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解説記事2013年04月22日 【ニュース特集】 贈与無効の判決と後発的事由該当性(2013年4月22日号・№496)

専ら納税を免れる目的・馴れ合いによるものか否か
贈与無効の判決と後発的事由該当性

与無効の判決(和解)が後発的事由(国税通則法23条2項1号)に該当し、更正の請求が認められるか否か。その判断でポイントとなるのは、贈与無効判決(和解)が、当事者が専ら納税を免れる目的で、馴れ合いによって得られたものであるかどうかだ。納税を免れる目的で当事者の馴れ合いによって得られた判決の場合には、その実質において客観的、合理的根拠を欠くとして、通則法23条2項1号の趣旨からはずれ、後発的事由による更正の請求は認められないこととなる。
 本特集では、後発的事由該当性の基準とされる「専ら納税を免れる目的」「馴れ合いによって得たもの」に係る判断などを裁決事例で確認する。

通則法23条2項1号の判決に該当しないケースは
 相続税の基礎控除引下げなど相続税の課税が強化されるなか、生前贈与に関心が高まっている。しかし、贈与については、事後にトラブルが発生することもあるようだ。たとえば、贈与はしたものの、当初予定していた負担よりも贈与税負担が重くなり贈与契約の無効を求めるといったケースである。
 この場合、贈与を無効とする判決や和解がなされたとしても、それが、当事者が専ら納税を免れる目的で、馴れ合いによって判決を得たものであれば、その判決は国税通則法23条2項1号に規定する判決に該当せず、後発的事由に基づく更正の請求が認められないことになる。
 通則法23条2項1号の規定は、申告時に予知し得なかった事態やその他やむを得ない事由がその後において生じたことで、遡って税額の減額等をすべきこととなった場合、同条1項に規定する期間(法定申告期限から1年)を経過しているから更正の請求を認めないとすると、その責任のない納税者に酷な結果になることから、例外的に更正の請求を認めるというものとされる。

国税通則法23条2項1号(要旨)
 納税申告書を提出した者は、その申告・更正等に係る課税標準等・税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときは、その確定した日の翌日から起算して2月以内に更正の請求をすることができる。

 したがって、この趣旨からすれば、申告後に課税標準等、税額等の計算の基礎となる事実について判決がされても、その判決が、専ら納税を免れる目的で、馴れ合いによって得たものであるなど、実質において客観的、合理的根拠を欠くものであるときには、通則法23条1項規定の期間内に更正の請求をしなかったことについてやむを得ない事由があるとはいえないことになる。
 すなわち、その判決は、通則法23条2項1号にいう判決には当たらず、同項の規定による更正の請求は認められないわけだ(表1参照)。

請求の認諾の「判決」該当性が争われた事例
 実際に、孫(請求人)および祖母(贈与者)が、贈与税更正処分により、贈与契約の際に予定していたものより重い納税義務が生ずることが判明したことから、贈与の無効確認訴訟を提起して請求の認諾を得たが、この請求の認諾は、通則法23条2項1号に規定する「判決」に該当しないと判断された裁決事例がある(裁決事例集No.60・平成12年7月31日裁決)。
 まず確認したいのは、請求の認諾は、民事訴訟法第267条により、確定判決と同一の効力を有するとされており、請求の認諾によって課税標準等または税額等の計算の基礎となった事実に変更があった場合、原則として通則法23条2項1号の規定に基づき更正の請求をすることができるということである。
 しかし、審判所は上記の原則によらず、この事案の請求の認諾は、通則法23条2項1号の判決に該当しないと判断した。これは以下の解釈によるものだ。
(1)通則法23条2項の立法趣旨に照らせば、同項1号に規定する判決とは、当事者間に権利関係の争いがあり、その後、判決により申告等があった当時の権利関係と異なった事実関係が生じた場合の判決を指すと解され、請求の認諾についても同様に解するのが相当である。
(2)たとえ請求の認諾が記載された調書において訴訟当事者の課税標準等、税額等の計算の基礎となった事実が消滅する旨の記載がされていたとしても、それが訴訟当事者間で当初から予定されていたものであり、専ら租税負担を回避する目的で実体とは異なる内容のものである場合にまで、同号の規定に基づく更正の請求ができると解するのは相当ではない(下線:編集部)。
 なお、審判所は、この事案の請求の認諾について、実質的には、贈与の合意解除であるにもかかわらず、通則法23条2項1号の規定に基づく更正の請求を行って既に確定した贈与税額の減額更正を受けるために錯誤を理由とする訴訟を提起して請求の認諾により終了させたものと認めるのが相当としている。

あずかり知らぬ贈与、契約無効確認訴訟を提起
 前述の公表裁決事例では、通則法23条2項1号の判決に該当するには、専ら租税負担を回避する目的で、当初から予定されていた判決ではないこと、当事者間の権利関係に争いがあることが必要であるとされている。この解釈と通則法23条2項1号の判決との関係がクローズアップされた裁決事例が昨年にもあった(平成24年11月12日裁決)。
 事案は、孫(請求人)が祖父(贈与者)からの土地の贈与について、贈与契約の無効確認訴訟を提起し、贈与の無効を確認した裁判上の和解に基づき更正の請求を行ったが、税務当局側が更正をすべき理由はない旨の通知処分をしたというもの。祖父から孫への土地贈与から和解までの経緯は参照。
 孫である請求人が、平成21年2月に土地の贈与契約の無効確認等を求めた原因は、主に、①贈与契約を原因として、平成6年8月10日に祖父から請求人に対し所有権移転登記(本件移転登記)がされているが、本件贈与は請求人のあずかり知らぬところであって、無効である、②請求人は、身に覚えのない贈与の登記により、贈与税と固定資産税、都市計画税を課される不利益を受けているというものだ。
 平成23年2月には当事者間で、贈与が無効であること、移転登記の錯誤を原因とする抹消登記手続をすることなどで和解が成立したが、和解に至るまでには、相続人らのうちの1人(A)が、平成21年4月20日付の答弁書により請求棄却の判決を求めるとともに、請求人が不服申立てをしていないなどの主張を行い、請求人も平成21年8月7日付の準備書面により、反論している(表2参照)。

【表2】訴訟における相続人Aの主張および請求人の反論(要旨)



A
求人は、原処分庁の指摘に基づき贈与税の期限後申告を行い、贈与税不納付を理由に土地の差押えを受けているが、督促、加算税賦課の各処分の都度、「受贈していない」ことを理由に不服申立てを行う機会を有していたはずであるが、このような不服申立てをした形跡はない。所有権移転登記から訴訟提起まで14年半が経過しているところ、毎年固定資産税等の納付書が送付されて、課税対象物権が記載されているにも関わらず、訴訟提起まで何らの行動も起こさなかったことからすると、請求人は贈与時点で受贈する意思を有しており、それ以降、各土地を自己の所有物と認識していたのは明らかである。



父は、かなりの財産を失ってきたことから、X(請求人の父)が祖父を謀り、祖父の財産として残っていた先祖伝来の農地の分散を防ごうとして、本件贈与を行うとともに、Xも祖父から農地の贈与を受けた。請求人は、X宅にはほとんど帰らず、折り合いも悪かったこともありXとはほとんど話をする機会がなかった。このような状況下で、請求人には、最近になって税務署からの書類を見つけてXに問いただすまで、本件贈与がされたこと、贈与税不納付を理由とする差押え等がされたこと、固定資産税等の納付通知がされたことを知らずに過ごしてきたので、不服申立て等をする余地もなかった。

贈与税、固定資産税等の負担が訴訟提起の動機でも……
 争点は、上記の裁判上の和解が、通則法23条2項1号かっこ書に規定する和解に該当するか否かであるが、この事案には、当事者間の権利関係の争いおよび租税負担の回避という双方の要素が含まれている。
 しかし、課税当局側は、和解が税負担を免れる目的であったと強調した。具体的には、請求人が平成21年になってから贈与の無効を求める趣旨は、贈与税、固定資産税および都市計画税の負担軽減を目的としたと言わざるを得ず、この目的のために贈与を無効とすることが、請求人および相続人らにとって何ら不都合な点はないとの考えから、和解を成立させたものと解するのが自然であるというものだ。
 これに対して審判所は、訴訟における請求人の主張からは、贈与に係る贈与税および各土地に係る固定資産税等の負担が、請求人が訴訟を提起するに至った動機となっている様子がうかがえるとしたながらも、訴訟における当事者の主張や訴訟の経過を重視した。
 すなわち①贈与があずかり知らないところで行われた無効なものであるという請求人の主張は根拠を欠くとは認め難い、②当事者に争いがあるなか受訴裁判所主導による和解が勧試され、双方の訴訟代理人を交えた交渉と説得が重ねられて訴訟提起から約2年後に和解の成立に至ったものとの認定から、本件和解は、実質において客観的、合理的根拠を欠くということはできず、通則法23条2項1号かっこ書に規定する和解に該当するとしている。
 審判所が、課税当局側の主張を退け、訴訟提起の動機が納税負担であっても、和解に至る経緯を踏まえて、客観的、合理的根拠を認めている点は注目される。

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