カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2013年05月13日 【解説】 経済団体連絡会「一般社団・財団法人法施行規則による一般社団法人の各種書類のひな型」について(下)(2013年5月13日号・№498)

経済団体連絡会「一般社団・財団法人法施行規則による一般社団法人の各種書類のひな型」について(下)
 西村あさひ法律事務所 弁護士 山本憲光
 弁護士 大野憲太郎
 有限責任あずさ監査法人 公認会計士 佐久間清光

Ⅵ.社員総会参考書類

 社員総会参考書類とは、社員が議決権を行使するために参考となるべき事項を記載した書面であり、一般社団法人が社員総会において書面投票や電子投票を採用した場合、社員総会の招集通知とともに交付することが求められる(法人法第41条第1項、第42条第1項)。
 社員総会参考書類の一般的な記載事項としては、①議案、②理事が提出する議案については提案の理由、③社員提案に際して、社員より提案理由が提出されているときは、その理由又は概要、及び④監事が、提出議案その他が法令・定款違反、又は著しく不当であると認める場合、その調査の結果の概要とされており(法人法施行規則第5条第1項)、⑤その他社員の議決権の行使について参考となると認める事項も記載することができるとされている(同条第2項)。
 法人法上の社員総会参考書類については、会社法上の株主総会参考書類と比べ、法定された記載事項が少なく、記載の範囲及び内容については大幅に各法人の裁量に委ねられている。そのため、各法人は、会社法上の株主総会参考書類の記載事項も参考にしながら、各法人の実情に応じて、議決権の行使に際し、社員に提供すべき情報として何が必要かという観点から、参考書類の記載内容を工夫することになる。
 以下では、代表的な議案について、本ひな型の記載例を紹介する。

1.理事選任議案  社員総会で代表理事及び業務を執行する理事の選任をする場合は、表7の記載例の左から2列目のように「理事・代表理事・業務を執行する理事の別等」を記載する。この欄に「会長」「副会長」「理事長」等の定款上の名称を併せて記載してもよい。社員総会では代表理事及び業務を執行する理事を選任せず、社員総会後に理事会で選任する場合には、本記載例の左から2列目の欄は不要である。

 公開会社における株主総会参考書類においては、会社提案に係る取締役選任議案につき、①候補者の氏名、生年月日及び略歴、②就任の承諾を得ていないときはその旨、③候補者の有する当該株式会社の株式の数、④候補者が当該株式会社の取締役に就任した場合において重要な兼職があることとなるときはその事実、⑤候補者が株式会社との間に特別な利害関係があるときはその事実の概要、⑥候補者が現に当該株式会社の取締役であるときは当該株式会社における地位及び担当を記載することが求められているが(会社法施行規則第74条第1項、第2項)、法人法においてはそのような具体的な記載義務のある項目はない。地位・重要な兼職の状況等欄には、公開会社における記載項目を参考に、社員が理事候補者の適格性を判断するために有用な情報があれば、それを記載する。
 株主総会参考書類においては、取締役候補者が社外取締役候補者である場合には、①社外取締役候補者である旨、②社外取締役候補者とした理由、③候補者と会社との間で責任限定の契約を締結し又は締結する予定がある場合はその契約の概要等を記載することが求められているが(会社法施行規則第74条第4項。なお、公開会社かそれ以外かにより記載すべき事項が異なる)、法人法においては外部理事(法人法第113条第1項第2号ロ)についてそのような具体的な記載義務のある項目はなく、記載する必要はない。もっとも一般社団法人においても、理事候補者が外部理事の候補者であり、責任限定契約を締結する場合には、表8のように注記することが考えられる。


2.監事選任議案  公開会社における株主総会参考書類においては、会社提案に係る監査役の選任に関する議案につき、取締役選任議案と同様に、①候補者の氏名、生年月日及び略歴、②株式会社との間に特別利害関係があるときは、その事実の概要、③就任の承諾を得ていないときはその旨、④議案が監査役又は監査役会の請求により提出されたものであるときはその旨、⑤議案につき監査役の意見があるときはその意見の内容の概要、⑥候補者の有する当該株式会社の株式の数、⑦候補者が当該株式会社の監査役に就任した場合において重要な兼職があることとなるときはその事実、⑧候補者が現に当該株式会社の監査役であるときは当該株式会社における地位を記載することが求められている(会社法施行規則第76条第1項、第2項)。法人法においてはそのような具体的な記載義務のある項目はない。なお、法人法第72条第2項に基づき、監事の選任に関する議案を監事の請求により提出することも可能であるが、上述のとおり、参考書類に記載義務のある項目はない。
 記載要領は理事候補者と概ね同様である(表9参照)。但し、監事の選任については、社員総会へ議案を提出するには、監事(監事が2人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない(法人法第72条第1項)。

 会社法においては監査役の選任について、監査役の意見がある(会社法第345条第4項で準用する同条第1項)場合には、株主総会参考書類にその概要を記載することが求められる(会社法施行規則第76条第1項第5号)。法人法においては、監事の選任についての監事の意見(法人法第74条第1項)を社員総会参考書類に記載することは求められていない。

3.役員報酬改定議案  会社法上、公開会社における株主総会参考書類においては、①議案が2以上の役員についての定めであるときは当該定めに係る役員の員数、②監査役の報酬等についての監査役の意見があるときは、その意見の内容の概要、③社外取締役と取締役を区別する記載を記載することが求められているが(会社法施行規則第82条乃至第84条)、法人法においてはそのような具体的な記載義務のある項目はなく、記載する必要はないが、総額とした場合の員数や、法人法第105条第3項の規定による監事の報酬等についての監事の意見の概要を記載することも考えられる。
 理事及び監事の報酬等は、定款にその額を定めていないときは社員総会の決議によってその額を定める必要がある(法人法第89条、第105条第1項)(表10参照)。これは、理事の報酬についてはお手盛り防止の趣旨に、監事の報酬については監事の理事からの独立性を確保する趣旨に基づくものとされる(脚注11)。なお、理事及び監事それぞれの報酬等の総額を定めることでも足りる(FAQⅤ-6-①、法人法第105条第2項)。

 この点、社員総会において個別の役員報酬額を定めず、その総額のみを定めた場合、個別の理事の報酬については、社員総会決議で定められた報酬額の範囲内で、理事会決議又は理事の協議によって決せられることになる(脚注12)。一方、個別の監事の報酬については、社員総会決議で定められた報酬額の範囲内で、監事の協議によって決せられることになる(法人法第105条第2項)。なお、監事の独立性の確保の観点から、理事又は理事会が個別の監事の報酬額の決定を行うことはできないとされている(FAQⅤ-6-⑤参照)。

Ⅶ.招集通知
 社員総会の招集通知とは、社員総会を招集するために発せられる通知であり(法人法第39条第1項参照)(表11参照)、社員に対して社員総会開催について周知を図り、社員総会への出席及び議決権行使に関する意思決定の準備の機会を保障するために定められている制度である。

 理事会設置一般社団法人においては、招集通知は書面で行わなければならない(法人法第39条第2項第2号)。一方、理事会を設置していない一般社団法人においては、書面投票や電子投票を採用した場合は書面で通知しなければならないが(同項第1号)、書面投票も電子投票も採用しなかった場合は書面で通知する必要はない。但し、招集通知を書面で行わなければならない場合であっても、書面又は電磁的方法による社員の承諾を得たときは、電子メール等の電磁的方法で通知することも可能である(法人法第39条第3項)。

Ⅷ.議決権行使書面
 議決権行使書面とは、書面による議決権行使(書面投票)を採用した場合に、当該社員が議決権を行使するために用いる書面である。議決権行使書面は、社員総会の招集通知に際して社員に送付され(法人法第41条第1項)、その記載事項は法人法施行規則第5条に規定されている(表12参照)。


1.2以上の役員等の選任議案を提出する場合の記載事項  役員等の選任・解任、会計監査人の不再任議案において、会社法では、その候補者が2名以上であるときは、各候補者について賛否の意思表示を記載できるようにすることが求められる(会社法施行規則第66条第1項第1号)。法人法に同様の定めはないが、2以上の役員等の選任議案については、候補者ごとに1議案を構成すると考えるべきであり、会社法施行規則第66条第1項第1号イ乃至ハは、それを明確にするために確認的に規定したものと考えられるので、一般社団法人も同様に取り扱うべきであると考えられる。例えば、表13のように空欄を設け、そこに選任を否とする候補者の氏名又は社員総会参考書類に付した番号を記載できるようにする。


2.複数回の議決権行使があった場合の整理  複数回の議決権行使がなされた場合、後にされた議決権行使により、先になされた議決権行使が撤回されたものと扱うのが原則である(脚注13)。しかしながら、議決権行使書面による議決権行使と電磁的方法による議決権行使が併用された場合など、その先後を判別することは必ずしも容易ではない。
 この点、株式会社においては、複数回の議決権行使がなされ、同一の議案に対する議決権の行使の内容が異なる場合における当該株主の議決権の行使の取扱いに関する事項を、株主総会の招集の際に定め(会社法第298条第1項第5号、会社法施行規則第63条第3号ヘ、第63条第4号ロ)、議決権行使書面にその取扱いの内容を記載する旨定められている(会社法施行規則第66条第1項第3号)。法人法施行規則には、このような規定はないが、一般社団法人においても、同一の議案に対する議決権の行使の内容が異なる場合における当該社員の議決権の行使の取扱いに関する事項について、社員総会の招集の際に定め、その取扱いの内容を議決権行使書面に記載することが考えられる(表14参照)。

 「3」については、表15の記載例も考えられる。


Ⅸ.監査報告
 監事は、理事の職務の執行を監査し、監査報告を作成しなければならない(法人法第99条第1項)。法人法下では、理事会の有無、会計監査人の有無により監査の方法及びその内容が異なるため、監査報告の内容は機関設計に応じたものにする必要がある(表16・17参照)。


 事業報告及びその附属明細書に関する監査報告と、計算書類及びその附属明細書に関する監査報告について、一体的に作成するか否かは法令上定められていない。全てを一体的に作成することも、区分して作成することもいずれも可能である。
 移行法人は、事業年度ごとに公益目的支出計画実施報告書を作成する必要がある(整備法第127条第1項)。この公益目的支出計画実施報告書についても、監査を受け、理事会の承認を受けた後、社員に提供する必要がある(整備法第127条第2項、法人法第124条第1項、第3項、第125条)。
 公益目的支出計画実施報告書に関する監査報告書は、当該事業年度の監査報告と別に作成してもよいが(「定期提出書類の手引き 移行法人編」平成25年3月28日(脚注14)、20頁)、本記載例では、2(5)で、当該事業年度の監査報告に公益目的支出計画実施報告書の監査結果を盛り込んでいる。

脚注
11 新公益法人制度研究会編『一問一答公益法人関連三法』(商事法務、2006年)68頁、76頁。
12 株式会社における取締役の報酬に関しては、取締役会が特定の取締役に報酬の配分の決定を一任することも妨げないと解されている(江頭憲治郎『株式会社法〔第4版〕』(有斐閣、2011年)423頁。そして、一般社団法人において、理事の報酬の決定を定款又は理事会の決議によって定めなければならないとされる趣旨は、株式会社と同様にお手盛りの防止であるから、一般社団法人における報酬の配分についても、特定の理事に報酬の配分の決定を一任することも妨げられないと考えられる。
13 株式会社について、江頭憲治郎『株式会社法〔第4版〕』(有斐閣、2011年)329頁参照。
14 国(内閣府)及び都道府県公式の総合情報サイトである「公益法人information」《https://www.koeki-info.go.jp/》に掲載。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索