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コラム2012年08月27日 【SCOPE】 固定資産税の評価ミス、5年経過後の救済手段は?(2012年8月27日号・№464)

東京地裁、都税職員の過失を認め都に賠償命令
固定資産税の評価ミス、5年経過後の救済手段は?

 固定資産税の評価ミスを巡り、地方税法が規定する更正等の期間制限(5年)より前に発生した過大納付税額の損害賠償請求が認められるか否かが争われていた国家賠償訴訟で東京地裁(矢尾渉裁判長)は6月29日、都税職員の過失を認め東京都に対し損害賠償を命じる判決を言い渡した。今回の判決は、誤った固定資産税の賦課決定を巡り、自治体に対する国家賠償請求を認めた最高裁平成22年6月3日判決を踏まえたうえで、東京都に対して損害賠償を命じたもの。固定資産税の過大納付の発生が期間制限(5年)より前におよぶケースでは、自治体に対する国家賠償請求が有力な救済手段の1つといえそうだ。

都税事務所、地方税法を根拠に過去5年分のみ還付
固定資産税の評価ミス、長年にわたり放置も
 固定資産税の評価ミスが発覚した場合、その評価ミスが長年にわたり放置されているケースは少なくないだろう。
 今回の事案でも、納税者が所有する建物について、平成18年度分から平成23年度分に至るまでの6年間、固定資産税の評価に誤りがあった。
 固定資産税の評価に誤りがあることを発見した都税事務所は、減額更正に係る期間制限(5年)の範囲内である平成19年度分から平成23年度分に関しては、納税者に対して過大納付税額を還付する一方で、平成18年度分については、地方税法が規定する期間制限(5年)の経過を理由に還付を行わなかった。
 そのため、今回の事案の納税者は、固定資産税を賦課した東京都に対して国家賠償法(地方公共団体の公務員が過失によって違法に他人に損害を与えたとき、地方公共団体はこれを賠償する責を負う旨を規定)に基づき、平成18年度分の過大納付税額に相当する金額の損害賠償を請求していた。
 納税者は、固定資産税の評価誤りは単純な入力ミスによるものであるため、担当した都税職員は職務上通常尽くすべき注意義務を怠ったものであると主張。対する東京都は、①事務を複数の職員で確認する体制をとって最善を尽くしたこと、②入力ミスを犯しやすい建物であったことなどを指摘し、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていたと主張していた。

評価ミスを過失と認定、最高裁判決を踏まえ国家賠償請求を認容  東京地裁民事第16部の矢尾渉裁判長は、今回の事案の固定資産の評価ミスについて、本来であれば建物の専有区分ごとに単位あたりの評点を変更すべきところ、すべての専有区分について、同一の単位あたりの評点になるように誤って入力したことによるものであると認定。
 矢尾裁判長は、都税職員の単純な入力過誤によって納税者が所有する建物の固定資産価格の決定を誤ったのであるから、それが職務上の法的義務の違背によることは明らかであると指摘。都側の主張を一蹴したうえ、東京都に対して、平成18年度分の過大納付税額に相当する損害賠償を命じる判決を言い渡した。
 なお、東京都は控訴せず第一審判決で確定している。

独自の要綱を作成し還付する自治体も  地方税の過大納付税額の還付については、5年前のものであっても還付ができるようにする独自の要綱を作成する自治体が存在する一方で、今回の事案のように地方税法が規定する期間制限の5年以内のもののみ還付に応じる自治体も少なくない。
 過大納付の発生が期間制限(5年)より前におよぶケースにおいて、自治体が過大納付税額の返還に応じない場合には、国家賠償法に基づく損害賠償請求が有力な救済手段の1つといえそうだ。

最高裁、国家賠償請求ルートを切り開く
 地方税法上、固定資産の評価に不服がある納税者が選択できる救済手続きは、①固定資産評価審査委員会に対する審査申出ルートと②同委員会の決定に対する取消訴訟ルートに限られている。しかし、最高裁平成22年6月3日第一小法廷判決(平成21年(受)1338号)では、公務員が納税者に対する職務上の法的義務に違背して固定資産の価格を過大に決定したときは、これによって損害を被った納税者は、固定資産評価審査委員会に対する審査の申出(地方税法432条1項)および同委員会の決定に対する取消訴訟(同法434条1項)の手続を経るまでもなく、直接、自治体に対して国家賠償請求を行うことができるとする注目すべき判断を示した。

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