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解説記事2013年12月02日 【ニュース特集】 修正された会社法改正法案の概要(2013年12月2日号・№525)

社外取締役義務付けは見送りも選任が急務の課題に
修正された会社法改正法案の概要

 自民党の法務部会(部会長:大塚拓衆議院議員)は11月22日、「会社法の一部を改正する法律案」および「会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」を一部修正した上で了承。今臨時国会に提出される運びとなった(11月29日閣議決定)。
 法案の提出が遅れたのは社外取締役を義務付けるべきとの声が自民党内にあり、調整に時間がかかっていたからだ。最終的には、社外取締役の義務付けは行わないものの、社外取締役を義務付けない上場企業等については、定時株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明することになった。また、法律施行から2年経過後に改めて義務付け等の検討を行う旨を附則に明記している。特集では修正された社外取締役に関する規定のほか、会社法改正法案の概要をお伝えする。

「社外取締役を置くことが相当でない理由」を株主総会で説明
 会社法に関しては、民主党政権下の平成24年9月7日に、法制審議会が「会社法制の見直しに関する要綱」を決定し、当時の法務大臣に答申している。その後、国会への提出が見送られてきた経緯がある。
 今回、臨時国会に会社法改正法案が提出されたわけだが、当初、政府は前述の法制審議会が取りまとめた「会社法制の見直しに関する要綱」をベースとしたものを提出する方針であった。ここで問題となったのは社外取締役の義務付けである。
 政府から提案された会社法改正法案では、上場企業等(公開・大会社である監査役会設置会社であって株式についての有価証券報告書提出義務を負う株式会社)に関しては、社外取締役を置いていない場合、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告において株主に開示することとされていた。
 しかし、自民党内の一部の議員からは社外取締役を1人以上義務付けるべきとの強い意見があり、法務部会では調整が難航。最終的には、社外取締役の義務付けは見送られたものの、政府の改正法案を修正し、定時株主総会で取締役が株主に「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明することとなっている(表1参照)。
【表1】自民党法務部会での修正内容
1 改正法案の修正
(社外取締役を置いていない場合の理由の開示)
第三百二十七条の二 事業年度の末日において監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものが社外取締役を置いていない場合には、取締役は、当該事業年度に関する定時株主総会において、社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならない。
(今回の改正法の附則)
(検討)
第二十五条 政府は、この法律の施行後二年を経過した場合において、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案し、企業統治に係る制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて、社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとする。
2 法務省令に規定する予定の内容の追加
 1に加えて、法務省令において、以下の事項を定めることとする。
(1)事業報告における開示
 法務省令において、公開・大会社である監査役会設置会社であって株式についての有価証券報告書提出義務を負う株式会社が社外取締役を置いていない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を事業報告の記載事項とする旨を定めるに当たって、その事業報告における記載に関し、概要、以下の事項を定めることとする。
◯ 「相当でない理由」は、個々の株式会社の各事業年度における事情に応じて記載しなければならないこと。
◯ 社外監査役が二名以上あることのみをもって「相当でない理由」とすることはできないこと。
(2)株主総会参考書類における開示
 株主総会参考書類の記載事項を定める法務省令中の適切な場所に、概要、以下の内容の規定を追加することとする。
◯ 公開・大会社である監査役会設置会社であって株式についての有価証券報告書提出義務を負う株式会社が、社外取締役を置いていない場合であって、社外取締役の候補者を含まない取締役の選任議案を株主総会に提出するときは、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を説明しなければならないこと。
◯ 「相当でない理由」は、個々の株式会社の当該時点における事情に応じて記載しなければならないこと。
◯ 社外監査役が二名以上あることのみをもって「相当でない理由」とすることはできないこと。

“社外監査役2名以上”では理由にならず  なお、社外取締役を選任していない上場企業等は、事業報告や株主総会参考書類にも「社外取締役を置くことが相当でない理由」を記載することになるが、社外監査役が2名以上あることのみをもって「相当でない理由」とすることはできないとしている。
 また、法律施行から2年経過後には、社外取締役の選任状況や社会情勢の変化等を勘案し、社外取締役を義務付けるかどうかなどの検討を行う旨を会社法改正法案の附則に明記されることになった。
 今回の会社法改正法案では社外取締役の義務付けは見送られたものの、上場企業等に対する導入圧力はかなり高まったといえそうだ。
東証は上場規則を改正へ  一方、前述の法制審議会の要綱では、東京証券取引所等の上場規則において「上場会社は取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める」旨の附帯決議が付されていたが、これを「少なくとも一人以上確保するよう努めなければならない。」とする方向だ。そのほかの上場規則等における対応は表2のとおりとなっている。
【表2】上場規則等における対応
1 上場規則の改正
○会社法の見直しに関する要綱(抜粋)(24.9.7法務省法制審議会資料)
【附帯決議】
1 社外取締役に関する規律については、これまでの議論及び社外取締役の選任に係る現状等に照らし、現時点における対応として、本要綱に定めるもののほか、金融商品取引所の規則において、上場会社は取締役である独立役員を一人以上確保するよう努める旨の規律を設ける必要がある。
2 (略)
                 
○上場規則改正案
(独立役員の構成)
第445条の4 上場内国株券の発行者は、取締役である独立役員を少なくとも一人以上確保するよう努めなければならない。
2 上場規則等に、「独立性」の要件(定義)を規定
 - 「独立性」の要件に抵触するものは一切「独立取締役」として認めないこととする。
 - 現行は、「独立性」に抵触するおそれのある要件(東証ガイドライン)を規定しつつも、東証に事前に相談すれば認められる場合もあることとされている(事前相談要件)。
3 新規上場時や市場替え時の上場審査において、独立取締役設置に係る審査を強化
 - 独立取締役を設置するか、現時点で設置できない場合には、設置に向けた具体的な計画・取組み予定等を確認する。
4 新株価指数において、「独立取締役複数名以上」を加点要素とする
 - 11月6日(水)に既に公表。新指数の算出は平成26年1月6日(月)に開始予定。
5 コーポレートガバナンス報告書において任意の委員会の設置状況を開示
 - 上場企業が東証に提出する同報告書において、監査役設置会社が指名委員会や報酬委員会に類似する任意の委員会等を設置している場合には、その設置状況、委員構成(社外取締役が含まれるか等)、委員長の属性について、投資家に分かりやすいよう明記(表形式)。
6 監査等委員会設置会社への移行を促す開示面での方策も今後検討

親会社の取締役は子会社の社外取締役・監査役に就任できず
 会社法改正法案の内容は、前述の社外取締役に関する開示も含めた「コーポレート・ガバナンスの強化」と「親子会社に関する規律等の整備」の2つに大きく分けられる。
 「コーポレート・ガバナンスの強化」の主だった改正内容をみると、まずは、社外取締役および社外監査役の要件の厳格化が挙げられる。
 具体的には、社外取締役および社外監査役ともに、株式会社の①親会社の業務執行者等、②兄弟会社の業務執行者等、③業務執行者等の近親者でないものであることが要件に追加されることになる(図1参照)。

 たとえば、親会社の総務部長を子会社の社外監査役として兼務させるケースもあるが、今後は親会社の人材を子会社の社外取締役や社外監査役とすることができなくなる。
 監査役会設置会社については、監査役3名以上のうち半数以上(2名以上)は社外監査役を選任することが義務付けられているため、親会社の人事施策に影響を与えることは必至の状況。親会社のOBを選任することや親会社から籍を抜いて子会社の社外監査役として転籍させることなども考慮する必要がありそうだ。
就任できない対象期間を10年間に限定  なお、要件が厳格化される一方、要件緩和も行われる。
 現行、社外取締役および社外監査役については、過去に一度でも取締役等でなかったものという要件があるが、この対象期間を10年間に限定する。ただ、実務上はすでに期間制限なしに選任しているため、大きな影響はなさそうだ。

第三の類型となる「監査等委員会設置会社」が創設へ
 取締役会が業務執行者を監督する機能を強化する観点から創設されるのが「監査等委員会設置会社」だ(法制審議会の要綱では「監査・監督委員会設置会社」と呼ばれていたもの)。監査役設置会社および委員会設置会社と並ぶ第三の類型の機関設計といえるものである(図2参照)。

 現行の監査役制度では、監査役は取締役会における議決権を有しておらず、業務執行者の選解任等の人事に関与することができないため、業務執行者に対する監督が十分でないとの指摘がある。監査等委員会設置会社制度では、監査役を置かず、社外取締役が委員の過半数を占める監査等委員会が、監査を担うとともに、株主総会における業務執行者(代表取締役)を含む取締役の人事(指名および報酬)に関する意見陳述権を有し、監査等委員である取締役が、これを背景に、取締役会における取締役候補者の指名、業務執行者の選定および取締役の報酬に関する決定に主導的に関与できる。
 なお、監査等委員会は取締役3名以上で、その過半数は社外取締役でなければならないこととされている。監査等委員会制度がどの程度普及するかは未知数だが、社外取締役の選任導入の圧力が強まるなか、同制度への移行も検討する価値がありそうだ。

インセンティブのねじれは半歩前進
 日本公認会計士協会等が以前から求めていた会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定権が監査役に付与される。
 現行、監査役設置会社において、監査役または監査役会は、会計監査人の選解任等に関する議案および報酬等についての同意権のみの付与にとどまっており、決定するのは取締役会等となっている。いわゆるインセンティブのねじれと呼ばれるものである。
 これは、会計監査人が監査対象である会社の経営者(取締役または取締役会)に選ばれ(監査契約を締結)、その経営者から監査報酬が支払われるという問題。監査を行う対象から報酬をもらうことになるため、外観的な独立性が担保されていないとの指摘がされていたものだ。
 ただし、会計監査人の報酬等については、現行どおり同意権のみの付与となっている。今回の改正では、半歩前進ということがいえそうだ。

多重代表訴訟制度が創設も適用は限定的に
 「親子会社に関する規律等の整備」で大きな改正といえるのは、多重代表訴訟制度の創設だ。親会社の株主がその子会社の取締役等の責任を追及する訴えを提起することができるというものである(図3参照)。

 ただし、濫訴になるおそれがあるといった懸念から同制度の適用範囲は限定されるものとなっている。具体的には、株式会社の完全親会社の総株主の議決権の1%以上の議決権または発行済株式の1%以上の株式を有する株主(完全親会社が公開会社である場合は6か月前から引き続き1%以上の株式を有していること)は、株式会社に対し、発起人、設立時取締役、設立時監査役、取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人、清算人の責任を追及する訴えの提起を請求することができることとされている。議決権等の1%以上を有する株主となったことで、機関投資家などの一部の株主に限定されることになる。
 また、対象となる完全子会社も完全親会社が有する子会社株式の帳簿価額が完全親会社の総資産額の5分の1を超える重要な完全子会社である場合とされている。基本的には、金融機関などのホールディングカンパニーが該当することになりそうだ。

通常の組織再編も法令違反の場合は差止請求が可能に
 組織再編等の差止請求制度の拡充も図られる。現行、略式組織再編については、当該略式組織再編が①法令または定款に違反する場合、②対価が会社の財産の状況その他の事情に照らして著しく不当である場合といったケースで、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は当該略式組織再編の差止請求をすることができる。
 一方、略式組織再編以外の組織再編については、株主による差止請求に係る明文規定はない。
 このため、会社法上のアンバランスを解消するとの観点から、略式組織再編に加えてこれ以外の組織再編(株主に及ぼす影響が軽微である簡易組織再編(対価の額または承継させる資産の額が会社の資産額の5分の1以下の組織再編)を除く)についても、事前の救済手段として、株主による組織再編の差止請求が認められることになる(表3参照)。全部取得条項付種類株式の取得、株式の併合についても同様に差止請求が認められる。

 ただし、略式組織再編以外の組織再編で株主が差止請求を行うことができるのは、前述の①の法令または定款に違反する場合に限られることになる。これまでと同様、善管注意義務や忠実義務違反などは差止請求の対象にならず、株主総会の手続違反など、会社が株主から差止請求を受けるケースは限定的なものになりそうだ。

詐害的な会社分割等における債権者の保護規定が新設
 詐害的会社分割によって害される債権者の保護規定が新設される。
 現行、債務超過の会社が新設分割を行うことにより、一部の優良資産や事業、債務を承継させた後、分割会社を清算する会社の再建手法が採られることがあるが、なかには、残存債権者を害するような詐害的な会社分割が行われことがある。この場合、残存債権者については、分割会社に債務の履行を請求することが可能であるため、債権者保護の対象外となっており、その弊害が指摘されていたものである。
 この点、すでに最高裁は平成24年10月12日、「新設分割設立株式会社にその債権に係る債務が承継されず、新設分割について異議を述べることもできない新設分割株式会社の債権者は、民法424条の規定により、詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができると解される」との判断を示しているものである(本誌472号参照)。
 会社法改正法案では、残存債権者が詐害的な会社分割に係る行為を取り消すことなく、新設会社等(承継会社)に対しても、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求することができる旨の規定を設けることとしている(図4参照)。

 ただし、詐害的な会社分割をしたことを知った時から2年以内に請求等をしない場合や会社分割の効力が生じた時から20年経過したときはその権利が消滅することになる。

コラム 改正会社法の施行は平成27年4月1日が有力
 会社法改正法案および同法の施行に伴う関係整備法案が臨時国会に提出された。しかし、会期末が12月6日であるため、日程的に臨時国会での成立は困難な状況。現実的には継続審議となり、来年の通常国会での成立を目指すことになる。
 なお、会社法改正法案等の施行は公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日となっている。この点、自民党の法務部会長の大塚拓衆議院議員は、施行について、法案成立から施行までは1年程度の準備期間が必要との認識を示している。このため、仮に来年の通常国会での法案成立となれば、施行日は平成27年4月1日が有力となりそうだ。

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