解説記事2013年08月26日 【未公開裁決事例紹介】 情報提供料は交際費該当、仕入税額控除適用できず(2013年8月26日号・№512)
未公開裁決事例紹介
情報提供料は交際費該当、仕入税額控除適用できず
審判所、任意に支払う謝礼または心付けと指摘
○請求人が支払った情報提供料は措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当し、請求人は消費税法30条7項に規定する帳簿を保存しない場合に該当することから、仕入税額控除の適用はできないとされた事例。
基礎事実 請求人は、不動産の売買および仲介、建築設計などを目的として設立された法人であるが、××に解散した。××社は、平成17年4月28日に、不動産売買に関する情報提供に係る対価4,725,000円(以下「本件情報提供料」という)から振込手数料525円を差し引いた金員4,724,475円を××の普通預金口座へ振り込み、当該支出を外注費として損金の額に算入した。
請求人は、××に基づく調査を受けて提出した法人税に係る修正申告書において、本件情報提供料は請求人が負担すべきものであったとして、本件情報提供料の額4,725,000円を未払費用とし、本件情報提供料の額から消費税等の額を控除した金額4,500,000円を、平成17年3月期の当該修正申告書の別表四(所得の金額の計算に関する明細書)の「区分」の「減算」欄に「支払手数料認容」と記載して、損金の額に算入するとともに、消費税等に係る修正申告書において、本件情報提供料は課税仕入れに係る支払対価に該当し仕入税額控除の適用があるとして、平成17年3月課税期間の消費税に係る課税標準額に対する消費税額から本件情報提供料に係る消費税を控除した。
争点・主張 主な争点は、1.本件情報提供料は、措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するか否か。2.本件情報提供料は、課税仕入れに係る支払対価に該当し、仕入税額控除の適用があるか否か。当事者の主張は、表のとおり。
審判所の判断
(1)争点1について
イ 法令解釈等 措置法61条の4第3項の文言からすれば、法人が支出する特定の費用が「交際費等」に該当するというためには、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対して支出する費用であること、および事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るための費用として支出されることが必要であるとともに、支出に係る法人の行為の形態が、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であることを満たすことが必要である。そして、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のための費用として支出されたものか否かを判断するに当たっては、個別の事案の事実関係に即し、支出の対象が接待等の行為に該当するか否か、支出の目的が接待等のためといえるか否かを判断する必要があり、これらについては、当該支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断すべきであると解される。
なお、措置法通達61の4(1)-8の定めは、得意先や仕入先等の従業員等に対して支払う情報提供料や取扱手数料等が交際費等に含まれるかどうかが必ずしも判然としない面があることから、これらの費用のうち、正当な取引の対価として相当のものであれば損金算入を認めることとし、その判断基準として、①その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること、②提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること、③その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められることの全ての条件を満たすものについては、これを正当な対価として認め、交際費等に該当しないものとして取り扱うこととしたものであり、この取扱いは、上記措置法61条の4第3項の規定の趣旨に合致するものであって、当審判所においても相当と認められる。
ロ 当てはめ 上記の法令解釈等を前提に、本件情報提供料が交際費等に該当するか否かについて判断すると、次のとおりである。
A 支出の相手方 請求人は、不動産の売買および仲介を主たる事業種目とする法人であるところ、Aは、本件情報提供の当時、不動産管理等を業務目的とする××の××であったから、措置法61条の4第3項にいう「事業に関係のある者」に該当すると認められる。
B 支出の目的 本件情報提供料については、請求人とAとの間で事前に契約書等が作成されたわけではなく、不動産の売買契約が締結された後に支払の申出があり、その支払金額の基準は明確でないと認められ、本件情報提供から本件情報提供料の支払までの経緯からすれば、本件情報提供料は、事業の正当な役務提供の対価として契約等に基づき支払われたものではなく、任意に支払う単なる謝礼または継続した情報提供を期待した心付けとして支払われたものとみるのが相当である。
C 行為の形態 本件情報提供料は、上記のとおり、任意に支払う謝礼または心付けと認められ、これは、情報提供者であるA個人の歓心を得る行為に他ならないから、一般的にいえば、謝礼または金銭の贈答であって、「接待、供応、慰安、贈答その他これに類する行為」に該当する。
なお、本件情報提供料が、措置法61条の4第3項括弧書および措置令37条の5に規定する交際費等から除かれる費用に該当しないことは明らかである。
D 除外規定の適用の有無 金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものとは認められないことから、本件情報提供料は、措置法通達61の4(1)-8の定める交際費等から除かれる支出には該当しない。
E 結論 以上によれば、本件情報提供料は、措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するとするのが相当である。
(2)争点2について
イ 消費税法に規定する課税仕入れ 消費税法2条1項12号は、同法30条1項に規定する課税仕入れについて、「事業者が事業として、他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることをいう」旨規定している。
ロ 本件情報提供料の対価性の有無 本件情報提供料についてみると、本件情報提供料は、Aからの情報の提供に対する謝礼または継続した情報提供を期待した心付けとして支払われたものと認められ、一見、役務提供の対価とみる余地があるのではないかとの疑問が生ずる。しかしながら、本件情報提供料は、AではなくX社に対し支払われたものであり、X社から何らかの役務提供を受けたことに対する対価とは認められないから、その支出に、資産の譲受け、若しくは借受け、または役務の提供という対価性を認めることはできない。
ハ 本件情報提供料に係る帳簿および請求書等の保存の有無 消費税法30条7項の規定から、事業者は、「帳簿」および「請求書等」の双方とも保存する必要があるところ、請求人は、××を受けて、平成17年3月期の法人税に係る修正申告書を提出した際に、本件情報提供料から消費税等を控除した4,500,000円を、当該修正申告書の別表四(所得の金額の計算に関する明細書)の「区分」欄の「減算」欄に「支払手数料認容」と記載して、損金の額に算入したことからすると、帳簿に「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」「課税仕入れを行った年月日」「課税仕入れに係る資産又は役務の提供」および「課税仕入れに係る支払対価の額」の記載がないことは明らかである、また、当審判所の調査によっても、請求人は、災害その他やむを得ない事情により、帳簿の保存をすることができなかったとも認められない。
ニ まとめ 以上のとおり、本件情報提供料の額は、消費税法2条1項12号に規定する課税仕入れに該当すると認めることはできず、また、本件情報提供料について、請求人は消費税法30条7項に規定する帳簿を保存しない場合に該当することから、仕入税額控除の適用はできない。
情報提供料は交際費該当、仕入税額控除適用できず
審判所、任意に支払う謝礼または心付けと指摘
○請求人が支払った情報提供料は措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当し、請求人は消費税法30条7項に規定する帳簿を保存しない場合に該当することから、仕入税額控除の適用はできないとされた事例。
基礎事実 請求人は、不動産の売買および仲介、建築設計などを目的として設立された法人であるが、××に解散した。××社は、平成17年4月28日に、不動産売買に関する情報提供に係る対価4,725,000円(以下「本件情報提供料」という)から振込手数料525円を差し引いた金員4,724,475円を××の普通預金口座へ振り込み、当該支出を外注費として損金の額に算入した。
請求人は、××に基づく調査を受けて提出した法人税に係る修正申告書において、本件情報提供料は請求人が負担すべきものであったとして、本件情報提供料の額4,725,000円を未払費用とし、本件情報提供料の額から消費税等の額を控除した金額4,500,000円を、平成17年3月期の当該修正申告書の別表四(所得の金額の計算に関する明細書)の「区分」の「減算」欄に「支払手数料認容」と記載して、損金の額に算入するとともに、消費税等に係る修正申告書において、本件情報提供料は課税仕入れに係る支払対価に該当し仕入税額控除の適用があるとして、平成17年3月課税期間の消費税に係る課税標準額に対する消費税額から本件情報提供料に係る消費税を控除した。
争点・主張 主な争点は、1.本件情報提供料は、措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するか否か。2.本件情報提供料は、課税仕入れに係る支払対価に該当し、仕入税額控除の適用があるか否か。当事者の主張は、表のとおり。
【表】 争点1 情報提供料の交際費該当性について |
原処分庁 | 請 求 人 |
本件情報提供料は、次のことから交際費等に該当する。 ××の不動産に関する情報を提供したAは、当時、X社の支社長であったから、措置法61条の4第3項に規定する「事業に関係のある者等」に該当する。あらかじめ請求人とAとの間で、本件情報提供料に係る契約があった事実を証する書類はなく、措置法通達61の4(1)-8に定められた、情報提供料等が交際費等に該当しない場合の条件を満たさない。 本件情報提供料は、今後の取引関係の円滑な進行を図る目的で行われて金銭の贈答と判断するのが相当である。 | 本件情報提供料は、本来経費性が認められる実体の存する支出である。すなわち、A(X社)は不動産業者で、不動産取引に関する情報提供行為は、本来、その業務に属する行為であり、当然、有償であるべきものであるから、これに対する支出を交際費等に該当するとして、損金不算入とした原処分庁の処理は失当である。 |
争点2 仕入税額控除適用の有無について |
原処分庁 | 請 求 人 |
本件情報提供料は、謝礼金であると認められ、課税仕入れに係る支払対価には該当しないことから、仕入税額控除は適用できない。 | 本件情報提供料は、本来経費性が認められる実体の存する支出であり、課税仕入れに係る支払対価に該当するから、仕入税額控除の適用がある。 |
審判所の判断
(1)争点1について
イ 法令解釈等 措置法61条の4第3項の文言からすれば、法人が支出する特定の費用が「交際費等」に該当するというためには、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係ある者等に対して支出する費用であること、および事業関係者等との間の親睦の度を密にして取引関係の円滑な進行を図るための費用として支出されることが必要であるとともに、支出に係る法人の行為の形態が、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であることを満たすことが必要である。そして、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のための費用として支出されたものか否かを判断するに当たっては、個別の事案の事実関係に即し、支出の対象が接待等の行為に該当するか否か、支出の目的が接待等のためといえるか否かを判断する必要があり、これらについては、当該支出の動機、金額、態様、効果等の具体的事情を総合的に判断すべきであると解される。
なお、措置法通達61の4(1)-8の定めは、得意先や仕入先等の従業員等に対して支払う情報提供料や取扱手数料等が交際費等に含まれるかどうかが必ずしも判然としない面があることから、これらの費用のうち、正当な取引の対価として相当のものであれば損金算入を認めることとし、その判断基準として、①その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること、②提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること、③その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められることの全ての条件を満たすものについては、これを正当な対価として認め、交際費等に該当しないものとして取り扱うこととしたものであり、この取扱いは、上記措置法61条の4第3項の規定の趣旨に合致するものであって、当審判所においても相当と認められる。
ロ 当てはめ 上記の法令解釈等を前提に、本件情報提供料が交際費等に該当するか否かについて判断すると、次のとおりである。
A 支出の相手方 請求人は、不動産の売買および仲介を主たる事業種目とする法人であるところ、Aは、本件情報提供の当時、不動産管理等を業務目的とする××の××であったから、措置法61条の4第3項にいう「事業に関係のある者」に該当すると認められる。
B 支出の目的 本件情報提供料については、請求人とAとの間で事前に契約書等が作成されたわけではなく、不動産の売買契約が締結された後に支払の申出があり、その支払金額の基準は明確でないと認められ、本件情報提供から本件情報提供料の支払までの経緯からすれば、本件情報提供料は、事業の正当な役務提供の対価として契約等に基づき支払われたものではなく、任意に支払う単なる謝礼または継続した情報提供を期待した心付けとして支払われたものとみるのが相当である。
C 行為の形態 本件情報提供料は、上記のとおり、任意に支払う謝礼または心付けと認められ、これは、情報提供者であるA個人の歓心を得る行為に他ならないから、一般的にいえば、謝礼または金銭の贈答であって、「接待、供応、慰安、贈答その他これに類する行為」に該当する。
なお、本件情報提供料が、措置法61条の4第3項括弧書および措置令37条の5に規定する交際費等から除かれる費用に該当しないことは明らかである。
D 除外規定の適用の有無 金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものとは認められないことから、本件情報提供料は、措置法通達61の4(1)-8の定める交際費等から除かれる支出には該当しない。
E 結論 以上によれば、本件情報提供料は、措置法61条の4第3項に規定する交際費等に該当するとするのが相当である。
(2)争点2について
イ 消費税法に規定する課税仕入れ 消費税法2条1項12号は、同法30条1項に規定する課税仕入れについて、「事業者が事業として、他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けることをいう」旨規定している。
ロ 本件情報提供料の対価性の有無 本件情報提供料についてみると、本件情報提供料は、Aからの情報の提供に対する謝礼または継続した情報提供を期待した心付けとして支払われたものと認められ、一見、役務提供の対価とみる余地があるのではないかとの疑問が生ずる。しかしながら、本件情報提供料は、AではなくX社に対し支払われたものであり、X社から何らかの役務提供を受けたことに対する対価とは認められないから、その支出に、資産の譲受け、若しくは借受け、または役務の提供という対価性を認めることはできない。
ハ 本件情報提供料に係る帳簿および請求書等の保存の有無 消費税法30条7項の規定から、事業者は、「帳簿」および「請求書等」の双方とも保存する必要があるところ、請求人は、××を受けて、平成17年3月期の法人税に係る修正申告書を提出した際に、本件情報提供料から消費税等を控除した4,500,000円を、当該修正申告書の別表四(所得の金額の計算に関する明細書)の「区分」欄の「減算」欄に「支払手数料認容」と記載して、損金の額に算入したことからすると、帳簿に「課税仕入れの相手方の氏名又は名称」「課税仕入れを行った年月日」「課税仕入れに係る資産又は役務の提供」および「課税仕入れに係る支払対価の額」の記載がないことは明らかである、また、当審判所の調査によっても、請求人は、災害その他やむを得ない事情により、帳簿の保存をすることができなかったとも認められない。
ニ まとめ 以上のとおり、本件情報提供料の額は、消費税法2条1項12号に規定する課税仕入れに該当すると認めることはできず、また、本件情報提供料について、請求人は消費税法30条7項に規定する帳簿を保存しない場合に該当することから、仕入税額控除の適用はできない。
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