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解説記事2011年08月22日 【実務解説】 実務家のための非居住者に係る所得課税のQ&A(2011年8月22日号・№415)

実務家のための非居住者に係る所得課税のQ&A
 編集部

 本稿は、税理士や企業の経理部等の実務家のための非居住者に係る所得税の課税に関するポイントについて、課税当局の資料等をもとにQ&A形式で紹介するものです。

非居住者が国内の土地を譲渡した場合の課税関係
[Q1] 2年間の予定でA社(日本法人)の米国支店で勤務している甲は、平成23年中に、日本国内にある土地を1億円でA社に譲渡しました。この場合の甲の譲渡所得に対する課税関係はどのようになりますか。
   なお、A社は土地の譲渡代金1億円を甲の日本国内の口座に振り込むことで支払いを行い、また、甲は日本国内に恒久的施設を有していないものとします。
[A]  国内にある土地建物等の譲渡による所得は国内源泉所得に該当し、甲が支払いを受ける譲渡の対価1億円に対し、A社が甲に支払いをするときに10%の税率により源泉徴収を行い、さらに、確定申告において、甲が譲渡所得の申告をする必要があります。
 なお、その際すでに源泉徴収されている金額について精算をすることになります。
【解説】
 1 居住者と非居住者の判定
 非居住者とは、「居住者以外の個人」のことです(所法2①五)。すなわち、国内に住所を有さず、かつ、引き続いて1年以上国内に居所を有しない者のことです。そして、国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合、国内に住所を有しない者と推定され、非居住者に該当することとなります(所令15)。
 甲は、2年間の予定で米国支店において勤務していることから、国内に住所を有していない者と推定され、非居住者に該当します。
 2 非居住者が国内にある不動産を譲渡した場合の源泉徴収  非居住者は国内源泉所得を有する場合にのみ所得税の納税義務が生じます。土地建物等を譲渡した場合、所得税法上その土地建物等の所在地が所得の源泉地とされていることから、国内にある土地建物等を譲渡したときの所得は国内源泉所得となります(所法161一の三)。
 そして、国内にある土地建物等を譲渡した非居住者に対してその譲渡の対価の額を国内において支払いをする個人または法人は、その支払いの際にその対価の額に対し10%の税率により所得税を源泉徴収し、その譲受けの対価を支払った月の翌月10日までに国に納付しなければならないとされています(所法212)。
 ただし、土地建物等の譲渡等による対価の額が1億円以下であり、かつ、その土地建物等を譲り受けた個人が自己またはその親族の居住の用に供するために譲り受けた場合には、所得税法161条1号の3に規定する国内源泉所得から除かれるので、その個人が支払いをする譲受対価については、所得税の源泉徴収をする必要がありません(所法161一、一の三、所法212、所令281の3)。
 質問の場合、譲り受けた者が法人なので、源泉徴収する必要があります。したがって、A社は、甲に譲受けの対価1億円を支払う際に、1億円に対して10%の税率により源泉徴収をし、翌月10日までにこれを国に納付しなければなりません。
 3 土地の譲渡所得の申告  国内にある不動産を譲渡した非居住者は、その国内にある不動産の譲渡により生ずる所得について申告納税をする必要があります(所法164①四イ)。この場合の非居住者の申告納税にあたっては、居住者の場合と同様に所得計算や税額計算を行い、源泉徴収された税額については、確定申告により精算されます。
 なお、土地等を譲渡した場合には、居住者同様、申告分離課税により申告することとなります(措法31、32)。
 ただし、非居住者に対して認められる所得控除は、雑損控除、寄附金控除および基礎控除に限られており、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除は適用できないほか、外国税額控除も同様に適用できません(所法165)。
 また、非居住者が確定申告を行う場合、確定申告書を提出するときまでにあらかじめ納税管理人を定め、「所得税の納税管理人の届出書」を非居住者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければなりません(通法117)。
 4 租税条約の検討  非居住者が、わが国が締結した租税条約の相手国の居住者となっている場合には、その租税条約に定める規定により国内法(所得税法)が修正されるかの検討が必要になります。
 日米租税条約においては、米国の居住者が日本国内に所在する不動産の譲渡により取得する収益に対しては、わが国において租税を課することができることとされています(日米租税条約13条1項)。したがって、租税条約により国内法は修正されないので、上記国内法の取扱いのとおり課税されることになります。

非居住者が国内の株式を譲渡した場合の課税関係
[Q2] 2年間の予定でA社(日本法人)の米国支店で勤務している甲は、平成23年6月、日本国内滞在中に、日本国内のB証券会社に預託していたC社(日本法人)の株式(平成21年中に100万円で購入)を、B証券会社を通じて国内の取引所において150万円で売却しました(手数料はないものと仮定)。この場合の甲の譲渡所得に対する課税関係はどのようになりますか。
   なお、甲は日本国内に恒久的施設を有していないものとします。
[A]  国内法では、非居住者が国内に滞在中に株式を譲渡した場合、国内源泉所得として日本において課税の対象となります。
 しかし、日米租税条約により国内法が修正され、原則として、米国においてのみ課税となり、租税条約に関する届出書を譲渡した年の翌年3月15日までに納税地を所轄する税務署長に提出することによって、日本においては課税されないことになります。
【解説】
 1 居住者と非居住者の判定
 甲は、2年間の予定で米国支店において勤務していることから、国内に住所を有していない者と推定され、非居住者に該当します。
 2 非居住者が国内において株式等を譲渡した場合の課税(国内法の定め)  恒久的施設を有しない非居住者が株式等を譲渡した場合、次の(1)~(5)のいずれかに該当する所得が国内源泉所得として課税対象となり、15%の税率により申告分離課税による所得税の確定申告が必要となります(措法37の12)。
 この場合において、譲渡損失が生じているときは、所得税法の適用上その損失はなかったものとしてみなされます(措法37の12②)。
(1)同一銘柄の内国法人の株券等の買い集めをし、その所有者である地位を利用して、これをその内国法人等に対し譲渡することによる所得(所令291①三イ)
(2)内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行う、次の要件を満たす内国法人の株式等の譲渡による所得(いわゆる事業等の譲渡に類似する所得)(所令291①三ロ)
イ 譲渡年以前3年以内のいずれかのときにおいて、その内国法人の特殊関係株主等が、その内国法人の発行済株式の総数の25%以上を所有していたこと(保有割合要件)
ロ 譲渡の年において、その非居住者を含む内国法人の特殊関係株主等が、最初にその内国法人の発行済株式の総数の5%以上を譲渡したこと(譲渡割合要件)
(3)特定の不動産関連法人の株式の譲渡による所得(所令291①四)
(4)税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得(措令19の3⑭)
(5)日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得(所令291①六)
 質問の場合、甲は、日本滞在中に株式を譲渡していることから、国内源泉所得として日本において課税の対象となり、15%の税率による申告分離課税により所得税の確定申告をする必要があります。
 なお、国内に恒久的施設を有しない非居住者である甲には、上場株式等に係る軽減税率の特例の適用はありません。留意したい点です。
 3 租税条約による修正  非居住者が、わが国が締結した租税条約の相手国の居住者となっている場合には、その租税条約に定める規定により国内法が修正されるかの検討が必要になります。
 日米租税条約においては、米国の居住者が株式の譲渡により取得する収益に対しては、その株式の譲渡が不動産所有法人の株式(不動産化体株式)の譲渡および公的資金の注入に係る特定の金融機関株式(破綻金融機関株式)の譲渡に該当する場合を除き、譲渡者が居住者とされる米国においてのみ課税ができることとされています(日米租税条約13条7項)。
 甲の株式等の譲渡による所得については、甲は米国の居住者であることから、日米租税条約の適用により、米国においてのみ課税されることになります。
 一方、日本の所得税については、日米租税条約の規定に基づき免除を受けられることになりますので、租税条約に関する届出書を譲渡した年の翌年3月15日までに甲の納税地の所轄税務署長に提出することで、日本においては課税されないことになります(実特法省令9の2)。

非居住者が国内のゴルフ会員権を譲渡した場合の課税関係
[Q3] 2年間の予定でA社(日本法人)の米国支店で勤務している甲は、平成23年6月に日本国内のゴルフ会員権を譲渡しました。甲が譲渡したゴルフ会員権は、甲が昭和50年に購入したものであり、譲渡収入から取得費等を控除した金額は300万円です。この場合の甲の譲渡所得に対する課税関係はどのようになりますか。
   なお、甲は日本国内に恒久的施設を有していないものとします。
[A]  国内法では、非居住者が国内ゴルフ会員権を譲渡した場合、国内源泉所得として日本において課税の対象となります。
 しかし、日米租税条約により、原則として、米国においてのみ課税となり、租税条約に関する届出書を譲渡した年の翌年3月15日までに納税地を所轄する税務署長に提出することによって、日本においては課税されないことになります。
【解説】
 1 居住者と非居住者の判定
 甲は、2年間の予定で米国支店において勤務していることから、国内に住所を有していない者と推定され、非居住者に該当します。
 2 非居住者が国内においてゴルフ会員権を譲渡した場合の課税(国内法の定め)  非居住者は国内源泉所得を有する場合にのみ所得税の納税義務が生じます。ゴルフ会員権の譲渡による所得については、株式形態のゴルフ会員権またはゴルフ場そのほかの施設の利用権のいずれの場合であっても、ともに所得税法161条1号に規定する国内にある資産の譲渡による所得に含まれます(所令280②六、十三、291①五)。
 したがって、所得税法161条1号に規定する国内にある資産の譲渡による所得は、非居住者が国内に恒久的施設を有しているかいないかに関わらず、所得について申告納税をする必要があります(所法164①)。
 この場合の非居住者の申告納税にあたっては、居住者の場合と同様に所得計算や税額計算を行うこととされています(所法165)。
 ただし、非居住者に対して認められる所得控除は、雑損控除、寄附金控除および基礎控除に限られており、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、障害者控除、寡婦(寡夫)控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除は適用できないほか、外国税額控除も同様に適用できません(所法165)。
 また、非居住者が確定申告を行う場合、確定申告書を提出するときまでにあらかじめ納税管理人を定め、「所得税の納税管理人の届出書」を非居住者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければなりません(通法117)。
 3 租税条約による修正  非居住者が、わが国が締結した租税条約の相手国の居住者となっている場合には、その租税条約に定める規定により国内法が修正されるかの検討が必要になります。
 日米租税条約においては、不動産化体株式や破綻金融機関関係株式等の特定の財産を除き、一般の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者とされる米国においてのみ課税ができることとされています(日米租税条約13条7項)。
 甲のゴルフ会員権の譲渡による所得については、甲は米国の居住者であることから、日米租税条約の適用により、米国においてのみ課税されることになります。
 一方、日本の所得税については日米租税条約の規定に基づき免除を受けられることになりますので、租税条約に関する届出書を譲渡した年の翌年3月15日までに甲の納税地の所轄税務署長に提出することで、日本においては課税されないことになります(実特法省令9の2)。

居住者と非居住者の判定(1)
[Q4] Aは、2年間の契約で日本国内において勤務している米国人です。Aは単身で来日し、来日してから1か月経過していますが、国内での住所が見つからず、今もホテルに滞在しています。この場合、Aは居住者となりますか。
[A]  Aは居住者となります。

【解説】  居住者とは、国内に住所を有し、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいいます(所法2①三)。また、その個人が国内において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有している場合、その者は国内に住所を有する者と推定されます(所令14①一)。
 質問の場合、Aは日本での滞在期間が1か月と短く、1年以上居所を有してはいないものの、国内において2年間勤務する予定で来日していることから、1年以上居住することを通常必要とする職業を有しているといえますので、国内に住所を有する者と推定され、居住者となります。
 なお、Aが過去10年間において、日本国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以下である場合、Aは非永住者となります(所法2①四)。

居住者と非居住者の判定(2)
[Q5] 甲は、6か月間の海外勤務の予定で米国の会社に勤務していました。ところが、6か月経過したときに現地の事情により、さらに1年間海外勤務を継続することになりました。この場合、甲はいつから非居住者として取り扱われることになりますか。
[A]  甲がさらに1年間海外勤務を継続することとなったときから非居住者となります。
【解説】  海外勤務者として出国した者の住所が国内にあるかどうかについては、その出国した者が国外において継続して1年以上滞在することを通常必要とする職業を有する場合には、その者の住所は国内にないものと推定され、非居住者として取り扱われることになります(所令15①一)。
 この推定規定の適用については、海外勤務のために出国した者の海外での在留期間が契約等により、あらかじめ1年未満であることが明らかとなっている場合を除き、その者の住所は国内にないものとして推定することとされています(所基通3-3)。
 甲は当初在留期間6か月の予定で出国しているので、住所が国内にないとする推定規定が適用されず、居住者として取り扱われます。
 ところが、6か月経過した時に事情が変わり、甲の海外勤務がさらに1年間延長されたときに、甲は1年以上滞在することを通常必要とする職業を有していることになり、国内に住所を有しない者として推定され非居住者となります。

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