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コラム2012年01月09日 【SCOPE】 会社法も詐害的な会社分割での債権者を保護へ(2012年1月9日号・№433)

税制適格でも詐害的な会社分割になる場合も!
会社法も詐害的な会社分割での債権者を保護へ

 現在、法制審議会会社法制部会で検討されている会社法改正では、詐害的な会社分割が行われた場合の債権者保護が盛り込まれる方向となっている。会社分割において、承継会社に債務の履行の請求ができる債権者とできない債権者を恣意的に選別したうえで、承継会社に優良資産等を承継させるなどの残存債権者を害するようなケースが増えているとの指摘を受けたものだ。裁判では、民法上の詐害行為取消権の行使等を認める判例もあり、会社法でも追認する形の見直しといえる。
 仮に税制上の適格組織再編成の要件を満たす場合であっても、詐害行為と認められる可能性もある。税理士などの実務家にとっても会社法改正の動向は留意すべき点といえよう。

裁判では民法上の詐害行為取消権の行使等が容認  法制審議会会社法制部会が取りまとめた「会社法制の見直しに関する中間試案」(1月31日まで意見募集)では、論点の1つとして、「会社分割等における債権者の保護」が挙げられている。
 昨今では、債務超過の会社が、新設分割を行うことにより、一部の優良資産や事業、債務を承継させた後、分割会社を清算する会社の再建手法が採られることが多く行われているが、残存債権者を害するような詐害的な会社分割が行われているケースがある。
現行は分割会社の債権者は保護されず  たとえば、新設分割が行われ、新設会社に優良資産や事業、債務が移転された場合で、新設会社に承継された債務の債権者については、会社法上、分割会社に対して債務の履行をすることができなくなるため、分割会社に対して異議を述べることができる(会社法810条1項2号)。一方、分割会社の残存債権者については、分割会社に債務の履行を請求することが可能であるため、会社法上の債権者保護手続の対象外となっている(参照)。

 分割会社には新設会社の株式が交付されるものの、移転した資産の価値と同等の株式の価値があるか不明にもかかわらず、債権者保護手続に大きな差が生じていることに問題があるとの指摘が従来からされている。
 裁判でも争われており、東京高裁の判決(平成22年10月27日、平成22年(ネ)第4126号)では、残存債権者の保護を図るため、民法上の詐害行為取消権(民法424条)の行使等が認められている(本誌379号4頁参照)。
承継した財産の価額が限度  このような判決などを受け、中間試案では、民法上の詐害行為取消権に加えて、会社法において、残存債権者が詐害的な会社分割に係る行為を取り消すことなく、新設会社等(承継会社)に対しても、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求することができることとしている。
 ただし、詐害的な会社分割をしたことを知った時から2年以内に請求等をしなければその権利が消滅することになる方向だ。

「会社法制の見直しに関する中間試案」より抜粋
第6 会社分割等における債権者の保護
1 詐害的な会社分割における債権者の保護
① 吸収分割会社又は新設分割会社(以下第6において「分割会社」という。)が、吸収分割承継会社又は新設分割設立会社(以下第6において「承継会社等」という。)に承継されない債務の債権者(以下「残存債権者」という。)を害することを知って会社分割をした場合には、残存債権者は、承継会社等に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができるものとする。ただし、吸収分割の場合であって、吸収分割承継会社が吸収分割の効力が生じた時において残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りでないものとする。
(注)株式会社である分割会社が吸収分割の効力が生ずる日又は新設分割設立会社の成立の日に全部取得条項付種類株式の取得又は剰余金の配当(取得対価又は配当財産が承継会社等の株式又は持分のみであるものに限る。)をする場合(会社法第758条第8号等)には、上記の規律を適用しないものとする。
② 残存債権者が、分割会社が①の会社分割をしたことを知った時から2年以内に①による請求又はその予告をしない場合には、①による請求をする権利は、当該期間を経過した時に消滅するものとする。会社分割の効力が生じた時から20年を経過したときも、同様とするものとする。
(注)事業譲渡についても、①及び②と同様の規律を設けるものとする。
2 不法行為債権者の保護
 会社分割について異議を述べることができる債権者のうち、不法行為によって生じた分割会社の債務の債権者であって、分割会社に知れていないものの保護について、次のとおりの見直しをするものとする。
① 当該債権者は、吸収分割契約又は新設分割計画において会社分割後に分割会社に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、分割会社に対して、吸収分割の効力が生ずる日又は新設分割設立会社の成立の日に分割会社が有していた財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができるものとする(会社法第759条第2項等参照)。
② 当該債権者は、吸収分割契約又は新設分割計画において会社分割後に承継会社等に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、承継会社等に対して、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができるものとする(会社法第759条第3項等参照)。(後注)株式会社が組織再編や事業譲渡をする場合に、従業員の意見等を開示するものとするかどうかについては、なお検討する。

組織再編を行った場合の従業員等の意見の開示は?
 中間試案では、会社が組織再編を行う場合に従業員の意見等を開示するかどうかという論点は検討事項とされている。会社が合併等の組織再編や事業譲渡を行う場合の株主の意思決定の判断材料として望ましいとの意見がある一方、時間的・手続的なコストを要することから、迅速な組織再編の実現を困難にするとの指摘がなされているからだ。

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