解説記事2013年11月18日 【最新判決研究】 相続により取得した不動産に係る譲渡所得税と相続税の二重課税問題(2013年11月18日号・№523)
最新判決研究
相続により取得した不動産に係る譲渡所得税と相続税の二重課税問題
東京地裁平成25年7月26日判決(平成24年(行ウ)第354号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)X(原告)は、平成19年8月7日、夫甲(以下「本件被相続人」という。)の死亡により、広島県廿日市市所在の土地及び建物(以下「本件物件1」という。)並びに東京都大田区所在のマンション(以下「本件物件2」といい、本件物件1と併せて「本件各不動産」という。)を相続(以下「本件相続」という。)により取得した。Xは、平成20年5月26日、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の申告書を所轄税務署長に提出し、課税価格の計算上、本件物件1の価額を3,401万円余及び本件物件2の価額を618万円余として計算した。
次いで、Xは、平成21年9月26日、本件物件1を代金3,000万円で譲渡し、同年11月7日、本件物件2を代金1,150万円で譲渡した(以下「本件各譲渡」という。)。
(2)そして、Xは、平成22年3月15日、平成21年分所得税の確定申告につき、本件各譲渡に係る分離長期譲渡所得の金額を754万円余(以下「本件譲渡所得金額」という。)とし、納付すべき税額134万円余を納付した。しかし、Xは、平成22年7月12日、本件譲渡所得金額は既に相続税の課税対象となった経済的価値と同一の経済的価値(相続税評価額)であるから、所得税法9条1項15号の規定(平成22年改正前のもの、以下「本件非課税規定」という。)により、非課税とすべきであること等を理由に、本件譲渡所得金額を零円とし、納付すべき税額を21万円余とする平成21年分所得税の更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をした。
これに対し、処分行政庁は、本件各譲渡について本件非課税規定の適用はないとし、計算誤り等を理由に、本件譲渡所得金額を721万円余及び納付すべき税額を129万円余とする更正(以下「本件更正」という。)をした。Xは、本件更正を不服とし、前審手続を経て、国(被告)に対し、その取り消しを求めて、本訴を提起した。
二、争点及び当事者の主張
1 争 点 本件各譲渡に係る譲渡所得の計算において、相続税の課税対象となった経済的価値と同一の経済的価値(相続税評価額、すなわち①被相続人の取得価額と②被相続人の保有期間中の増加益との合計額)の部分は、本件非課税規定により譲渡収入金額から控除し、非課税とすべきか否か。
2 国の主張 次のとおり、本件各譲渡に係る譲渡所得のうち本件被相続人の保有期間中の増加益部分について本件非課税規定の適用はなく、この増加益を非課税所得と解する余地はない(以下、最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決・裁判集民事216号279頁を「平成17年最判」といい、最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決・民集64巻5号1277頁を「平成22年最判」という。)。
(1)所得税法は、被相続人の保有期間中の増加益を所得税の課税対象とすることを予定して取得価額の引継ぎの規定(同法60①一)を設けており、同法60条1項1号は、譲渡所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなすと規定し、「取得価額の引継ぎ」の方法により、相続時には被相続人の保有期間中の増加益に対する課税を繰り延べ、相続人が相続により取得した資産を譲渡した段階で、前所有者の保有期間の資産の増加益も含めて所得税を課税するものとしている。
(2)取得価額の引継ぎによる課税の方法について、平成17年最判は、譲渡所得課税の趣旨からすれば、贈与、相続又は遺贈であっても、その時の価額に相当する金額により資産の譲渡があったものとみなして譲渡所得課税がされるべきであるが、所得税法60条1項1号所定の贈与等にあっては、その時点では資産の増加益が具体的に顕在化せず、納税者の納得を得難いため、課税を留保し、その後受贈者等が資産を譲渡し増加益が具体的に顕在化した時点において、清算して課税することとしたものであって、上記規定の本旨は増加益に対する課税の繰述べにあると判示している。
(3)租税特別措置法(以下「措置法」という。)39条が創設されたのは、相続税の課税対象となった相続財産につき、相続税の性格からみて、その納税のため相続財産の一部を処分しなければならないことがあることはやむをえないことであるが、その処分をした相続人に対し、その相続財産に係る相続税のほか、被相続人の所有期間に生じた所得を含めて所得税を課税する方式をとっているため、負担が重いという意見を踏まえ、昭和44年の税制調査会の答申によって、政策的観点から創設されたものである。
(4)平成22年最判は、相続税法24条によって評価がされている財産、すなわち「定期金に関する権利」について判示したものであるから、本件における不動産の譲渡所得にはその射程は及ばない。
3 Xの主張 次のとおり、本件各譲渡に係る譲渡所得のうち相続税の課税対象となった経済的価値と同一の経済的価値については、本件非課税規定により譲渡収入金額から控除され、所得税を課されないというべきである。
(1)平成22年最判がいう「相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値」は、定期金に限らず、全ての経済的価値を意味するものであり、上記判示は普遍的な形で本件非課税規定の趣旨を明らかにしたものというべきである。すなわち、平成22年最判は、本件非課税規定による相続税又は贈与税と所得税との二重課税の排除の対象について、相続時の相続財産の取得という所得にとどまるとする従来の解釈を否定し、非課税所得とされた所得が後に実現した場合の所得にも及ぶことを明確にしたものというべきである。よって、同判決は、定期金の受取額はもちろん、不動産の譲渡収入、株式の売却収入など、同一の状況にあるものは全て同判決の射程に入るというべきである。
(2)平成22年最判が、本件非課税規定による相続税又は贈与税と所得税との二重課税の排除の対象について、相続時の相続財産の取得という所得にとどまるとする従来の解釈を否定し、非課税所得とされた所得が後に実現した場合の所得にも及ぶとしたため、平成22年最判以前において所得税法33条3項の「総収入金額」に含められて課税所得として取り扱われていた非課税所得の実現額は「総収入金額」から排除されなければならないことになった。所得税法は、9条において非課税所得を規定し、その後の33条、38条、59条、60条等において譲渡所得の金額等についての具体的な計算規定を定めているが、それらの関係規定の適用上、同法9条に定める非課税所得に該当した場合には、当該所得は当然に所得税法の課税対象から除外され、同法上のその後の規定によって課税所得に含まれることがないことは、所得税法の規定の構造上当然である。すなわち、所得税法9条は、「第一編 総則」「第三章 課税所得の範囲」に規定される条文であり、同法33条、38条、59条、60条は「第二編 居住者の納税義務」「第二章 課税標準及びその計算並びに所得控除」「第二節 各種所得の金額の計算」に含まれる条文であるから、所得税法9条の総則規定が、それよりも下位の条文によって変更・拘束される
と解することはできない。
(3)措置法39条が創設されたのは、相続税の課税対象となった相続財産を相続後に譲渡した場合の譲渡所得税の計算において、非課税所得の実現額について本件非課税規定を適用しないとする取扱いが行われていたからである。しかし、平成22年最判によって非課税所得の実現額については本件非課税規定が適用され、非課税となるのであるから、措置法39条の調整措置を必要とする状況は既に消滅している。
(4)本件各不動産の譲渡収入金額4,150万円には、相続税の課税対象となる経済的価値(相続税評価額)と同一の経済的価値4,020万円余(被相続人の取得価額2,906万円余と被相続人の保有期間中の増加益1,114万円余の合計額)が含まれているが、これは本件非課税規定によって非課税とされた所得が実現したものであるから、本件各不動産の譲渡収入金額(所得税法33条3項の総収入金額)から排除される。
三、判決要旨
請求棄却。 (1)譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益(キャピタル・ゲイン)を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものである(最高裁昭和47年12月26日第三小法廷判決・民集26巻10号2083頁、最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決・民集29巻5号641頁参照)。そして、所得税法上は、抽象的に発生している資産の増加益そのものが課税の対象となっているわけではなく、原則として、資産の譲渡により実現した所得が課税の対象とされている(最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決・裁判集民事220号141頁参照)。
(2)上記の譲渡所得課税の趣旨からすれば、贈与、相続又は遺贈であっても、当該資産についてその時における価額に相当する金額により譲渡があったものとみなして譲渡所得課税がされるべきところ(所法59①参照)、所得税法60条1項1号所定の贈与等にあっては、その時点では資産の増加益が具体的に顕在化しないため、その時点における譲渡所得課税について納税者の納得を得難いことから、これを留保し、その後受贈者等が資産を譲渡することによってその増加益が具体的に顕在化した時点において、これを清算して課税することとしたものである。そして、同項の規定により、受贈者等の譲渡所得の金額の計算においては、贈与者等が当該資産を取得するのに要した費用が引き継がれ、課税を繰り延べられた贈与者等の資産の保有期間に係る増加益も含めて受贈者等に課税されることになる(平成17年最判参照)。
このように、相続により取得した資産に係る譲渡所得に対する課税は、①被相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益と②相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益とを合計し、これを所得として、その資産が後に譲渡された時点において、上記の所得が実現したものと取り扱って所得税の課税対象としているものであるということができる。
(3)平成22年最判は、本件非課税規定について判示した部分において、非課税の対象を、「当該財産の取得によりその者に帰属する所得」とし、同所得とは、「当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値」であるとしていることからすると、Xが主張するように解する余地がないではない。しかし、平成22年最判で問題とされた所得は、相続人が原始的に取得した生命保険金に係る年金受給権に係るものであるところ、この年金受給権は、それを取得した者において一時金による支払を選択することにより相続の開始時に所得を実現させることができ、その場合には本件非課税規定が適用されることとの均衡を重視して、平成22年最判は、年金による支払を選択した場合においても、年金受給権の金額を被相続人死亡時の現在価値に引き直した価額に相当する部分は、相続税法の課税対象となる経済的価値と同一のものということができるとして本件非課税規定の適用を認めたものと理解することができ、そうであるとすれば、年金による支払を選択した場合であっても、現在価値に引き直した価額に相当する部分については相続の開始時に実現した所得として取り扱っていると理解することができる。
これに対し、本件で問題とされている所得は、所得税法60条1項1号により、相続人が被相続人から承継取得した不動産を更に譲渡した際に実現するものと取り扱われるものであって、同号が存在する以上、単純承認をした相続人は、相続時点において被相続人の保有期間中に蓄積された増加益を実現させるという選択ができないという点で、平成22年最判で問題とされた所得とはその性質を異にするものである。そして、平成22年最判の判示には、原審及び第1審の各判決の判示とは異なり、本件非課税規定が被相続人の死亡後に実現する所得に対する課税を許さない趣旨のものか否かという点に関する明示的な言及がなく、また、平成22年最判が是認することができないとした原審の判断の内容(平成22年最判の判示3の部分)には、その点に関する原審の判断部分が引用されていない。これらの点からすると、平成22年最判は、本件非課税規定が、相続時には非課税所得とされた所得が後に実現するものと取り扱われて課税される場合の所得にも一般的に適用される旨を判示したものということはできないと解すべきである。
また、相続人が被相続人から相続により取得した資産を譲渡した場合、当該資産の譲渡により帰属する所得は、①被相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益と②相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益とによって構成されるところ、上記譲渡所得に対する所得税の課税対象となる被相続人の保有期間中の増加益は、被相続人の保有期間中にその意思によらない外部的条件の変化に基因する資産の値上がり益として抽象的に発生し蓄積された資産の増加益が相続人によるその資産の譲渡により実現したものである。そうすると、被相続人の保有期間中の増加益に対する譲渡所得税の課税は、被相続人の下で実現しなかった値上がり益(被相続人固有の所得)への課税を相続人の下で行おうとするものであり、理論的には被相続人に帰属すべき所得として被相続人に課税されるべきものであるから、相続人が相続により取得した財産の経済的価値に対して二重に課税されるという評価は当を得ないものである。
(4)Xは、本件非課税規定による二重課税の排除は非課税所得とされた所得が後に実現した場合の所得にも及び、当該所得は当然に所得税法の課税対象から除外されるから、同法33条、38条、59条、60条等の規定によって課税所得に含まれることはない旨主張する。しかし、上記のとおり、本件非課税規定が、相続時に非課税所得とされた所得が後に実現するものと取り扱われて課税される場合の所得にも一般的に適用されるとはいえないから、Xの上記主張はその前提を欠くものというべきである。また、仮にXの主張に従い、被相続人の保有期間中の増加益について本件非課税規定の適用があるものとするならば、譲渡所得の金額の計算上、所得税法38条、60条1項1号の適用により、被相続人の取得価額に相当する金額が二重に控除されることとなるが、そのことにはおよそ合理性がない。逆に、所得税法60条1項1号を適用しないというのであれば、同法はおよそ適用の余地のない定めを設けたことになり、同法が60条1項1号の規定と本件非課税規定をそのようなものとして定めているとは考え難い。
(5)Xは、平成22年最判によって、相続により取得した年金受給権に基づく年金を受け取る国民に対しては本件非課税規定によって同一の経済的価値に対する相続税と所得税との二重課税の排除が認められるにもかかわらず、Xのように、相続により取得した不動産を譲渡した国民については二重課税の排除が認められないとするならば、それは本件非課税規定の解釈を誤った処分であり、租税公平主義ないし憲法14条1項に反する旨主張する。
しかし、前記のとおり、相続により取得した資産の譲渡に係る譲渡所得については、所得税法60条1項1号の定めがあり、所得税法は、被相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益について、相続人が相続により取得した財産の経済的価値が相続人に対する相続税の課税対象となることとは別に、相続人に対する所得税の課税対象となることを予定しているものである。所得税法60条1項1号は、その文言から明らかなとおり、相続等により取得した資産を他に譲渡してその対価を取得する場合についての課税の繰延べを定めた規定であり、平成22年最判における生命保険年金のように、相続税法の規定により相続等により取得したものとみなされる資産としての年金受給権について、これを他に譲渡するのではなくその本旨に従って行使することによりその支分権としての年金を取得する場合についての課税の繰延べを定めた規定ではない。
以上のように、相続により取得した年金受給権に基づく年金を受け取る場合と、相続により取得した不動産を譲渡した場合との間には、上記のような違いがあることからすれば、その課税関係に差異を生じることが租税公平主義ないし憲法14条1項に反するとはいえない。
四、解説
はじめに 本件は、相続により取得した不動産(本件各不動産)を譲渡(本件各譲渡)し、当該譲渡の譲渡所得に係る所得税が相続税と二重課税になるか(本件非課税規定の適用)否かが争われたものである。本件のような二重課税問題は、かねてより議論されてきたところであるが、所得税と相続税とは税目が異なるから、二重課税ではないとする見解が説得的であった。また、それを理論づけるために、所得税法60条1項の存在が指摘されてきた。
しかし、Xが問題提起し、本判決の審理において最も問題となった平成22年最判が、生命保険契約における死亡後の年金受給に対する所得税課税について本件非課税規定を適用したことを契機に、その論理が本件のような不動産の譲渡所得課税にも通じるべきであるとする議論を惹起した。本件の訴訟提起も、当該議論に触発されたものと言える。
もっとも、死亡保険年金のような定期金と不動産とでは、後者について所得税法60条1項の存在のような課税上の構造的差異がある。しかし、そのような差異自体も、シャウプ税制以降の所得税税制の変遷を考察した場合には、差異の存在自体にも多くの疑問がある。
そこで、本稿では、所得税法における不動産の譲渡所得課税と本件非課税規定との関係を考察し、平成22年最判の内容(注1)とその射程を検討し、本判決の当否を検討することとする。
1 相続により取得した不動産の譲渡所得課税 (1)所得税法上、「譲渡所得とは、資産の譲渡(〈略〉)による所得をいう。」(所法33①)とされ、当該所得から、たな卸資産の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得(事業所得又は雑所得に該当するもの)等は除かれる(所法33②)。この場合の「資産」には、相続、贈与等により取得したものも含まれる。また、「譲渡」には原則として、資産の贈与、相続等によって当該資産が移転した場合も含むと解されている(注2)。よって、これらの規定は、本件のような相続によって本件不動産が甲からXへ移転した場合には、原則として、甲が本件不動産を譲渡したものとして、譲渡所得課税を予定していることになる。
また、譲渡所得の金額は、「それぞれの年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の合計額を控除し」(所法33③)て算定することにしている。そして、この場合の「取得費」とは、「別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。」(所法38①)と定められている。
かくして、相続によって取得した資産を当該相続人が譲渡した場合には、別段の定めを除けば、当該相続段階で被相続人が支払うべき所得税額を当該相続人が支払うことになるので、当該相続人にとっての当該資産の「取得費」は、当該被相続人の譲渡価額(当該資産の時価)から当該相続人が支払う所得税額を控除した額であるものと解される。
(2)しかしながら、所得税法は、上記の「別段の定め」について、次のような規定を設けている。まず、所得税法59条1項は、「贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)」により、山林所得又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、「その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなす。」と定めている。よって、単純な贈与、相続又は遺贈によって資産が移転した場合には、前述の所得税33条各項の適用がないこととなり、所得税36条1項に定める総収入金額も生じないこととなる。
そして、所得税法60条1項は、居住者が「贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)」により取得した同法59条1項に規定する資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額等の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす、と定めている。この規定によって、本件のような課税問題が生じることになる。
ところで、昭和25年の所得税法は、「生前によると死亡によるとを問わず、資産が無償移転された場合、その時までにその資産につき生じた利益又は損失は、その年の所得税申告書に計上しなくてはならない」(注3)というシャウプ勧告を受け、相続、遺贈又は贈与により資産の移転があった場合には、その時の時価により譲渡があったものとみなして、譲渡所得の課税を行うこととしていた。
しかし、このような「みなし譲渡課税」は、被相続人の死亡時に、相続税と所得税の負担が重なることとなり、しかも、実際に金銭収入を伴わない所得に課税することとなるため、納税者のみならず税務官庁にとっても理解し難いものとなった。そのため、そのような負担を是正するため、段階的に当該みなし譲渡課税の縮小が図られ、昭和48年改正以降現行のような規定となった(注4)。
もっとも、以上のような所得税法の改正によってもたらされた前述の同法59条1項及び同法60条1項は、かえって、相続税又は贈与税と所得税との間に課税上の整合性を欠く結果を招来し、本件のような二重課税問題を惹起する原因にもなっている。しかも、本件非課税規定は、シャウプ税制以降実質的に改正されていない問題も存する。そして、そのことが、平成22年最判の出現によって、当該二重課税問題を一層深刻なものとした。
(3)そして、この二重課税問題に深く関わる本件非課税規定は、所得税を課さないこととする一つとして、「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(〈略〉)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)」と定めている。この規定は、所得税法が同法上の「所得」について包括的所得概念(注5)を採用しているため、相続、贈与等によって取得した財産の経済的価値自体が「所得」として認識されることになるから、当該経済的価値に係る相続税と所得税との二重課税を排除するものと解されている。単純な例を挙げると、相続等によって取得した現金1億円については、相続税は課されるが所得税は課さないということである。このことは、不動産を相続により取得した場合であっても、被相続人が1億円で取得した土地についても所得税は課されないし、相続後、相続人がその土地を1億円で譲渡しても所得税が課されないことと同じである。
問題となるのは、被相続人が1億円で取得した土地が相続発生時にその価額(経済的価値)が2億円になっているときに、所得税を課さない額を1億円とするのか2億円にするのかである。この場合、相続により取得するものは2億円であるから、本件非課税規定の対象も2億円であると解することができる。そうすると、相続人が当該土地を2億円で譲渡した場合にも、非課税所得が実現したものであるから、所得税の課税問題は生じないことになると解される。そして、このような問題は、土地のような不動産に限らず、株式、債権、生命保険金等について同じように論ずることができるはずである。しかし、このような非課税問題と前述の所得法60条1項の規定との関係を如何に論じるかという問題は残るが、それらに関し、平成22年最判は、大きな一石を投じたことになる。
なお、本訴においては、措置法39条の法的性格も争われているが、国が主張するように、同条は、相続税と所得税の一種の負担軽減を行うという政策的措置と解することができるので、詳述は避けることとする。
2 平成22年最判の内容と意義 (1)平成22年最判の事案の内容は、次のとおりである。Y(原告、被控訴人、上告人)は、夫乙の死亡(平成14年10月28日)により同人が締結していた生命保険契約(被保険者乙、受取人Y)に基づき、死亡保険金4,000万円と年金払保障特約年金(10年間支払い)の初回分230万円(以下「本件年金」という。なお、年金総額2,300万円)を受領した。Yは相続税については、死亡保険金4,000万円と当時の相続税法24条が定めていた年金総額の現在価値相当額1,380万円を課税価格に含めて申告し、平成14年分所得税については、本件年金を除外して申告した。これに対し、所轄税務署長は、本件年金が雑所得に当たるとする更正等を行った。Yは、これを不服として、取消訴訟を提起したのであるが、当該訴訟では、主として、本件年金について本件非課税規定が適用されるか否かが争われることとなった。
一審の長崎地裁平成18年11月7日判決(訟務月報54巻9号2110頁)は、「年金受給権の現在価値相当額に相続税を課税した上、更に個々の年金に所得税を課税することは、実質的・経済的には同一の資産に関して二重に課税するものであるから、所得税法9条1項15号の趣旨により許されない」旨判示し、Xの請求を認容した。
これに対し、控訴審の福岡高裁平成19年10月25日判決(訟務月報54巻9号2090頁)は、「本件年金は、本件年金受給権とは法的に異なるものであり、乙の死亡後に支配権に基づいて発生したものであるから、相続税法3条1項1号に規定する「保険金」に該当せず、所得税法9条1項15号所定の非課税所得に該当しない」旨判示して、原判決を取り消し、Yの請求を棄却した。
(2)かくして、平成22年最判は、主要な要点につき、次のとおり判示して、原判決を取り消し、Yの請求を認容した。
「同項(編注=所得税法9条1項)柱書きの規定によれば、同号(編注=同項15号)にいう「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」とは、相続等により取得し又は取得したものとみなされる財産そのものを指すのではなく、当該財産の取得によりその者に帰属する所得を指すものと解される。そして、当該財産の取得によりその者に帰属する所得とは、当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値にほかならず、これは相続税又は贈与税の課税対象となるものであるから、同号の趣旨は、相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして、同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものであると解される。」
「年金の方法により支払を受ける上記保険金(年金受給権)のうち有期定期金債権に当たるものについては、同項1号の規定により、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき年金の総額に同号所定の割合を乗じて計算した金額が当該年金受給権の価額として相続税の課税対象となるが、この価額は、当該年金受給権の取得の時における時価(同法22条)、すなわち、将来にわたって受け取るべき年金の金額を被相続人死亡時の現在価値に引き直した金額の合計額に相当し、その価額と上記残存期間に受けるべき年金の総額との差額は、当該各年金の上記現在価値をそれぞれ元本とした場合の運用益の合計額に相当するものとして規定されているものと解される。したがって、これらの年金の各支給額のうち上記現在価値に相当する部分は、相続税の課税対象となる経済的価値と同一のものということができ、所得税法9条1項15号により所得税の課税対象とならないものというべきである。」
(3)この判決の判示を本件の課税関係に当てはめてみると、次のように考えられる。すなわち、「相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値」に対しては所得税を課さないということは、本件各不動産の経済的価値すなわち相続税評価額が4,020万円余であるから、当該評価額が非課税の対象になることを意味することになる。
また、この判決は、相続開始後の年金受領については、その運用益相当額についてのみ所得税の課税対象となる旨判示しているのであるが、その考え方を本件に当てはめると、本件相続開始後の本件各不動産の値上がり益についてのみ所得税を課税すれば足りることになる。因みに、この判決の事案では、乙が保険料総額195万1,291円を支払い、Yが5,380万円(保険金4,000万円+年金の現在価値1,380万円)の経済的価値を受領したものであるから、実質的には、乙が当該保険契約によって5,184万円余の所得を得たものと解することができる(注6)。これを不動産の投資にたとえると、乙が195万円余で取得したものが相続開始時に5,380万円に値上がりしたことと同様である。そうすると、本件の場合にも、Xが本件相続によって取得した本件各不動産の経済的価値(甲が所有していた期間の値上り益を含む。)が非課税の対象になるものと考えられる。
このように、この判決の考え方は、本件のような不動産を相続によって取得した場合にも及ぶことが考えられる。そのため、国は、急遽、租税法学を専門とする大学教授及び准教授8名によって構成される「最高裁判決研究会」を発足させ、同研究会から、平成22年最判の射程が不動産のような他の財産に及ばない旨の報告(注7)を受けそれを公表している。国が一つの判決についてこのような研究会を設置したこと自体異例(おそらく初めてのことである。)のことであるが、それだけ国自体がこの判決の判示を重視し、その影響を懸念していたことが窺える。しかしながら、同研究会の報告書によっても、上記の問題点が解明されたとも考えられない。
3 本件における本件非課税規定の適用の可否 (1)前述のように、相続人が相続により取得した不動産を譲渡した場合の譲渡所得に対する課税は、所得税法60条1項の規定によって被相続人が当該不動産を所有していた期間の値上がり益を精算課税されるため、相続人にとっては、当該不動産の経済的価値(時価)相当額が相続税の課税対象になっているが故に、相続税と所得税が実質的に二重課税されているという問題を惹起する。しかし、そのことは、従前、相続税と所得税とは別税目等である等の理由によって、正当化されてきた。
ところが、平成22年最判が、本件非課税規定の趣旨について、「相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして、同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものである」と判示したことによって、前述の二重課税問題が再燃し、本訴のような争訟事件を惹起することになった。そのため、本訴の行方は、租税法関係者から強い関心が寄せられていた。しかし、本判決は、前述のように、本件における本件非課税規定の適用を否定したのであるが、その論拠となる重要部分において、次のような問題を残している。
(2)まず、本判決は、生命保険金と年金受給権の取得と本件のような不動産の取得の差異につき、前者においては、「年金による支払を選択した場合であっても、現在価値に引き直した価額に相当する部分については相続の開始時に実現した所得として取り扱っていると理解することができる。」ことに対し、後者においては、所得税法60条1項1号が存在する以上、「単純承認した相続人は、相続時点において被相続人の保有期間中に蓄積された増加益を実現させるという選択ができない」ことを挙げている。
しかし、本判決が指摘する差異は、不動産に関しては所得税法60条1項の規定の存在があり、生命保険の年金のような定期金にはそのような規定がないというだけであって、相続時における当該年金の現在価値と当該不動産の現在価値はいずれも相続税の課税の対象となる現在価値には変りがないわけであるから、所得税法60条1項の規定の存在をもって両者の差異を説明したことにはならないはずである。しかも、当該条項は、前記1で述べたように、本件非課税規定との関係で定められたわけではなく、シャウプ税制が国民感情にそぐわなかったために政策的に設けられた措置に過ぎないことに留意する必要がある。なお、本判決は、年金の場合には一時金として受領して所得を実現できるから、不動産の場合と異なる旨判示するが、不動産でも相続開始直後に売却すれば、所得が実現できることは同じことである。
(3)また、本判決は、「平成22年最判の判示には、原審及び第一審の各判決の判示とは異なり、本件非課税規定が被相続人の死亡後に実現する所得に対する課税を許さない趣旨のものか否かという点に関する明示的な言及がな」いことを理由に、「平成22年最判は、本件非課税規定が、相続時には非課税所得とされた所得が実現するものと取り扱われて課税される場合の所得にも一般的に適用される旨を判示したものということはできないと解すべきである。」と判示する。
しかし、平成22年最判は、当該事案において、被相続人の死亡後に実現(受領)した年金について、それが本件非課税規定の対象になることを明確にしているわけであるから、本判決の平成22年最判の理解の仕方の方が問題である。そのため、本判決の「本件非課税規定が……一般的に適用される旨を判示したものということはできない」という判示も説得力を失うことになる。
(4)更に、本判決は、本件譲渡に係る譲渡所得課税につき、「被相続人の保有期間中の増加益に対する譲渡所得税の課税は、被相続人の下で実現しなかった値上がり益(被相続人固有の所得)への課税を相続人の下で行おうとするものであり、理論的には被相続人に帰属すべき所得として被相続人に課税されるべきものであるから、相続人が相続により取得した財産の経済的価値に対して二重に課税されるという評価は当を得ないものである。」と判示する。
しかし、このような増加益の実現と課税の問題は、前記2の(3)で述べたように、平成22年最判の事案においても、保険料総額195万円余(これは、不動産の取得費に相当)を支払い、相続時に5,180万円の経済的価値を受領し、年金総額を含めると6,300万円の経済的価値を受領するのであるから、受領する経済的価値と支払保険料との差額は所得(包括的所得概念)として観念し得るはずである(そのことは、当該事案において、Yが保険料を支払い、被保険者である乙が死亡したことによってYが保険金等を受領した場合に、Yに対し一時所得課税が行われることになるが、そのことと同じことである。)。このように考えれば、年金のような定期金と不動産のそれぞれの増加益を殊更区分しようとする本判決の考え方も、説得力を失うことになる。
(5)以上のように、本判決は、平成22年最判が、本件非課税規定の趣旨につき、「同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものである」と判示したことは本件のような不動産の相続には及ばない旨判断するのであるが、その判断に説得力があるとも考えられない。結局、本件のような問題が解決されるためには、平成22年最判の考え方を前提に、所得税法上の譲渡所得課税の関係規定を見直すか、あるいは、本件事案等が上告審で審理する際に、最高裁判所として、改めて、本件非課税規定が本件事案には適用しないことを一層説得力のある論拠を示して明確にする必要があるものと考えられる。この点について、本判決は、Xが主張するように解すると所得税法60条1項の規定が無意味になるがそのことは考え難い旨判示しているが、本訴の提起が当該条項が無意味であることを指摘しているわけであるから、当該指摘に答えたことにはならない。
なお、本訴において、Xは、本件各譲渡に係る総収入金額(4,150万円)には、非課税所得が実現したものであるから、固より所得税法33条、38条、59条、60条等の適用はない旨主張するが、所得税法上の所得課税の仕組をいささか誤解しているようでもある。けだし、所得税法上の包括的所得概念の下では、全ての経済的価値の取得を「所得」として認識するわけであるから、本件各不動産を譲渡して4,150万円の金銭を得ているので、それを同法33条及び36条の規定に照らし、譲渡所得の総収入金額として算定すればよいわけである。この場合、当該譲渡収入金額について本件非課税規定が適用されるわけではないから、所得税法33条等を最初から否定することはできないはずである。
ただし、当該4,150万円のうち4,020万円余は、本件相続税の対象になっていて本件非課税規定が適用されていると考えられるので、その非課税所得が実現したものとして、譲渡所得の金額から除外すれば二重課税は解消されることになるはずである。このことは、平成22年最判が、当該事案における本件年金について所得税を課税すべき運用益相当額が付着していないから、その金額について所得税の課税対象外としていることに通じることである。また、平成22年最判は、当時の所得税法207条が、生命保険契約に基づく年金の支払をする者に対し、当該年金に係る所得税の源泉徴収義務を定めているところ、当該規定は適法と認めているわけであるから、非課税となる年金を受領したときにも、「所得」となる収入金額を認識すべきであることを明らかにしたことになる。そうでなければ、所得税の源泉徴収義務それ自体が成立しないことになる。
かくして、本件のような場合に、本件各不動産の値上がり益について本件非課税規定が適用されたものが実現したものと解すると、所得税法60条1項の規定が実質的に無意味となるので、改正せざるを得ないことになる。
4 本判決の意義と問題点 (1)以上のように、本件は、不動産等を相続により取得した場合に、当該不動産について被相続人が保有していた期間における値上がり益相当額について本件非課税規定が適用され、そのため、当該不動産を相続後譲渡して当該値上がり益を実現させたときに、当該値上がり益相当額を当該譲渡に係る譲渡所得から控除できるか否かが争われたものである。この問題は、昭和25年のシャウプ税制の時には、当該相続時に当該値上がり益を当該被相続人の所得として精算課税することとされていたので、生じることはなかった。
しかし、当該精算課税が酷であるため国民感情に添わないということで、現行の所得税法59条及び60条の制定によってその負担軽減が図られてきた。しかし、そのことが、かえって、本件で問題となっている二重課税問題を惹起することになった。もっとも、その二重課税問題は、主として、相続税と所得税とは別税目である等によって正当化されてきた。ただし、両税の負担軽減を図るため、措置法39条の立法等の措置がとられてきた。
ところが、平成22年最判が、前述のように、生命本件契約において保険事故(被相続人の死亡)後に受領する年金(運用益を含まない。)について所得税を課税することは本件非課税規定の趣旨に照らし二重課税になるから許されない旨判示したことにより、本件のような類似する不動産の相続と譲渡についても、平成22年最判の考え方が及びものと考えられるとし、本件のような取消訴訟を惹起させることとなった。
かくして、本判決は、前述のように、本件と平成22年最判の事案を区分し、本件における本件非課税規定の適用を否定した。このような判決は、類似の裁判例(注8)とともに、従前から議論されてきた相続税と所得税との二重課税問題に一つのピリオドを打ったものであって、その点では意義のある判決と言える。
(2)しかしながら、本判決は、前述のように、本件各不動産の相続による取得とその譲渡について、本件非課税規定は適用がない旨判示するのであるが、前記3で検討したように、必ずしも説得力のあるものではなく、種々の問題を残している。特に、平成22年最判の射程が本件に及ばないとする論拠については、当該事案における年金である定期金と本件各不動産との実質的差異を明確にしているとも考えられないし、両者を区分している所得税法60条1項の存在についても明確な理論付けが行われるとも認め難い。
結局、本件のような問題が最終的に解決されるためには、本件のような事案について上告審において最高裁判所が一層明確な論拠を示すか、あるいは、平成22年最判の射程が本件のような不動産等にも及ぶものとして、所得税法60条等の関係条項の見直しを行うことを必要としているものと考えられる。
(注1)平成22年最判の事案の内容と問題点については、品川芳宣「生命保険契約に基づき支払われる年金に対する相続税と所得税の二重課税問題」本誌2010年9月13日号20頁参照。
(注2)最高裁昭和43年10月31日第一小法廷判決(訟務月報14巻12号1442頁、裁判集民事92号797頁)等参照。
(注3)シャウプ使節団「日本税制報告書」第1編第5章13節参照。
(注4)当該改正の経緯等については、品川芳宣「資産の無償等譲渡をめぐる課税と徴収の交錯(1)」税理2004年1月号23頁等参照。
(注5)包括的所得概念とは、反復・継続して発生する利得のみを所得と観念する制限的所得概念に対立するものであり、相続・贈与等によって得た利得を含め全ての利得を所得と観念する考え方である。
(注6)詳細については、前出(1)33頁参照。
(注7)平成22年10月22日付「「最高裁判決研究会」報告書~「生保年金」最高裁判決の射程及び関連する論点について~」。
(注8)本件と類似の裁判例については、東京地裁平成25年6月20日判決(平成24年(行ウ)第243号)を参照。同判決を題材とする論文として、酒井克彦「相続した土地の含み益への譲渡所得課税の二重課税問題(上)、(下)」税務事例2013年9月号1頁、同2013年10月号15頁を参照。
相続により取得した不動産に係る譲渡所得税と相続税の二重課税問題
東京地裁平成25年7月26日判決(平成24年(行ウ)第354号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)X(原告)は、平成19年8月7日、夫甲(以下「本件被相続人」という。)の死亡により、広島県廿日市市所在の土地及び建物(以下「本件物件1」という。)並びに東京都大田区所在のマンション(以下「本件物件2」といい、本件物件1と併せて「本件各不動産」という。)を相続(以下「本件相続」という。)により取得した。Xは、平成20年5月26日、本件相続に係る相続税(以下「本件相続税」という。)の申告書を所轄税務署長に提出し、課税価格の計算上、本件物件1の価額を3,401万円余及び本件物件2の価額を618万円余として計算した。
次いで、Xは、平成21年9月26日、本件物件1を代金3,000万円で譲渡し、同年11月7日、本件物件2を代金1,150万円で譲渡した(以下「本件各譲渡」という。)。
(2)そして、Xは、平成22年3月15日、平成21年分所得税の確定申告につき、本件各譲渡に係る分離長期譲渡所得の金額を754万円余(以下「本件譲渡所得金額」という。)とし、納付すべき税額134万円余を納付した。しかし、Xは、平成22年7月12日、本件譲渡所得金額は既に相続税の課税対象となった経済的価値と同一の経済的価値(相続税評価額)であるから、所得税法9条1項15号の規定(平成22年改正前のもの、以下「本件非課税規定」という。)により、非課税とすべきであること等を理由に、本件譲渡所得金額を零円とし、納付すべき税額を21万円余とする平成21年分所得税の更正の請求(以下「本件更正請求」という。)をした。
これに対し、処分行政庁は、本件各譲渡について本件非課税規定の適用はないとし、計算誤り等を理由に、本件譲渡所得金額を721万円余及び納付すべき税額を129万円余とする更正(以下「本件更正」という。)をした。Xは、本件更正を不服とし、前審手続を経て、国(被告)に対し、その取り消しを求めて、本訴を提起した。
二、争点及び当事者の主張
1 争 点 本件各譲渡に係る譲渡所得の計算において、相続税の課税対象となった経済的価値と同一の経済的価値(相続税評価額、すなわち①被相続人の取得価額と②被相続人の保有期間中の増加益との合計額)の部分は、本件非課税規定により譲渡収入金額から控除し、非課税とすべきか否か。
2 国の主張 次のとおり、本件各譲渡に係る譲渡所得のうち本件被相続人の保有期間中の増加益部分について本件非課税規定の適用はなく、この増加益を非課税所得と解する余地はない(以下、最高裁平成17年2月1日第三小法廷判決・裁判集民事216号279頁を「平成17年最判」といい、最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決・民集64巻5号1277頁を「平成22年最判」という。)。
(1)所得税法は、被相続人の保有期間中の増加益を所得税の課税対象とすることを予定して取得価額の引継ぎの規定(同法60①一)を設けており、同法60条1項1号は、譲渡所得の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなすと規定し、「取得価額の引継ぎ」の方法により、相続時には被相続人の保有期間中の増加益に対する課税を繰り延べ、相続人が相続により取得した資産を譲渡した段階で、前所有者の保有期間の資産の増加益も含めて所得税を課税するものとしている。
(2)取得価額の引継ぎによる課税の方法について、平成17年最判は、譲渡所得課税の趣旨からすれば、贈与、相続又は遺贈であっても、その時の価額に相当する金額により資産の譲渡があったものとみなして譲渡所得課税がされるべきであるが、所得税法60条1項1号所定の贈与等にあっては、その時点では資産の増加益が具体的に顕在化せず、納税者の納得を得難いため、課税を留保し、その後受贈者等が資産を譲渡し増加益が具体的に顕在化した時点において、清算して課税することとしたものであって、上記規定の本旨は増加益に対する課税の繰述べにあると判示している。
(3)租税特別措置法(以下「措置法」という。)39条が創設されたのは、相続税の課税対象となった相続財産につき、相続税の性格からみて、その納税のため相続財産の一部を処分しなければならないことがあることはやむをえないことであるが、その処分をした相続人に対し、その相続財産に係る相続税のほか、被相続人の所有期間に生じた所得を含めて所得税を課税する方式をとっているため、負担が重いという意見を踏まえ、昭和44年の税制調査会の答申によって、政策的観点から創設されたものである。
(4)平成22年最判は、相続税法24条によって評価がされている財産、すなわち「定期金に関する権利」について判示したものであるから、本件における不動産の譲渡所得にはその射程は及ばない。
3 Xの主張 次のとおり、本件各譲渡に係る譲渡所得のうち相続税の課税対象となった経済的価値と同一の経済的価値については、本件非課税規定により譲渡収入金額から控除され、所得税を課されないというべきである。
(1)平成22年最判がいう「相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値」は、定期金に限らず、全ての経済的価値を意味するものであり、上記判示は普遍的な形で本件非課税規定の趣旨を明らかにしたものというべきである。すなわち、平成22年最判は、本件非課税規定による相続税又は贈与税と所得税との二重課税の排除の対象について、相続時の相続財産の取得という所得にとどまるとする従来の解釈を否定し、非課税所得とされた所得が後に実現した場合の所得にも及ぶことを明確にしたものというべきである。よって、同判決は、定期金の受取額はもちろん、不動産の譲渡収入、株式の売却収入など、同一の状況にあるものは全て同判決の射程に入るというべきである。
(2)平成22年最判が、本件非課税規定による相続税又は贈与税と所得税との二重課税の排除の対象について、相続時の相続財産の取得という所得にとどまるとする従来の解釈を否定し、非課税所得とされた所得が後に実現した場合の所得にも及ぶとしたため、平成22年最判以前において所得税法33条3項の「総収入金額」に含められて課税所得として取り扱われていた非課税所得の実現額は「総収入金額」から排除されなければならないことになった。所得税法は、9条において非課税所得を規定し、その後の33条、38条、59条、60条等において譲渡所得の金額等についての具体的な計算規定を定めているが、それらの関係規定の適用上、同法9条に定める非課税所得に該当した場合には、当該所得は当然に所得税法の課税対象から除外され、同法上のその後の規定によって課税所得に含まれることがないことは、所得税法の規定の構造上当然である。すなわち、所得税法9条は、「第一編 総則」「第三章 課税所得の範囲」に規定される条文であり、同法33条、38条、59条、60条は「第二編 居住者の納税義務」「第二章 課税標準及びその計算並びに所得控除」「第二節 各種所得の金額の計算」に含まれる条文であるから、所得税法9条の総則規定が、それよりも下位の条文によって変更・拘束される
と解することはできない。
(3)措置法39条が創設されたのは、相続税の課税対象となった相続財産を相続後に譲渡した場合の譲渡所得税の計算において、非課税所得の実現額について本件非課税規定を適用しないとする取扱いが行われていたからである。しかし、平成22年最判によって非課税所得の実現額については本件非課税規定が適用され、非課税となるのであるから、措置法39条の調整措置を必要とする状況は既に消滅している。
(4)本件各不動産の譲渡収入金額4,150万円には、相続税の課税対象となる経済的価値(相続税評価額)と同一の経済的価値4,020万円余(被相続人の取得価額2,906万円余と被相続人の保有期間中の増加益1,114万円余の合計額)が含まれているが、これは本件非課税規定によって非課税とされた所得が実現したものであるから、本件各不動産の譲渡収入金額(所得税法33条3項の総収入金額)から排除される。
三、判決要旨
請求棄却。 (1)譲渡所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益(キャピタル・ゲイン)を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨のものである(最高裁昭和47年12月26日第三小法廷判決・民集26巻10号2083頁、最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決・民集29巻5号641頁参照)。そして、所得税法上は、抽象的に発生している資産の増加益そのものが課税の対象となっているわけではなく、原則として、資産の譲渡により実現した所得が課税の対象とされている(最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決・裁判集民事220号141頁参照)。
(2)上記の譲渡所得課税の趣旨からすれば、贈与、相続又は遺贈であっても、当該資産についてその時における価額に相当する金額により譲渡があったものとみなして譲渡所得課税がされるべきところ(所法59①参照)、所得税法60条1項1号所定の贈与等にあっては、その時点では資産の増加益が具体的に顕在化しないため、その時点における譲渡所得課税について納税者の納得を得難いことから、これを留保し、その後受贈者等が資産を譲渡することによってその増加益が具体的に顕在化した時点において、これを清算して課税することとしたものである。そして、同項の規定により、受贈者等の譲渡所得の金額の計算においては、贈与者等が当該資産を取得するのに要した費用が引き継がれ、課税を繰り延べられた贈与者等の資産の保有期間に係る増加益も含めて受贈者等に課税されることになる(平成17年最判参照)。
このように、相続により取得した資産に係る譲渡所得に対する課税は、①被相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益と②相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益とを合計し、これを所得として、その資産が後に譲渡された時点において、上記の所得が実現したものと取り扱って所得税の課税対象としているものであるということができる。
(3)平成22年最判は、本件非課税規定について判示した部分において、非課税の対象を、「当該財産の取得によりその者に帰属する所得」とし、同所得とは、「当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値」であるとしていることからすると、Xが主張するように解する余地がないではない。しかし、平成22年最判で問題とされた所得は、相続人が原始的に取得した生命保険金に係る年金受給権に係るものであるところ、この年金受給権は、それを取得した者において一時金による支払を選択することにより相続の開始時に所得を実現させることができ、その場合には本件非課税規定が適用されることとの均衡を重視して、平成22年最判は、年金による支払を選択した場合においても、年金受給権の金額を被相続人死亡時の現在価値に引き直した価額に相当する部分は、相続税法の課税対象となる経済的価値と同一のものということができるとして本件非課税規定の適用を認めたものと理解することができ、そうであるとすれば、年金による支払を選択した場合であっても、現在価値に引き直した価額に相当する部分については相続の開始時に実現した所得として取り扱っていると理解することができる。
これに対し、本件で問題とされている所得は、所得税法60条1項1号により、相続人が被相続人から承継取得した不動産を更に譲渡した際に実現するものと取り扱われるものであって、同号が存在する以上、単純承認をした相続人は、相続時点において被相続人の保有期間中に蓄積された増加益を実現させるという選択ができないという点で、平成22年最判で問題とされた所得とはその性質を異にするものである。そして、平成22年最判の判示には、原審及び第1審の各判決の判示とは異なり、本件非課税規定が被相続人の死亡後に実現する所得に対する課税を許さない趣旨のものか否かという点に関する明示的な言及がなく、また、平成22年最判が是認することができないとした原審の判断の内容(平成22年最判の判示3の部分)には、その点に関する原審の判断部分が引用されていない。これらの点からすると、平成22年最判は、本件非課税規定が、相続時には非課税所得とされた所得が後に実現するものと取り扱われて課税される場合の所得にも一般的に適用される旨を判示したものということはできないと解すべきである。
また、相続人が被相続人から相続により取得した資産を譲渡した場合、当該資産の譲渡により帰属する所得は、①被相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益と②相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益とによって構成されるところ、上記譲渡所得に対する所得税の課税対象となる被相続人の保有期間中の増加益は、被相続人の保有期間中にその意思によらない外部的条件の変化に基因する資産の値上がり益として抽象的に発生し蓄積された資産の増加益が相続人によるその資産の譲渡により実現したものである。そうすると、被相続人の保有期間中の増加益に対する譲渡所得税の課税は、被相続人の下で実現しなかった値上がり益(被相続人固有の所得)への課税を相続人の下で行おうとするものであり、理論的には被相続人に帰属すべき所得として被相続人に課税されるべきものであるから、相続人が相続により取得した財産の経済的価値に対して二重に課税されるという評価は当を得ないものである。
(4)Xは、本件非課税規定による二重課税の排除は非課税所得とされた所得が後に実現した場合の所得にも及び、当該所得は当然に所得税法の課税対象から除外されるから、同法33条、38条、59条、60条等の規定によって課税所得に含まれることはない旨主張する。しかし、上記のとおり、本件非課税規定が、相続時に非課税所得とされた所得が後に実現するものと取り扱われて課税される場合の所得にも一般的に適用されるとはいえないから、Xの上記主張はその前提を欠くものというべきである。また、仮にXの主張に従い、被相続人の保有期間中の増加益について本件非課税規定の適用があるものとするならば、譲渡所得の金額の計算上、所得税法38条、60条1項1号の適用により、被相続人の取得価額に相当する金額が二重に控除されることとなるが、そのことにはおよそ合理性がない。逆に、所得税法60条1項1号を適用しないというのであれば、同法はおよそ適用の余地のない定めを設けたことになり、同法が60条1項1号の規定と本件非課税規定をそのようなものとして定めているとは考え難い。
(5)Xは、平成22年最判によって、相続により取得した年金受給権に基づく年金を受け取る国民に対しては本件非課税規定によって同一の経済的価値に対する相続税と所得税との二重課税の排除が認められるにもかかわらず、Xのように、相続により取得した不動産を譲渡した国民については二重課税の排除が認められないとするならば、それは本件非課税規定の解釈を誤った処分であり、租税公平主義ないし憲法14条1項に反する旨主張する。
しかし、前記のとおり、相続により取得した資産の譲渡に係る譲渡所得については、所得税法60条1項1号の定めがあり、所得税法は、被相続人の保有期間中に抽象的に発生し蓄積された資産の増加益について、相続人が相続により取得した財産の経済的価値が相続人に対する相続税の課税対象となることとは別に、相続人に対する所得税の課税対象となることを予定しているものである。所得税法60条1項1号は、その文言から明らかなとおり、相続等により取得した資産を他に譲渡してその対価を取得する場合についての課税の繰延べを定めた規定であり、平成22年最判における生命保険年金のように、相続税法の規定により相続等により取得したものとみなされる資産としての年金受給権について、これを他に譲渡するのではなくその本旨に従って行使することによりその支分権としての年金を取得する場合についての課税の繰延べを定めた規定ではない。
以上のように、相続により取得した年金受給権に基づく年金を受け取る場合と、相続により取得した不動産を譲渡した場合との間には、上記のような違いがあることからすれば、その課税関係に差異を生じることが租税公平主義ないし憲法14条1項に反するとはいえない。
四、解説
はじめに 本件は、相続により取得した不動産(本件各不動産)を譲渡(本件各譲渡)し、当該譲渡の譲渡所得に係る所得税が相続税と二重課税になるか(本件非課税規定の適用)否かが争われたものである。本件のような二重課税問題は、かねてより議論されてきたところであるが、所得税と相続税とは税目が異なるから、二重課税ではないとする見解が説得的であった。また、それを理論づけるために、所得税法60条1項の存在が指摘されてきた。
しかし、Xが問題提起し、本判決の審理において最も問題となった平成22年最判が、生命保険契約における死亡後の年金受給に対する所得税課税について本件非課税規定を適用したことを契機に、その論理が本件のような不動産の譲渡所得課税にも通じるべきであるとする議論を惹起した。本件の訴訟提起も、当該議論に触発されたものと言える。
もっとも、死亡保険年金のような定期金と不動産とでは、後者について所得税法60条1項の存在のような課税上の構造的差異がある。しかし、そのような差異自体も、シャウプ税制以降の所得税税制の変遷を考察した場合には、差異の存在自体にも多くの疑問がある。
そこで、本稿では、所得税法における不動産の譲渡所得課税と本件非課税規定との関係を考察し、平成22年最判の内容(注1)とその射程を検討し、本判決の当否を検討することとする。
1 相続により取得した不動産の譲渡所得課税 (1)所得税法上、「譲渡所得とは、資産の譲渡(〈略〉)による所得をいう。」(所法33①)とされ、当該所得から、たな卸資産の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得(事業所得又は雑所得に該当するもの)等は除かれる(所法33②)。この場合の「資産」には、相続、贈与等により取得したものも含まれる。また、「譲渡」には原則として、資産の贈与、相続等によって当該資産が移転した場合も含むと解されている(注2)。よって、これらの規定は、本件のような相続によって本件不動産が甲からXへ移転した場合には、原則として、甲が本件不動産を譲渡したものとして、譲渡所得課税を予定していることになる。
また、譲渡所得の金額は、「それぞれの年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の合計額を控除し」(所法33③)て算定することにしている。そして、この場合の「取得費」とは、「別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額とする。」(所法38①)と定められている。
かくして、相続によって取得した資産を当該相続人が譲渡した場合には、別段の定めを除けば、当該相続段階で被相続人が支払うべき所得税額を当該相続人が支払うことになるので、当該相続人にとっての当該資産の「取得費」は、当該被相続人の譲渡価額(当該資産の時価)から当該相続人が支払う所得税額を控除した額であるものと解される。
(2)しかしながら、所得税法は、上記の「別段の定め」について、次のような規定を設けている。まず、所得税法59条1項は、「贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)」により、山林所得又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、「その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなす。」と定めている。よって、単純な贈与、相続又は遺贈によって資産が移転した場合には、前述の所得税33条各項の適用がないこととなり、所得税36条1項に定める総収入金額も生じないこととなる。
そして、所得税法60条1項は、居住者が「贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)」により取得した同法59条1項に規定する資産を譲渡した場合における譲渡所得の金額等の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす、と定めている。この規定によって、本件のような課税問題が生じることになる。
ところで、昭和25年の所得税法は、「生前によると死亡によるとを問わず、資産が無償移転された場合、その時までにその資産につき生じた利益又は損失は、その年の所得税申告書に計上しなくてはならない」(注3)というシャウプ勧告を受け、相続、遺贈又は贈与により資産の移転があった場合には、その時の時価により譲渡があったものとみなして、譲渡所得の課税を行うこととしていた。
しかし、このような「みなし譲渡課税」は、被相続人の死亡時に、相続税と所得税の負担が重なることとなり、しかも、実際に金銭収入を伴わない所得に課税することとなるため、納税者のみならず税務官庁にとっても理解し難いものとなった。そのため、そのような負担を是正するため、段階的に当該みなし譲渡課税の縮小が図られ、昭和48年改正以降現行のような規定となった(注4)。
もっとも、以上のような所得税法の改正によってもたらされた前述の同法59条1項及び同法60条1項は、かえって、相続税又は贈与税と所得税との間に課税上の整合性を欠く結果を招来し、本件のような二重課税問題を惹起する原因にもなっている。しかも、本件非課税規定は、シャウプ税制以降実質的に改正されていない問題も存する。そして、そのことが、平成22年最判の出現によって、当該二重課税問題を一層深刻なものとした。
(3)そして、この二重課税問題に深く関わる本件非課税規定は、所得税を課さないこととする一つとして、「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(〈略〉)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)」と定めている。この規定は、所得税法が同法上の「所得」について包括的所得概念(注5)を採用しているため、相続、贈与等によって取得した財産の経済的価値自体が「所得」として認識されることになるから、当該経済的価値に係る相続税と所得税との二重課税を排除するものと解されている。単純な例を挙げると、相続等によって取得した現金1億円については、相続税は課されるが所得税は課さないということである。このことは、不動産を相続により取得した場合であっても、被相続人が1億円で取得した土地についても所得税は課されないし、相続後、相続人がその土地を1億円で譲渡しても所得税が課されないことと同じである。
問題となるのは、被相続人が1億円で取得した土地が相続発生時にその価額(経済的価値)が2億円になっているときに、所得税を課さない額を1億円とするのか2億円にするのかである。この場合、相続により取得するものは2億円であるから、本件非課税規定の対象も2億円であると解することができる。そうすると、相続人が当該土地を2億円で譲渡した場合にも、非課税所得が実現したものであるから、所得税の課税問題は生じないことになると解される。そして、このような問題は、土地のような不動産に限らず、株式、債権、生命保険金等について同じように論ずることができるはずである。しかし、このような非課税問題と前述の所得法60条1項の規定との関係を如何に論じるかという問題は残るが、それらに関し、平成22年最判は、大きな一石を投じたことになる。
なお、本訴においては、措置法39条の法的性格も争われているが、国が主張するように、同条は、相続税と所得税の一種の負担軽減を行うという政策的措置と解することができるので、詳述は避けることとする。
2 平成22年最判の内容と意義 (1)平成22年最判の事案の内容は、次のとおりである。Y(原告、被控訴人、上告人)は、夫乙の死亡(平成14年10月28日)により同人が締結していた生命保険契約(被保険者乙、受取人Y)に基づき、死亡保険金4,000万円と年金払保障特約年金(10年間支払い)の初回分230万円(以下「本件年金」という。なお、年金総額2,300万円)を受領した。Yは相続税については、死亡保険金4,000万円と当時の相続税法24条が定めていた年金総額の現在価値相当額1,380万円を課税価格に含めて申告し、平成14年分所得税については、本件年金を除外して申告した。これに対し、所轄税務署長は、本件年金が雑所得に当たるとする更正等を行った。Yは、これを不服として、取消訴訟を提起したのであるが、当該訴訟では、主として、本件年金について本件非課税規定が適用されるか否かが争われることとなった。
一審の長崎地裁平成18年11月7日判決(訟務月報54巻9号2110頁)は、「年金受給権の現在価値相当額に相続税を課税した上、更に個々の年金に所得税を課税することは、実質的・経済的には同一の資産に関して二重に課税するものであるから、所得税法9条1項15号の趣旨により許されない」旨判示し、Xの請求を認容した。
これに対し、控訴審の福岡高裁平成19年10月25日判決(訟務月報54巻9号2090頁)は、「本件年金は、本件年金受給権とは法的に異なるものであり、乙の死亡後に支配権に基づいて発生したものであるから、相続税法3条1項1号に規定する「保険金」に該当せず、所得税法9条1項15号所定の非課税所得に該当しない」旨判示して、原判決を取り消し、Yの請求を棄却した。
(2)かくして、平成22年最判は、主要な要点につき、次のとおり判示して、原判決を取り消し、Yの請求を認容した。
「同項(編注=所得税法9条1項)柱書きの規定によれば、同号(編注=同項15号)にいう「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」とは、相続等により取得し又は取得したものとみなされる財産そのものを指すのではなく、当該財産の取得によりその者に帰属する所得を指すものと解される。そして、当該財産の取得によりその者に帰属する所得とは、当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値にほかならず、これは相続税又は贈与税の課税対象となるものであるから、同号の趣旨は、相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして、同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものであると解される。」
「年金の方法により支払を受ける上記保険金(年金受給権)のうち有期定期金債権に当たるものについては、同項1号の規定により、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき年金の総額に同号所定の割合を乗じて計算した金額が当該年金受給権の価額として相続税の課税対象となるが、この価額は、当該年金受給権の取得の時における時価(同法22条)、すなわち、将来にわたって受け取るべき年金の金額を被相続人死亡時の現在価値に引き直した金額の合計額に相当し、その価額と上記残存期間に受けるべき年金の総額との差額は、当該各年金の上記現在価値をそれぞれ元本とした場合の運用益の合計額に相当するものとして規定されているものと解される。したがって、これらの年金の各支給額のうち上記現在価値に相当する部分は、相続税の課税対象となる経済的価値と同一のものということができ、所得税法9条1項15号により所得税の課税対象とならないものというべきである。」
(3)この判決の判示を本件の課税関係に当てはめてみると、次のように考えられる。すなわち、「相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値」に対しては所得税を課さないということは、本件各不動産の経済的価値すなわち相続税評価額が4,020万円余であるから、当該評価額が非課税の対象になることを意味することになる。
また、この判決は、相続開始後の年金受領については、その運用益相当額についてのみ所得税の課税対象となる旨判示しているのであるが、その考え方を本件に当てはめると、本件相続開始後の本件各不動産の値上がり益についてのみ所得税を課税すれば足りることになる。因みに、この判決の事案では、乙が保険料総額195万1,291円を支払い、Yが5,380万円(保険金4,000万円+年金の現在価値1,380万円)の経済的価値を受領したものであるから、実質的には、乙が当該保険契約によって5,184万円余の所得を得たものと解することができる(注6)。これを不動産の投資にたとえると、乙が195万円余で取得したものが相続開始時に5,380万円に値上がりしたことと同様である。そうすると、本件の場合にも、Xが本件相続によって取得した本件各不動産の経済的価値(甲が所有していた期間の値上り益を含む。)が非課税の対象になるものと考えられる。
このように、この判決の考え方は、本件のような不動産を相続によって取得した場合にも及ぶことが考えられる。そのため、国は、急遽、租税法学を専門とする大学教授及び准教授8名によって構成される「最高裁判決研究会」を発足させ、同研究会から、平成22年最判の射程が不動産のような他の財産に及ばない旨の報告(注7)を受けそれを公表している。国が一つの判決についてこのような研究会を設置したこと自体異例(おそらく初めてのことである。)のことであるが、それだけ国自体がこの判決の判示を重視し、その影響を懸念していたことが窺える。しかしながら、同研究会の報告書によっても、上記の問題点が解明されたとも考えられない。
3 本件における本件非課税規定の適用の可否 (1)前述のように、相続人が相続により取得した不動産を譲渡した場合の譲渡所得に対する課税は、所得税法60条1項の規定によって被相続人が当該不動産を所有していた期間の値上がり益を精算課税されるため、相続人にとっては、当該不動産の経済的価値(時価)相当額が相続税の課税対象になっているが故に、相続税と所得税が実質的に二重課税されているという問題を惹起する。しかし、そのことは、従前、相続税と所得税とは別税目等である等の理由によって、正当化されてきた。
ところが、平成22年最判が、本件非課税規定の趣旨について、「相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして、同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものである」と判示したことによって、前述の二重課税問題が再燃し、本訴のような争訟事件を惹起することになった。そのため、本訴の行方は、租税法関係者から強い関心が寄せられていた。しかし、本判決は、前述のように、本件における本件非課税規定の適用を否定したのであるが、その論拠となる重要部分において、次のような問題を残している。
(2)まず、本判決は、生命保険金と年金受給権の取得と本件のような不動産の取得の差異につき、前者においては、「年金による支払を選択した場合であっても、現在価値に引き直した価額に相当する部分については相続の開始時に実現した所得として取り扱っていると理解することができる。」ことに対し、後者においては、所得税法60条1項1号が存在する以上、「単純承認した相続人は、相続時点において被相続人の保有期間中に蓄積された増加益を実現させるという選択ができない」ことを挙げている。
しかし、本判決が指摘する差異は、不動産に関しては所得税法60条1項の規定の存在があり、生命保険の年金のような定期金にはそのような規定がないというだけであって、相続時における当該年金の現在価値と当該不動産の現在価値はいずれも相続税の課税の対象となる現在価値には変りがないわけであるから、所得税法60条1項の規定の存在をもって両者の差異を説明したことにはならないはずである。しかも、当該条項は、前記1で述べたように、本件非課税規定との関係で定められたわけではなく、シャウプ税制が国民感情にそぐわなかったために政策的に設けられた措置に過ぎないことに留意する必要がある。なお、本判決は、年金の場合には一時金として受領して所得を実現できるから、不動産の場合と異なる旨判示するが、不動産でも相続開始直後に売却すれば、所得が実現できることは同じことである。
(3)また、本判決は、「平成22年最判の判示には、原審及び第一審の各判決の判示とは異なり、本件非課税規定が被相続人の死亡後に実現する所得に対する課税を許さない趣旨のものか否かという点に関する明示的な言及がな」いことを理由に、「平成22年最判は、本件非課税規定が、相続時には非課税所得とされた所得が実現するものと取り扱われて課税される場合の所得にも一般的に適用される旨を判示したものということはできないと解すべきである。」と判示する。
しかし、平成22年最判は、当該事案において、被相続人の死亡後に実現(受領)した年金について、それが本件非課税規定の対象になることを明確にしているわけであるから、本判決の平成22年最判の理解の仕方の方が問題である。そのため、本判決の「本件非課税規定が……一般的に適用される旨を判示したものということはできない」という判示も説得力を失うことになる。
(4)更に、本判決は、本件譲渡に係る譲渡所得課税につき、「被相続人の保有期間中の増加益に対する譲渡所得税の課税は、被相続人の下で実現しなかった値上がり益(被相続人固有の所得)への課税を相続人の下で行おうとするものであり、理論的には被相続人に帰属すべき所得として被相続人に課税されるべきものであるから、相続人が相続により取得した財産の経済的価値に対して二重に課税されるという評価は当を得ないものである。」と判示する。
しかし、このような増加益の実現と課税の問題は、前記2の(3)で述べたように、平成22年最判の事案においても、保険料総額195万円余(これは、不動産の取得費に相当)を支払い、相続時に5,180万円の経済的価値を受領し、年金総額を含めると6,300万円の経済的価値を受領するのであるから、受領する経済的価値と支払保険料との差額は所得(包括的所得概念)として観念し得るはずである(そのことは、当該事案において、Yが保険料を支払い、被保険者である乙が死亡したことによってYが保険金等を受領した場合に、Yに対し一時所得課税が行われることになるが、そのことと同じことである。)。このように考えれば、年金のような定期金と不動産のそれぞれの増加益を殊更区分しようとする本判決の考え方も、説得力を失うことになる。
(5)以上のように、本判決は、平成22年最判が、本件非課税規定の趣旨につき、「同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものである」と判示したことは本件のような不動産の相続には及ばない旨判断するのであるが、その判断に説得力があるとも考えられない。結局、本件のような問題が解決されるためには、平成22年最判の考え方を前提に、所得税法上の譲渡所得課税の関係規定を見直すか、あるいは、本件事案等が上告審で審理する際に、最高裁判所として、改めて、本件非課税規定が本件事案には適用しないことを一層説得力のある論拠を示して明確にする必要があるものと考えられる。この点について、本判決は、Xが主張するように解すると所得税法60条1項の規定が無意味になるがそのことは考え難い旨判示しているが、本訴の提起が当該条項が無意味であることを指摘しているわけであるから、当該指摘に答えたことにはならない。
なお、本訴において、Xは、本件各譲渡に係る総収入金額(4,150万円)には、非課税所得が実現したものであるから、固より所得税法33条、38条、59条、60条等の適用はない旨主張するが、所得税法上の所得課税の仕組をいささか誤解しているようでもある。けだし、所得税法上の包括的所得概念の下では、全ての経済的価値の取得を「所得」として認識するわけであるから、本件各不動産を譲渡して4,150万円の金銭を得ているので、それを同法33条及び36条の規定に照らし、譲渡所得の総収入金額として算定すればよいわけである。この場合、当該譲渡収入金額について本件非課税規定が適用されるわけではないから、所得税法33条等を最初から否定することはできないはずである。
ただし、当該4,150万円のうち4,020万円余は、本件相続税の対象になっていて本件非課税規定が適用されていると考えられるので、その非課税所得が実現したものとして、譲渡所得の金額から除外すれば二重課税は解消されることになるはずである。このことは、平成22年最判が、当該事案における本件年金について所得税を課税すべき運用益相当額が付着していないから、その金額について所得税の課税対象外としていることに通じることである。また、平成22年最判は、当時の所得税法207条が、生命保険契約に基づく年金の支払をする者に対し、当該年金に係る所得税の源泉徴収義務を定めているところ、当該規定は適法と認めているわけであるから、非課税となる年金を受領したときにも、「所得」となる収入金額を認識すべきであることを明らかにしたことになる。そうでなければ、所得税の源泉徴収義務それ自体が成立しないことになる。
かくして、本件のような場合に、本件各不動産の値上がり益について本件非課税規定が適用されたものが実現したものと解すると、所得税法60条1項の規定が実質的に無意味となるので、改正せざるを得ないことになる。
4 本判決の意義と問題点 (1)以上のように、本件は、不動産等を相続により取得した場合に、当該不動産について被相続人が保有していた期間における値上がり益相当額について本件非課税規定が適用され、そのため、当該不動産を相続後譲渡して当該値上がり益を実現させたときに、当該値上がり益相当額を当該譲渡に係る譲渡所得から控除できるか否かが争われたものである。この問題は、昭和25年のシャウプ税制の時には、当該相続時に当該値上がり益を当該被相続人の所得として精算課税することとされていたので、生じることはなかった。
しかし、当該精算課税が酷であるため国民感情に添わないということで、現行の所得税法59条及び60条の制定によってその負担軽減が図られてきた。しかし、そのことが、かえって、本件で問題となっている二重課税問題を惹起することになった。もっとも、その二重課税問題は、主として、相続税と所得税とは別税目である等によって正当化されてきた。ただし、両税の負担軽減を図るため、措置法39条の立法等の措置がとられてきた。
ところが、平成22年最判が、前述のように、生命本件契約において保険事故(被相続人の死亡)後に受領する年金(運用益を含まない。)について所得税を課税することは本件非課税規定の趣旨に照らし二重課税になるから許されない旨判示したことにより、本件のような類似する不動産の相続と譲渡についても、平成22年最判の考え方が及びものと考えられるとし、本件のような取消訴訟を惹起させることとなった。
かくして、本判決は、前述のように、本件と平成22年最判の事案を区分し、本件における本件非課税規定の適用を否定した。このような判決は、類似の裁判例(注8)とともに、従前から議論されてきた相続税と所得税との二重課税問題に一つのピリオドを打ったものであって、その点では意義のある判決と言える。
(2)しかしながら、本判決は、前述のように、本件各不動産の相続による取得とその譲渡について、本件非課税規定は適用がない旨判示するのであるが、前記3で検討したように、必ずしも説得力のあるものではなく、種々の問題を残している。特に、平成22年最判の射程が本件に及ばないとする論拠については、当該事案における年金である定期金と本件各不動産との実質的差異を明確にしているとも考えられないし、両者を区分している所得税法60条1項の存在についても明確な理論付けが行われるとも認め難い。
結局、本件のような問題が最終的に解決されるためには、本件のような事案について上告審において最高裁判所が一層明確な論拠を示すか、あるいは、平成22年最判の射程が本件のような不動産等にも及ぶものとして、所得税法60条等の関係条項の見直しを行うことを必要としているものと考えられる。
(注1)平成22年最判の事案の内容と問題点については、品川芳宣「生命保険契約に基づき支払われる年金に対する相続税と所得税の二重課税問題」本誌2010年9月13日号20頁参照。
(注2)最高裁昭和43年10月31日第一小法廷判決(訟務月報14巻12号1442頁、裁判集民事92号797頁)等参照。
(注3)シャウプ使節団「日本税制報告書」第1編第5章13節参照。
(注4)当該改正の経緯等については、品川芳宣「資産の無償等譲渡をめぐる課税と徴収の交錯(1)」税理2004年1月号23頁等参照。
(注5)包括的所得概念とは、反復・継続して発生する利得のみを所得と観念する制限的所得概念に対立するものであり、相続・贈与等によって得た利得を含め全ての利得を所得と観念する考え方である。
(注6)詳細については、前出(1)33頁参照。
(注7)平成22年10月22日付「「最高裁判決研究会」報告書~「生保年金」最高裁判決の射程及び関連する論点について~」。
(注8)本件と類似の裁判例については、東京地裁平成25年6月20日判決(平成24年(行ウ)第243号)を参照。同判決を題材とする論文として、酒井克彦「相続した土地の含み益への譲渡所得課税の二重課税問題(上)、(下)」税務事例2013年9月号1頁、同2013年10月号15頁を参照。
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