カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2013年05月13日 【ニュース特集】 消費税経過措置の取扱いQ&Aのポイント(前編)(2013年5月13日号・№498)

施行日をまたぐ取引、経過措置なくても旧税率のケースが
消費税経過措置の取扱いQ&Aのポイント(前編)

 消費税率の引上げが迫るなか、国税庁は4月25日、「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」を公表した(25頁参照)。3月27日に公表された経過措置通達(本誌494号参照)をベースとしたものだが、これに含まれない内容も多く収載されている。たとえば、メンテナンス契約など、施行日をまたぐ取引や5%引上げ時にはなかったICカード、インターネット通信料金などの新たな取引に関する取扱いである。
 今回は、「施行日前後の取引に係る税率の適用関係等」「旅客運賃等の税率等に関する経過措置」「電気料金等の税率等に関する経過措置」「工事の請負等の税率に関する経過措置」の項目を中心に経過措置Q&Aのポイントを紹介する。

経過措置に該当する取引以外は施行日で判断
 平成24年8月22日に公布された改正消費税法は、原則として平成26年4月1日から施行され、消費税率が8%となる(平成27年10月1日から10%)。別段の定めがあるものを除き、平成26年4月1日(施行日)以後の資産の譲渡等に係る消費税について適用される。一方、施行日前に係る消費税については従前の例によることとされている(改正消法附則2)。つまり、平成26年3月31日までに資産の譲渡等を行った場合には旧税率である5%、4月1日以降は新税率の8%が適用されることになる。これが大原則となる。
 ただし、改正消費税法では、旅客運賃等、電気料金等、工事の請負等、資産の貸付け、役務の提供などについては、別段の定めとして経過措置が設けられている。これらの経過措置の取引に該当するものであれば施行日以降であっても旧税率が適用できるが、これらの経過措置の取引に該当しないものであれば、原則にそって施行日で新旧どちらの税率になるか判断することになる。
企業の通常の経理処理を容認  とはいえ、多くの取引で疑問が生じるのが施行日前後の取引に係る税率の適用関係である。たとえば、1年間のコピー機械等のメンテナンス契約を平成26年3月1日に締結した場合の取扱いだ。
 施行日をまたぐ取引となるが、メンテナンス契約は経過措置の対象となる取引には該当しない。メンテナンス契約は、物の引渡しを要しないものであるため、資産の譲渡等の時期は役務の全部を完了する平成27年2月28日となる。このため、消費税率は8%の新税率が適用されることになる。
 ただし、国税庁では契約や慣行により、1年分の対価を一括して受け取り、企業が継続してその対価を収受した際(施行日の前日である平成26年3月31日まで)に収益計上したものについては旧税率(5%)を適用しても差し支えないとの取扱いを示している(経過措置Q&A問4参照)。普段、企業が行っている経理処理を容認したものといえる。
 なお、これらの取扱いはメンテナンス契約だけに限らない。たとえば、自動車学校の合宿免許を3月20日から4月10日で取るケース。この場合、施行日をまたがるが、教習代を一括して受け取り3月中に収益計上している場合であれば(企業側の通常の処理として教習代を受け取った時点で収益計上している場合)、旧税率を適用することができる。
決算日が3月20日のケースは?  決算締切日が3月20日であるケースの取扱いも明らかにされている。法人税基本通達2-6-1(決算締切日)では、法人が商慣習などにより、各事業年度に係る収入および支出の計算の基礎となる決算締切日を継続してその事業年度終了の日以前おおむね10日以内の一定の日としている場合にはこれを認めているが、この場合の平成26年3月21日から3月31日までの取扱いである。
 この点、同通達を適用している場合であっても、施行日前に行われた資産の譲渡等および課税仕入れ等については旧税率が適用され、施行日以後については経過措置が適用される場合を除き新税率が適用されることになる。つまり、平成26年3月21日から3月31日までの間については旧税率が適用されることになる(経過措置Q&A問3参照)。
 ただし、国税庁では、継続的に売上げおよび仕入れの締切日を一致させる処理をしている場合には、平成26年3月21日から3月31日までの間の売上げおよび仕入れについては、平成26年4月分の売上げおよび仕入れとして、消費税の申告をして差し支えない旨の取扱いも認めている。
販売時期が不明の商品の返品は?  取引先に対して同一規格の商品を継続的に販売している場合において、商品が返品された場合の取扱いもポイントの1つだ。平成26年4月以降に返品を受ける場合、これが3月中に販売したものであるのか、あるいは4月に販売したものか判別しにくいからだ。
 この点については、平成26年4月中の商品の返品は3月中に販売したものと処理している場合など、事業者の間で合理的な判定基準をもとに返品の処理を行っていれば、これを認め、旧税率に基づき売上げに係る対価の返還等に係る消費税額の計算を行うことができる(経過措置Q&A問5、図1参照)。


スイカなどのICカードは経過措置の適用があるか?
 旅客運賃等に関する経過措置については、旅客運賃、映画または演劇を催す場所への入場料金を平成26年4月1日(施行日)前に領収している場合で、その対価の領収に係る課税資産の譲渡等が施行日以後に行われるものが対象となる。
 具体的には、①施行日以後の特定の日に指定されている乗車券、入場券または利用券等を施行日前に販売した場合、②乗車等の日が施行日以後の一定の期間または施行日前から施行日以後にわたる一定の期間の任意の日とされている乗車券等を施行日前に販売した場合(回数券等)、③定期乗車券等を施行日前に販売した場合、④スポーツ等を催す競技場等における年間予約席等が該当する。
チケットレスサービスは経過措置の適用あり  このうち、乗車券等についていえば、鉄道会社において携帯電話やパソコンで乗車券を購入し、乗車する際は列車・座席情報等を画面に表示等することで電車等に乗ることができるいわゆるチケットレスサービスがある。
 この場合については、乗車券等の発行の有無が適用要件とはなっていないため、旅客運賃等を施行日前に領収している場合には経過措置が適用できることになる(経過措置Q&A問8参照)。
 なお、スイカなどのICカードに施行日前に現金をチャージ(入金)したとしても、乗車券等を購入した時点が施行日以後であれば経過措置の適用はない。乗車券等を施行日前に販売した場合が経過措置の対象となるため、ICカードに現金をチャージした時点では乗車券等の販売を行ったことにはならないからである(経過措置Q&A問9、図2参照)。


ディナークルーズは経過措置の適用なし  そのほか、経過措置Q&Aの問10では、ディナーショーの料金の取扱いについても明らかにしている。ディナーショーの料金については、「映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ又は見せ物を不特定かつ多数の者に見せ、又は聴かせる場所への入場料金」に該当(改正消令附則4①)するため、経過措置の適用があるとしている。
 ただし、船で遊覧航行しながら飲食を提供するディナークルーズに関しては、当該サービスは飲食の提供を主目的とするものであるため、船舶の乗船が含まれているとしても、船舶に係る旅客運賃には該当せず、経過措置の適用はないとしている。
 消費税引上げの4月はお花見のシーズンとなるが、その時期に活躍する屋形船についても同様に経過措置の対象とはならない。

インターネット料金は料金体系に注意
 電気料金等に関する経過措置については、平成26年4月1日(施行日)前から継続的に供給または提供される電気、ガス、水道および電気通信役務の料金で、施行日から平成26年4月30日までの間に料金の支払いを受ける権利が確定するもの(4月30日後に確定するものは同日までの相当額)のその確定した料金が対象になる。具体的な対象範囲としては、①電気の供給、②ガスの供給、③水道水または工業用水の供給および下水道を使用させる行為、④電気通信役務の提供、⑤熱供給および温泉の供給とされている(改正消令附則4②)。
 このうち、④の電気通信役務については携帯電話の料金も基本的に該当することになる。基本料、付加機能使用料、通話料等を一括して利用者に請求する携帯電話の料金は一定期間の通話料に応じて支払いを受ける権利が確定するものだからである(経過措置Q&A問14参照)。
 しかし、インターネットの通信料金など、月々の使用量に関係なく定額料金となっている場合は経過措置の適用はない。経過措置の対象となる電気通信役務は、事業者が継続的に提供することを約する契約に基づき、施行日前から継続して提供し、かつ、施行日から平成26年4月30日までの間に、検針その他これに類する行為に基づきその役務の提供に係る料金の支払を受ける権利が確定するものだからだ。決まった一定額を支払うものである場合は、検針等により料金の支払いを受ける権利が確定するものではないからである。
 なお、多段階定額制については、使用量に応じて料金の支払いを受ける権利が確定するため、経過措置の適用はあるとの取扱いを明らかにしている(経過措置Q&A問15参照)。

対象範囲が広い工事の請負等の契約だが……
 工事の請負等に関する経過措置については、平成8年10月1日から指定日である平成25年10月1日の前日までの間に締結した工事または製造の請負に係る契約に基づいて、平成26年4月1日(施行日)以後にその契約に係る課税資産の譲渡等を行う場合(指定日以後にその契約に係る対価の額が増額された場合には、その増額される前の対価の額に相当する部分に限る)が対象となる。この場合、経過措置の適用を受けたものであることを書面で通知することが必要となる(本誌497号参照)。
 なお、契約書その他の書類を作成しているかどうかは、経過措置の適用を受ける要件とはなっていない。しかし、指定日前に締結した契約であるかどうかはその工事の請負等に係る契約書その他の書類で判断されることになるため、経過措置の適用を受けるには、何らかの書類が必要となる(経過措置Q&A問19参照)。
工事の着手が遅れた場合は?  工事の請負等に関しては、今回の経過措置Q&Aで明らかにされたポイントがいくつかある。たとえば、受注した工事への着手が遅れてしまった場合だ。仮に着手が平成26年4月1日以後と遅れてしまった場合であっても、指定日の前日までに契約を行っていれば経過措置の適用がある(経過措置Q&A問20参照)。その契約に係る対価を収受しているかどうかも経過措置の適用については関係がない。また、下請工事であっても経過措置の適用はある。契約の締結時期や工事内容について、個々の取引により判断することになる(経過措置Q&A問21参照)。
 機械設備等の販売に伴う据付工事については、契約においてその据付工事に係る対価の額が合理的に区分されているときは、機械設備等の本体の販売契約とその据付工事に関する契約とに区分していれば、経過措置の対象となる。また、契約書の名称が「機械販売契約書」等となっていても、その契約内容が機械設備の製造を請け負うものであり、当該製造請負の対価が据付工事にかかる対価を含んだところで契約されている場合については、その全体について経過措置の対象になる旨が明らかとなっている(経過措置Q&A問23参照)。
工事の請負に係る契約の対象範囲  工事の請負に係る契約については、これに類する契約も経過措置の対象となる。具体的には、測量、地質調査、工事の施工に関する調査、企画、立案および監理ならびに設計、映画の制作、ソフトウエアの開発その他の請負に係る契約(委任その他の請負に類する契約を含む)とされている(改正消令附則4⑤)。
 この「その他の請負に係る契約」とは、たとえば、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、技術援助、情報の提供に係る契約が該当する(経過措置Q&A問24参照)。また、「委任その他の請負に類する契約」としては、たとえば、検査、検定等の事務処理の委託、市場調査その他の調査に係る契約が該当することになる。
工事の期間は関係なし  加えて、経過措置の対象となるには、(1)仕事の完成に長期間を要し、(2)当該仕事の目的物の引渡しが一括して行われることとされているものであり、(3)当該契約に係る仕事の内容につき相手方の注文が付されているものとの要件を満たす必要がある。
 この(1)の「仕事の完成に長期間を要するもの」の長期間については、特に期間は定められておらず、その長短は問われていない(経過措置Q&A問25参照)。したがって、指定日前に契約していることなどの要件を満たせばよいことになる。
 (2)の「仕事の目的物の引渡しが一括して行われていること」については、注意したい点がある。たとえば、請負契約であるからといっても、月極めの警備保障やメンテナンス契約のように期間が決められた契約の場合は、役務の全部の完了が一括して行われるわけではないため、要件を満たさず経過措置の対象にはならない(経過措置Q&A問26参照)。
 ただし、繰り返しにはなるが、前述したとおり、契約または慣行により、1年分の対価を一括して受け取り、企業が継続してその対価を収受した際(施行日の前日である平成26年3月31日まで)に収益計上したものについては旧税率(5%)を適用しても差し支えないとの取扱いは容認されている(経過措置Q&A問4参照)。
家具や広告宣伝用資産等の製作が該当  (3)の「仕事の内容につき相手方の注文が付されていること」については、たとえば、①請負等の契約に係る目的物の仕様または規格等について相手方の指示が付されている場合のその契約、②請負等の契約に係る目的物の原材料を相手方が支給することとされている場合のその契約、③修理または加工等を目的とする請負等の契約が該当する旨が明らかにされている(経過措置Q&A問27参照)。
 ①についていえば、船舶、車両、機械、家具等の製作、広告宣伝用資産の製作等が該当。また、③では、建物、機械の修繕、塗装、物品の加工等が該当する。
 そのほか、経過措置Q&Aの問27では、「名入アルバム、名入タオル、名入引出物の製作」「カップ、トロフィーの名入」「絵画、工芸品等の修復」「肖像画、胸像等の製作」「パック旅行の引受け」「結婚式、披露宴の引受け」「インテリアの製作(カーテン、敷物の取付工事を含む)」「どん帳の製作」「服、ワイシャツ等の仕立て」「宝飾品の加工」が経過措置の対象となる具体例として挙げられている。しかし、対象となるのは、指定日前に契約し、施行日以後に課税資産の譲渡等が行われる場合であるため、実際に適用できる取引はそれほど多くないと想定される。

同じマンションのモデルルームでも異なる経過措置の取扱い
 工事の請負等に関する経過措置でポイントとなるのはマンション販売だ。消費税率が引き上げられることもあり経過措置に該当するか否かは大きな違いとなる。
 対象となるのは、「建物の譲渡に係る契約で、当該建物の内装若しくは外装又は設備の設置若しくは構造についての当該建物の譲渡を受ける者の注文に応じて建築される建物に係るもの」とされており、国税庁が3月27日に公表した経過措置通達では、注文者が壁の色またはドアの形状等について特別の注文を付すことができることとなっているものも含まれることが明らかにされている(参照)。

 この注文だが、たとえば、完成前のマンションを購入する場合、内装等で何らかの注文を付すことができるものであれば、仮にモデルルーム仕様(標準仕様)であっても経過措置の対象となる。購入者がモデルルーム仕様という注文を付したと解すことができるからだ(経過措置Q&A問31参照)。
 逆に同じモデルルーム仕様であっても購入者が全く注文を付すことができないマンションの場合は指定日前に契約しても経過措置の適用はない。ただし、契約後に内装等の注文ができれば、指定日前までに契約を変更すれば経過措置の対象となる。
 また、これは既に建設されている一戸建ての建売住宅についても同様だ。仮に顧客の注文を受け、内外装等の模様替えをしたうえで譲渡する契約を指定日前までに締結した場合(新築であることが必要)には、経過措置の適用がある(経過措置Q&A問30参照)。
請負金額に増減があった場合は?  当初の工事の請負金額が指定日後に変更された場合については、その増減額が当初の契約の請負金額内であれば経過措置の対象となる。逆にいえば、増額部分は経過措置の対象とはならない。たとえば、当初、100万円の請負金額が最終的に120万円になった場合は、20万円部分が経過措置の対象とはならないことになる(経過措置Q&A問32参照)。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索