解説記事2014年01月06日 【ニュース特集】 完全ガイド 生産性向上設備投資促進税制(2014年1月6日号・№529)
中小企業にメリットある上乗せ措置とは?
完全ガイド 生産性向上設備投資促進税制
本誌が新年の最初に取り上げる特集テーマは、昨年の税制改正大綱に盛り込まれた生産性向上設備投資促進税制だ。同制度は、平成25年12月11日に公布された産業競争力強化法の制定に伴うもの。一定規模以上の最先端設備等を取得した場合には、平成28年3月31日までの事業供用であれば即時償却または5%の税額控除(建物・構築物は3%)の適用を受けることができる。対象設備はエアコンや陳列ケース、ソフトウェアなど、幅広くなっているため、設備投資を行う製造業だけでなく、非製造業も活用できる制度となっている。
同制度については、1月中下旬にも施行される予定の産業競争力強化法の施行日以後から適用できることになっている。消費税率が4月1日から8%に引き上げられるなか、景気の腰折れを防ぐ目的もあるからだ。しかし、施行日は迫っているものの、まだ詳細が明らかでない部分も多い。そこで、本誌編集部では、生産性向上設備投資促進税制について総力取材を敢行。経済産業省の資料などを交えながら同制度について解説する。
入口は2つも出口は1つの生産性向上設備投資促進税制
平成26年4月1日から消費税率が8%に引き上げられることに伴う反動などに対応するため、与党は平成25年10月1日、「民間投資活性化等のための税制改正大綱」を取りまとめた。先の臨時国会で成立し、12月11日に公布された産業競争力強化法の制定に伴い、①生産性向上設備投資促進税制、②ベンチャー投資促進税制、③事業再編促進税制を創設するなど、民間投資を活性化させるための措置を盛り込んだ。
このうち、生産性向上設備投資促進税制は、一定の要件を満たせば、即時償却あるいは5%の税額控除が可能となっているため、企業や実務家の関心の高い制度となっている。
具体的に、生産性向上設備投資促進税制の概要は図表1のとおりとなっている。ポイントとなるのは、同制度を適用する場合の入口は2つあるということだ。
類型として「先端設備」および「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」の2種類が設けられている。それぞれ、対象設備や要件、対象となる設備であるかどうかの確認者が異なることになる。
ただし、最終的に受けられる税制措置は同じとなる。自社にとってクリアしやすい要件を考慮したうえで、税制措置の適用を考えるべきといえる。
以下、「先端設備」および「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」の2つの類型に分けて説明することとする。
先端設備の要件確認、事業者側は手間いらず
「先端設備」の対象となる設備は図表2のとおりとなっている。設備投資減税といえば、対象は製造業が主な対象ということになるが、今回の制度は、冷暖房やソフトウエアなども対象に含まれているため、非製造業も適用しやすいものとなっている。建物(断熱材、断熱窓)が対象となっている点も特徴といえる。
福利厚生施設等は対象外 ただし、生産等設備(事業の用に直接供される減価償却資産)のみが対象となっているため、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、福利厚生施設等のいわゆるバックオフィスは対象外となっている。
この点は、後ほど説明する「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」についても同様だ。
先端設備は工業会が確認 対象設備が「先端設備」に該当するか否かについては、「工業会等」が確認することになる。「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」は経済産業局が確認することになるため、異なる点だ。
「先端設備」の要件としては、①最新モデル、②生産性向上(年平均1%以上)、③最低取得価額以上の3つをすべて満たす必要がある。
最新モデルとは、各メーカーのなかで、(イ)一定期間内(機械装置:10年以内、工具:4年以内、器具備品:6年以内、建物および建物附属設備:14年以内、ソフトウエア:5年以内)に販売が開始されたもので、最も新しいモデル、あるいは(ロ)販売開始年度が取得等をする年度およびその前年度であるモデルのいずれかのモデルが該当する。
また、②の生産性向上(年平均1%以上)とは、旧モデル(最新モデルの一世代前モデル)と比較して、「生産性」が年平均1%以上向上しているものであることが必要になる。比較するのは同メーカー内での新旧モデルのものであり、同じ設備であっても他のメーカーや事業者が現在使用しているモデルとの比較は行わないこととされている。
取得を考えている設備が「最新モデル」なのかどうか、あるいは「生産性向上が1%以上」などといわれると、中小企業などの事業者にとっては適用のハードルが高く感じるのも事実だ。
事業者はメーカーに証明書発行の依頼だけ ただ、実際の手続きは非常に簡単。事業者は、各機器メーカーに対して証明書の発行を依頼するだけでよいのだ。何か書類を作成するわけではないので、適用のハードルは低いものといえる。機器メーカー等が工業会等に対象設備に該当するか否かの確認等をし、証明書を発行してもらうという流れとなっている(図表3参照)。
事業者は機器メーカー等から取得した証明書を確定申告の際に添付すればよいわけだ。
器具備品等は単品の最低額要件あり 最低取得価額は事業者側で判断することになる。具体的には図表2のとおりとなっている。1点、気を付けなければならないのは、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウエアについては、単品価額での要件に準ずるものとして、年度合計額での要件を設定していることだ。
たとえば、器具備品については、単品120万円または単品30万円かつ合計120万円が要件となっている。このため、1台30万円の冷蔵庫(器具備品)を4台、合計120万円で購入した場合は要件に該当するものの、1台20万円の冷蔵庫(器具備品)を6台、合計120万円で購入した場合については、合計額の基準は満たすものの、単品30万円の基準は満たさないため、適用の対象外になってしまう。
生産ライン改善設備は税理士への確認でOK
もう1つの類型である「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」だが、前述の「先端設備」と大きく異なるのは、対象設備の要件である。
こちらは、①投資計画における投資利益率が年平均15%以上(中小企業者等は5%以上)、②最低取得価額以上であることの要件の2つをすべて満たす必要がある。
営業利益の改善を資するような設備が想定されており、①の年平均の投資利益率については、以下の算式によって計算することになる。
経済産業局への確認は設備取得前に ①の要件については工業会等ではなく、「経済産業局」が確認を行うことになる(図表4参照)。投資計画は事業者が策定することになるため、前述の「先端設備」と比べて適用するための手間はかかることになる。
とはいっても、事業者が策定した投資計画(案)については、大企業・中小企業に関わらず税理士・公認会計士に対して事前確認を取ることになっている。自社の顧問税理士や会計監査人に依頼すればOK(その他の税理士・公認会計士でも可)。日頃から付き合いのある税理士や公認会計士に相談・確認することができるという意味で適用のハードルはそれほど高くはなっていないといえそうだ。
税理士・公認会計士から事前確認書を取れば、これを経済産業局に確認書発行申請を行うことになる。申請書が適切であれば、1か月以内に確認書が発行されることになる。
ただし、経済産業局による確認は設備を取得等する前に行うこととされている点、要注意だ。
また、確認書の交付を受けた場合には、申請書の計画期間内について、申請書の実施状況を確定決算後3か月以内に経済産業局に提出する必要がある。具体的には、年1回、3年間に渡って実績を報告することになる。報告の際、仮に申請した投資利益率が実績を下回ったとしても特に問題はない。入口での要件を満たせば、特に申請が取り消されることはないので安心したい。
建物・構築物の即時償却が可能 なお、対象設備については、「先端設備」よりも対象範囲がかなり拡大されている(図表5参照)。
たとえば、「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」については、建物や構築物も即時償却が可能になっている。投資計画さえ策定すれば、より多くの企業が自社の目的にあった設備を取得することが可能になりそうだ。
生産性向上設備投資促進税制よりもメリットある中小企業投資促進税制
中小企業者等については、生産性向上設備投資促進税制よりもさらにメリットのある中小企業投資促進税制の適用が可能になっている(図表6参照)。なお、「中小企業者等」とは、資本金1億円以下の法人等および個人事業者が該当する。
具体的には、中小企業投資促進税制のうち、生産性向上設備投資促進税制の①「先端設備」の3つの要件をすべて満たす設備(図表2参照)、または②「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」の2つの要件をすべて満たす設備(図表5参照)については、上乗せ措置が講じられる。
税制措置としては、(1)資本金3,000万円以下の法人等および個人事業主の場合は即時償却と税額控除10%の選択適用、(2)資本金3,000万円超1億円以下の法人の場合は即時償却と税額控除7%の選択適用ができる(図表7参照)。
税額控除を利用することができる法人が資本金1億円以下までに拡大されるほか、資本金3,000万円以下の中小企業者等に対しては従来の税額控除7%が10%に上乗せされることになる。
生産性向上設備投資促進税制と同じ対象設備で要件をクリアできるのであれば、断然、中小企業投資促進税制を適用する方がメリットを享受できる。
中小企業投資促進税制では適用要件も緩和 機械装置のうち、「ソフトウエア組込型機械装置(あらかしめプログラムが組み込まれた専用のコンピュータが搭載され、そのコンピュータからの指令に基づいて作動する機械装置)」については、「先端設備」の要件の1つである最新モデル要件も「一代前モデル」が追加で対象となるほか、ソフトウエアについては、「先端設備」の要件である生産性向上要件は適用しないなど、要件についてもかなり緩和されている。
なお、生産性向上設備投資促進税制と同じく「先端設備」「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」の要件の確認は行う必要がある。それぞれの手続きは一緒となっている。
設備の事業供用と税制措置適用年度が異なることに
生産性向上設備投資促進税制については、産業競争力強化法の施行日から平成28年3月31日までに一定規模以上の設備を取得し事業の用に供した場合には、即時償却または5%の税額控除(建物・構築物は3%)の適用を受けることができる。
また、平成28年4月1日から平成29年3月31日までに取得等した場合には、50%の特別償却(ただし、建物・構築物は25%)または4%の税額控除(ただし、建物・構築物は2%)の適用を受けることができる。
適用年度で税制措置に差があるだけに可能であれば早めの対応が必要といえる。
なお、産業競争力強化法の施行日(1月中下旬頃)から平成26年3月31日までの間に対象設備を取得等し、事業の用に供した場合には、平成26年4月1日を含む新事業年度において税制措置が適用できる措置が講じられている。
この場合には、設備を取得し事業の用に供した年度と税制措置の適用年度が異なることになる。
中小企業投資促進税制も同様 中小企業投資促進税制については、適用期限が平成29年3月31日まで3年間延長されるうえ、生産性向上設備投資促進税制と同様、産業競争力強化法の施行日から適用が可能になる。
完全ガイド 生産性向上設備投資促進税制
本誌が新年の最初に取り上げる特集テーマは、昨年の税制改正大綱に盛り込まれた生産性向上設備投資促進税制だ。同制度は、平成25年12月11日に公布された産業競争力強化法の制定に伴うもの。一定規模以上の最先端設備等を取得した場合には、平成28年3月31日までの事業供用であれば即時償却または5%の税額控除(建物・構築物は3%)の適用を受けることができる。対象設備はエアコンや陳列ケース、ソフトウェアなど、幅広くなっているため、設備投資を行う製造業だけでなく、非製造業も活用できる制度となっている。
同制度については、1月中下旬にも施行される予定の産業競争力強化法の施行日以後から適用できることになっている。消費税率が4月1日から8%に引き上げられるなか、景気の腰折れを防ぐ目的もあるからだ。しかし、施行日は迫っているものの、まだ詳細が明らかでない部分も多い。そこで、本誌編集部では、生産性向上設備投資促進税制について総力取材を敢行。経済産業省の資料などを交えながら同制度について解説する。
入口は2つも出口は1つの生産性向上設備投資促進税制
平成26年4月1日から消費税率が8%に引き上げられることに伴う反動などに対応するため、与党は平成25年10月1日、「民間投資活性化等のための税制改正大綱」を取りまとめた。先の臨時国会で成立し、12月11日に公布された産業競争力強化法の制定に伴い、①生産性向上設備投資促進税制、②ベンチャー投資促進税制、③事業再編促進税制を創設するなど、民間投資を活性化させるための措置を盛り込んだ。
このうち、生産性向上設備投資促進税制は、一定の要件を満たせば、即時償却あるいは5%の税額控除が可能となっているため、企業や実務家の関心の高い制度となっている。
具体的に、生産性向上設備投資促進税制の概要は図表1のとおりとなっている。ポイントとなるのは、同制度を適用する場合の入口は2つあるということだ。

類型として「先端設備」および「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」の2種類が設けられている。それぞれ、対象設備や要件、対象となる設備であるかどうかの確認者が異なることになる。
ただし、最終的に受けられる税制措置は同じとなる。自社にとってクリアしやすい要件を考慮したうえで、税制措置の適用を考えるべきといえる。
以下、「先端設備」および「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」の2つの類型に分けて説明することとする。
Column | ポイントとなる産業競争力強化法はいつから施行? |
生産性向上設備投資促進税制などの税制措置については、1月下旬に召集予定の通常国会に提出される平成26年度税制改正法案に盛り込まれることになる。したがって、平成26年4月から施行されることになるが、景気の腰折れなどを防ぐ観点から平成26年3月期での実質的な遡及適用も認めている。具体的には、産業競争力強化法の施行日から適用されることになる。 この産業競争力強化法だが、平成25年12月11日に公布されたことに合わせて、経済産業省は、産業競争力強化法施行令(案)等を公表。(1月9日まで意見募集)。この関係法令の意見募集終了後、順調にいけば1月13日の週には政令の閣議決定が行われ、政省令・告示が公布される見込みとなっている。このため、早ければ1月中旬、遅くとも1月中には施行される予定だ。 |
先端設備の要件確認、事業者側は手間いらず
「先端設備」の対象となる設備は図表2のとおりとなっている。設備投資減税といえば、対象は製造業が主な対象ということになるが、今回の制度は、冷暖房やソフトウエアなども対象に含まれているため、非製造業も適用しやすいものとなっている。建物(断熱材、断熱窓)が対象となっている点も特徴といえる。

福利厚生施設等は対象外 ただし、生産等設備(事業の用に直接供される減価償却資産)のみが対象となっているため、本店、寄宿舎等の建物、事務用器具備品、福利厚生施設等のいわゆるバックオフィスは対象外となっている。
この点は、後ほど説明する「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」についても同様だ。
先端設備は工業会が確認 対象設備が「先端設備」に該当するか否かについては、「工業会等」が確認することになる。「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」は経済産業局が確認することになるため、異なる点だ。
「先端設備」の要件としては、①最新モデル、②生産性向上(年平均1%以上)、③最低取得価額以上の3つをすべて満たす必要がある。
最新モデルとは、各メーカーのなかで、(イ)一定期間内(機械装置:10年以内、工具:4年以内、器具備品:6年以内、建物および建物附属設備:14年以内、ソフトウエア:5年以内)に販売が開始されたもので、最も新しいモデル、あるいは(ロ)販売開始年度が取得等をする年度およびその前年度であるモデルのいずれかのモデルが該当する。
また、②の生産性向上(年平均1%以上)とは、旧モデル(最新モデルの一世代前モデル)と比較して、「生産性」が年平均1%以上向上しているものであることが必要になる。比較するのは同メーカー内での新旧モデルのものであり、同じ設備であっても他のメーカーや事業者が現在使用しているモデルとの比較は行わないこととされている。
取得を考えている設備が「最新モデル」なのかどうか、あるいは「生産性向上が1%以上」などといわれると、中小企業などの事業者にとっては適用のハードルが高く感じるのも事実だ。
事業者はメーカーに証明書発行の依頼だけ ただ、実際の手続きは非常に簡単。事業者は、各機器メーカーに対して証明書の発行を依頼するだけでよいのだ。何か書類を作成するわけではないので、適用のハードルは低いものといえる。機器メーカー等が工業会等に対象設備に該当するか否かの確認等をし、証明書を発行してもらうという流れとなっている(図表3参照)。

事業者は機器メーカー等から取得した証明書を確定申告の際に添付すればよいわけだ。
器具備品等は単品の最低額要件あり 最低取得価額は事業者側で判断することになる。具体的には図表2のとおりとなっている。1点、気を付けなければならないのは、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウエアについては、単品価額での要件に準ずるものとして、年度合計額での要件を設定していることだ。
たとえば、器具備品については、単品120万円または単品30万円かつ合計120万円が要件となっている。このため、1台30万円の冷蔵庫(器具備品)を4台、合計120万円で購入した場合は要件に該当するものの、1台20万円の冷蔵庫(器具備品)を6台、合計120万円で購入した場合については、合計額の基準は満たすものの、単品30万円の基準は満たさないため、適用の対象外になってしまう。
生産ライン改善設備は税理士への確認でOK
もう1つの類型である「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」だが、前述の「先端設備」と大きく異なるのは、対象設備の要件である。
こちらは、①投資計画における投資利益率が年平均15%以上(中小企業者等は5%以上)、②最低取得価額以上であることの要件の2つをすべて満たす必要がある。
営業利益の改善を資するような設備が想定されており、①の年平均の投資利益率については、以下の算式によって計算することになる。

経済産業局への確認は設備取得前に ①の要件については工業会等ではなく、「経済産業局」が確認を行うことになる(図表4参照)。投資計画は事業者が策定することになるため、前述の「先端設備」と比べて適用するための手間はかかることになる。

とはいっても、事業者が策定した投資計画(案)については、大企業・中小企業に関わらず税理士・公認会計士に対して事前確認を取ることになっている。自社の顧問税理士や会計監査人に依頼すればOK(その他の税理士・公認会計士でも可)。日頃から付き合いのある税理士や公認会計士に相談・確認することができるという意味で適用のハードルはそれほど高くはなっていないといえそうだ。
税理士・公認会計士から事前確認書を取れば、これを経済産業局に確認書発行申請を行うことになる。申請書が適切であれば、1か月以内に確認書が発行されることになる。
ただし、経済産業局による確認は設備を取得等する前に行うこととされている点、要注意だ。
また、確認書の交付を受けた場合には、申請書の計画期間内について、申請書の実施状況を確定決算後3か月以内に経済産業局に提出する必要がある。具体的には、年1回、3年間に渡って実績を報告することになる。報告の際、仮に申請した投資利益率が実績を下回ったとしても特に問題はない。入口での要件を満たせば、特に申請が取り消されることはないので安心したい。
建物・構築物の即時償却が可能 なお、対象設備については、「先端設備」よりも対象範囲がかなり拡大されている(図表5参照)。

たとえば、「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」については、建物や構築物も即時償却が可能になっている。投資計画さえ策定すれば、より多くの企業が自社の目的にあった設備を取得することが可能になりそうだ。
▶先端設備等をリースした場合の取り扱いは? |
生産性向上設備投資促進税制の対象設備をリースした場合についても同税制措置の適用を受けることができそうだ。 所有権移転ファイナンス・リースの場合は特別償却(即時償却を含む)または税額控除のいずれか、所有権移転外ファイナンス・リースの場合は税額控除のみ適用が可能になる見込みだ。ただし、オペレーティング・リースの場合はレンタルしたにすぎないので同税制措置の適用はない。 |
生産性向上設備投資促進税制よりもメリットある中小企業投資促進税制
中小企業者等については、生産性向上設備投資促進税制よりもさらにメリットのある中小企業投資促進税制の適用が可能になっている(図表6参照)。なお、「中小企業者等」とは、資本金1億円以下の法人等および個人事業者が該当する。

具体的には、中小企業投資促進税制のうち、生産性向上設備投資促進税制の①「先端設備」の3つの要件をすべて満たす設備(図表2参照)、または②「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」の2つの要件をすべて満たす設備(図表5参照)については、上乗せ措置が講じられる。
税制措置としては、(1)資本金3,000万円以下の法人等および個人事業主の場合は即時償却と税額控除10%の選択適用、(2)資本金3,000万円超1億円以下の法人の場合は即時償却と税額控除7%の選択適用ができる(図表7参照)。

税額控除を利用することができる法人が資本金1億円以下までに拡大されるほか、資本金3,000万円以下の中小企業者等に対しては従来の税額控除7%が10%に上乗せされることになる。
生産性向上設備投資促進税制と同じ対象設備で要件をクリアできるのであれば、断然、中小企業投資促進税制を適用する方がメリットを享受できる。
中小企業投資促進税制では適用要件も緩和 機械装置のうち、「ソフトウエア組込型機械装置(あらかしめプログラムが組み込まれた専用のコンピュータが搭載され、そのコンピュータからの指令に基づいて作動する機械装置)」については、「先端設備」の要件の1つである最新モデル要件も「一代前モデル」が追加で対象となるほか、ソフトウエアについては、「先端設備」の要件である生産性向上要件は適用しないなど、要件についてもかなり緩和されている。
なお、生産性向上設備投資促進税制と同じく「先端設備」「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」の要件の確認は行う必要がある。それぞれの手続きは一緒となっている。
設備の事業供用と税制措置適用年度が異なることに
生産性向上設備投資促進税制については、産業競争力強化法の施行日から平成28年3月31日までに一定規模以上の設備を取得し事業の用に供した場合には、即時償却または5%の税額控除(建物・構築物は3%)の適用を受けることができる。
また、平成28年4月1日から平成29年3月31日までに取得等した場合には、50%の特別償却(ただし、建物・構築物は25%)または4%の税額控除(ただし、建物・構築物は2%)の適用を受けることができる。
適用年度で税制措置に差があるだけに可能であれば早めの対応が必要といえる。
なお、産業競争力強化法の施行日(1月中下旬頃)から平成26年3月31日までの間に対象設備を取得等し、事業の用に供した場合には、平成26年4月1日を含む新事業年度において税制措置が適用できる措置が講じられている。
この場合には、設備を取得し事業の用に供した年度と税制措置の適用年度が異なることになる。
中小企業投資促進税制も同様 中小企業投資促進税制については、適用期限が平成29年3月31日まで3年間延長されるうえ、生産性向上設備投資促進税制と同様、産業競争力強化法の施行日から適用が可能になる。
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