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解説記事2013年08月26日 【税制改正解説】 平成25年度税制改正における所得税関係の改正について(2013年8月26日号・№512)

税制改正解説
平成25年度税制改正における所得税関係の改正について
 檜山耕佑

はじめに

 現下の経済情勢等を踏まえ、成長と富の創出の好循環を実現するとともに、社会保障・税一体改革を着実に実施する等の観点から、生産等設備投資促進税制及び所得拡大促進税制の創設、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設、所得税の最高税率の引上げ、相続税の基礎控除の引下げ及び最高税率の引上げ等、住宅ローン減税の拡充、避難解除区域等に係る税額控除制度等の拡充、納税環境の整備、租税特別措置の見直し等所要の措置を講ずることを内容とした「所得税法等の一部を改正する法律」は国会における審議を経て平成25年3月29日に参議院本会議において可決・成立し、同月30日に関係政省令とともに、公布され、原則として4月1日から施行されている。また、同年5月31日にも関係政省令が公布されている。
 以下これらの改正内容について、その概要を紹介する。

Ⅰ 所得税法の改正

1 所得税の税率構造
 所得税の税率構造について、格差の是正及び所得再分配機能の回復の観点から、最高税率の引上げが行われ、表1のとおりとされた(所法89)。


2 給与所得の源泉徴収税額表等
 1
の税率構造の改正に伴い、給与所得の源泉徴収税額表(月額表及び日額表)及び賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表について、所要の見直しが行われた(所法別表第二~別表第四)。
(注)上記の改正は、平成27年1月1日以後に支払うべき給与等について適用(改正法附則7)。

3 公共法人等及び公益信託等に係る利子等の非課税  公共法人等及び公益信託等に係る利子等の非課税について、公社債又は投資信託若しくは特定目的信託の受益権の利子等の支払を受ける者の所有期間にかかわらず、その支払を受ける利子等の額の全額を非課税とすることとされた(所法11)。
(注)上記の改正は、公共法人等又は公益信託等が平成28年1月1日以後に支払を受けるべき利子等について適用(改正法附則2)。

4 源泉所得税の納税地  源泉所得税の納税地について、利子等その他の源泉徴収の対象となる所得の支払をする者が国内において事務所等を移転した場合は、当該事務所等の移転後の所在地とすることとされた(所法17)。
(注)上記の改正は、平成25年6月1日以後に源泉所得税を納付する場合について適用(改正法附則3)。

5 支払調書の提出  次に掲げる者は、その年中に支払又は交付をした譲渡対価又は償還金の額等を記載した支払調書を、支払の確定した日の属する年の翌年1月31日までに、税務署長に提出しなければならないこととされた。これに伴い、無記名割引債の償還金の支払調書制度は廃止された(所法224、224の3、225)。
① 居住者等に対し国内において公社債、公社債投資信託の受益権、証券投資信託以外の投資信託の受益権又は特定目的信託の社債的受益権(以下「公社債等」という。)の譲渡の対価(償還金又は解約金を含む。以下同じ。)の支払をする者
② 国内に恒久的施設を有しない非居住者、内国法人のうち普通法人等(普通法人並びに法人税法別表に掲げる公共法人、公益法人等及び協同組合等(一般社団法人及び一般財団法人並びに同法以外の法律によって公益法人等とみなされている法人を除く。)をいう。Ⅲ1③ロ(ロ)において同じ。)以外の法人又は外国法人に対し国内において公社債等の償還金等のうち一定のものの交付をする者
(注)上記の改正は、平成28年1月1日以後に行われる公社債等の譲渡又は償還金等の交付について適用(改正法附則8)。

Ⅱ 租税特別措置法(住宅税制)の改正

1 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除
 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除について、その適用期限を平成29年12月31日まで4年延長するとともに、次の措置が講じられた(措法41~41の2の2)。
① 住宅の取得等をして平成26年から平成29年までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)、控除率及び控除期間は表2のとおり。

② 適用対象となる認定低炭素住宅の範囲に、都市の低炭素化の促進に関する法律の規定により低炭素建築物とみなされる特定建築物に該当する一定の家屋を追加。
(注)②の改正は、平成25年6月1日以後に自己の居住の用に供する特定建築物に該当する家屋について適用(改正法附則54)。
③ 住宅の取得等をして居住の用に供した居住者が、その居住の用に供した年に勤務先からの転任の命令等やむを得ない事由により転居した場合における再居住に係る特例について、その居住の用に供した年の12月31日までの間に再び居住の用に供した場合を特例の対象に追加。
(注)③の改正は、平成25年1月1日以後に自己の居住の用に供しなくなった場合について適用(改正法附則54)。

2 特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例  特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例について、適用期限を平成29年12月31日まで4年延長するとともに、次の措置が講じられた(措法41の3の2)。
① 特定の増改築等をして平成26年から平成29年までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(1,000万円)のうち特定の増改築等に係る限度額(特定増改築等限度額)、控除率及び控除期間は表3のとおり。

② 対象となる特定の増改築等に係る費用の額(補助金等の交付を受ける場合には、その補助金等の額を控除した後の金額)の要件を、50万円(改正前:30万円)とする。
(注)②の改正は、平成26年4月1日以後に居住の用に供する場合について適用(改正法附則55)。

3 既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除  既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除について、適用期限を平成29年12月31日まで4年延長するとともに、次の措置が講じられた(措法41の19の2)。
① 平成26年から平成29年までの間に住宅耐震改修をした場合の耐震改修工事限度額及び控除率は表4のとおり。

② 税額控除額の計算方法について、住宅耐震改修に係る耐震工事の標準的な費用の額(補助金等の交付を受ける場合には、その補助金等の額を控除した後の金額)の10%に相当する金額とする。
(注)②の改正は、平成26年4月1日以後に行う住宅耐震改修について適用(改正法附則59)。

4 既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除  既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除について、適用期限を平成29年12月31日まで5年延長するとともに、次の措置が講じられた(措法41の19の3)。
① 特定の改修工事をして平成25年から平成29年までの間に居住の用に供した場合の改修工事限度額及び控除率は表5のとおり。

② 税額控除額の計算方法について、特定の改修工事に係る標準的な費用の額(補助金等の交付を受ける場合には、その補助金等の額を控除した後の金額)の10%に相当する金額とする。
③ 対象となる特定の改修工事に係る標準的な費用の額の要件を、50万円(改正前:30万円)とする。
④ 対象となる一般断熱改修工事等の範囲に、エネルギーの使用の合理化に資する改修工事が行われる構造又は設備と一体となって効用を果たす一定の設備(高効率空調機、高効率給湯器、太陽熱利用システム)の取替え又は取付けに係る工事を追加。
⑤ 高齢者等居住改修工事等を行った特定居住者が、その年の前年以前3年内に行った高齢者等居住改修工事等について本税額控除の適用を受けている場合には、その年において本税額控除は適用しない。
⑥ 一般断熱改修工事等及び高齢者等居住改修工事等の両方の工事をして同一年中に居住の用に供した場合の税額控除限度額(20万円(太陽光発電設備の設置工事を行う場合は30万円))は廃止。
(注)②から⑥までの改正は、特定の改修工事をした家屋を平成26年4月1日以後に居住の用に供した場合について適用(改正法附則60)。

5 認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除  認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除について、適用期限を平成29年12月31日まで4年延長するとともに、次の措置が講じられた(措法41の19の4)。
 認定住宅の新築等をして平成26年から平成29年までの間に居住の用に供した場合の認定住宅の範囲、認定住宅について講じられた構造又は設備に係る標準的な費用に係る限度額(認定住宅限度額)及び控除率は表6のとおり。


Ⅲ 租税特別措置法(金融・証券税制)の改正

1 公社債等及び株式等に係る所得に対する課税
 公社債等及び株式等に係る所得に対する課税が次のとおり見直された。
① 特定公社債、公募公社債投資信託の受益権、証券投資信託以外の公募投資信託の受益権及び特定目的信託(その社債的受益権の募集が公募により行われたものに限る。)の社債的受益権(以下「特定公社債等」という。)について、次の措置が講じられた。
 イ 特定公社債等の利子等については、15%源泉分離課税の対象から除外した上、次の措置が講じられた(措法3、3の3、8の4、8の5)。
 (イ)平成28年1月1日以後に居住者等が支払を受けるべき一定の特定公社債等の利子等については、15%の税率による申告分離課税の対象とする。
 (ロ)平成28年1月1日以後に支払を受けるべき一定の特定公社債等の利子等を有する居住者等は、当該利子等については、申告を要しないことができる。
 ロ 特定公社債等の譲渡所得等については、非課税の対象から除外した上、次の措置が講じられた(措法37の11、37の15)。
 (イ)居住者等が、平成28年1月1日以後に特定公社債等の譲渡をした場合における当該特定公社債等の譲渡による譲渡所得等については、15%の税率による申告分離課税の対象とする。
 (ロ)特定公社債等の償還又は一部解約等により支払を受ける金額については、これを特定公社債等の譲渡所得等に係る収入金額とみなすことにより、15%の税率による申告分離課税の対象とする。
 ハ 特定公社債等の譲渡損失及び利子所得等について、次のとおり損益通算及び繰越控除の対象とされた(措法37の12の2)。
 (イ)上場株式等の譲渡損失及び配当所得の損益通算の特例の対象に、特定公社債等の利子所得等及び譲渡所得等を加え、これらの所得間並びに上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択したものに限る。)及び譲渡所得等との損益通算を可能とする。
 (ロ)平成28年1月1日以後に特定公社債等の譲渡により生じた損失の金額のうち、その年に損益通算をしても控除しきれない金額については、翌年以後3年間にわたり、特定公社債等の利子所得等及び譲渡所得等並びに上場株式等の配当所得(申告分離課税を選択したものに限る。)及び譲渡所得等からの繰越控除を可能とする。
 ニ 特定公社債等に係る所得について、次のとおり特定口座で取り扱うことが可能とされた(措法37の11の3、37の11の5、37の11の6、改正法附則44)。
 (イ)居住者等が特定口座を開設している金融商品取引業者等への買付けの委託により取得した特定公社債等又は当該金融商品取引業者等から取得した特定公社債等を、当該特定口座へ受け入れることができる。この場合には、特定口座内の特定公社債等に係る譲渡所得等の金額と特定口座以外の特定公社債等に係る譲渡所得等の金額は、区分してこれらの金額を計算する。
 (注)上記(イ)の改正は、平成28年1月1日以後に行う特定口座内保管上場株式等の譲渡について適用(改正法附則44)。
 (ロ)居住者等が金融商品取引業者等の営業所を通じて特定公社債等の利子等の支払を受ける場合において、その居住者等がその金融商品取引業者等の営業所に源泉徴収選択口座を開設しているときは、その利子等をその源泉徴収選択口座に受け入れることができる。
 (ハ)源泉徴収選択口座に受け入れた特定公社債等の利子等又は上場株式等の配当等に対する源泉徴収税額を計算する場合において、その源泉徴収選択口座内における特定公社債等又は上場株式等の譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、その利子等又は配当等の額からその譲渡損失の金額を控除した金額に対して15%の税率を乗じて徴収すべき所得税の額を計算する。
 (注)(ロ)及び(ハ)の改正は、平成28年1月1日以後に金融商品取引業者等から交付を受ける源泉徴収選択口座内配当等について適用(改正法附則45)。
 (ニ)居住者等が平成27年12月31日以前に特定口座を開設している金融商品取引業者等を通じて取得した特定公社債等を、平成28年1月1日に特定口座に受け入れることができる。また、同日から同年12月31日までの間は、居住者等が有する特定公社債等を特定口座に受け入れることができる。
 ホ 「特定公社債」とは、次の公社債(預金保険法に規定する長期信用銀行債等を除く。)である(措法37の11)。
 (イ)国債、地方債、外国国債、外国地方債
 (ロ)会社以外の法人が特別の法律により発行する債券(外国法人に係るもの並びに投資法人債、短期投資法人債、特定社債及び特定短期社債を除く。)
 (ハ)公募公社債、上場公社債
 (ニ)発行の日前6月以内に有価証券報告書等を提出している法人が発行する社債
 (ホ)金融商品取引所(外国の法令に基づき設立されたこれに類するものを含む。)において公表された公社債情報(一定の期間内に発行する公社債の上限額、発行者の財務状況等その他その公社債に関する基本的な情報をいう。)に基づき発行する公社債で、目論見書にその公社債情報に基づき発行されるものである旨の記載のあるもの
 (ヘ)国外において発行された公社債で、次に掲げるもの(取得後引き続き保管の委託がされているものに限る。)
  a 国内において売出しに応じて取得した公社債
  b 国内において売付け勧誘等に応じて取得した公社債(aに掲げる公社債を除く。)で、その取得の日前六月以内に有価証券報告書等を提出している法人が発行するもの
 (ト)外国法人が発行し、又は保証する債券で一定のもの
 (チ)国内又は国外の法令に基づいて銀行業又は金融商品取引業を行う法人又は当該法人との間に完全支配の関係がある法人等が発行する社債(その取得をした者が実質的に多数でないものを除く。)
 (リ)平成27年12月31日以前に発行された公社債
② 特定公社債以外の公社債、私募公社債投資信託の受益権、証券投資信託以外の私募投資信託の受益権及び特定目的信託(その社債的受益権の募集が公募以外の方法により行われたものに限る。)の社債的受益権(以下「一般公社債等」という。)について、次の措置が講じられた。
 イ 一般公社債等の利子等については、15%源泉分離課税を維持する。ただし、同族会社が発行した社債の利子でその同族会社の判定の基礎となった株主等が支払を受けるものは、総合課税の対象とする(措法3)。
 ロ 一般公社債等の譲渡所得等については、非課税の対象から除外した上、次の措置が講じられた(措法37の10、37の15)。
 (イ)居住者等が、平成28年1月1日以後に一般公社債等の譲渡をした場合におけるその一般公社債等の譲渡による譲渡所得等については、15%の税率による申告分離課税の対象とする。
 (ロ)一般公社債等の償還又は一部解約等により支払を受ける金額(私募公社債投資信託及び証券投資信託以外の私募投資信託にあっては、信託元本額までに限る。)については、これを一般公社債等の譲渡所得等に係る収入金額とみなすことにより、15%の税率による申告分離課税の対象とする。ただし、同族会社が発行した社債の償還金でその同族会社の判定の基礎となった株主等が支払を受けるものは、総合課税の対象とする。
③ 割引債の償還差益について、割引債を含む公社債の譲渡所得等を課税対象とすることにあわせて、次の措置が講じられた。
 イ 平成28年1月1日以後に行う割引債の償還及び譲渡による所得については、公社債の譲渡所得等として15%の税率による申告分離課税の対象とする。ただし、平成27年12月31日以前に発行された割引債でその償還差益が発行時に源泉徴収の対象とされたものについては、償還差益に係る18%源泉分離課税を維持し、譲渡による所得は非課税とする(措法37の10、37の11、37の15、41の12、改正法附則56)。
 ロ 平成28年1月1日以後に発行される割引債の償還金について、次のとおり源泉徴収を行うこととされた(措法41の12、41の12の2)。
 (イ)平成28年1月1日以後に発行される割引債(預金保険法に規定する長期信用銀行債等を除く。)については、発行時の18%源泉徴収を適用しない。これに伴い、特定短期公社債に係る発行時源泉徴収免除の特例は廃止。
 (ロ)平成28年1月1日以後に個人又は内国法人のうち普通法人等以外の法人若しくは外国法人に対して国内において割引債の償還金の支払をする者は、その支払の際、その割引債の償還金に係る差益金額に対して、15%の税率による源泉徴収をし、その徴収の日の属する月の翌月10日までに納付しなければならない。なお、国内において支払われる特定割引債(特定公社債に該当する割引債をいう。以下同じ。)の償還金で国内における支払の取扱者を通じて交付されるものについては、当該支払の取扱者が源泉徴収を行うものとする。国外において発行された割引債の償還金(国外において支払われるものに限る。)で国内における支払の取扱者を通じて交付されるものも、同様とする。
 ハ その償還金がロ(ロ)の源泉徴収の対象となる割引債は、次のものである(措法41の12の2)。
 (イ)割引の方法により発行された公社債(預金保険法に規定する長期信用銀行債等を除く。)
 (ロ)分離元本公社債(公社債で元本に係る部分と利子に係る部分とに分離されてそれぞれ独立して取引されるもののうち、当該元本に係る部分であった公社債をいう。)
 (ハ)分離利子公社債(公社債で元本に係る部分と利子に係る部分とに分離されてそれぞれ独立して取引されるもののうち、当該利子に係る部分であった公社債をいう。)
 (ニ)利子が支払われる公社債でその利子の利率が著しく低いもの
 ニ 差益金額とは、次に掲げる割引債(特定口座において管理されているものを除く。)の区分に応じそれぞれ次に掲げる金額をいう(措法41の12の2)。
 (イ)ハ(イ)、(ロ)及び(ニ)に掲げる割引債のうち発行の日から償還の日までの期間が一年以内のもの…その割引債の償還金の額に0.2%を乗じて計算した金額
 (ロ)ハ(イ)、(ロ)及び(ニ)に掲げる割引債のうち発行の日から償還の日までの期間が一年超のもの並びに分離利子公社債…その割引債の償還金の額に25%を乗じて計算した金額
 (ハ)割引債のうち、その割引債の償還金の支払を受ける普通法人等以外の内国法人が当該割引債を管理している金融商品取引業者等で当該償還金等に係る国内における支払の取扱者であるものと締結した割引債の取得価額を管理する契約に基づき、当該割引債の取得価額が管理されているもの…実額の償還差益
④ 株式等に係る譲渡所得等の分離課税について、上場株式等に係る譲渡所得等と一般株式等に係る譲渡所得等を別々の分離課税制度とした上で、特定公社債等及び上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税と一般公社債等及び非上場株式等に係る譲渡所得等の分離課税に改組することとされた(措法37の10、37の11)。
⑤ 特定管理株式等が価値を失った場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例等の拡充
 イ 特定口座で管理されている内国法人が発行した特定公社債につき、公社債としての価値を失ったことによる損失が生じた場合としてその特定公社債を発行した法人の清算結了等の事実が生じたときは、その事実が生じたことは特定公社債の譲渡をしたことと、その損失の金額は特定公社債の譲渡をしたことにより生じた損失の金額とそれぞれみなすとともに、その損失の金額を上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用対象とすることとされた(措法37の11の2)。
 ロ 特定管理株式等が価値を失った場合の株式等に係る譲渡所得等の課税の特例について、本特例によって株式等の譲渡により生じた損失の金額とみなされた金額を上場株式等に係る譲渡損失の金額とみなすとともに、その損失の金額を上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用対象とすることとされた(措法37の11の2)。
(注)イ及びロの改正は、居住者等の有する特定管理株式等、特定保有株式又は特定口座内公社債につき平成28年1月1日以後にその発行法人の清算結了等の事実が発生する場合について適用(改正法附則43)。
 ハ 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例及び特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等の特例について、これらの特例により控除することができる株式の取得に要した金額及び特定株式等の譲渡損失の金額は、上場株式等に係る譲渡所得等の金額及び一般株式等に係る譲渡所得等の金額から控除できることとされた(措法37の13、37の13の2)。
(注)ハの改正は、平成28年分以後の所得税について適用(改正法附則47)。
⑥ 資料情報制度等の整備
 イ 個人に対して平成28年1月1日以後に支払うべき特定公社債等の利子等については、利子等の受領者の告知及び利子等の支払調書等の提出を要しないこととする措置を適用しないこととされた(措法3)。
 ロ 平成28年1月1日以後に国内において支払うべき特定公社債等の利子等及び特定割引債の償還金の支払者は、その利子等又は償還金の支払を受ける居住者等に対して、その支払う利子等又は償還金の額等を記載した支払通知書を交付しなければならないこととされた(措法8の4、41の12の2)。
 ハ 国内における支払の取扱者を通じて交付される株式投資信託若しくは特定受益証券発行信託でその受益権が上場株式等に該当するもの又は特定公社債等の償還金等(償還金又は解約金をいう。以下同じ。)については、その支払の取扱者が株式等の譲渡の対価等の支払調書及び上記ロの支払通知書の提出又は交付をしなければならないこととされた(措法38、41の12の2)。
(注)ハの改正は、平成28年1月1日以後に交付されるべき株式投資信託若しくは特定受益証券発行信託の受益権で上場株式等に該当するもの又は特定公社債等に係る償還金等について適用(改正法附則52、57)。
⑦ 源泉徴収選択口座において特定公社債等に係る所得の損益通算が行われることに伴い、特定公社債等の利子等及び特定割引債の償還金に対する源泉徴収について、次の措置が講じられた。
 イ 国内における支払の取扱者を通じて交付されるその利子等又は償還金については、その支払の取扱者を源泉徴収義務者とする(措法9の3の2、41の12の2)。
 ロ 源泉徴収選択口座に受け入れた特定公社債等の利子等について源泉徴収した所得税の納付期限を、その徴収の日の属する年の翌年1月10日とする(措法37の11の6)。
(注)ロの改正は、平成28年1月1日以後に金融商品取引業者等から交付を受ける源泉徴収選択口座内配当等について適用(改正法附則45)。

2 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置  非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置について、次の措置が講じられた(措法9の8、37の14)。
① 非課税口座を開設することができる期間を、平成26年1月1日から平成35年12月31日までとする。
② 非課税の対象となる配当等及び譲渡所得等は、次に掲げるものとされた。
 イ 非課税口座に非課税管理勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの期間(以下「非課税期間」という。)内に支払を受けるべき非課税口座内上場株式等の配当等
 ロ 非課税期間内に金融商品取引業者等への売委託等による譲渡をした場合におけるその譲渡に係る非課税口座内上場株式等の譲渡所得等
③ 非課税口座に関する要件について、次の見直しが行われた。
 イ 非課税口座が開設された金融商品取引業者等は、その非課税口座を開設した居住者等から提出を受けた非課税適用確認書に記載された勘定設定期間(非課税口座に新たに非課税管理勘定を設けることができる期間をいう。以下同じ。)内の各年の1月1日(年の中途において非課税適用確認書が提出された場合における当該提出年にあっては、その提出の日)に非課税管理勘定を設けるものとする。
 ロ 各年の非課税管理勘定においては、次に掲げる上場株式等で、非課税口座に非課税管理勘定が設けられた日から同日の属する年の12月31日までの間に受け入れた上場株式等の取得対価の額((ロ)の上場株式等については、移管日における時価)の合計額が100万円を超えないものを受け入れることができる。
 (イ)その非課税口座が開設された金融商品取引業者等を通じて新たに取得した上場株式等
 (ロ)その非課税管理勘定を設けた非課税口座に係る他の年分の非課税管理勘定から一定の手続の下で移管がされる上場株式等
 ハ 非課税適用確認書は、居住者等からの申請に基づき税務署長から交付を受けた書類で、勘定設定期間として表7に掲げる期間のいずれかの期間、その期間の区分に応じそれぞれ表7に定める基準日における国内の住所その他の事項が記載された書類をいう。

 ニ 非課税適用確認書の交付を受けようとする居住者等は、交付申請書に表7の基準日における住所を証する書類を添付して、勘定設定期間の開始の日の属する年の前年10月1日から当該勘定設定期間の終了の日の属する年の9月30日までの間に、金融商品取引業者等の営業所に提出するものとする。
 ホ 居住者等は、同一の金融商品取引業者等に重複して非課税口座を開設することができない。また、同一の勘定設定期間に重複して非課税適用確認書を提出することができない。
(注)上記の改正は、平成26年1月1日以後に支払を受けるべき非課税口座内上場株式等の配当等及び同日以後の非課税口座内上場株式等の譲渡について適用(改正法附則32、48)。

3 上場証券投資信託等の償還金等に係る課税の特例  上場証券投資信託等の償還金等に係る課税の特例の適用対象に、国外において発行された公募株式投資信託で金融商品取引所(外国の法令に基づき設立されたこれに類するものを含む。)に上場されているものが追加された(措法9の4の2)。
(注)上記の改正は、平成25年4月1日以後の上場証券投資信託等の終了又は一部の解約について適用(改正法附則30)。

Ⅳ 租税特別措置法の改正(Ⅱ・Ⅲ以外の改正)

1 相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例
 相続財産に係る株式をその発行した非上場会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例の適用対象者の範囲に、相続税法等において相続又は遺贈により非上場株式を取得したものとみなされる個人が追加された(措法9の7)。
(注)上記の改正は、平成27年1月1日以後に開始する相続又は遺贈による財産の取得について適用(改正法附則31)。

2 社会保険診療報酬の所得計算の特例  社会保険診療報酬の所得計算の特例について、適用対象者からその年の医業及び歯科医業に係る収入金額が7,000万円を超える者が除外された(措法26)。
(注)上記の改正は、個人は平成26年分以後の所得税について適用(改正法附則40)。

3 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例  換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例の対象から除外される保留地に係る土地等の範囲に、都市の低炭素化の促進に関する法律による保留地が定められた場合のその保留地の対価に対応する土地等を追加することとされた(措法33の3)。
(注)上記の改正は、平成25年4月1日以後に行う土地等の譲渡について適用(改正法附則41)。

4 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除  特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除の適用対象から、中心市街地活性化法等による土地区画整理事業が施行された場合において、換地処分により中心市街地活性化法等の保留地に対応する部分の土地等の譲渡が行われた場合が除外された(措法34の2)。
(注)平成25年4月1日前に行った土地等の譲渡については、従前の例による(改正法附則41)。

5 認定事業用地適正化計画の事業用地の区域内にある土地等の交換等の場合の譲渡所得の課税の特例の廃止  認定事業用地適正化計画の事業用地の区域内にある土地等の交換等の場合の譲渡所得の課税の特例は、適用期限(平成25年3月31日)の到来をもって廃止された(旧措法37の9の2)。
(注)平成25年4月1日前に行った土地等の交換又は譲渡については、従前の例による(改正法附則41)。

6 公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例  公益法人等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例について、平成25年6月1日以後に特例の適用を受けた財産等を有する幼稚園又は保育所等を設置する者である公益法人等が、その幼稚園又は保育所等の事業の用に直接供している財産等を幼保連携型認定こども園、幼稚園又は保育所等を設置しようとする者である他の公益法人等に贈与をしようとする場合に、その贈与に関する届出書を国税庁長官に提出したときは、当該他の公益法人等を特例の適用を受けた財産等を有する公益法人等とみなすこととされた(措法40、改正法附則53)。
(注)上記の改正は、平成25年6月1日以後に行う他の公益法人への贈与について適用(改正法附則53)。

7 中小企業者に該当する内国法人の取締役等である個人が債務処理計画に基づき個人資産を贈与した場合の特例  中小企業者に該当する内国法人の取締役等である個人でその内国法人の債務の保証人であるものが、その個人が有する資産(有価証券を除く。)でその資産に設定された賃借権、使用貸借権その他資産の使用又は収益を目的とする権利が現にその内国法人の事業の用に供されているものを、その内国法人について策定された債務処理に関する計画で一般に公表された債務処理を行うための手続に関する準則に基づき策定されていることその他一定の要件を満たすもの(以下「債務処理計画」という。)に基づき、平成25年4月1日から平成28年3月31日までの間にその内国法人に贈与した場合には、次に掲げる要件を満たしているときに限り、一定の手続の下でその贈与によるみなし譲渡課税を適用しないこととされた(措法40の3の2)。
① その個人が、債務処理計画に基づき、その内国法人の債務の保証に係る保証債務の一部を履行していること。
② その債務処理計画に基づいて行われたその内国法人に対する資産の贈与及び保証債務の一部の履行後においても、その個人がその内国法人の債務の保証に係る保証債務を有していることが、その債務処理計画において見込まれていること。
③ その内国法人が、その資産の贈与を受けた後に、その資産をその事業の用に供することがその債務処理計画において定められていること。

8 電子申告に係る所得税額の特別控除制度の廃止  電子証明書を有する個人の電子情報処理組織による申告に係る所得税額の特別控除制度は、適用期限(平成24年分)の到来をもって廃止された(旧措法41の19の5)。

Ⅴ 東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の改正
(1)東日本大震災によりその有していた居住用家屋が滅失等をして居住の用に供することができなくなった者の相続人(その家屋に居住していた者に限る。)が、平成25年1月1日以後にその家屋の敷地の用に供されていた土地等の譲渡をした場合には、一定の要件の下でその相続人は、その家屋を被相続人がその取得をした日から所有していたものとみなして、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例等の適用を受けることができることとされた(震災税特法11の6、改正法附則93)。
(2)被災区域である土地等又はこれらとともに譲渡をするその土地の区域内にある建物若しくは構築物で、平成23年3月11日前に取得がされたもののうち事業の用に供しているもの(以下「相続事業用資産」という。)を有していた者の相続人(同日の直前においてその事業に従事していた者等一定の者に限る。)が、平成25年1月1日から平成28年3月31日までの間にその相続事業用資産の譲渡をした場合には、一定の要件の下でその相続人がその譲渡の時においてその相続事業用資産を事業の用に供しているものとみなして、特定の事業用資産の買換え等の場合の譲渡所得の課税の特例の適用を受けることができることとされた(震災税特法12、改正法附則94)。
(3)東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除制度の特例について、適用期限を平成29年12月31日まで4年延長するとともに、再建住宅の取得等をして平成26年から平成29年までの間に居住の用に供した場合の再建住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)及び控除率は表8のとおりとされた(震災税特法13の2)。


Ⅵ 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法の改正
 内国法人及び外国法人の復興特別所得税の基準所得税額の計算の基礎となる所得の範囲に、割引債の償還金に係る差益金額が追加された(復興財確法10)。

Ⅶ その他
 租税特別措置法及び東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律の改正において、個人の事業所得等に係る特別税額控除及び特別償却、割増償却及び準備金制度について、法人税関係の改正とほぼ同様の改正が行われている。

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