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解説記事2011年11月14日 【実務解説】 過年度遡及修正等の改正を踏まえた中間連結財務諸表等の作成上の留意点(2011年11月14日号・№426)

実務解説
過年度遡及修正等の改正を踏まえた中間連結財務諸表等の作成上の留意点
 金融庁総務企画局企業開示課 課長補佐 徳重昌宏
 金融庁総務企画局企業開示課 専門官 中村慎二

 本稿では、(1)比較情報の考え方を導入したこと、および(2)中間連結財務諸表規則・中間財務諸表等規則における注記の規定が基本的に連結財務諸表規則・財務諸表等規則における注記の規定に合わせて規定されていることから、中間連結財務諸表および中間財務諸表の作成にあたって求められる特有の取扱いに関し、①表示方法の変更に関する注記、②セグメント情報等に関する注記、③資産除去債務に関する注記を取り上げて解説を行う。

Ⅰ はじめに
 平成23年3月31日に「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成23年内閣府令第10号)が公表されている。本改正は、四半期連結財務諸表規則および四半期財務諸表等規則について、四半期(連結)会計期間(3か月)に係る四半期(連結)損益計算書、第1・3四半期(連結)累計期間に係る四半期(連結)キャッシュ・フロー計算書の任意化や一部の注記の規定の削除など、四半期報告の簡素化に係る改正と、比較情報や会計方針の変更に関する注記等を規定した改正の2つの内容を含むものであり、後者については中間連結財務諸表規則および中間財務諸表等規則も併せて改正されている(脚注*)。
 本稿は、中間連結財務諸表規則および中間財務諸表等規則においても導入された比較情報の規定やそれに伴う注記の規定について、中間連結財務諸表および中間財務諸表の作成にあたって求められる取扱いについて解説するものであるが、文中意見にわたる部分については筆者らの個人的な見解であることをあらかじめお断りしておく。
 なお、中間連結財務諸表規則および中間財務諸表等規則は、基本的に同様の改正が行われていることから、中間財務諸表等規則の規定を引用することとする。

Ⅱ 中間連結財務諸表および中間財務諸表等の作成にあたっての留意点
 比較情報の作成について、中間財務諸表等規則において次のとおり規定されている(中間財務諸表等規則3条の2、中間連結財務諸表規則4条の2)。
(比較情報の作成)
第三条の二
 当中間会計期間に係る中間財務諸表は、当該中間財務諸表の一部を構成するものとして比較情報(次の各号に掲げる中間財務諸表の区分に応じ、当該中間財務諸表に記載された事項に対応するものとして当該各号に定める事項)を含めて作成しなければならない。
 中間貸借対照表 前事業年度に係る事項
二 中間損益計算書 前中間会計期間に係る事項
三 中間株主資本等変動計算書 前中間会計期間に係る事項
四 中間キャッシュ・フロー計算書 前中間会計期間に係る事項
 上記規定において、中間損益計算書、中間株主資本等変動計算書および中間キャッシュ・フロー計算書(以下「中間損益計算書等」という)については、前中間会計期間に係る事項が比較情報として規定されているが、中間貸借対照表については、前中間会計期間ではなく、前事業年度に係る事項が比較情報として規定されている。
 これは、フローの勘定については前中間期のフローの勘定との比較が有用であるが、ストックの勘定については、その性質上、前中間期ではなく、直近である前期末の数値との比較が有用であると考えられるためであり、また、国際会計基準の規定とも整合している(国際会計基準(IAS)第34号「中間財務報告」20(a)および付録Aを参照)。
 このように、中間貸借対照表と中間損益計算書等とで求められる比較情報の対象となる時点、期間が異なっている。また、中間(連結)財務諸表提出会社(上場している銀行、保険会社等を除く)は、四半期(連結)財務諸表提出会社と異なり、半期の報告しか求められていないことも踏まえ、中間財務諸表等規則においては、基本的に、財務諸表等規則において求められている注記事項と整合するように注記の規定が定められている。
 これらのことから、次のように中間財務諸表特有の取扱いが求められている。

1 表示方法の変更に関する注記  表示方法の変更に関する注記(中間財務諸表等規則5条の2の2、同ガイドライン5の2の2-1、中間連結財務諸表規則11条の4、同ガイドライン11の4)について、中間財務諸表等規則および同ガイドラインにおいて次のとおり規定されている。なお、本規定に相当する規定は、四半期報告の迅速性の観点や利用者の必要性等を踏まえ、四半期財務諸表等規則等には置かれていない。
(表示方法の変更に関する注記)
第五条の二の二
 表示方法の変更を行った場合には、次に掲げる事項を注記しなければならない。
一 中間財務諸表の組替えの内容
二 中間財務諸表の組替えを行った理由
三 中間財務諸表の主な項目に係る前事業年度及び前中間会計期間における金額
2 前項の規定にかかわらず、中間財務諸表の組替えが実務上不可能な場合には、その理由を注記しなければならない。
3 前二項の規定にかかわらず、これらの規定により注記すべき事項に重要性が乏しい場合には、注記を省略することができる。
4 (略)
5の2の2-1  前事業年度に係る貸借対照表における表示方法と当中間会計期間に係る中間貸借対照表における表示方法が異なることにより、当中間会計期間に係る比較情報に含まれる科目の表示を前事業年度に係る貸借対照表における科目の表示から変更する場合には、規則第5条の2の2第1項に規定する事項の注記を要しないことに留意する。

(1) 規定の趣旨
 ① 中間財務諸表等規則5条の2の2の規定の趣旨
 中間財務諸表等規則5条の2の2の規定は、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第16項の規定を踏まえて定められたものである。
 前述のとおり、中間貸借対照表については前事業年度に係る事項、中間損益計算書等については前中間会計期間に係る事項が比較情報として規定されており、これを踏まえ、中間貸借対照表の表示方法を変更した場合には、変更後の表示方法を前期貸借対照表に適用したと仮定し、また、中間損益計算書等の表示方法を変更した場合には、変更後の表示方法を前中間損益計算書等に適用したと仮定して中間財務諸表に含まれる比較情報を作成することになる(中間財務諸表等規則2条の2第36号参照)。
 5条の2の2第1項3号の規定は、中間貸借対照表の表示方法を変更した場合には、当該中間貸借対照表の主な項目に対応する「前事業年度」に係る事項(金額)、中間損益計算書等の表示方法を変更した場合には、当該中間損益計算書等の主な項目に対応する「前中間会計期間」に係る事項(金額)の注記をそれぞれ求めている。
 ② ガイドライン5の2の2-1の規定の趣旨  ガイドライン5の2の2-1は、中間貸借対照表の表示方法の変更に関する注記を要しない場合について規定している。
 このように、中間貸借対照表の場合のみを規定しているのは、中間貸借対照表の比較情報が前中間会計期間に係る事項ではなく、前事業年度に係る事項と定められており、貸借対照表と中間貸借対照表の表示方法が異なることによる。
 たとえば、たな卸資産について、貸借対照表においては「商品及び製品(半製品を含む。)」「仕掛品」「原材料及び貯蔵品」と区分表示される(財務諸表等規則17条1項7号~9号)が、中間貸借対照表においては、たな卸資産の科目で一括して表示することとされている(中間財務諸表等規則13条1項7号)。
 したがって、中間貸借対照表に含まれる比較情報においては、当中間貸借対照表の表示に合わせて、たな卸資産として一括表示されるものと考えられる(なお、財務諸表等規則17条3項の規定により、貸借対照表においてもたな卸資産の一括掲記が認められているため、この方法を採った場合には、中間貸借対照表において表示方法の変更は生じない)。また、中間貸借対照表において、流動資産、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産、繰延資産、流動負債、固定負債の区分表示における百分の五基準等、年度における基準(百分の一基準等)と異なる基準が適用されることにより、前期貸借対照表において、独立掲記されていた科目について、当中間期に重要性が乏しくなったことから当中間貸借対照表に含まれる比較情報においては、他の科目と一括して「その他」に記載されることが考えられる。
 このように、中間貸借対照表において、科目を集約して表示すること、または「その他」に記載することに伴って前期貸借対照表の表示を組み替えることは、中間財務諸表等規則の規定により当然に予定されており、比較可能性の観点からも注記は不要と考えられる。ただし、各企業の判断により追加情報として必要な事項を注記することは妨げられるものではない。
 ③ 中間財務諸表等規則3条3項の規定の趣旨  中間財務諸表等規則3条3項は「中間財務諸表の表示方法は、正当な理由により変更を行う場合を除き、継続して適用しなければならない。」と規定されている。当該規定では、中間財務諸表のすべてについて、その表示方法は前中間財務諸表の表示方法との継続性が求められ、前中間の表示方法から変更した場合には、その内容の注記が求められていた(平成23年3月31日改正前中間財務諸表等規則5条1項2号)。
 前述のとおり、平成23年3月31日付改正で中間貸借対照表の比較情報は前事業年度に係る事項とされ(中間財務諸表等規則3条の2第1号)、前中間会計期間に係る事項は表示されなくなったこと、表示方法の変更に関する注記についても中間貸借対照表に関しては、前期貸借対照表からの変更について記載されることとされたこと(中間財務諸表等規則5条の2第1項3号。ガイドライン5の2の2-1の規定により注記が不要となる場合を除く)との関係で、中間貸借対照表の表示方法の継続性は、これまでどおり前中間貸借対照表の表示方法との継続性が求められるのか、前期貸借対照表の表示方法との継続性が求められるのか不明確との指摘がある。
 これについては、比較情報の規定および表示方法の変更に関する注記の規定の新設、また、前事業年度と当中間会計期間における表示方法は、重要性の基準値の違いや科目の集約による場合を除き、原則として一致していることを踏まえると、前期貸借対照表の表示方法との継続性を求める趣旨と解することが適当であると考えられる。前述のガイドライン5の2の2-1は、この考え方を踏まえた規定である。
 また、四半期財務諸表の表示方法の継続性については、四半期財務諸表等規則4条3項に規定されているが、四半期貸借対照表の表示法方法は、上記と同様に、前期貸借対照表の表示方法との継続性が求められるものと考えられる。 
 なお、中間連結財務諸表規則および四半期連結財務諸表規則においては、表示方法の継続性の規定は置かれていないが、中間連結貸借対照表や四半期連結貸借対照表の表示方法の継続性の考え方は、中間貸借対照表や四半期貸借対照表における考え方と同様であると考えられる。
(2)具体的な表示方法の検討  前期貸借対照表において独立掲記されていた科目が当中間期に重要性がなくなった場合の表示方法について、次のとおり<ケース1>および<ケース2>に分けて検討する。なお、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」設例2と同様、長期貸付金を取り上げる。


 ① <ケース1>について  「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「過年度遡及会計基準」という)第14項によれば、実務上不可能な場合を除き、表示方法の変更を行った場合には、原則として、財務諸表の組替えを行う必要があると考えられる。したがって、(a)の記載方法によるものと考えられる。この場合には、中間財務諸表等規則ガイドライン5の2の2-1の規定により、表示方法の変更に関する注記を行う必要はないと考えられる。
 ただし、重要性の乏しい場合にまで厳密な取扱いを求める必要はないこと、また、同会計基準第35項の「重要性」の規定の趣旨等も踏まえ、表示方法を変更した場合でも組替えを行わないケースがあり得るものと考えられる。したがって、このようなケースにおいては、(b)の表示方法によることも可能と考えられる。
 なお、追加情報として必要な事項を注記することは妨げられるものではない。
 ② <ケース2>について  前期に独立掲記していた科目の残高が当中間期にゼロとなり、当中間期に表示しない場合は、厳密には、表示方法の変更には該当しないものと考えられる。
 過年度遡及会計基準第14項によれば、当期に表示方法の変更を行っていない場合に財務諸表の組替えを行うことは原則として予定されていないと解される。また、比較情報の趣旨からも、内訳科目が異なる場合には、当中間期の表示方法に合わせて財務諸表を組み替える理由もないであろう。したがって、(a)の記載方法になると考えられる。
 ただし、重要性の乏しい場合にまで厳密な取扱いを求める必要はないこと、過年度遡及会計基準第35項の「重要性」の規定の趣旨も踏まえ、表示方法の変更を行っていない場合でも、組替えを行うケースがあり得るものと考えられる。したがって、このようなケースにおいては、(b)の表示方法によることも可能と考えられる。
 なお、表示方法の変更に関する注記に準じて、追加情報として必要な事項を注記することは妨げられるものではない。
 上記<ケース1>および<ケース2>の考え方は、年度や四半期でも同様と考えられる(なお、四半期においては、表示方法の変更に関する注記は求められていない)。

2 セグメント情報等の注記  セグメント情報等の注記(中間財務諸表等規則5条の20、中間連結財務諸表規則14条)の記載については、報告セグメントごとの売上高、利益等、中間会計期間に係る数値のほか、報告セグメントごとの資産、負債等、中間会計期間末の数値を記載することが求められている。
 中間会計期間末の数値として、具体的には、中間財務諸表等規則様式第1号【セグメント情報】の「3.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報」中、「セグメント資産、セグメント負債、持分法適用会社への投資額」等の記載が求められている(表1参照)。

 また、同様式第2号【関連情報】中、「2.地域ごとの情報」「(2)有形固定資産」、同様式第び未償却残高に関する情報】中、「のれんの未償却残高」の記載が求められている(表2参照)。

 これらの数値について、中間貸借対照表の比較情報が前事業年度に係る事項であることを踏まえると、前中間会計期間ではなく前事業年度の数値とすべきとも考えられるが、セグメント情報としての一体性、同一の様式中に異なる時点、期間の数値が記載された場合の煩雑さ、利用者の利便性等の観点も踏まえ、上記様式のとおり、すべての項目について、前中間会計期間に係る数値の記載が求められていることに留意が必要である。
 なお、様式第1号【セグメント情報】の「4.報告セグメント合計額と中間財務諸表計上額との差額及び当該差額の主な内容(差異調整に関する事項)」についても、同様の考え方によるものと考えられる。

3 資産除去債務に関する注記等  資産除去債務に関する注記(中間財務諸表等規則5条の19、中間連結財務諸表規則17条の15)については、中間財務諸表等規則が財務諸表等規則8条の28の規定を準用していることから、財務諸表等規則の規定を引用する。
(資産除去債務に関する注記)
第八条の二十八
 資産除去債務については、次の各号に掲げる資産除去債務の区分に応じ、当該各号に定める事項を注記しなければならない。ただし、重要性の乏しいものについては、注記を省略することができる。
一 資産除去債務のうち貸借対照表に計上しているもの 次のイからニまでに掲げる事項イ 当該資産除去債務の概要
ロ 当該資産除去債務の金額の算定方法
 当該事業年度における当該資産除去債務の総額の増減
ニ 当該資産除去債務の金額の見積りを変更したときは、その旨、変更の内容及び
影響額
 二 (略)
 (なお、中間財務諸表等規則5条の19は、上記1号イ・ロについては準用していない)
 8条の28第1号ハの規定において、資産除去債務の総額の増減の記載が求められており、中間財務諸表においては、中間期首残高、期中変動額および中間期末残高を記載することになる。
 当中間会計期間の変動額の比較情報は、前中間会計期間の変動額とも考えられる。しかしながら、当中間会計期間末の数値の比較情報は、前事業年度末の数値と考えられること、資産除去債務が貸借対照表科目であることを踏まえると、当中間会計期間の変動額の比較情報は前事業年度の変動額と考えることが適当であり、表3のように記載することが考えられる。なお、必要に応じて中間会計期間末の残高を記載して前中間会計期間の変動額を示すことを妨げるものではない。

 また、表3は、横の形式を示しているが、縦の形式によることも可能である。
 なお、上記のように、中間期首、期中変動および中間期末の情報が求められている注記には、賃貸等不動産に関する注記(中間財務諸表等規則5条の21)、発行済株式に関する注記(同65条)、自己株式に関する注記(同66条)、新株予約権等に関する注記(同67条)などがある。賃貸等不動産に関する注記については、資産除去債務に関する注記と同様の考え方により記載するものと考えられる。
 他方、発行済株式に関する注記、自己株式に関する注記および新株予約権等に関する注記については、中間株主資本等変動計算書に関する注記であることから、比較情報として前中間会計期間に係る事項を記載するものと考えられる。

Ⅲ おわりに
 本稿では、中間(連結)財務諸表の作成にあたり、円滑な実務が行われるように、中間財務諸表等規則における取扱いについて解説を行った。
 過年度遡及会計基準等の導入に伴い、財務諸表等規則、開示府令等およびこれらのガイドラインが改正され、本年4月1日以後に開始する事業年度から適用されているところである。これらの会計基準や関係内閣府令等の改正等は、これまでの考え方を変えるものであり、実務への影響が小さくない場合も考えられる。
 関係内閣府令等においてすべてのケースを規定できるわけではないことも考慮していただき、関係内閣府令等の規定およびその趣旨を踏まえ、各企業にとって適切と考えられる方法により開示を行っていただくようお願いしたい。

脚注
* 徳重昌宏=神保勇一郎「四半期会計基準等の公表に伴う四半期連結財務諸表規則等の改正の要点」本誌400号19頁参照。

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