものだ(同条①、図2参照)。

 この措置も、平成23年度税制改正における法人実効税率引下げの財源として、平成23年3月31日をもって廃止される予定となっていたが、つなぎ法により、平成23年6月30日まで適用期限が延長されている。
 ここで留意したいのは、試験研究税制特例は「取得ベース」ではなく「事業年度ベース」、すわなち、適用期間中に開始する「事業年度」がまるまる適用対象になるということだ。
 今回、つなぎ法によって適用期間が平成23年6月30日まで延長されたことにより、「平成23年4月1日~23年6月30日」の間に事業年度が開始することとなる平成24年3月決算法人、平成24年4月決算法人、平成24年5月決算法人等は、3か月のつなぎ期間をもって事実上適用期限が「1年間」延長されたのと同様の恩恵を受けることになる(図1参照)。

遡及適用を巡る留意点~贈与税率改正には実質的な影響なし~  上述のとおり、平成23年度税制改正法案の成立は微妙な情勢だが、仮に成立した場合でも、平成23年度税制改正法案に盛り込まれた措置のすべてが本来の適用開始日である平成23年4月1日に遡って適用されるわけではない。これは、不利益規定の不遡及の原則(憲法84条参照)により、遡及適用できない措置が出てくるからだ。
 遡及適用できない措置の典型的な例が、上述のエネ革税制の即時償却、試験研究税制特例である。
 平成23年度税制改正法案には両措置の廃止が盛り込まれているが、つなぎ法によって両措置の適用が継続されているところ(図1参照)、平成23年度税制改正法案が成立したからといって、平成23年4月1日に遡って両措置を廃止すれば、明らかに不利益規定の不遡及原則に抵触することになる。このため、両措置の廃止が平成23年4月1日に遡及適用されることはないことが、本誌の取材でも確認されている。
 これに対し、遡及適用されるかどうか微妙なのが、200%定率法だ。
 周知のとおり、200%定率法は、平成23年度税制改正において現行の250%定率法を縮小する形で導入される予定の措置であり、納税者にとっては明らかな増税措置といえる。このため、不利益規定の不遡及の原則に基づき、遡及適用はできないとの考え方も成立し得る一方、当局内には「200%定率法の遡及適用は理論的には可能」との意見も存在しているようだ。その根拠は、減価償却について定めた法人税法31条が「内国法人の各事業年度終了の時において有する減価償却資産につき……」と規定しているように、減価償却費の計算自体は期末に行われることにあると考えられる。
 なかには、遡及適用が行われないことを前提に、(250%定率法の適用を受けるべく)平成23年度税制改正法の施行前における減価償却資産の取得を検討する企業もあるようだが、200%定率法の遡及適用の可否についてはいまだ結論は出ていない模様なので、250%定率法の適用を見込んだ減価償却資産の取得には慎重になるべきだろう(図3参照)。

 もう1つ、一見すると遡及適用できるかどうか判断しかねるのが、贈与税率の見直しだ。平成23年度税制改正で行われる予定の贈与税率の見直しが納税者にとって有利となるか不利となるかは贈与財産額によるため、一概にはいえないからである。直系尊属から贈与を受けた場合(措法70の2の3)を例にとると、基礎控除額を含む贈与財産ベースで8,410万円(8,300万円+110万円)を超える財産の贈与を受けた場合には、現行税率を適用した方が有利となる(すなわち、改正税率を適用すると増税となる。本誌389号8頁参照)。
 ただ、贈与税率の改正については、改正法案附則40条、141条2項により、「改正贈与税率は平成23年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用する」ことを原則としつつ、「平成23年1月1日から同年12月31日までの間に贈与により財産を取得する者」(附則141条2項については20歳以上の者が直系尊属により贈与を受ける場合に限る)については、選択により、現行の贈与税率を適用することもできるとされている。
 したがって、仮に平成23年度税制改正法案成立に伴い、贈与税率の改正が平成23年1月1日に遡及適用されたとしても、実質的な影響はないだろう。すなわち、平成23年12月31日までに贈与を予定している限り、遡及適用の有無を気にする必要はないということだ。

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