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コラム2011年06月06日 【SCOPE】 Q&Aで読み解く改正産活法の会社法特例(2011年6月6日号・№405)

自社株対価TOBの利用促進なるか!?
Q&Aで読み解く改正産活法の会社法特例

 「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律」(平成23年法律第48号)が5月25日に公布された(施行は公布の日から起算して3月を超えない範囲内で政令で定める日)。産活法の一部改正法では、組織再編を促進させる目的から会社法の特例措置が手当てされている(本誌391号40頁参照)。具体的には、(1)株式を対価とする公開買付けに際しての株式の発行等に関する特例(産活法21条の2)、(2)全部取得条項付種類株式の発行および取得に関する特例(産活法21条の3)である。改正の背景も含め、会社法の特例措置によりどのような組織再編が可能になるのか、Q&A形式で紹介する。

株式を対価とする公開買付けの際の株式の発行等の特例とは?
株式交換と同様に
Q
産活法における株式を対価とする公開買付けに際しての株式の発行等に関する特例とはどのような制度なのでしょうか
A 産活法に基づく事業再構築計画等の認定を受けた場合の自社株式を対価とする公開買付け(自社株対価TOB)の実施について、新株発行決議における決議事項の特例を設けるものです。自社株式を対価に相手方会社の株式を取得することで完全子会社化する制度である株式交換と同様、自社株対価TOBでも、株式の交換比率を株主総会の決議事項とすることを認めることとされています。具体的には、公開買付けで、他の会社を子会社化する場合、その対価とするために自社株式を発行する際の募集事項の決定について、その決議事項を他の会社の株式の価額ではなく、当該自社株式の数またはその数の算定方法(交換比率)でよいこととされます。
 なお、公開買付けの対価として交付する株式が自社の純資産の規模と比べて5分の1以下であり、株主に対する影響が少ない場合を除き、原則として株主総会の特別決議を要することになります(5分の1以下でも、一定割合以上の株主が反対の意思を通知した場合には株主総会の特別決議を要することになります)。
 また、これに伴い、現物出資の際の当該財産の価額の決議や価額不足補填責任の規定の適用も除外されます。

現行制度では自社株対価TOBは活用されず
Q
現行制度においても自社株対価TOBは実施可能だと思いますが、今回改正された理由はどのような点にあるのでしょうか?
A 現行制度において、自社株対価TOBを実施する場合は、交付する自社株式数を決定(金商法27条の3第2項1号)するとともに、TOB成立時にその対価として取得する対象会社株式の価額を予想して取締役会で決議することとされています(会社法199条1項3号、201条1項)。
 しかし、その対象会社株式の価額の予想は困難であり、実際の額が決議の額を下回った場合には、TOB応募株主および買付会社の取締役が補填責任を負うことになってしまいます(会社法212条1項2号、213条1項)。このため、現状では、ほとんど活用されていないのが実態のようです。また、企業には自社株買いの結果、十数兆円にのぼる金庫株が眠っているといわれており、M&Aに向けた活用が課題となっていたようです。

子会社による親会社株式保有も可能に
Q
子会社が親会社株式を保有することも可能になるのですか?

A 会社法135条1項では、子会社による親会社株式の取得を原則として禁止していますが、同条2項では、株式交換等の組織再編行為を子会社を通じて行う場合については、子会社が相手方に対価として交付するために親会社株式を一時的に取得することなどを認めています。
 今回の会社法の特例措置では、認定事業者が外国に設立したSPCなどの子会社を通じてTOBを行うことも想定されており、このようなケースであれば、会社法135条1項の適用を除外することとされています。

全部取得条項付種類株式の発行および取得に関する特例とは?
90%以上保有で株主総会特別決議を省略
Q
全部取得条項付種類株式の発行および取得に関する特例とはどのような制度なのでしょうか?
A 買付会社が産活法に基づく事業再構築計画等の認定を受けて、対象会社の完全子会社化を目的として公開買付けを行い、一定の要件のもと総株主の議決権の90%以上を保有する場合には、株主総会特別決議の省略および端数株式売却に係る裁判所の許可手続を省略することができるというものです。これにより、手続が3か月程度迅速化するようです。

株主総会は事実上、形式的な手続に過ぎず
Q
現行制度における対象会社の完全子会社化での問題点は何だったのでしょうか?
A 現行、完全子会社化を行う際には、公開買付けを経た後、対象会社において全部取得条項付種類株式を利用した手続を経る方法が一般的なようです。この方法による場合は、(ア)公開買付け終了後完全子会社化が実現するまで、株主総会の招集手続や裁判所への許可申立手続により4~6か月の期間を要すること、(イ)株主総会開催の費用等が必要となることなどにより、完全子会社化の機動性が阻害されているなどの弊害が指摘されていたようです。
 実際、公開買付けにより、対象会社の大多数の株式を取得した場合には、①その後の完全子会社化に関する株主総会の特別決議は可決することが明らかである、②公開買付け後の完全子会社化における端数株式売却に係る裁判所の許可については、裁判所が、公開買付けに応じた者と端数株式の所有者との間に公平を期する観点から公開買付価格と同額の売却価格とすることとしているなど、形式的な手続となっていることから、株主総会特別決議等の手続の省略を認めるものです。

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