解説記事2011年08月01日 【プロからの税務相談(法令等の根拠に基づく即決判断)】 プロからの税務相談(法令等の根拠に基づく即決判断)第401回(2011年8月1日号・№413)

プロからの税務相談(法令等の根拠に基づく即決判断)第401回
 武田昌輔税法研究グループ

1 清算所得課税の廃止の理由
Q
平成22年度税制改正において、清算所得課税が廃止されました。ずいぶん古い時代から清算所得課税が行われていたのを廃止するということは、大きな理由があったと思いますが、その理由を教えてください。
A 清算所得課税は、法人が解散することにより生ずることになるが、これは、大正9年にはじめて設けられた。その後、昭和25年にシャウプ勧告により廃止されたが、昭和28年に復活した。したがって、昭和28年からは平成22年までで57年経過していることになる。この点はともかくとして、清算所得の廃止の理由については、次のように述べられている(「平成22年度改正税法のすべて」276頁)。
 清算所得について財産法によって算定することとした背景としては、事業の継続が不能となって解散することが前提であり、また、清算中に寄附金などの支出について、税法上の制限を附けているのは、事業継続の不能が前提とされていると解される。
 しかし、「最近の解散は、法人の設立・改廃が活発になってきているなかで、会社の黒字清算や、法形式のみ解散の手続をとりつつ、他の法人において同一事業を継続して行うという事例も多く散見されているところです。このような場合、実際には事業を継続しているにもかかわらず、課税方式が転換し、経済実態に合わない課税関係となっている場合もあったところ、解散の前後で課税方式が異ならないようにするべきではないかとの指摘があったところです。」
 従前と異なる特徴的な点としては、従前は繰越欠損金は、打ち切られることになるものも結果として損金算入が認められていたが、特定の要件を満たさない限りは、打ち切られることになったことである。

2 所得税法における配当所得の優遇
Q
所得税における配当所得については、配当控除(税額控除)がありますので、仮に、配当所得だけしかない場合には、約300万円の配当所得があっても課税されないということですが、サラリーマンでは年収300万円は大きなウェイトを占めているとのことです。そうであれば、配当300万円というのは元本の株式としては何億円ということになるのではないかと思われますが、優遇すぎるように思われますが、いかがですか。
A ご指摘のように、サラリーマンにおいては、低所得者であっても課税が行われているのに、年約300万円の配当を受けても無税であるというのは、優遇が過ぎるようにも思われる。しかし、この配当には、これを行う法人において、原則として、約40%の実効税率による法人税が課税されているのである。この配当約300万円については約40%、つまり、200万円(グロスアップすると(300万円÷(1-0.4)=500万円)×40%)の所得税のことを考慮に入れると、別に、これは優遇とはいえないことになる。この考え方は、法人というのは、株主の集合体(これを「いわゆる法人擬制説的な考え方」といっている)であって、法人税等は、株主が支払ったものとみるのである。このような考え方のもとでは、当該株主の所得税からは、いわば前払法人税を控除すべきことになる(法人株主については、配当益金不算入の措置とパラレルの関係にある)。したがって、この考え方からすれば、配当に対する所得税については優遇ではなく、当然のことに過ぎないとするのである。しかし、他方では、この考え方については修正をすべきだとする考え方もある。

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