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解説記事2013年11月04日 【新会計基準解説】 企業結合に関する会計基準及び関連する他の改正会計基準等について(2013年11月4日号・№522)

新会計基準解説
企業結合に関する会計基準及び関連する他の改正会計基準等について
 企業会計基準委員会 専門研究員 北村幸子

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成25年9月13日に以下の企業会計基準及びその適用指針(以下「本会計基準等」という。)を公表した(脚注1)。
 本稿では、本会計基準等の概要を紹介するが、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめお断りしておく。


Ⅱ 本会計基準等の公表

1 改正の経緯
 平成19年8月に公表された「東京合意」(会計基準のコンバージェンスの加速化に向けた取組みへの合意)のもと、ASBJは、企業結合に関する会計基準等の見直しについて、いわゆるEU同等性評価に係る項目を対象とするステップ1とそれ以外の項目を対象とするステップ2とに区分してプロジェクトを進めることとしており、ステップ1については平成20年12月に完了した(脚注2)。
 その後、ASBJは、ステップ2として既存の差異に関連するプロジェクト項目の検討を行い、平成21年7月に、「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」(以下「論点整理」という。)を公表した。そして、一般から寄せられた意見を参考にしつつ審議を重ね、以下の項目を主な見直し内容とする「企業結合に関する会計基準(案)」を始めとした企業結合(連結を含む。)に関する一連の会計基準に係る公開草案を平成25年1月に公表した。
・少数株主持分(非支配株主持分)(脚注3)の取扱い
・取得関連費用の取扱い
・暫定的な会計処理の確定の取扱い
 本会計基準等は公開草案に対して一般から寄せられた意見を踏まえてさらに検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。

2 公開草案からの主な変更点
(1)非支配株主との取引に係る個別財務諸表上の取扱い
 本会計基準等の公開草案では、非支配株主から自社の株式のみを対価として追加取得する子会社株式の取得原価は、当該子会社の適正な帳簿価額(子会社の資産及び負債の帳簿価額を連結上修正しているときは、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額)による株主資本の額に基づいて算定することを提案していた。
 この提案に対して、連結財務諸表上における非支配株主との取引の会計処理と個別財務諸表上の子会社株式の取得原価の算定とは別個の問題であるという意見や、1株当たり純資産と比較して株価が著しく低い子会社の株式を追加取得した時には親会社の個別財務諸表において追加取得した直後に減損処理となることが実務上起こり得ること、さらには取得対価に一部現金が含まれている場合や当該子会社の連結上の帳簿価額が負の値である場合等の取扱いの検討も必要であるという指摘があった。
 これらのコメントを踏まえて検討した結果、個別財務諸表上の子会社株式の取得原価を、当該株式の時価又は支出した対価となる財の時価で測定しても、連結財務諸表上その金額と減少する非支配株主持分の金額との差額は資本剰余金となり、のれんは計上されないため、時価を基礎とすることに対して示されていた論点(脚注4)に対応する必要性は低いと考えられること、また、現行の処理を変える必要性は大きくないことなどから、非支配株主から追加取得する子会社株式の取得原価は、現行の取扱いを継続し、追加取得時における当該株式の時価とその対価となる財の時価のうち、より高い信頼性を持って測定可能な時価で算定することとした(企業結合会計基準第45項)。
(2)子会社株式の一部売却時におけるのれんの未償却額の取扱い  公開草案では、子会社株式の一部売却時に売却した株式に対応するのれんの未償却額についても減額することを提案していた。
 しかし、公開草案に寄せられたコメントを踏まえた審議の過程で、支配が継続している限り、償却や減損を除きのれんを減額させるべきではないとの意見や、支配獲得後の追加取得時にはのれんが追加計上されないのに対して一部売却時にのれんを減額すると、追加取得時の会計処理と整合した取扱いにはならないという意見があった。
 これらを踏まえて検討した結果、一部売却時におけるのれんの未償却額の取扱いについては、減額する方法及び減額しない方法のそれぞれに一定の論拠があると考えられるが、のれんを減額する場合における実務上の負担や、のれんを減額しないこととしている国際的な会計基準における取扱等を総合的に勘案して、親会社と子会社の支配関係が継続しているときは、子会社株式を一部売却した場合に支配獲得時に計上したのれんの未償却額を減額しないこととした(連結会計基準第28項)。
(3)非支配株主との取引及び取得関連費用の取扱いについての経過措置  公開草案では、本会計基準等の適用にあたっては、非支配株主との取引及び取得関連費用の取扱いについて企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24号」という。)に従い遡及適用を行うこととするが、遡及適用を行わないこともできるとしていた。これに対して、寄せられたコメントを踏まえて検討を行った結果、遡及適用に係る実務上の負担を考慮して、非支配株主との取引及び取得関連費用について過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、適用初年度の期首の資本剰余金及び利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することとした。また、当該方法によらず、適用初年度の期首から新たな会計方針を適用することもできることとした。
(4)資本剰余金が負の値となる場合の取扱いの追加  本会計基準等における非支配株主持分の取扱の変更に伴い、資本剰余金が負の値となることが想定されるため、その場合の取扱いの明確化を求めるコメントが公開草案に寄せられたことを受けて、その取扱いを追加したものである。この場合は企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」第40項と同様に、連結会計年度末において、資本剰余金を零とし、当該負の値を利益剰余金から減額することとした(脚注5)(連結会計基準第30-2項)

Ⅲ 本会計基準等における改正の概要

1 非支配株主持分の取扱い
(1)支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動
 ① 検討の経緯
 改正前の会計基準では、次のような支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動(以下「子会社株式の追加取得等」という。)は損益を計上する取引とされていた。
・子会社株式の追加取得
・子会社株式の一部売却
・子会社の時価発行増資等
 一方、国際的な会計基準において、子会社株式の追加取得等は資本取引とされており、我が国の取扱いと必ずしも同じではないため、当該取扱いを見直すかどうか検討された。論点整理では、親会社株主と非支配株主とではリスク及びリターンは大きく異なり、親会社株主に係る成果とそれを生み出す原資に関する情報が投資家の意思決定に有用であると考えられるとし、従来どおりの考え方(親会社投資の視点)を示していた。これに対し、論点整理へのコメントやASBJの審議においては、国際的な会計基準と同様に子会社株式の追加取得等を資本取引とすべきという意見が多くみられた。
 我が国が重視する親会社株主の視点からは、国際的な会計基準と同様の会計処理を行うことを導き出すことは必ずしも容易ではないものの、改正前の会計処理方法は、例えば、連結子会社による当該連結子会社の自己株式の取得と処分又は非支配株主への第三者割当増資とを繰り返された場合、親会社の投資に生じている評価益のうち、持分比率が上がった部分はのれんに計上され、持分比率が下がった部分は損益に計上されることが実務上起き得る等の課題が指摘されてきており、このような指摘に対して最も簡潔に対応する方法が、損益を計上する取引の範囲を狭めることであるとも考えられた(連結会計基準第51-2項)。
 ② 本会計基準等の取扱い  上記の点を総合的に勘案し、本会計基準等では、子会社株式の追加取得等により生じた親会社の持分変動による差額を連結財務諸表においては資本剰余金とすることとした。子会社株式の追加取得等について改正後と改正前の取扱いを比較すれば、図表1のようになる(連結会計基準第28項から第30項)。

 また、これらの取扱いは、連結会計基準における定めであるため、持分法を適用している関連会社については、現行の会計処理からの変更はない。持分法を適用している非連結子会社においては、連結の範囲から除いても連結財務諸表に与える重要性が乏しいために持分法を適用していることを踏まえると、関連会社と同様の取扱い、連結子会社と同様の取扱のいずれも認められると考えられる。
(2)少数株主持分から非支配株主持分への変更  本会計基準等では、改正前の会計基準における「少数株主持分」を「非支配株主持分」に変更することとした(連結会計基準第26項)。これは、他の企業の議決権の過半数を所有していない株主であっても他の会社を支配し親会社となることがあり得るため、より正確な表現とするためである。これに合わせて、本会計基準等では改正前の会計基準における「少数株主損益」を「非支配株主に帰属する当期純利益」としている(連結会計基準55-2項)。
(3)当期純利益の表示
 ① 検討の経緯
 国際的な会計基準において、連結損益計算書における当期純利益には非支配株主に帰属する当期純利益を含めて表示することとされており、我が国の取扱いと必ずしも同じではないため、当該取扱いを見直すかどうか検討された。論点整理では、従来どおりの考え方を示していたが、論点整理へのコメントやASBJの審議においては、国際的な会計基準と同様に連結損益計算書における当期純利益には非支配株主に帰属する当期純利益を含めて表示することにより、比較可能性の向上を図るべきという意見が多くみられた(連結会計基準第51-3項)。
 ② 本会計基準等の取扱い  本会計基準等では、上記を踏まえ、当期純利益には非支配株主に帰属する部分も含めることとした(連結会計基準第39項)。前述(2)とあわせて、本会計基準等における連結財務諸表の表示に関する取扱いについて、改正前の取扱いと比較すれば、図表2のようになる。

 なお、2計算書方式の場合の連結損益計算書、1計算書方式の場合の連結損益及び包括利益計算書の表示については、(参考資料)連結財務諸表の表示例を参照されたい。
 また、本会計基準等では、連結財務諸表上、従来と同様に親会社株主に帰属するもののみを「株主資本」として表示することとしている。これは、親会社株主に係る成果とそれを生み出す原資に関する情報は投資家の意思決定に引き続き有用であると考えられたこと等を踏まえたものである(連結会計基準第51-3項及び第55項)。EPS会計基準についても当期純利益の表示の取扱いの改正に伴い所要の改正を行っており、一株当たり当期純利益の算定は、連結財務諸表においては、親会社株主に帰属する当期純利益を基礎として算定することとしている(EPS会計基準第12項)。
 上記の表示に関する取扱いの変更に伴い、純資産会計基準、包括利益会計基準、株主資本会計基準、についても所要の改正を行っている。
(4)注 記  連結財務諸表においては、子会社株式の追加取得等によって生じた親会社の持分変動による差額については、「非支配株主との取引に係る親会社の持分変動に関する事項」として増加又は減少した資本剰余金の主な変動要因及び金額を注記により開示することとした(企業結合会計基準第52項(4))。
 なお、四半期会計期間においては、当該注記は要求されていないが、重要な持分変動があった場合には、四半期財務諸表に関する会計基準(以下、「四半期会計基準」という。)第25項(11)において「株主資本の金額に著しい変動があった場合には、主な変動事由」を注記することとされており、当該定めに基づき注記を行うこととなると考えられる。

2 取得関連費用の取扱い
(1)検討の経緯
 改正前の企業結合会計基準では、取得とされた企業結合に直接要した支出額のうち、取得の対価性が認められる外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等は取得原価に含めることとしていた。これは、取得はあくまで等価交換取引であるという考え方を重視し、取得企業が等価交換の判断要素として考慮した支出額に限って取得原価に含めることとしたためである。また、この場合、企業結合における取得関連費用をその取得原価に含めることにより、その後の損益は、企業結合において投資した原価の超過回収額となり、概念的には個別に取得した資産と一貫した取扱いとなるとも考えられた。
 一方、国際的な会計基準では、取得関連費用は事業の売主と買主の間の公正な価値での交換の一部ではなく、企業結合とは別個の取引と考えられること、取得関連費用のうち直接費が取得原価に含まれる一方で間接費は除かれる点が不整合であること等の理由から、発生した事業年度の費用として取り扱っている。
 また、論点整理に寄せられたコメントの中には、継続的に資産を購入する場合と異なり、企業結合においては、取得関連費用のどこまでを取得原価の範囲とするかについて、実務上議論となることも多いという意見があった。
 これらを踏まえ、改正企業結合会計基準では、国際的な会計基準に基づく財務諸表との比較可能性を改善する観点や、取得関連費用のどこまでを取得原価の範囲とするかという実務上の問題点を解消する観点から、取得関連費用を発生時の費用として処理することとしたものである(企業結合会計基準第94項)。
(2)会計処理
 ① 企業結合における取扱い
 企業結合における取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、改正前の企業結合会計基準では、これらの費用のうち、取得の対価性が認められるものについては取得原価に含めることとしていたが、改正企業結合会計基準では、発生した事業年度の費用として処理することとしている(企業結合会計基準第26項)。
 また、これらの取扱いは、連結会計基準における定めであるため、持分法を適用している関連会社については、現行の会計処理からの変更はない。持分法を適用している非連結子会社においては、連結の範囲から除いても連結財務諸表に与える重要性が乏しいために持分法を適用していることを踏まえると、関連会社と同様の取扱い、連結子会社と同様の取扱いのいずれも認められると考えられる。
 なお、段階取得により支配を獲得した場合は、支配を獲得する前に購入した株式の取得原価には付随費用が含められていると考えられるが、これらの付随費用については、企業結合会計基準第25項の段階取得の会計処理の定めに従って会計処理が行われた結果、企業結合日の属する事業年度の段階取得に係る損益に含められて費用処理されるものと考えられる。
 ② 個別財務諸表における取扱い  子会社株式の取得原価は、従来と同様に、金融商品会計基準及び日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)に従って算定されるとしている(企業結合会計基準第94項)。具体的には、金融商品会計実務指針第56項の付随費用の取扱い等が該当すると考えられる。
(3)注 記  発生した事業年度の費用として処理された取得関連費用のうち、主要な取得関連費用については、その内容及び金額を注記により開示することが求められている(企業結合会計基準第49項)。改正前の企業結合会計基準においては、取得の対価性が認められる取得関連費用は取得原価に含められていたため、取得関連費用は取得原価の内訳としての注記が要求されていた。改正企業結合会計基準においては、取得関連費用は発生した事業年度の費用として処理することとなったが、当該情報は、企業結合の実態を把握するに当たり引き続き有用な情報であること、また、国際的な会計基準においても注記が要求されていることを参考にして、取得関連費用の金額の注記を求めることとしたものである。ただし、注記を求めることとしたこれらの趣旨に鑑みれば、すべての取得関連費用を網羅的に集計して注記する必要性は乏しいことから、企業結合の規模等を考慮して、取得関連費用のうち、主要な取得関連費用について、その内容と金額の注記を求めることとした(企業結合会計基準第126-2項)。
 なお、四半期においては、四半期会計基準が開示の適時性を重視していることを考慮して、主要な取得関連費用の内容及び金額の注記を四半期会計基準においては要求しておらず、四半期段階では注記を要しないものと考えられる。

3 暫定的な会計処理の確定の取扱い
(1)改正の経緯
 取得とされた企業結合においては、取得企業は、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち、企業結合日時点において識別可能なものの時価を基礎としてそれらに対して取得原価を配分することとなり、その配分は企業結合日以後1年以内に行うこととされている(企業結合会計基準第28項)。したがって、企業結合日以後の決算において、配分が完了していなかった場合には、その時点で入手可能な合理的な情報に基づいて暫定的な会計処理を行い、その後追加的に入手した情報等に基づき配分額を確定させることとなる。
 暫定的な会計処理の確定が、企業結合年度ではなく企業結合年度の翌年度において行われた場合には、企業結合年度の財務諸表は既に確定しているため、改正前の企業結合会計基準では、企業結合年度に当該見直しが行われたとした時の損益影響額は、企業結合年度の翌年度(会計処理の確定した年度)において、原則として特別損益(前期損益修正)に計上することとされていた。
 改正企業結合会計基準においては、平成21年12月に企業会計基準第24号が公表されたことを契機として検討を行い、比較情報の有用性を高める観点から、暫定的な会計処理の確定が企業結合年度の翌年度において行われた場合の取扱いについて、見直しを行ったものである。
(2)会計処理  改正企業結合会計基準では、企業会計基準第24号の公表を踏まえて検討を行った結果、暫定的な会計処理の確定が企業結合年度の翌年度に行われた場合には、企業結合年度に当該確定が行われたかのように会計処理を行うこととしている。したがって、企業結合年度の翌年度の連結財務諸表及び個別財務諸表(以下合わせて「財務諸表」という。)と併せて企業結合年度の財務諸表を表示するときには、当該企業結合年度の財務諸表に暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分の見直しを反映させる(企業結合会計基準(注6))。
(3)開 示
 ① 取得とされた企業結合の注記事項
 企業結合年度の翌年度において、暫定的な会計処理が確定し、それに伴い取得原価の当初配分額に重要な見直しがなされた場合には、当該見直しがされた事業年度において、その見直しの内容及び金額を注記することが求められている(企業結合会計基準第49-2項)。
 改正企業結合会計基準においては、企業結合年度の翌年度に行われた暫定的な会計処理の確定は、企業結合年度に当該確定が行われたかのように会計処理を行うこととされたため、企業結合年度の翌年度の財務諸表と併せて企業結合年度の財務諸表を表示するときには、当該企業結合年度の財務諸表には暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しが反映される。したがって、暫定的な会計処理の確定がされた年度においては、財務諸表の比較可能性は確保されることとなる。一方で、取得原価の配分額の重要な見直しが行われた場合は、のれんや受け入れた資産、引き受けた負債の金額に重要な変動が生じることとなり、公表済みの前年度の財務諸表(四半期財務諸表を含む。)からどのような見直しが行われたかの情報は有用であると考えられることから、重要な見直しが行われた場合に、その見直しの内容及び金額の注記を求めることとしたものである。当該注記は、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合には、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができる。
 また、重要な見直しが行われた四半期会計期間においても、その見直しの内容及び金額を注記することが求められている(四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針第66項(2))。
 なお、暫定的な会計処理を行った場合、企業結合年度においては従来と同様に重要な企業結合に関する事項の注記事項として、取得原価の配分が完了していない旨及びその理由を注記することに留意が必要である(企業結合会計基準第49項(4)③)。
 ② 株主資本等変動計算書の表示方法  企業結合年度の翌年度に暫定的な会計処理の確定が行われた場合で、確定が行われた年度の株主資本等変動計算書のみの表示が行われる場合には、当該年度の株主資本の期首残高に対する、見直しによる影響額を区分表示するとともに、見直しの反映後の期首残高を記載する(株主資本等変動計算書に関する会計基準第5-3項)。
 なお、企業結合年度の株主資本等変動計算書とその翌年度(暫定的な会計処理が確定した年度)の株主資本等変動計算書が併せて表示が行われる場合は、企業結合年度の株主資本等変動計算書において、見直しの反映が行われるため、企業結合年度の株主資本等変動計算書の各項目の期末残高と確定した年度の期首残高との整合が保たれることとなるため、見直しによる影響額を区分表示する必要はないと考えられる。
 ③ 1株当たり当期純利益の算定  企業結合年度の財務諸表に暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しが反映されている場合は、企業結合年度の翌年度の財務諸表と併せて表示する企業結合年度の財務諸表の1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益は、当該見直しが行われた後の金額により算定することとなるため留意が必要である(1株当たり当期純利益に関する会計基準第30-6項)。また、1株当たり純資産額の算定についても同様に、取得原価の配分の見直し後の金額により算定することとなる(1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針第36-3項)。

Ⅳ 適用時期等
 本会計基準等の適用時期等は図表3のとおりである(企業結合会計基準第58-2項、連結会計基準第44-5項及び事業分離会計基準第57-4項)。

 なお、本会計基準の適用初年度においては、企業会計基準第24号第10項(1)から(6)に定める、所定の注記を行うことに留意が必要である。


脚注
1 本会計基準等の全文については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/bc_revise_2012ed/)を参照のこと。
2 ステップ1では、持分プーリング法の廃止、取得企業の決定方法、株式の交換の場合における取得原価の算定方法、段階取得における取得原価の会計処理、負ののれんの会計処理、企業結合により受け入れた研究開発の途中段階の成果の会計処理等の項目が対象とされ、平成20年12月に企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」等を公表した。
3 本会計基準等では後述のとおり少数株主持分を非支配株主持分に変更することとした。なお、過去の経緯等を示す場合にも、便宜上、非支配株主持分の用語を使用している場合がある。
4 自社の株式を対価として追加取得した子会社株式の取得原価を時価で計上した場合、連結上のれんが計上され償却することになるが、全面時価評価法の下でそれが適当なのか、という点が指摘されていた(企業結合会計基準第120項)。
5 連結財務諸表においては、資本剰余金を区分しないことから、この取扱いは、資本剰余金全体が負の値となる場合であることに留意する必要がある。
6 早期適用する場合には、③の取扱いを除いてすべてを同時に適用する必要がある。

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