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解説記事2013年07月01日 【税制改正解説】 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律の解説(下)(2013年7月1日号・№505)

税制改正解説
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律の解説(下)
 根本浩之

Ⅲ 消費税法の改正に係る経過措置関係(抜本改革法附則第2条から第16条関係)

1 平成26年4月1日の消費税率引上げに伴う経過措置
(1)経過措置の原則
 抜本改革法第2条による改正後の消費税法(以下「新消費税法」という。)は、施行日(平成26年4月1日)以後の資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税について適用し、施行日前の資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取った課税貨物については、従前の例によることとされている(抜本改革法附則2)。したがって、施行日の前日までに締結した契約に基づき行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等であっても、これらが施行日以後に行われる場合には、原則として、新消費税法が適用されることになる(消改通2)。
 また、施行日の前日までに他から仕入れた資産を施行日以後に販売する場合には、別段の定めがあるものを除き、資産の譲渡等については新消費税法が、当該資産の課税仕入れについては改正前の消費税法が適用されることになる(消改通3)。
 なお、こうした原則を厳格に適用することが明らかに困難と認められる取引については、以下に掲げる経過措置を設け、4%(地方消費税を含めた税率は5%)の旧税率を適用することとされている。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問1(施行日前後の取引に係る消費税法の適用関係の原則)、問2(施行日の前日までに購入した在庫品)、問3(決算締切日の取扱い)、問4(施行日を含む1年間の役務提供を行う場合)及び問5(施行日前後の返品等の取扱い)を参照されたい。
(2)旅客運賃等に関する経過措置  旅客運賃、映画又は演劇を催す場所への入場料金等を施行日前に領収している場合において、当該対価の領収に係る課税資産の譲渡等が施行日以後に行われるときは、当該課税資産の譲渡等については、旧税率(4%)が適用される(抜本改革法附則5①)。
 この経過措置の適用対象となる旅客運賃等の範囲は、次のとおり(改正消令附則4①)。
① 汽車、電車、乗合自動車、船舶又は航空機に係る旅客運賃(料金を含む。)
② 映画、演劇、演芸、音楽、スポーツ又は見せ物を不特定かつ多数の者に見せ、又は聴かせる場所への入場料金
③ 競馬場、競輪場、小型自動車競走場又はモーターボート競走場への入場料金
④ 美術館、遊園地、動物園、博覧会の会場その他不特定かつ多数の者が入場する施設又は場所でこれらに類するものへの入場料金
 なお、具体的には、おおむね次のような場合が該当する(消改通4)。
① 乗車、入場又は利用(以下「乗車等」という。)をすることができる日が施行日以後の特定の日に指定されている乗車券、入場券又は利用券等(以下「乗車券等」という。)を施行日前に販売した場合
② 乗車等の日が施行日以後の一定の期間又は施行日前から施行日以後にわたる一定の期間の任意の日とされている乗車券等を施行日前に販売した場合
③ 施行日の前後を通じて又は施行日以後の一定期間継続して乗車等することができる乗車券等(いわゆる定期乗車券等)を施行日前に販売した場合
④ スポーツ等を催す競技場等における年間予約席等について、施行日以後の一定期間継続して独占的に利用させるため、あらかじめ当該一定期間分の入場料金を一括して領収することを内容とする契約を施行日前に締結している場合
 具体的な事例については、経過措置Q&A問6(旅客運賃等の税率等に関する経過措置の概要)、問7(施行日前に「領収している場合」の意義)、問8(乗車券等が発行されない場合)、問9(ICカードのチャージによる乗車等)及び問10(ディナーショーの料金)を参照されたい。
(3)電気料金等に関する経過措置  継続的に供給等することを約する契約に基づき、施行日前から継続して供給又は提供している電気、ガス、水道水及び電話等の料金で、施行日から平成26年4月30日までの間に料金の支払を受ける権利が確定するものの当該確定した料金に係る課税資産の譲渡等については、旧税率(4%)が適用される(抜本改革法附則5②)。
 ① 対象となる取引の範囲  この経過措置の対象となる取引は、以下のとおり(改正消令附則4②)。
イ 電気の供給
ロ ガスの供給
ハ 水道水又は工業用水の供給及び下水道を使用させる行為
ニ 電気通信役務(電気通信事業法第2条第3号に規定する電気通信役務をいう。)の提供
ホ 熱供給(熱供給事業法第2条第1項に規定する熱供給をいう。)及び温泉の供給
 ② 継続的に供給等することを約する契約の意義  「継続的に供給し、又は提供することを約する契約」とは、この経過措置の対象となる取引を不特定多数の者に対して継続して行うために定められた供給規定、提供約款等に基づく条件により、長期間にわたって継続して供給し、又は提供することを約する契約をいい、プロパンガスの供給契約でボンベに取り付けられた内容量メーターにより使用量を把握し料金が確定されるものも含まれる(消改通5)。
 ③ 支払を受ける権利の確定の意義  「料金の支払を受ける権利が確定するもの」とは、電気・ガス等の使用量を計量するために設けられた電力量計その他の計量器を定期的に検針その他これに類する行為により確認する方法等により、一定期間における使用量を把握し、これに基づき料金が確定するものをいう(消改通6)。
 なお、施行日以後初めて料金の支払を受ける権利が確定する日(以下「施行日以後確定日」という。)が平成26年4月30日より後である場合には、確定した料金を前回確定日(施行日以後確定日の直前の確定日をいう。)から施行日以後確定日までの期間の月数で除し、前回確定日から当該4月30日までの期間の月数を乗じて計算した金額に係る部分について旧税率(4%)が適用される(改正消令附則4③、④)。
 ④ 電気通信役務の範囲  この経過措置の対象となるのは、施行日前から継続して提供し、かつ、施行日から平成26年4月30日までの間に、検針その他これに類する行為に基づきその役務の提供に係る料金の支払を受ける権利が確定するものをいうことから、電気通信役務であっても、その役務の提供に係る料金が一定期間の使用量に応じて変動しないものは、対象にならないことに留意する必要がある(消改通7)。
 なお、電気通信役務とは、電気通信事業法第2条第3号に規定する電気通信役務をいい、例えば、電話、インターネット接続に係る役務の提供などがこれに該当する。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問11(電気料金等の税率等に関する経過措置の概要)、問12(「継続的に供給等することを約する契約」の意義)、問13(「支払を受ける権利の確定」の意義)、問14(携帯電話の料金)、問15(定額通信料金)及び問16(平成26年4月30日後に初めて料金の支払を受ける権利が確定する場合)を参照されたい。
(4)請負工事等に関する経過措置  平成8年10月1日から平成25年10月1日(以下「指定日」という。)の前日までの間に締結した工事(製造を含む。)の請負契約に基づき、施行日以後にその契約に係る課税資産の譲渡等を行う場合には、その課税資産の譲渡等(指定日以後に契約に係る対価の額が増額された場合には、増額される前の対価に相当する部分に限られる。)については、旧税率(4%)が適用される(抜本改革法附則5③)。
 なお、この経過措置の適用を受ける工事等については、取引の相手方に対し、経過措置の適用を受けたものである旨を書面により通知する必要があるが(抜本改革法附則5⑧)、この通知は、請求書等にその旨を表示することとして差し支えないとされている(消改通22)。
 ① 工事の請負に係る契約等の範囲  この経過措置の対象となる「工事の請負に係る契約」とは、日本標準産業分類(総務省)の大分類に掲げる建設業に係る工事につき、その工事の完成を約し、かつ、それに対する対価を支払うことを約する契約をいい(消改通10)、また、「製造の請負に係る契約」とは、日本標準産業分類(総務省)の大分類に掲げる製造業に係る製造につき、その製造に係る目的物の完成を約し、かつ、それに対する対価を支払うことを約する契約をいう(消改通11)。
 なお、これらの契約には、測量、地質調査、工事の施工に関する調査、企画、立案及び監理並びに設計、映画の製作、ソフトウエアの開発その他の請負に係る契約(委任その他の請負に類する契約を含みます。)で、仕事の完成に長期間を要し、かつ、当該仕事の目的物の引渡しが一括して行われることとされているもののうち、その内容につき相手方の注文が付されているものも含まれる(改正消令附則4⑤)。
 また、建物の譲渡に係る契約で、その建物の内装若しくは外装又は設備の設置若しくは構造についてのその建物の譲渡を受ける者の注文に応じて建築される建物に係るものを含むとされているが(改正消令附則4⑤)、これには、譲渡契約に係る建物について、注文者が壁の色又はドアの形状等について特別の注文を付すことができることとなっているものも含まれる(消改通13)。
 ② 変更契約の取扱い  この経過措置は、指定日前に締結された工事の請負に係る契約に基づき行われる課税資産の譲渡等について適用されますが、指定日の前日までに既存の契約を変更した場合における変更後の契約も含まれる(消改通8)。
 ③ 機械設備等の販売に伴う据付工事  事業者が機械設備等の販売に伴いその据付工事を行う場合で、機械設備等の販売に係る契約において、据付工事の対価の額を合理的に区分しているときは、その据付工事については、工事の請負に係る契約に基づく工事に該当するものとしてこの経過措置の対象となる(消改通12)。
 ④ 工事の対価等に増額があった場合  請負工事等に係る対価が指定日以後に増額された場合には、その増額された対価の部分についてこの経過措置の適用はないが、その増額された対価の部分については、その増額が、工事(製造を含む。)に係る目的物の引渡し以前に確定をした場合にはその引渡しの日、引渡し後に確定した場合にはその確定をした日を含む課税期間における消費税の課税標準に算入される(消改通14)。
 また、工事(製造を含む。)の請負契約において、その契約に係る役務の提供の性質上、その契約に係る目的物の対価の額をあらかじめ定めることができないものについて、あらかじめ定めた単価の額(一の役務の提供を単位とする対価をいう。)にその目的物に係る役務の提供量を乗じた金額を当該目的物に係る対価の額とすることを定めている場合に、その単価の額に増額があったときは、その増額された部分の金額にその目的物に係る役務の提供量を乗じて計算した金額について、この取扱いを適用することになる。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問17(工事の請負等の税率等に関する経過措置の概要)、問18(工事の請負等に係る契約の範囲)、問19(契約書等のない工事)、問20(工事の請負の着手日)、問21(下請工事)、問22(地方公共団体の仮契約による契約日の判定)、問23(機械設備等の販売に伴う据付工事)、問24(「その他の請負に類する契約」の範囲)、問25(「仕事の完成に長期間を要するもの」の意義)、問26(目的物の引渡しを要しない請負等の契約に関する取扱い)、問27(「仕事の内容につき相手方の注文が付されていること」の範囲)、問28(「建物の譲渡を受ける者の注文」の範囲)、問29(建物の譲渡を受ける者の注文の有無の確認方法)、問30(建築後に注文を受けて譲渡する建物の取扱い)、問31(青田売りマンション)、問32(経過措置適用工事に係る請負金額に増減があった場合)、問33(経過措置の適用を受ける工事のための課税仕入れ)及び問34(経過措置の適用を受けているものであることの通知)を参照されたい。
(5)一定の資産の貸付けに関する経過措置  事業者が、平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30日)までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、施行日前から施行日以後引き続きその契約に係る資産の貸付けを行っている場合において、その契約の内容が、次のイ及びロ又はイ及びハに掲げる要件に該当するときは、施行日以後に行うその資産の貸付けについては、旧税率(4%)が適用される。
 ただし、指定日以後に貸付けの対価の額の変更が行われた場合には、施行日以後におけるその資産の貸付けについては、新税率(6.3%)が適用される(抜本改革法附則5④)。
イ その契約に係る資産の貸付期間及びその期間中の対価の額が定められていること。
ロ 事業者が事情の変更その他の理由により当該対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと。
ハ 契約期間中に当事者の一方又は双方がいつでも解約の申入れをすることができる旨の定めがなく、かつ、その契約期間中に支払われる貸付けの対価の額の合計額が、その貸付資産の取得費の額及び付随費用の額(利子又は保険料の額を含む。)の合計額の90%以上であるように当該契約において定められていること。
 なお、この経過措置の適用を受ける資産の貸付けについては、取引の相手方に対し、経過措置の適用を受けたものである旨を書面により通知する必要があるが(抜本改革法附則5⑧)、この通知は、請求書等にその旨を表示することとして差し支えないこととされている(消改通22)。
 ① 転貸の取扱い  平成20年4月1日以後に契約を締結したリース取引のうち、この経過措置の要件である上記イ及びハの要件を満たすものは、所得税法又は法人税法上、売買又は金銭の貸付けとして取り扱われる「リース取引」となるため、そもそもこの経過措置の規定が適用されることはない。
 しかし、平成20年4月1日前に契約を締結した「リース取引」については、上記イ及びハの要件を満たして資産の貸付けとして取り扱われる場合がある。その際、貸付けに係る資産が他の者から借り受けているものであるときは、その事業者が貸付けに係る資産を取得したものではないことから、上記ハの要件には該当せず、この経過措置の適用はない(消改通15)。
(注)転貸の場合において、この経過措置が適用されるのは、上記イ及びロの要件に該当する場合に限られることになる。
 ② 資産の継続貸付け  この経過措置の対象となる「施行日前から施行日以後引き続き当該契約に係る資産の貸付けを行っている場合」とは、その貸付けに係る資産の賃借人への貸付けのための引渡しが施行日前に行われ、かつ、施行日以後も引き続き貸付けを行っている場合をいう(消改通16)。
 ③ 対価の額の変更を求めることができる旨の定めの範囲  資産の貸付けに係る契約において、資産を借り受けた者が支払うべき消費税相当分について、「消費税率の改正があったときは改正後の税率による」旨を定めている場合におけるその定めは、この経過措置の要件とされている「当該対価の額の変更を求めることができる旨の定め」には該当しない(消改通17)。
 なお、「消費税率の改正があったときは改正後の税率による」旨の定めに基づき、指定日以後に賃貸料を変更した場合には、抜本改革法附則第5条第4項ただし書に該当し、変更後の資産の貸付けについては経過措置の対象とならない。
 ④ 正当な理由による対価の増減  指定日以後に資産の貸付けの対価の額の変更が行われた場合には、その変更後における資産の貸付けについては、経過措置の対象とはならないが、その対価の変更が、例えば、賃貸人が修繕義務を履行しない場合に行われたものであるなど正当な理由に基づくものである場合には、その対価の変更につき、抜本改革法附則第5条第4項ただし書は適用しないこととされている(消改通19)。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問35(資産の貸付けの税率等に関する経過措置の概要)、問36(売買として取り扱われるリース取引)、問37(自動継続条項のある賃貸借契約)、問38(貸付期間中の解約条項がある場合)、問39(「対価の額が定められている」の意義)、問40(賃貸料の変更があらかじめ決まっている場合)、問41(一定期間賃貸料の変更が行えない場合)、問42(「消費税率の改正があったときは改正後の税率による」旨の定め)及び問43(正当な理由による対価の増減)を参照されたい。
(6)一定の役務の提供に関する経過措置  事業者が、平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30日)までの間に締結した一定の役務の提供に係る契約で、その契約の性質上、役務の提供の時期をあらかじめ定めることができないものであって、その役務の提供に先立って対価の全部又は一部が分割して支払われる契約(割賦販売法第2条第6項に規定する前払式特定取引に係る契約のうち、同項に規定する指定役務の提供(いわゆる冠婚葬祭互助会による役務の提供が該当する。)に係るもの)に基づき、施行日以後にその契約に係る役務の提供を行う場合において、その契約内容が次に掲げる要件に該当するときは、旧税率(4%)が適用される(抜本改革法附則5⑤、改正消令附則4⑦)。
 ただし、指定日以後において当該役務の提供の対価の額の変更が行われた場合は、新税率(6.3%)が適用される(抜本改革法附則5⑤、改正消令附則4⑦)。
イ 契約に係る役務の提供の対価の額が定められていること。
ロ 事業者が事情の変更その他の理由により対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと。
 ① 指定役務の提供  この経過措置の対象となる割賦販売法に規定する「指定役務の提供」とは、冠婚葬祭のための施設の提供その他の便宜の提供等に係る役務の提供をいい、資産の購入を前提にその購入対価を積み立てることとしているものは、これに含まれない(消改通20)。
 ② 事情の変更等による対価の変更  指定日以後に役務の提供の対価の額の変更が行われた場合には、この経過措置は適用されないが、この「役務の提供の対価の額の変更」には、その契約において定められた役務の提供の内容の変更に伴う対価の額の変更が含まれる(消改通21)。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問44(指定役務の提供の税率等に関する経過措置の概要)及び問45(指定役務の提供の具体例)を参照されたい。
(7)予約販売に係る書籍等に関する経過措置  指定日前に締結した不特定かつ多数の者に定期的に継続して供給することを約する契約に基づき譲渡する書籍その他の物品(以下「書籍等」といいます。)で、その契約に定められた対価の全部又は一部を施行日前に領収している場合において、書籍等の譲渡が施行日以後に行われるときは、領収した対価に係る部分の課税資産の譲渡等に係る消費税については、旧税率(4%)が適用される(改正消令附則5①)。
 この経過措置は、指定日前に締結された契約に基づき行われる課税資産の譲渡等について適用されるが、指定日の前日(平成25年9月30日)までに既存の契約を変更した場合における変更後の契約も含まれる(消改通8)。
(注)「定期的に継続して供給する」とは、週、月、年その他の一定の周期を単位とし、おおむね規則的に継続して供給することをいう。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問46(予約販売に係る書籍等の税率等に関する経過措置の概要)及び問47(「定期的」の意義)を参照されたい。
(8)特定新聞等に関する経過措置  不特定かつ多数の者に週、月その他の一定の期間を周期として定期的に発行される新聞又は雑誌で、その発行する者が発売する日を指定するもののうちその指定する日が施行日(平成26年4月1日)前であるものについては、施行日以後に行われるその新聞又は雑誌の譲渡等については、旧税率(4%)が適用される(改正消令附則5②)。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問55(特定新聞等の税率等に関する経過措置の概要)を参照されたい。
(9)通信販売に関する経過措置  通信販売(不特定かつ多数の者に商品の内容、販売価格その他の条件を提示し、郵便、電話その他の方法により売買契約の申込みを受けて提示した条件に従って行う商品の販売をいう。)の方法により商品を販売する事業者が、指定日前にその条件を提示し、又は提示する準備を完了した場合において、施行日前に申込みを受けて、提示した条件に従って施行日以後に商品を販売するときは、その商品の販売については、旧税率(4%)が適用される(改正消令附則5③)。
(注)この経過措置における「不特定かつ多数の者に販売条件を提示すること」とは、一般に、新聞、テレビ、チラシ、カタログ等の媒体を通じて購読者又は視聴者等に対して販売条件を提示することをいうことから、例えば、○○友の会等と称する会で、相当数の会員で構成され、かつ、会員数が固定的でないような会が会員等を対象としてこれらの媒体を通じて販売条件を提示するような場合にはこれに該当するが、訪問面談により販売条件を提示することはこれに含まれない。また、「提示する準備を完了した場合」とは、販売条件等の提示方法に応じ、いつでも提示することができる状態にある場合をいうことから、例えば、販売条件等を掲載したカタログ等の印刷物の作成を完了した場合などがこれに該当する。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問48(通信販売等の税率等に関する経過措置の概要)、問49(「不特定かつ多数の者に販売条件を掲示すること」の範囲)、問50(「掲示する準備を完了した場合」の範囲)、問51(売買契約の申込みの方法)、問52(「商品の販売」の範囲)を参照されたい。
(10)有料老人ホームの介護に係る入居一時金に関する経過措置  平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30日)までの間に締結した有料老人ホームに係る終身入居契約(有料老人ホームに入居する際に一時金を支払うことにより、有料老人ホームに終身居住する権利を取得するものをいう。)で、入居期間中の介護サービスの対価が一時金として支払われ、かつ、一時金につき事業者の事情によりその額を変更できないものである場合において、その契約に基づき施行日前から施行日以後引き続き行われる介護サービス(消費税が非課税とされる介護サービスに該当するものを除く。)のうち施行日以後に行う部分(一時金に対応する部分に限る。)については、旧税率(4%)が適用される(改正消令附則5④)。
 ただし、指定日以後において一時金の額の変更が行われた場合には、変更後に行う役務の提供については、新税率(6.3%)が適用される(改正消令附則5④)。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問56(有料老人ホーム(介護サービス)の税率等に関する経過措置の概要)を参照されたい。
(11)資産の譲渡等の時期の特例を受ける資産の譲渡等に関する経過措置  消費税における課税資産の譲渡等の時期は、原則として、資産の引渡しの日や請負に係る目的物の引渡しの日によって判定することとなるが、所得税法や法人税法において売上計上の時期につき特例が定められている場合などについては、消費税においてもそうした売上計上時期と同様の計上を認める特例(長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例(消法16)など)が定められている。
 すなわち、ⅰ)施行日前に行った課税資産の譲渡等であっても、その一部につき施行日以後に課税資産の譲渡等が行われたものとみなされる取引、ⅱ)施行日以後に行われる課税資産の譲渡等であっても、その一部について施行日前に課税資産の譲渡等を行ったものとすることができる取引、があるが、こうした課税資産の譲渡等の時期の特例の適用を受ける取引にあっては、次に掲げる経過措置が設けられている。
 ① 長期割賦販売等に関する経過措置  施行日前に行った長期割賦販売等(消法16①)につき長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例(消法16①)の適用を受けた場合においては、その長期割賦販売等に係る賦払金の額で施行日以後にその支払の期日が到来するものがあるときは、その賦払金に係る部分の課税資産の譲渡等については、旧税率(4%)が適用される(抜本改革法附則6)。 
 具体的な事例については、経過措置Q&A問53(長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置)を参照されたい。
 ② リース取引等に関する経過措置
 イ リース延払基準の方法により経理した場合の経過措置
 長期割賦販売等につきリース延払基準の方法(所得税法施行令第188条第1項第2号又は法人税法施行令第124条第1項第2号に掲げる方法をいう。)により経理することとしている場合には、消費税法施行令第32条の2の規定により長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例の適用が認められているが(消令32の2)、施行日前に行った長期割賦販売等につき同条第1項の規定の適用を受けた場合において、同条第2項の規定により施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡延払収益額(消令32の2①)に係る部分があるときは、当該リース譲渡延払収益額に係る部分の課税資産の譲渡等については、旧税率(4%)が適用される(改正消令附則6)。
 ロ リース譲渡に関する経過措置  事業者が所得税法第65条第2項又は法人税法第63条第2項本文に規定するリース譲渡に該当する資産の譲渡等(以下「リース譲渡」という。)を行った場合において、そのリース譲渡につきこれらの規定の適用を受けるときは、そのリース譲渡のうちそのリース譲渡に係るこれらの規定に規定する各年又は各事業年度(そのリース譲渡をした日の属する課税期間の翌課税期間の初日以後にその年の12月31日又はその事業年度終了の日が到来するものに限る。)のリース譲渡収益額(消令36の2①)に係る部分については、その事業者がその課税期間において資産の譲渡等を行わなかったものとみなして、その部分に係る対価の額をその課税期間におけるそのリース譲渡に係る対価の額から控除することができることとされている(消令36の2①)。
 消費税率の引上げに当たっては、施行日前に行ったリース譲渡につき消費税法第36条の2第1項の規定の適用を受けた場合において、同条第2項の規定により施行日以後に資産の譲渡等を行ったものとみなされるリース譲渡収益額があるときは、当該リース譲渡収益額に係る部分の課税資産の譲渡等については、旧税率(4%)が適用される(改正消令8)。
 ハ 山林所得等の基因となる資産の延払条件付譲渡に関する経過措置  個人事業者が、所得税法第132条第1項に規定する山林所得又は譲渡所得の起因となる資産の延払条件付譲渡を行った場合において、その譲渡に係る所得税額の全部又は一部につき同項の延納の許可を受けたときは、その延払条件付譲渡をした日の属する課税期間において支払期日が到来しない賦払金(支払を受けたものを除く。)に係る部分については、その課税期間において資産の譲渡等を行わなかったものとみなして、その課税期間におけるその延払条件付譲渡に係る対価の額から控除することができることとされている(消令36①)。
 消費税率の引上げに当たっては、施行日前に行った延払条件付譲渡(消費税法施行令第36条第1項の規定の適用を受けたものに限る。)につき、施行日以後にその支払期日が到来する賦払金に係る部分の課税資産の譲渡等については、旧税率(4%)が適用される(改正消令附則7)。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問57(リース延払基準の方法により経理した場合の長期割賦販売等に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要)及び問58(リース譲渡に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要)を参照されたい。
 ③ 工事の請負に関する経過措置  指定日から施行日の前日までの間(平成25年10月1日から平成26年3月31日までの間)に締結した長期大規模工事(消法17①)又は工事(消法17②)の請負契約に基づき、施行日以後に当該契約に係る目的物の引渡しを行う場合には、新税率(6.3%)が適用されることとなるが(抜本改革法附則2)、当該長期大規模工事又は工事に係る対価の額につき、施行日の属する年又は事業年度以前の年又は事業年度において、消費税法第17条第1項又は第2項の規定の適用を受けるときは、当該長期大規模工事又は工事の着手の日から平成26年3月31日までの期間に対応する部分については、旧税率(4%)を適用することとされている(抜本改革法附則7①)。
 なお、この経過措置の適用を受けた長期大規模工事又は工事の請負については、取引の相手方に対し、その旨及び適用を受けた部分に係る対価の額等を書面により通知することとされている(抜本改革法附則7④)。
(注)長期大規模工事又は工事の着手の日から平成26年3月31日までの期間に対応する部分の金額は、長期大規模工事又は工事に係る対価の額に、施行日の前日の現況により当該長期大規模工事又は工事につき見積もられる工事原価の額のうちに当該長期大規模工事又は工事の着手の日から施行日の前日までの間に支出した原材料費、労務費その他の経費の額の合計額の占める割合を乗じて計算した金額とすることとされている(改正消令附則9)。
 具体的な事例については、経過措置Q&A問54(工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置の概要)を参照されたい。
(12)経過措置の適用を受けた課税資産の譲渡等に係る仕入税額控除の調整計算等  上記の経過措置の適用を受けた課税資産の譲渡等について、売上げ対価の返還等又は貸倒れがあった場合、及び上記(2)(9)(11)③の経過措置の規定の適用を受けた事業者からこれらの規定の適用を受けた課税資産の譲渡等に係る課税仕入れを行った場合の消費税額の調整計算については、旧税率(4%)に基づき計算することとされている(抜本改革法附則5⑥⑦、6②、7②③、改正消令5⑤⑥、6②、7②、8②)。
(13)国等の仕入れに係る消費税額の特例に関する経過措置  国、地方公共団体等に特定収入(消費税法第60条第4項に規定する特定収入をいう。)がある課税期間については、通常の方法により計算した課税仕入れ等の税額の合計額から特定収入に係る課税仕入れ等の税額を控除することとされている(消法60④)。
 この規定の趣旨を踏まえれば、施行日以後に受け入れる特定収入については新税率を前提とした割合(6.3/108)で調整し、施行日前に受け入れた特定収入については旧税率を前提とした割合(4/105)で調整することが原則であるが、施行日前に行った課税仕入れ等に係る支出を賄うための特定収入が施行日以後に交付等された場合に対応するため、次の経過措置が設けられている。
 改正後の消費税法施行令第75条第4項の規定は、施行日以後に受け入れる特定収入のうち「旧税率適用支出に係る特定収入」以外の収入について適用し(新税率を前提とした割合(6.3/108)で調整)、施行日前に受け入れた特定収入及び施行日以後に受け入れる「旧税率適用支出に係る特定収入」については、なお従前の例(旧税率を前提とした割合(4/105)で調整)によることとされている。
 ① 旧税率適用支出に係る特定収入  「旧税率適用支出に係る特定収入」とは、特定収入のうち法令、交付要綱(消令75①六イ)又は資産の譲渡等の対価以外の収入の使途を明らかにした文書(消令75①六ロ)において、「旧税率適用課税仕入れ等」に係る支払対価の額、「旧税率適用課税仕入れ等」に係る課税貨物の引取価額又は「旧税率適用課税仕入れ等」に係る借入金等の返済金若しくは償還金に係る支出のためにのみ使用することとされている収入をいう(改正消令附則14①)。
 ② 旧税率適用課税仕入れ等  「旧税率適用課税仕入れ等」とは、国等(消費税法第60条第4項の適用を受ける事業者)が行う課税仕入れ及び課税貨物の保税地域からの引取りのうち次に掲げるものをいう(改正消令附則14②)。
イ 抜本改革法附則第2条(消費税法の一部改正に伴う経過措置の原則)の規定により、旧税率(4%)が適用される課税仕入れ及び課税貨物の保税地域からの引取り
ロ 抜本改革法附則第5条第1項から第3項まで、第4項本文若しくは第5項本文(旅客運賃等の税率等に関する経過措置)若しくは第7条第1項(工事の請負に係る資産の譲渡等の時期の特例を受ける場合における税率等に関する経過措置)の規定又は改正消令附則第5条第1項から第3項まで(予約販売に係る書籍等の税率等に関する経過措置)の規定の適用により、旧税率(4%)が適用される課税仕入れ
 具体的な事例については、経過措置Q&A問59(施行日前の借入金の返済に充てる補助金の交付を受けた場合)を参照されたい。

2 平成27年10月1日の消費税率引上げに伴う経過措置  抜本改革法第3条による改正後の消費税法は、27年施行日(平成27年10月1日)以後の資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨物に係る消費税について適用し、施行日(平成26年4月1日)から27年施行日の前日までの間に行った資産の譲渡等、課税仕入れ及び保税地域から引き取った課税貨物については、従前の例によることとされている(抜本改革法附則15)。
 また、抜本改革法附則第16条では、上記1(2)以下で列挙した経過措置(抜本改革法附則第3条から第14条に規定する経過措置)を読み替えて適用する旨の規定が置かれている。

Ⅳ 税制に関する抜本的な改革及び関連する諸施策に関する措置(抜本改革法第7条関係)

1 抜本改革法第7条の概要
 平成24年2月17日に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」においては、消費課税、個人所得課税、資産課税等に関する今後の税制抜本改革の基本的方向性が盛り込まれている。この点については、抜本改革法第1条において、「この法律は、世代間及び世代内の公平性が確保された社会保障制度を構築することが我が国の直面する重要な課題であることに鑑み、社会保障制度の改革とともに不断に行政改革を推進することに一段と注力しつつ経済状況を好転させることを条件として行う税制の抜本的な改革の一環として、社会保障の安定財源の確保及び財政の健全化を同時に達成することを目指す観点から消費税の使途の明確化及び税率の引上げを行うため、消費税法(昭和63年法律第108号)の一部を改正するとともに、その他の税制の抜本的な改革及び関連する諸施策に関する措置について定めるものとする。」とその趣旨が明らかにされ、同法第7条において次のように具体的な検討課題が規定されている。
 「第2条及び第3条の規定により講じられる措置のほか、政府は、所得税法等の一部を改正する法律(平成21年法律第13号)附則第104条第1項及び第3項に基づく平成24年2月17日に閣議において決定された社会保障・税一体改革大綱に記載された消費課税、個人所得課税、法人課税、資産課税その他の国と地方を通じた税制に関する抜本的な改革及び関連する諸施策について、次に定める基本的方向性によりそれらの具体化に向けてそれぞれ検討し、それぞれの結果に基づき速やかに必要な措置を講じなければならない。」
 以下では、抜本改革法第7条に規定されている税制に関する抜本的な改革及び関連する諸施策に関する措置のうち、消費税に関する措置を中心にその概要について簡単に述べることとする。

2 消費税の検討課題
(1)消費税制度と番号制度との関係
 低所得者に配慮する観点から、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号。以下「番号法」という。)により導入が予定されている番号制度の本格的な稼動及び定着を前提に、関連する社会保障制度の見直し及び所得控除の抜本的な整理とあわせて、総合合算制度(医療、介護、保育等に関する自己負担の合計額に一定の上限を設ける仕組みその他これに準ずるものをいう。)、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討することとされている。
 平成25年5月31日に公布された番号法においては、附則第6条第7項(検討等)において、「政府は、給付付き税額控除(給付と税額控除を適切に組み合わせて行う仕組みその他これに準ずるものをいう。)の施策の導入を検討する場合には、当該施策に関する事務が的確に実施されるよう、国の税務官署が保有しない個人所得課税に関する情報に関し、個人番号の利用に関する制度を活用して当該事務を実施するために必要な体制の整備を検討するものとする。」とされ、政府が給付付き税額控除の導入の検討を行う場合における検討課題が規定されている。
(2)軽減税率の導入について  軽減税率の導入については、低所得者に配慮する観点から、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討することとされている。
 軽減税率の導入については、自由民主党及び公明党の各税制調査会における議論を経て、平成25年1月24日に取りまとめられた平成25年度与党税制改正大綱においては、消費税率の10%引上げ時に、軽減税率制度を導入することを目指すこととされた。このため、与党税制協議会において協議を開始し、平成26年度与党税制改正決定時までに、関係者の理解を得た上で、結論を得るものとされている。具体的には、次頁ののように記述されている。

【表】軽減税率について
平成24年1月24日 自由民主党・公明党 平成25年度税制改正大綱(抄)
第一 平成25年度税制改正の基本的考え方
2 社会保障・税一体改革の着実な実施
(3)消費税引上げに伴う対応
  ③ その他消費税引上げに係る措置
   イ 軽減税率
    〇 消費税率の10%引き上げ時に、軽減税率制度を導入することをめざす。
    〇 そのため与党税制協議会で、速やかに下記事項について協議を開始し、本年12月予定の2014年度与党税制改正決定時までに、関係者の理解を得た上で、結論を得るものとする。
    〇 与党税制協議会に軽減税率制度調査委員会を設置し、適宜、検討状況を与党税制協議会に中間報告をする。
    〇 協議すべき課題 
     ・対象、品目
     ・軽減する消費税率
     ・財源の確保
     ・インボイス制度など区分経理のための制度の整備
     ・中小事業者等の事務負担増加、免税事業者が課税選択を余儀なくされる問題への理解
     ・その他、軽減税率導入にあたって必要な事項

(3)簡素な給付措置  抜本改革法第2条の規定の施行から(1)及び(2)の検討の結果に基づき導入する施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として、社会保障の機能強化との関係も踏まえつつ、対象範囲、基準となる所得の考え方、財源の問題、執行面での対応の可能性等について検討を行い、簡素な給付措置を実施することとされている。
(4)簡易課税制度の見直し  簡易課税制度については、今般の抜本改革法及び消費税の簡易課税制度の仕入れに係る概算的な控除率については、今後、更なる実態調査を行い、その結果も踏まえた上で、その水準について必要な見直しを行うこととされている。
(5)消費税の転嫁対策等について  消費税率が段階的に引き上げられることも踏まえ、消費税の円滑かつ適正な転嫁に支障が生ずることのないよう、事業者の実態を十分に把握し、次に定める取組を含め、より徹底した対策を講ずることとされている。具体的には、
① 消費税の円滑かつ適正な転嫁に資するため、事業者等が消費税の転嫁及び価格表示等に関して行う行為についての指針を策定し、その周知徹底を図り、相談等を行うこと、
② 中小事業者向けに相談の場を設置するとともに、講習会の開催等を行うこと、
③ 取引上の優越的な地位を利用して下請事業者等からの消費税の転嫁の要請を一方的に拒否すること等の不公正な取引の取締り及び監視の強化を行うこと、
④ 競争を実質的に制限することにより対価を不当に引き上げる行為を抑止するための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号。以下「独占禁止法」という。)の厳正な運用及び便乗値上げ防止のための調査、監督及び指導を行うこと、
⑤ 適正な転嫁等への取組を効果的に推進する観点から、関係行政機関の相互の緊密な連携を確保し、総合的に対策を推進するための本部を内閣に設置すること、
⑥ 消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から、独占禁止法及び下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)の特例に係る必要な法制上の措置を講ずること、
とされている。
 なお、法制上の措置については、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(以下「転嫁対策法」という。)が第183回通常国会に提出され、平成25年5月17日に衆議院において修正・可決された後、同年6月5日に参議院において可決・成立し、同年6月12日に公布されている。
 なお、転嫁対策法は平成25年10月1日から施行される(ただし、転嫁対策法第14条第3項(国等の講ずる措置)及び同法附則第3条(内閣府設置法の一部改正)の規定は、同年6月15日から施行される)。
(6)消費税の価格表示と消費税との関係  取引に際しての価格表示と消費税との関係については、外税(消費税を含めた価格を表示しない価格表示の方法をいう。)、内税(消費税を含めた価格を表示する価格表示の方法をいう。)等に係る様々な議論を勘案しつつ、事業者間取引、相対取引等におけるその表示の在り方を含め、引き続き、実態を踏まえつつ、様々な角度から検討することとされた。
 消費税の総額表示義務については、平成24年10月26日に決定された「消費税の円滑かつ適正な転嫁・価格表示に関する対策の具体的な方針(中間整理の具体化)」において、各業界の所管省庁を通じ、各業界からの総額表示の弾力的運用に関する要望を把握し、その要望に応じ必要な弾力的運用の在り方について検討を行い、事業者の準備に係る期間も考慮し、適切な段階で事例集等を公表することとされた。また、転嫁対策法第10条(総額表示義務に関する消費税法の特例)において、今次の消費税率の引き上げに際し必要があるときは、一定の誤認防止措置を講じているときに限り、消費税法の総額表示義務を解除することが規定されている。
(注)転嫁対策法第10条の規定は、平成25年10月1日から施行される。
(7)医療機関における高額の投資と消費税負担との関係  医療機関等における高額の投資に係る消費税の負担に関しては、新たに一定の基準に該当するものに対し区分して措置を講ずることを検討することとされた。また、医療機関等の仕入れに係る消費税については、診療報酬等の医療保険制度において手当をすることとし、医療機関等の消費税の負担について、厚生労働省において定期的に検証を行う場を設けることとするとともに、医療に係る消費税の課税の在り方全体について引き続き検討することとされた。
 民主党・自由民主党及び公明党の三党における税関係協議結果(平成24年6月15日)においては、「医療については、第7条第1号へに示した方針に沿って見直しを行うこととし、消費税率(国・地方)の8%への引上げ時までに、高額の投資に係る消費税負担について、医療保険制度において他の診療行為と区分して適切な手当てを行う具体的な手法について検討し結論を得る。また、医療に関する税制上の配慮等についても幅広く検討を行う。」こととされ、平成24年6月20日に、厚生労働省の中央社会保健医療協議会の下に医療関係者、保険者、有識者等からなる分科会が立ち上げられ、具体的な検討が進められている。
(8)住宅取得と消費税との関係  住宅の取得については、取引価額が高額であること等から、消費税率の引上げの前後における駆け込み需要及びその反動等による影響が大きいことを踏まえ、一時の税負担の増加による影響を平準化し、及び緩和する観点から、住宅の取得に係る必要な措置について財源も含め総合的に検討することとされた。
(9)地方消費税に関する検討課題  消費税及び地方消費税の賦課徴収に関する地方公共団体の役割を拡大するため、当面の間は現行の制度の下でも可能な納税に関する相談を伴う収受等の取組を進めた上で、地方公共団体における体制の整備状況等を見極めつつ、消費税及び地方消費税の申告を地方公共団体に対して行うことを可能とする制度の導入等について、実務上の問題点を十分に整理して検討することとされた。

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