税務ニュース2004年11月15日 弁護士(夫)⇒弁護士(妻)、所法56条適用は合憲(2004年11月15日号・№090) 最高裁、「56条の要件を満たす限りその適用があるというべき」

弁護士(夫)⇒弁護士(妻)、所法56条適用は合憲
最高裁、「56条の要件を満たす限りその適用があるというべき」


 最高裁第三小法廷(上田豊三裁判長)は、平成16年11月2日、所得税法56条の適用を主たる争点とした弁護士(夫)⇒弁護士(妻)への報酬の必要経費算入について、所法56条の適用があるものと判示し、さらに、本件処分(必要経費算入を否認した更正処分)は、所法56条の適用を誤ったものではなく、憲法14条1項に違反するものではないとして、弁護士の上告を棄却した(平成16年行ツ第23号)。

「独立事業者への適用は違憲」と主張したが 
 上告人は、まず、所法56条の立法趣旨は、「家族間における恣意的な租税回避をさせないことにある」とし、妻(弁護士)への定額の支払では、「恣意的な資産の分配」などできないと主張した。加えて「例え夫婦であろうとも資格を持った弁護士に対し仕事を頼んだ場合、そこに報酬が発生するのは当然である。」とし、「所法57条が青色申告を選択する事業者について生計を一にする親族に対する支払を経費とすることを認めていることからも、独立しているが故に一切経費性を認めないというのは、法の立法趣旨を離れた運用であり、憲法14条(法の下の平等)に違反する」と主張した。
 また、所法56条にいう、「従事」や「その他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合」の意義については、独立の立場で事業者として役務を提供し対価の支払を受ける場合は該当しないと考えるべきであると主張した。

「56条の合理性を否定できない」と判示   
 最高裁第三小法廷は、「同法56条の上記の趣旨及びその文言に照らせば、居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が居住者と別に事業を営む場合であっても、そのことを理由に同条の適用を否定することはできず、同条の要件を満たす限りその適用があるというべきである。」、「同法56条の上記の立法目的は正当であり、同条が上記のとおり要件を定めているのは、適用の対象を明確にし、簡便な税務処理を可能にするためであって、上記の立法目的との関連で不合理であるとはいえない。このことに、同条が前記の必要経費算入等の措置を定めていることを併せて考えれば、同条の合理性を否定することはできないものというべきである。」と判示して、所法56条の合理性を容認した。
 また、所法57条との整合性について、「同法57条の上記の趣旨及び内容に照らせば,同法が57条の定める場合に限って56条の例外を認めていることについては,それが著しく不合理であることが明らかであるとはいえない。」として、本件各処分は、同法56条の適用を誤ったものではなく、憲法14条1項(法の下の平等)に違反するものではないと結論付けた。
 

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