コラム2012年10月08日 【未公開裁決事例紹介】 遺留分減殺請求訴訟係争中の葬式費用は指定相続分で負担(2012年10月8日号・№470)
未公開裁決事例紹介
遺留分減殺請求訴訟係争中の葬式費用は指定相続分で負担
遺産全部を「相続させる」遺言との関係
○被相続人が子に全ての財産を相続させる旨の遺言をし、葬式費用を支払った配偶者が遺留分減殺請求した事案において、審判所が、遺産全部を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は遺産分割方法の指定と同時に相続分を指定したものであり、その指定された相続分に応じて被相続人に係る葬式費用を負担するものとして、その全額を請求人の課税価格の計算上控除すると判断した事例(関裁(諸)平23第76号)。
基礎事実 本件被相続人は、本件相続開始日において、×××の理事長であり、本件被相続人の法定相続人は、本件被相続人の子である請求人および本件被相続人の配偶者の2名である。
本件被相続人は、平成17年10月21日に、公証人役場において遺言公正証書(以下「本件遺言書」という)を作成した。なお、本件遺言書には、本件被相続人の全ての財産を請求人に相続させる旨記載されている。
請求人は、本件配偶者から、侵害された遺留分について減殺請求通知をする旨記載された平成19年11月29日付の「遺留分減殺請求書」と題する書面の送付を受けた。
その後、本件配偶者は、×××に×××に対し、請求人を相手取り、遺留分減殺請求訴訟を提起した(以下、本件配偶者による遺留分減殺請求を「本件遺留分減殺請求」といい、当該提起された訴訟を「本件遺留分減殺請求訴訟」という)。なお、本件遺留分減殺請求訴訟は、本件更正処分時において判決が確定していない。
原処分庁は、請求人の課税価格について、遺留分相当額および相続税法13条1項2号に規定する葬式費用の額7,883,676円(以下「本件葬式費用」という)等を控除せず、また、本件配偶者の課税価格について、相続開始前3年以内の贈与に係る財産の価額21,851,000円を加算して、本件更正処分を行った。
争点および主張 主な争点は、①請求人の課税価格は、遺留分減殺請求がなかったものとして計算すべきか否か。②本件葬式費用は、請求人の課税価格の計算上控除すべきか。これらの争点に係る当事者の主張は、表のとおり。
審判所の判断
(1)争点①について
イ 判断 民法908条は、被相続人は、遺言で、遺産分割方法を定めることができる旨規定しているところ、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、同法964条《包括遺贈及び特定遺贈》に規定する遺贈と解すべき特段の事情がなければ、当該遺産を当該相続人に単独で相続により承継させようとする遺言と解すべきであり、同法908条に規定する遺産の分割方法を定める遺言として、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産の分割の効果を発生させる。
このことは、遺産全部を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言の場合も同様であるが、この場合、当該相続人に法定相続分を超える遺産を相続させることとなるから、当該遺言は、遺産の分割方法の指定と同時に民法902条1項に規定する相続分の指定をしたものと解され、同項ただし書の規定により遺留分に関する規定に違反することができないことにより、遺留分を侵害された相続人は、財産を取得した相続人に対し、遺留分減殺請求権を行使することができることとなる。
遺留分減殺請求権が行使されると、相続分の指定は遺留分を侵害している限度において失効し、遺留分権利者に帰属すると解されるが、遺留分減殺請求権を行使された相続人が請求どおり速やかに履行する場合はともかく、遺留分減殺請求権を行使された相続人とそれを行使した相続人との間で、遺留分減殺請求の効果および履行について争われることは現実に数多く見られることであり、このように当事者間で遺留分減殺請求の効果および履行について争っている状況において、不確定事実を基として相続税の課税価格を計算することは事実上困難であることから、基本通達11の2-4は、遺留分減殺請求に基づき返還すべきまたは弁償すべき額が確定するまでの間、遺留分減殺請求がなかったものとして課税価格を計算する旨定めるものであり、当該取扱いは、当審判所において相当と認められる。
これを本件についてみると、本件遺言書における、被相続人の全ての財産を請求人に相続させる旨の遺言は、遺贈と解すべき特段の事情がないことから、民法908条に規定する遺産分割方法の指定と同時に同法902条1項に規定する相続分の指定をしたものと認められ、本件被相続人の相続開始によって直ちに遺産分割の効果を発生させるものであるが、当該遺言により遺留分を侵害された本件配偶者は、遺留分減殺請求権を行使し、請求人に対して本件遺留分減殺請求訴訟を提起しており、当該訴訟に係る判決は、本件更正処分時において確定していない。
そうすると、請求人と本件配偶者との間で、本件遺留分減殺請求に基づき返還すべきまたは弁償すべき額が確定していないのであるから、請求人の課税価格は、基本通達11の2-4の定めに基づき、本件遺留分減殺請求がなかったものとして計算するのが相当である。
ロ 請求人の主張について
請求人の主張(イ)について 本件遺言書における遺言は、遺産分割方法の指定と同時に民法902条1項に規定する相続分の指定をしたものと認められ、本件被相続人の相続開始によって直ちに遺産分割の効果を発生させるものであるから、請求人が本件被相続人の財産全部を取得しているといえ、未分割であるとはいえない。また、遺留分減殺請求に係る判決あるいは調停に基づき返還すべきまたは弁償すべき額が確定した場合には、相続税法32条の規定による更正の請求、同法30条《期限後申告の特則》または31条《修正申告の特則》の規定による期限後申告または修正申告、同法35条《更正及び決定の特則》の規定による更正等により課税関係を是正する措置が講じられていることから、課税の公平および担税力の観点からみて問題があるとはいえない。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
請求人の主張(ロ)について 相続税の納税義務の成立要件としては、納税義務者において相続を原因として財産を取得することが必要であり、かつ、それをもって足りると解されるところ、本件の場合、本件遺言書における遺言は、本件被相続人の相続開始によって直ちに遺産分割の効果を発生させるものであるから、請求人においては、本件被相続人の相続を原因として、同人の財産全部を取得しているといえ、上記相続税の納税義務の成立要件を満たしている。
したがって、仮に、本件相続開始日以後に本件配偶者が本件被相続人の相続財産を処分し、請求人が当該財産を現実に取得し得なかったとしても、そのことが上記判断を左右するものではないから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(2)争点②について
イ 認定事実 請求人提出資料、原処分関係資料および当審判所の調査の結果によれば、本件遺留分減殺請求訴訟において本件配偶者が準備書面の添付資料として提出した「×××遺産目録」と題する書面には、当事者間で争いがある葬儀費用として、本件葬式費用を含む10,346,619円が記載されている事実が認められる。
ロ 請求人等の答述 請求人は、当審判所に対し、本件葬式費用は本件配偶者が支払っているが、本件遺留分減殺請求訴訟において、本件葬式費用を誰がいくら負担するかについて係争中である旨答述した。
本件配偶者は、当審判所に対し、本件葬式費用は喪主である自分が支払うものと思って支払ったが、本件遺留分減殺請求訴訟において、本件葬式費用を誰がいくら負担するかについて係争中である旨答述した。
ハ 判断 相続税法13条1項は、相続または遺贈により取得した財産について課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人に係る葬式費用等のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨規定し、基本通達13-3は、「その者の負担に属する部分の金額」について、相続または遺贈によって財産を取得した者が実際に負担する金額をいい、この場合において、これらの者の実際に負担する金額が確定していないときは、民法900条から902条までの規定による相続分または包括遺贈の割合に応じて負担する金額をいう旨定めており、当該取扱いは、当審判所において相当と認められる。
これを本件についてみると、本件遺留分減殺請求訴訟の両当事者である請求人および本件配偶者の各答述は、本件葬式費用を誰がいくら負担するかについて係争中である点で一致しており、本件遺留分減殺請求訴訟において、本件配偶者が葬儀費用については当事者間で争いがあるとして本件被相続人の財産の財産目録を作成していることからすれば、本件葬式費用は、本件更正処分時において、請求人と本件配偶者との間でどちらがどれだけ負担するか確定していなかったと認められる。
そうすると、本件葬式費用は、基本通達13-3の定めに基づき、民法900条から902条までの規定による相続分または包括遺贈の割合に応じ、各人の課税価格の計算上控除すべきであるところ、本件遺言書における遺言は、遺産分割方法の指定と同時に同条1項に規定する相続分を指定したものと認められることから、当該指定された相続分に応じ、請求人が本件葬式費用を負担するものとして、その全額を請求人の課税価格の計算上控除するのが相当である。
遺留分減殺請求訴訟係争中の葬式費用は指定相続分で負担
遺産全部を「相続させる」遺言との関係
○被相続人が子に全ての財産を相続させる旨の遺言をし、葬式費用を支払った配偶者が遺留分減殺請求した事案において、審判所が、遺産全部を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は遺産分割方法の指定と同時に相続分を指定したものであり、その指定された相続分に応じて被相続人に係る葬式費用を負担するものとして、その全額を請求人の課税価格の計算上控除すると判断した事例(関裁(諸)平23第76号)。
基礎事実 本件被相続人は、本件相続開始日において、×××の理事長であり、本件被相続人の法定相続人は、本件被相続人の子である請求人および本件被相続人の配偶者の2名である。
本件被相続人は、平成17年10月21日に、公証人役場において遺言公正証書(以下「本件遺言書」という)を作成した。なお、本件遺言書には、本件被相続人の全ての財産を請求人に相続させる旨記載されている。
請求人は、本件配偶者から、侵害された遺留分について減殺請求通知をする旨記載された平成19年11月29日付の「遺留分減殺請求書」と題する書面の送付を受けた。
その後、本件配偶者は、×××に×××に対し、請求人を相手取り、遺留分減殺請求訴訟を提起した(以下、本件配偶者による遺留分減殺請求を「本件遺留分減殺請求」といい、当該提起された訴訟を「本件遺留分減殺請求訴訟」という)。なお、本件遺留分減殺請求訴訟は、本件更正処分時において判決が確定していない。
原処分庁は、請求人の課税価格について、遺留分相当額および相続税法13条1項2号に規定する葬式費用の額7,883,676円(以下「本件葬式費用」という)等を控除せず、また、本件配偶者の課税価格について、相続開始前3年以内の贈与に係る財産の価額21,851,000円を加算して、本件更正処分を行った。
争点および主張 主な争点は、①請求人の課税価格は、遺留分減殺請求がなかったものとして計算すべきか否か。②本件葬式費用は、請求人の課税価格の計算上控除すべきか。これらの争点に係る当事者の主張は、表のとおり。
【表】当事者の主張 |
原 処 分 庁 | 請 求 人 |
争点①について (イ)本件遺言書の効力は、民法985条《遺言の効力の発生時期》の規定により、本件被相続人の死亡により効力を生ずるところ、本件遺言書には、請求人に本件被相続人の全ての財産を相続させる旨記載されていることから、本件相続開始日において、本件被相続人の財産は全て請求人に帰属することとなり、請求人の課税価格は、相続税法2条《相続税の課税財産の範囲》1項の規定により本件遺言書により請求人に帰属することとなった全ての財産の価額となる。 また、本件遺留分減殺請求がなされているとしても、本件更正処分時において、請求人と本件配偶者との間で返還すべきまたは弁償すべき額が確定していないことから、相続税法11条の2の規定および基本通達11の2-4の定めにより、本件遺留分減殺請求がなかったものとして請求人の課税価格を計算すべきである。 (ロ)仮に、請求人が取得すべき財産について、本件配偶者が処分したことなどによって事実上請求人が取得することができないような事情があるとしても、当該事情は、請求人と本件配偶者との間で解決すべき問題であって、本件更正処分に係る認定を左右するものではない。 争点②について 葬式費用は、被相続人の債務ではなく、相続または遺贈により財産を取得した者がその相続または遺贈との関連において負担する性質のものではないところ、本件葬式費用は、本件配偶者により支払われていると認められるから、現実に支払った本件配偶者の課税価格の計算上控除するのが相当である。 | 争点①について (イ)本件遺言書において本件被相続人の財産承継者として請求人が指定されているが、本件遺留分減殺請求に基づき返還すべきまたは弁償すべき額が確定していない現状においては、請求人は、遺言を執行し、本件被相続人の財産を処分するなどできない状況であるから、本件被相続人の財産を請求人が取得したと考えることはできない。 このことは、本件被相続人の財産が未分割であるのと異ならないから、本件遺言書の存在のみによって、請求人に本件被相続人の全ての財産に係る相続税を課税することは、課税の公平および担税力の観点からみて問題がある。 (ロ)また、本件相続開始日以後、本件配偶者が金融機関から払い戻した本件被相続人の預金は、請求人または遺言執行者の管理下にはなく、本件被相続人と同居していた本件配偶者が自由に処分してしまっており、当該処分された財産に係る相続税まで請求人が負担しなければならないことは著しく不合理である。 (ハ)したがって、請求人の課税価格は、本件遺言書により取得した財産の価額から本件遺留分減殺請求に基づき返還すべきまたは弁償すべき額に相当する金額を控除して計算すべきである。 争点②について 本件葬式費用は、本件配偶者との間において誰が負担するか確定していないことおよび請求人が取得すべき預金から支払われていることからすれば、その全額を請求人の課税価格の計算上控除すべきである。 |
審判所の判断
(1)争点①について
イ 判断 民法908条は、被相続人は、遺言で、遺産分割方法を定めることができる旨規定しているところ、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言は、同法964条《包括遺贈及び特定遺贈》に規定する遺贈と解すべき特段の事情がなければ、当該遺産を当該相続人に単独で相続により承継させようとする遺言と解すべきであり、同法908条に規定する遺産の分割方法を定める遺言として、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産の分割の効果を発生させる。
このことは、遺産全部を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言の場合も同様であるが、この場合、当該相続人に法定相続分を超える遺産を相続させることとなるから、当該遺言は、遺産の分割方法の指定と同時に民法902条1項に規定する相続分の指定をしたものと解され、同項ただし書の規定により遺留分に関する規定に違反することができないことにより、遺留分を侵害された相続人は、財産を取得した相続人に対し、遺留分減殺請求権を行使することができることとなる。
遺留分減殺請求権が行使されると、相続分の指定は遺留分を侵害している限度において失効し、遺留分権利者に帰属すると解されるが、遺留分減殺請求権を行使された相続人が請求どおり速やかに履行する場合はともかく、遺留分減殺請求権を行使された相続人とそれを行使した相続人との間で、遺留分減殺請求の効果および履行について争われることは現実に数多く見られることであり、このように当事者間で遺留分減殺請求の効果および履行について争っている状況において、不確定事実を基として相続税の課税価格を計算することは事実上困難であることから、基本通達11の2-4は、遺留分減殺請求に基づき返還すべきまたは弁償すべき額が確定するまでの間、遺留分減殺請求がなかったものとして課税価格を計算する旨定めるものであり、当該取扱いは、当審判所において相当と認められる。
これを本件についてみると、本件遺言書における、被相続人の全ての財産を請求人に相続させる旨の遺言は、遺贈と解すべき特段の事情がないことから、民法908条に規定する遺産分割方法の指定と同時に同法902条1項に規定する相続分の指定をしたものと認められ、本件被相続人の相続開始によって直ちに遺産分割の効果を発生させるものであるが、当該遺言により遺留分を侵害された本件配偶者は、遺留分減殺請求権を行使し、請求人に対して本件遺留分減殺請求訴訟を提起しており、当該訴訟に係る判決は、本件更正処分時において確定していない。
そうすると、請求人と本件配偶者との間で、本件遺留分減殺請求に基づき返還すべきまたは弁償すべき額が確定していないのであるから、請求人の課税価格は、基本通達11の2-4の定めに基づき、本件遺留分減殺請求がなかったものとして計算するのが相当である。
ロ 請求人の主張について
請求人の主張(イ)について 本件遺言書における遺言は、遺産分割方法の指定と同時に民法902条1項に規定する相続分の指定をしたものと認められ、本件被相続人の相続開始によって直ちに遺産分割の効果を発生させるものであるから、請求人が本件被相続人の財産全部を取得しているといえ、未分割であるとはいえない。また、遺留分減殺請求に係る判決あるいは調停に基づき返還すべきまたは弁償すべき額が確定した場合には、相続税法32条の規定による更正の請求、同法30条《期限後申告の特則》または31条《修正申告の特則》の規定による期限後申告または修正申告、同法35条《更正及び決定の特則》の規定による更正等により課税関係を是正する措置が講じられていることから、課税の公平および担税力の観点からみて問題があるとはいえない。
したがって、この点に関する請求人の主張は採用できない。
請求人の主張(ロ)について 相続税の納税義務の成立要件としては、納税義務者において相続を原因として財産を取得することが必要であり、かつ、それをもって足りると解されるところ、本件の場合、本件遺言書における遺言は、本件被相続人の相続開始によって直ちに遺産分割の効果を発生させるものであるから、請求人においては、本件被相続人の相続を原因として、同人の財産全部を取得しているといえ、上記相続税の納税義務の成立要件を満たしている。
したがって、仮に、本件相続開始日以後に本件配偶者が本件被相続人の相続財産を処分し、請求人が当該財産を現実に取得し得なかったとしても、そのことが上記判断を左右するものではないから、この点に関する請求人の主張は採用できない。
(2)争点②について
イ 認定事実 請求人提出資料、原処分関係資料および当審判所の調査の結果によれば、本件遺留分減殺請求訴訟において本件配偶者が準備書面の添付資料として提出した「×××遺産目録」と題する書面には、当事者間で争いがある葬儀費用として、本件葬式費用を含む10,346,619円が記載されている事実が認められる。
ロ 請求人等の答述 請求人は、当審判所に対し、本件葬式費用は本件配偶者が支払っているが、本件遺留分減殺請求訴訟において、本件葬式費用を誰がいくら負担するかについて係争中である旨答述した。
本件配偶者は、当審判所に対し、本件葬式費用は喪主である自分が支払うものと思って支払ったが、本件遺留分減殺請求訴訟において、本件葬式費用を誰がいくら負担するかについて係争中である旨答述した。
ハ 判断 相続税法13条1項は、相続または遺贈により取得した財産について課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から被相続人に係る葬式費用等のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による旨規定し、基本通達13-3は、「その者の負担に属する部分の金額」について、相続または遺贈によって財産を取得した者が実際に負担する金額をいい、この場合において、これらの者の実際に負担する金額が確定していないときは、民法900条から902条までの規定による相続分または包括遺贈の割合に応じて負担する金額をいう旨定めており、当該取扱いは、当審判所において相当と認められる。
これを本件についてみると、本件遺留分減殺請求訴訟の両当事者である請求人および本件配偶者の各答述は、本件葬式費用を誰がいくら負担するかについて係争中である点で一致しており、本件遺留分減殺請求訴訟において、本件配偶者が葬儀費用については当事者間で争いがあるとして本件被相続人の財産の財産目録を作成していることからすれば、本件葬式費用は、本件更正処分時において、請求人と本件配偶者との間でどちらがどれだけ負担するか確定していなかったと認められる。
そうすると、本件葬式費用は、基本通達13-3の定めに基づき、民法900条から902条までの規定による相続分または包括遺贈の割合に応じ、各人の課税価格の計算上控除すべきであるところ、本件遺言書における遺言は、遺産分割方法の指定と同時に同条1項に規定する相続分を指定したものと認められることから、当該指定された相続分に応じ、請求人が本件葬式費用を負担するものとして、その全額を請求人の課税価格の計算上控除するのが相当である。
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