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解説記事2012年09月10日 【第2特集】 Q&Aで読み解く特別縁故者に対する相続税の取扱い(2012年9月10日号・№466)

分与を受けた相続財産の評価は?
Q&Aで読み解く特別縁故者に対する相続税の取扱い

 相続税法4条では、被相続人に相続人が存在しない場合において、民法958条の3第1項により被相続人の特別縁故者に相続財産の全部または一部が与えられた場合、与えられた財産を被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税を課税する旨が規定されている。
 特集では、特別縁故者に対する相続財産の分与があった場合の相続税の課税関係について、課税当局の資料等に基づきポイントを紹介するとともに、2つのQ&Aで解説する。

特別縁故者に関する相続税の課税関係のポイント
(1)相続税の課税価格
 特別縁故者に対し、相続財産の全部又は一部が与えられた場合においては、その与えられた者がその与えられた時における当該財産の時価に相当する金額を被相続人から遺贈により取得したとみなされる。また、相続財産の分与を受けた特別縁故者が、当該相続財産に係る被相続人の葬式費用等の金額で相続開始の際にまだ支払われていなかったものを支払った場合、これらの金額を相続財産から別に受けていないときは、分与を受けた金額からこれらの費用の金額を控除した価額をもって、当該分与された価額として取り扱われる。
(2)基礎控除額  特別縁故者が相続財産の分与を受ける場合は、被相続人に相続人がいないことが前提となるため、基礎控除額は5,000万円となる。
(3)相続税の総額の計算  相続人が不存在の場合には、法定相続分という概念がなく、相続税の総額を算出する場合、相続財産の分与を受けた特別縁故者の課税価格から基礎控除額を控除した後の残額に税率を乗じて計算する。
(4)相続税の加算  特別縁故者は被相続人の一親等の血族および配偶者以外の者であるため、相続税法18条の規定により相続税額の加算が必要になる。
(5)配偶者控除等および相次相続控除  配偶者控除、未成年者控除、障害者控除は適用できない。また、相次相続控除の適用もない。
(6)在外財産に対する相続税額の控除  分与を受けた相続財産のなかに在外財産がある場合において、当該分与を受けた在外財産についてその他の法令により相続税に相当する税が課せられたときは、相続税法20条の2の規定の適用を受けることができる。
(7)相続税の申告期限  相続財産の分与を受けたことを知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告書を納税地の税務署長に提出する(相法29①)。

Q1
民法958条の3の規定により相続財産の分与を受けた場合の相続税の課税関係等
被相続人甲は、平成22年1月に死亡しました。甲には相続人がいなかったことから、甲と生計を一にしていたAは、家庭裁判所に対し甲の特別縁故者であるとして、相続財産の分与を申し立てていたところ、家庭裁判所の審判があり、平成24年5月9日に被相続人が所有していた土地(相続開始時の相続税評価額:7,500万円、分与時の相続税評価額7,000万円)の分与があったことを知りました。なお、Aは、被相続人の未払い医療費および葬式費用の合計200万円を負担しており、これらの金額については、相続財産から支払いを受けていません。この場合において、以下の質問について教えてください。
① 相続税の申告期限はいつになりますか。
② 土地の評価は、相続開始時の相続税評価額(7,500万円)と分与を受けた時の相続税評価額(7,000万円)のどちらになりますか。
③ Aの負担した被相続人の医療費等(200万円)は、分与を受けた財産から控除することができますか。
④ Aが分与を受けた土地に係る相続税の課税関係は、平成22年の法令と平成24年の法令のいずれを適用しますか。
A  ①の相続税の申告期限については、Aが土地の分与を受けたことを知った日の翌日から10か月を経過する日である平成25年3月9日となります。特別縁故者が相続財産の分与を受けた場合の申告期限は、相続税法29条の規定により、分与があったことを知った日の翌日から10か月を経過する日とされているからです。
 ②の土地の評価については、分与を受けた時における相続税評価額(7,000万円)となります。相続税法4条では、「……その与えられた者が、その与えられた時における当該財産の時価……に相当する金額を当該財産に係る被相続人から遺贈により取得したものとみなす」と規定していることから、土地の評価は、特別縁故者が土地の分与を受けた時における相続税評価額となります。
 ③のAが負担した医療費等(200万円)は、分与を受けた土地の価額から控除することができます。相続税法基本通達4-4の定めにより、分与を受けた土地の価額からAが負担した医療費等を控除した価額(7,000万円-200万円=6,800万円)をもって、分与された価額として取り扱うことになります。なお、医療費等(200万円)は、相続税法13条に規定する債務控除の対象とならないことに留意する必要があります。
 ④のAが分与を受けた土地に係る相続税の課税関係は、平成22年の法令を適用することになります。相続財産の分与における相続税法の適用に関して、神戸地方裁判所昭和58年11月14日判決では、民法958条の3の規定による財産の取得が、相続税法4条において遺贈により取得したものと擬制されていることから、相続財産の分与による財産の取得時期は、民法上の取得時期いかんにかかわらず、相続税法上は、遺贈の場合と同様、相続開始日であると解すべきであり、その課税については、この時に施行されていた相続税法が適用されるべきである旨が判示されています。
 したがって、相続財産の分与における相続税法の適用については、分与されたときの法令ではなく、相続開始日に施行されていた法令を適用することになり、Aが分与により取得した土地の相続税の課税関係は、相続開始日(平成22年1月)である平成22年の法令によることになります。

Q2
被相続人に係る死亡保険金を受領して相続税の申告をしていた者が、民法958条の3の規定により相続財産の分与を受けた場合の相続税の課税関係について
 被相続人甲は、平成22年1月に死亡しました。甲と生計を一にしていたAは、甲の死亡により相続税法3条に規定する死亡保険金(8,000万円)を取得したことから、平成22年10月に相続税の期限内申告を行っていました。
 また、甲は相続人がいなかったことから、Aは家庭裁判所に対して甲の特別縁故者であるとして、相続財産の分与を申し立てていたところ、家庭裁判所の審判があり、平成24年7月1日に被相続人が所有していた土地(分与時の相続税評価額:7,000万円)の分与があったことを知りました。
 この場合において、以下の質問について教えてください。
①  相続税の修正申告書はいつまでに提出する必要がありますか。
② 修正申告をした場合に過少申告加算税および延滞税の取扱いはどのようになりますか。
A  ①に関して、Aは相続税の修正申告書を平成25年5月1日までに提出する必要があります。
相続税法31条2項は、相続税の申告書を提出した者は、同法4条に規定する事由が生じたためにすでに確定した相続税額に不足を生じた場合には、当該事由が生じたことを知った日の翌日から10か月以内に修正申告書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない旨が規定されています。
 本件については、Aが甲の死亡により相続税法3条に規定する死亡保険金(8,000万円)を取得したため、すでに相続税の期限内申告書を提出し、相続税額を確定させていたところ、新たに相続税法4条の事由が生じ、確定していた相続税額に不足が生じることとなったことから、相続税法31条2項により修正申告書の提出が必要であり、その提出期限は土地の分与があったことを知った日(平成24年7月1日)の翌日から10か月を経過する日となります。
 ②に関して、修正申告に係る過少申告加算税は賦課されません。また、修正申告に係る相続税額を平成25年5月1日までに全額納付すれば延滞税も課せられません。
 国税通則法65条1項は「期限内申告書が提出された場合において……修正申告書の提出があったとき」に過少申告加算税を賦課する旨が規定されていますが、相続税法4条に規定する事由が生じたために相続税法31条2項に規定する修正申告書を同項に規定する期間内に提出した場合は、相続税法50条2項1号において、国税通則法の適用については同法17条2項に規定する期限内申告書とみなす旨が規定されています。
 したがって、相続税法4条の事由が生じたため同法31条2項の修正申告書をその提出期限内に提出していれば、国税通則法上は期限内申告書とみなされるため、同法65条1項に規定する修正申告書の提出には該当しないことになり、過少申告加算税は賦課されないことになります。
 なお、延滞税についても、相続税法31条2項に規定する期間内に全額納付していた場合には算出されないことになります(国税通則法60条1項2号に規定する修正申告書には該当しません)。

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