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解説記事2012年05月28日 【第2特集】 Q&Aで読み解く株式評価の間違いやすいケース(2012年5月28日号・№452)

課税当局でのチェックポイント
Q&Aで読み解く株式評価の間違いやすいケース

 株式の評価に関して、よく見受けられる間違いやすいケースについて、課税当局の資料や取材等に基づいてQ&A形式で解説する。「配当落があった場合の最終価格の月平均額」「無償返還届出書を提出している場合の評価」「課税時期前3年以内に取得した土地建物等の評価」などについて紹介する。

Q1
2以上の金融商品取引所に上場されている株式評価の際の取引所の選択
 2以上の金融商品取引所に上場されている銘柄の株式を保有していますが、株式の評価の際、どちらの取引所を選択すればよいのですか。
A  上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価することになります。ただし、その最終価格が課税時期の属する月以前3か月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額によって評価します(評基通169)。
 質問の2以上の金融商品取引所に上場されている株式における取引所の選択については、「納税義務者が選択した金融商品取引所」となります(評基通169)。
 ただし、この取扱いは、納税者の選択に委ねるといっても、他の金融商品取引所に「課税時期の最終価格」および「最終価格の月平均額」があるにもかかわらず、それらのない金融商品取引所の選択を認めるものではありません。

Q2
配当落があった場合の最終価格の月平均額
 配当落があった場合の最終価格の月平均額については、修正計算が必要になりますか。
A  権利落があった場合のような修正計算は必要ありません。
 配当落があった場合には、その配当金を受け取る権利は、株式とは別に配当期待権として独立して課税対象となりますので、その株式の価額は、権利落の場合と同様に月平均額を修正すべきということになりますが、①修正計算は極めて煩雑になり実務的でないこと、②上場会社の配当の利回りは低率で、株価に与える影響はごく僅かであること、③金融商品取引所が月平均額を算出する場合、配当落についてはその前後を区分計算していないことなどの理由から、権利落のような最終価格の月平均額の特例はありません(評基通172(1)~(4))。

Q3
評価会社が有する取引相場のない株式
 評価会社が有する取引相場のない株式を純資産価額方式により計算する場合、評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除することはできますか。
A  控除することはできません(評基通186-3(注))。


Q4
無償返還届出書を提出している場合の評価
 被相続人が同族関係者となっている同族会社が「無償返還届出書」を提出して(相当地代を支払って)、被相続人所有の土地を借り受けている場合における同族会社の株式の評価上、純資産価額に算入する借地権の金額はどのようになりますか。

A  自用地としての価額の20%相当額となります。
 借地権の設定されている土地について、相続等があった場合において、法人税の取扱いによる無償返還届出書が提出されている場合の貸宅地の価額は、その土地の自用地としての価額の100分の80に相当する金額によって評価します。
 これは、無償返還届出書が提出されている土地についても、借地借家法等の制約を受けることおよびその土地が相続等のときに無償返還されるわけではないことを勘案すれば、現在、借地権の取引慣行のない地域についても20%の借地権相当額の控除を容認していることとの兼ね合いから、その土地に係る貸宅地の評価についても20%控除することが適当であるとの考えによるものです。
 なお、この場合においても被相続人が同族関係者となっている同族会社にその土地を貸し付けている場合には、同族会社の株式または出資の評価上、その土地の自用地としての価額の20%に相当する金額を純資産価額に算入して計算することとしています。
 その理由については、土地の価額が個人と法人を通じて100%明らかになることが課税の公平上適当と考えられることによるものです。
 ただし、同じ無償返還届出書が提出されている場合であっても、その貸借が使用貸借であるときのその土地に係る貸宅地の価額は、その土地の自用地としての価額によって評価することになります。

Q5
課税時期前3年以内に取得した土地建物等の評価
 純資産価額方式において課税時期前3年以内に取得等した土地等の評価については、取引価額あるいは取得価額のどちらで評価することになりますか。
A  資産のうちに評価会社が課税時期前3年以内に取得または新築した土地および土地の上に存する権利ならびに家屋およびその附属設備または建築物があるときには、これらの価額は課税時期の通常の取引価額により評価することになります(評基通185かっこ書)。
 なお、当該土地等または当該家屋等に係る帳簿価額が通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額によって評価することができます。

Q6
「株式及び出資」の範囲
 株式保有特定会社の株式に該当するか否かの判定の基礎となる「株式及び出資」とはどのようなものが該当しますか。たとえば、①金融商品取引業者(証券会社)が保有する商品としての株式、②外国株式、③株式制のゴルフ会員権、④匿名組合の出資、⑤証券投資信託の受益証券はどうですか。
A  株式保有特定会社の株式に該当するか否かの判定の基礎となる「株式及び出資」とは、所有目的または所有期間のいかんに関わらず評価会社が有する株式のすべておよび評価会社の法人に対する出資のすべてをいうことになります。
 ①の金融商品取引業者(証券会社)が保有する商品としての株式については、商品であっても株式会社の社員たる地位を取得することに変わりがなく、たな卸資産として保有する株式等についても「株式及び出資」の範囲に該当することになります。なお、評価会社が第一種金融商品取引業(従来の証券業)を営む会社であるときには、評価会社の有する「株式及び出資」の価額には「保管有価証券勘定」に属する「株式及び出資」の価額を含めないことになります。
 ②については、外国株式であっても、外国法人の社員たる地位を取得することに変わりがなく、判定の基礎となる「株式及び出資」に該当します。
 ③の株式制のゴルフ会員権については、ゴルフ場経営法人等の株主であることを前提としているものであるため、判定の基礎となる「株式及び出資」に該当することになります。
 ④の匿名組合に関しては、商法における匿名組合契約に基づくもので「共同出資による企業形態」の1つであり、出資者(匿名組合員)が営業者の営業に対して出資を行い、営業者はその営業から生ずる利益を匿名組合員に分配することを要素とするものです。匿名組合契約により出資したときは、その出資は、営業者の財産に帰属するものとされています(商法536①)。このため、匿名組合員の有する権利は、利益分配請求権と契約終了時における出資金返還請求権が一体となった匿名組合契約に基づく債権的権利ということになります。したがって、判定の基礎となる「株式及び出資」に該当するものとはいえません。
 ⑤の証券投資信託とは、不特定多数の投資家から集めた小口資金を大口資金にまとめ、運用の専門家が投資家に代わって株式や公社債などの有価証券に分散投資し、これから生じる運用収益を出資口数に応じて分配する制度です。出資者は、運用収益の受益者の立場にとどまることから、証券投資信託の受益証券は、判定の基礎となる「株式及び出資」に該当するものとはいえません。
 なお、たとえば、「特定金銭信託」については、運用方法や運用先、金額、期間、利率などを委託者が特定できる金銭信託であるため、評価会社が実質的に信託財産を構成している株式を所有していると認められます。

Q7
自己株式を有している場合の1株当たりの純資産価額の計算
 自己株式を有している場合の1株当たりの純資産価額の計算はどのようになりますか。
A  評価会社が自己株式を有している場合であっても、現行の会計基準では、自己株式は、資産の部に計上されるのではなく、資本の部の控除項目として取り扱われているため、評価会社の有する資産には該当しないことになります。
 また、1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)は、課税時期における各資産を評価通達に定めるところにより評価した価額の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額および評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額となります。この場合の課税時期における発行済株式数については、評価会社が自己株式を有する場合には、当該自己株式の数を控除した株式数によるものとされています。
 なお、純資産価額の算定に当たり、株式の取得者とその同族関係者の議決権割合が50%以下の場合には、会社に対する支配力に基づいて格差を設けるという考え方から、純資産価額の80%で評価することとされていますが、この場合の議決権割合を算定するときの議決権総数については、自己株式に係る議決権の数は「0」として計算した議決権の数をもって評価会社の議決権総数となります。

Q8
不動産販売会社がたな卸資産として所有する土地等
 土地保有特定会社の株式に該当するか否かの判定を行う場合において、不動産販売会社がたな卸資産として所有する土地等も含めることになりますか。
A  判定の基礎となる土地等(土地および土地の上に存する権利)については、所有目的や所有期間のいかんに関わらず、評価会社が有しているすべてのものが含まれることになります。このため、たな卸資産に該当する土地等も含まれます。
 なお、この場合の土地等の価額は、財産評価基本通達4-2(不動産のうちたな卸資産に該当するものの評価)の定めにより同132(評価単位)および同133(たな卸商品等の評価)により評価されることになります。

Q9
無配の場合の1株当たりの配当金額
 無配の場合の1株当たりの配当金額については、「0円」でよいのでしょうか。
A  2円50銭未満のものおよび無配のものについては2円50銭とされます(評基通188-2)。
 なお、同族株主以外の株主等が取得した株式の評価については、その株式の年配当金額をもとに計算することになりますが、配当還元方式で計算した金額が原則的評価方式によって計算した金額を超える場合には、原則的評価方式によって計算した金額により評価することになります(評基通188-2)。

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