資料2003年05月06日 【税務通達等】 国内弁理士を経由して支払われる外国弁理士(現地代理人)に対する外国特許出願等に係る費用の源泉徴収の可否について
国内弁理士を経由して支払われる外国弁理士(現地代理人)に対する外国特許出願等に係る費用の源泉徴収の可否について
照会の内容
事前照会者 | ①(フリガナ) 氏名・名称 | (ニホンベンリシカイ) 日本弁理士会 |
②(フリガナ) 総代又は法人の代表者 | (カイチョウ シモサカ スミコ) 会長 下坂 スミ子 | |
照会の内容 | ③照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び事前照会者の求める見解の内容 | 別紙1のとおり |
④個別取引等の事実関係 | 別紙2のとおり | |
⑤ ④の事実関係に対して事前照会の求める見解となることの理由 | 別紙1のとおり | |
⑥関係する法令条項等 | 所得税法第204条第1項第2号 所得税法第161条第8号 | |
⑦添付書類 |
回答
⑧回答年月日 | 平成15年5月6日 | ⑨回答者 | 東京国税局審理課長 |
⑩回答内容 | 標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。 |
別紙1
国内弁理士を経由して支払われる外国弁理士(現地代理人)に対する外国特許出願等に係る費用の源泉徴収の可否について(照会)
(趣旨)
従来から弁理士と出願人との間の報酬契約の内容が多様であることから、出願人が国内弁理士を通じて外国弁理士へ外国出願費用を支払う場合には、所得税の源泉徴収の対象とされる弁理士業務に関する報酬又は料金の範囲について、ややもすると疑義が生じていたところでしたが、別紙2の事実関係の下では、下記の理由により、国内弁理士が(資料3)の請求書に(資料2)の「請求書」を添付して発行し、出願人と国内弁理士及び外国弁理士との委任関係を明確にするとともに、国内の出願人に対し、弁理士業務に関する報酬又は料金の内訳を明らかにした場合には、出願人が国内弁理士に対して支払う費用のうち、(資料3)の「請求書」の「外国出願立替費用」については、所得税法第204条第1項第2号の「弁理士業務に関する報酬又は料金」に該当せず、また、所得税法第161条第8号の「給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、国内において行う勤務その他の人的役務の提供に基因するもの」にも該当しないことから、源泉所得税を徴収する必要はないものと考えてよろしいか、ご照会申し上げます。
(理由)
国内弁理士が外国弁理士へ支払うために出願人へ請求する費用が、弁理士の業務に関する報酬又は料金等に該当しないと考える理由は、次のとおりです。
1 出願人は代理人である国内弁理士が復代理人として外国弁理士を選任する権限を国内弁理士に与えていること、又は出願人が指示書において、直接、外国弁理士を指定しているので、出願人と外国弁理士との間には直接の委任関係があること。
2 出願人のための手続に要した外国弁理士の費用は、外国弁理士が発行する請求書に基づき、本来は、出願人が直接支払うべきところを国内弁理士が出願人に代わって外国弁理士へ送金しているに過ぎないこと。
3 当該費用の基になる手続は外国弁理士が行う外国特許庁に対する諸手続であるから、非居住者である外国弁理士の役務提供は国外で行われていること。
したがって、当該費用は国内弁理士に対する弁理士の業務に関する報酬ではなく、外国弁理士に対する報酬と認められますので、国内弁理士に対する報酬としての源泉徴収は必要ないと考えます。また、外国弁理士の役務提供も国外で行われているので、国内源泉所得に該当しないため、同様に源泉徴収は必要ないと考えます。
別紙2
個別の取引等の事実関係
1 弁理士の職務内容について
(1) 国内の特許等の手続等
国内弁理士は、依頼者からの日本国特許庁へ出願することの指示書に基づいて、日本国特許庁への特許、実用新案、意匠又は商標に関して行う出願・登録手続を主たる業務の一つとしております。そして、これらの出願をするためには、特許庁へ委任状を提出する必要はありません。
例えば、特許に関しては一つの発明について、依頼者のために弁理士は特許出願してから登録に至るまで特許庁に対して依頼者名義で各種手続を行い、また、登録後も、出願から20年後まで、特許庁へ各年に登録料の支払を依頼者名義で行います。さらに、商標の場合は一つの商標について、依頼者のために弁理士は商標出願してから登録になるまで特許庁に対して依頼者名義で各種手続を行い、また、登録後も10年ごとに特許庁へ依頼者名義で更新手続を行うことにより商標権は永久に継続することができます。
このように、一つの事件(発明・商標)であっても、弁理士は、特許庁への手続を行うために依頼者と長年の取引関係を継続して行います。
以上のとおり、弁理士は、依頼者が特許庁に対して行うすべての手続に関して、依頼者の代理人として特許庁へ手続を行います。
(2) 外国の特許等の手続等
依頼者が外国特許庁へ手続を行う場合には、国内と同様、当該国の弁理士に手続を依頼しなければなりませんが、国内弁理士は、依頼者からの指示書に基づいて外国弁理士に必要な手続を依頼し、外国弁理士は依頼者のために必要な手続を依頼者名義で外国特許庁に行います。
例えば、国内弁理士は、外国事件においても、依頼者から外国特許庁へ出願することの指示及び外国弁理士の選任について指示若しくは一任を受け、この指示書に基づいて、国内弁理士は外国弁理士に外国特許庁へ特許などの出願・登録手続を行うことを依頼いたします。そして、一つの日本特許出願に基づいて、10数カ国へそれぞれの国の外国弁理士を通じて各国特許庁へ特許出願をすることもあり、また、商標にあっては、一つの日本商標出願に基づいて全世界200近くの地域・国にそれぞれの国の外国弁理士を通じて各国特許庁へ商標出願することもあります。
そして、外国の場合も、特許に関する一つの発明について、特許庁へ特許出願してから登録に至るまで依頼者名義で各種手続を行い、その登録後、特許庁への各年の登録料の支払が20年にわたることから取引関係が継続します。また、外国商標においても、一つの商標について特許庁へ商標出願してから登録を受けるまで依頼者名義で各種手続を行い、その登録後、特許庁へ10年ごとに更新手続をすることにより商標権は永久に継続することができます。特に登録料・更新料の特許庁への支払に関しては、ほとんどの国で委任状を必要としません。
このように、国内依頼者、国内弁理士及び外国弁理士の間には、長年にわたる信頼関係があり、特に、国内弁理士と外国弁理士との間には、多数のお互いの依頼者についての出願等に関し、お互いに各国の手続を管理したり、管理されたりしており、それにより、各国で特許などの権利は有効に継続することができます。
2 上記1(2)の具体的事例
上記1(2)の具体的事例の一例としての概略については、(資料4)をご参照ください。
① 日本在住のA国際特許事務所のB弁理士は、内国法人C社の外国特許出願担当者Dから、E国への「外国特許出願指示書」(資料1)を受領します。
② B弁理士は、①に基づいて特許出願に関するファイル(依頼状等)を作成します。
③ ①に基づいて、A国際特許事務所及びC社と長年取引関係にあるE国のF特許事務所へ②の「依頼状」等を送付します。
④ E国F特許事務所のG弁理士は、②のファイル(依頼状等)に基づいて、当該特許出願を受託しファイルを作成して、C社名義の特許出願書類を作成します。
⑤ G弁理士は、E国特許庁へ政府印紙代を添えて特許出願書類を提出します。
⑥ G弁理士は、本件出願に係る政府印紙代及び弁理士出願手数料等に関する「請求書」(資料2)を作成し、出願書類とともにA国際特許事務所宛てに送付します。
なお、「請求書」(資料2)の宛先がC社の場合には、出願書類とともにA国際特許事務所を経由して送付します。
⑦ B弁理士は、あらかじめF特許事務所からの請求金額を送金し、「立替金」とします。
⑧ B弁理士は、次の書類等をC社へ送付します。
イ 「出願書類」
ロ G弁理士からの「請求書」(資料2)
ハ ⑦の「立替金」にB弁理士のC社に対する弁理士業務に関する報酬又は料金の対価を加えた「請求書」(資料3)
ニ ⑦の送金に係る書類
(注)1 上記ロ、ニは、その写し(コピー)でも差し支えないこととします。ただし、上記ニが送付できない場合には、次によります。
(イ) G弁理士からの「請求書」(資料2)に基づき、C社への「請求書」(資料3)の摘要欄等に『事件番号』(ファイル番号等事件の同一性を表示するものを含む。)を記載し、それを出願人別にファイルを作成し、それにより管理する。
なお、コンピュータベースにより管理する場合には、C社への「請求書」(資料3)に記載している項目を入力する。
(ロ) C社から入金があったときは、入金日を上記(イ)のファイルのC社への「請求書」(資料3)の控に記入又はコンピュータベースに入力する。
なお、G弁理士に送金したときは、送金日をG弁理士からの「請求書」(資料2)又は送金の内訳を記載したものでG弁理士に送付した送金等案内の写しに記入又はコンピュータベースに入力する。
(ハ) 上記(イ)及び(ロ)により、C社又は税務当局等から照会があれば、いつでもその請求日、入金日、送金日、送金額、為替レート等がわかるようになっている。
2 上記ハの「請求書」(資料3)に記載の金額の欄等には、消費税等の課税、非課税、不課税、免税の表示をする。
⑨C社は、B弁理士からの「請求書」(資料3)に係る費用をB弁理士に支払います。
なお、⑥の請求額が高額な場合には、B弁理士は先にC社に請求し、「預り金」とし、F特許事務所(G弁理士)に送金した後、精算することもあります。
(資料1) 外国特許出願指示書 (PDF/9KB)
(資料1:別添1) 委任状 (PDF/9KB)
(資料1:別添2) 委任状 (PDF/10KB)
(資料2:英文) DEBIT NOTE (PDF/9KB)
(資料2:訳文) 請求書 (PDF/9KB)
(資料3) 請求書 (PDF/9KB)
(資料4) 外国特許出願手続の具体的事例 (PDF/10KB)
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.