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解説記事2012年09月24日 【ニュース特集】 役員給与の期中減額、定期同額判定で重要解釈(2012年9月24日号・№468)

国税庁「役員給与に関するQ&A」の射程は
役員給与の期中減額、定期同額判定で重要解釈

 法人が事業年度の中途に行った役員給与の減額改定が、子会社の借入金返済のために行われたものであることから法令69条1項1号に掲げる改定に該当しないとされた裁決事例があった(平成24年6月28日裁決)。請求人は、「役員給与に関するQ&A」Q1に例示されている取引銀行との間で行われる借入金返済に係る協議で役員給与を減額せざるを得ない場合と同様の減額理由と主張。しかし、審判所は、法令69条1項1号が給与改定を行った当該法人の業績悪化等を理由とした給与改定について損金不算入としない旨を規定していると指摘。子会社の借入金返済のための給与改定は業績悪化改定等には当たらないとした。法令69条1項1号について、審判所が新たな法令解釈を示しており、注目されるところだ。

国税庁Q&Aから業績悪化改定事由に該当と主張  本事案で、請求人(12月決算法人)は、平成19年12月期において、Aに対する役員給与として、平成19年1月から同年9月までは月額50万円、同年10月以降は月額20万円に減額して支給し、平成19年12月期に支給総額510万円を損金算入した。
 これに対し、課税当局は、平成19年10月からの役員給与の給与改定(減額支給)は、X社(請求人の子会社)の借入金の返済のために行われたものであり、法令69条1項1号に掲げる改定のいずれにも該当しないとして、平成19年1月から9月までの役員給与のうち、月額20万円を超える金額(合計金額270万円)について、損金算入されないとして所得金額に加算している(図表1参照)。

 審査請求では、平成19年10月からの給与改定が、法令69条1項1号の給与改定に該当するか否かが争われている。
 請求人の主張は、以下の2点だ。
(1)請求人とX社は実質的に同一であり、X社の顧問契約の請求人への譲渡契約書からも明らかなようにX社の借入金返済原資は請求人の利益であるから(図表2参照)、X社の借入金返済のために役員給与を減額したことは、法令69条1項1号に規定する給与改定に該当する。

(2)金融機関(返済先)も請求人とX社の関連性を把握しているからこそ、請求人における報酬水準に対する指摘をしてきていたところ、国税庁のQ&Aによれば、「取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において役員給与の額を減額せざるを得ない場合」が挙げられており、請求人の減額理由も同様と解される。


審判所の法令69条1項1号の法令解釈に差異  審判所は、上記の請求人主張を法令69条1項1号の法令解釈から退けている。
 具体的に審判所の法令69条1項1号の法令解釈は、次のようなものだ。「……定期同額給与について、事業年度の中途で給与改定がされた場合であっても、それが当該法人の業績悪化改定事由によるものである場合には、当該給与改定の前後それぞれの期間における各支給時期の支給額が同額である限り、当該給与改定にはやむを得ない理由があり、し意性はないと考えられるので、役員給与の損金不算入の規定を適用しないことにしたものと解される」。
 しかし、この法令解釈には、定期同額給与の改定に係る初の裁決事例(平成23年1月25日裁決・公表裁決事例No.82)における解釈と異なる点がある。23年1月25日裁決の法令解釈では、「……事業年度の中途で給与改定がされた場合であっても、それが業績悪化改定事由によるものである場合には、……」とされているのだ。
 つまり、今回の裁決事例では、法令69条1項1号の法令解釈として、年度途中の給与改定の場合に損金算入されるのは、給与改定したその法人の業績悪化改定事由によるものに限定されたことになる。
 この法令解釈から、国税庁「役員給与に関するQ&A」の内容を確認してみると、Q1では、「例えば、取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合の減額改定は、通常、業績悪化改定事由による改定に該当することになると考えられる」とされている(前頁上掲参照)。
 請求人の主張は、このQ&Aの「借入金返済のリスケジュールの協議」が、子会社(関連会社)の借入金返済を含むと解釈したものと捉えることもできる。
 しかし、審判所が新たに示した法令69条1項1号の解釈からは、その主張は認められないことになる。実際に、今回の審判所の判断では、「(法令69条1項1号は)給与改定を行った当該法人の業績悪化等を理由とした給与改定について損金不算入としない旨規定しているのであるから、請求人の関連法人であるX社の借入金返済のための給与改定は、同号に規定する給与改定には当たらないというべきである」とされている。

請求人の経営状況に著しい悪化は認められない  なお、審判所は、請求人が行った平成19年10月からの給与改定について、①事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日までにされたものではなく、A(請求人の代表取締役、請求人の解散に伴い代表清算人)の職制上の地位の変更等に基づく改定であったとも認められない。②請求人の当該各事業年度の業績をみても、収益の大幅な低下や多額の損失の発生などは認められず、請求人の経営状況が著しく悪化したなどの事実は認められなかったことから(図表3参照)、当該役員給与の改定は、法令69条1項1号に規定するいずれの給与改定にも該当しないと判断している。

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