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解説記事2014年03月03日 【実務解説】 経団連「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」改訂版について(2014年3月3日号・№537)

実務解説
経団連「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」改訂版について
 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 川本 真

 昨年12月27日、経団連経済法規委員会企画部会(部会長:佐久間総一郎 新日鐵住金常務取締役)は、「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(以下、「ひな型」という)の改訂版を公表した。
 本改訂は、法務省民事局参事官室の宮崎雅之局付のご協力の下、公認会計士の阿部光成先生、有限責任監査法人トーマツの布施伸章先生のご助言・ご協力と、わが国を代表する企業実務の専門家である経団連経済法規委員会企画部会及び企業会計委員会企画部会委員の検討に基づき行われた。

Ⅰ はじめに
 経団連では、昭和56年に商法改正に伴う法務省令に対応したひな型を公表して以来、法改正等を踏まえて随時改訂を行い、関係者の参考に供している。本稿では、改訂のポイントについて、その背景を含めて紹介する。なお、ひな型全体及び前回改訂版との新旧対照表は、経団連のホームページ(http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/115.pdf)からダウンロードすることができる。

Ⅱ 改訂の背景
 平成24年5月17日、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号。以下「改正退職給付会計基準」という。)及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第25号)を公表した。
 改正退職給付会計基準では、財務報告を改善する観点及び国際会計基準(IFRS)とのコンバージェンスの観点から、(1)未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法の見直し、(2)退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直し、(3)開示の拡充を主な改正内容としている。なお、この内(1)及び(3)の一部については当面の間、個別財務諸表には適用されないこととされている。
 これらの公表に伴い所要の改正をするべく、昨年5月20日、会社計算規則の一部を改正する省令(平成25年法務省令第16号)が公布、施行された。会社計算規則の改正の概要は、改正退職給付会計基準の公表を踏まえ、連結貸借対照表の項目として「退職給付に係る資産」、「退職給付に係る負債」及び「退職給付に係る調整累計額」を、連結株主資本等変動計算書の項目として「退職給付に係る調整累計額」をそれぞれ追加するものである。

Ⅲ 改訂の概要

1 個別注記表
 改正後の会社計算規則においては、改正前と同様、退職給付に関する注記に係る明文規定が設けられておらず、改正退職給付会計基準が定める注記開示を求めていない。これまでどおり、退職給付の会計処理基準に関する事項や、企業の採用する退職給付制度の概要が、会社の財産または損益の状態を正確に判断するために必要である場合には、退職給付の会計処理基準に関する事項については、重要な会計方針に係る事項に関する注記(98条1項2号、101条3号)として、企業の採用する退職給付制度の概要については、その他の注記(98条1項19号、116条)として、これらの事項を計算書類に記載することとなると考えられる。
 そこで、ひな型の個別注記表「重要な会計方針に係る事項に関する注記(引当金の計上基準)」の記載例については特段の変更を行わず、会計基準で用いる名称に従い、「均等償却」を「定額法」、「過去勤務債務」を「過去勤務費用」に変更するなどの用語の微修正に留めている。
 
2 連結貸借対照表
(1)資産の部及び負債の部
 改正退職給付会計基準では、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を、連結貸借対照表において新たに計上することが求められる。それに伴い、改正後の会社計算規則では、投資その他の資産の項目として、「退職給付に係る資産」(74条3項4号ニ)、固定負債の項目として「退職給付に係る負債」(75条2項2号ニ)を、それぞれ連結貸借対照表の項目として掲げている。このうち、ひな型の記載例においては、「退職給付に係る負債」を新たに追加している【記載例1参照】。なお、年金資産の額が退職給付債務を上回る場合は、「退職給付に係る資産」を投資その他の資産として計上することとなる(改正退職給付会計基準13項)(脚注1)。



(2)純資産の部  改正後の会社計算規則では、「退職給付に係る調整累計額」を、連結貸借対照表におけるその他の包括利益累計額に計上すべき項目として掲げている(76条7項5号)。
 そこでひな型の記載例においても、「退職給付に係る調整累計額」を追加している【記載例1参照】。
 改正後の会社計算規則では、退職給付に係る調整累計額に計上すべき項目として、「未認識数理計算上の差異」、「未認識過去勤務費用」、及び「その他退職給付に係る調整累計額に計上することが適当であると認められるもの」の合計額である旨が定められており(76条9号3号)、「その他退職給付に係る調整累計額に計上することが適当であると認められるもの」には、会計基準変更時差異の未処理額が含まれる。

3 連結株主資本等変動計算書  改正後の会社計算規則96条5項5号では、76条7項5号と同様、連結株主資本等変動計算書の項目として「退職給付に係る調整累計額」が追加されており、ひな型の記載例においても同様の項目を追加している【記載例2参照】。



 なお、改正退職給付会計基準は、過去の期間への遡及適用が求められておらず(改正退職給付会計基準37項)、適用初年度における「退職給付に係る調整累計額」の期首残高は「-」となることに留意が必要である。未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用、会計基準変更時差異の未処理額を、税効果を調整の上、「株主資本以外の項目の連結会計年度中の変動額」に純額で表示することとなる。
 また、改正退職給付会計基準を平成25年4月1日以降開始する事業年度の期首から早期適用している会社においては、当期首残高及びこれに対する影響額を表示する必要があると考えられる。その際の株主資本等変動計算書の様式としては、遡及適用または誤謬の訂正を行った場合として、ひな型の記載例に追加的に設けている様式を使用することが考えられる。

4 連結注記表  連結計算書類に係る会計処理基準として、これまで、「退職給付引当金の計上基準」は、連結注記表における「引当金の計上基準」の項目に注記されていた。改正後の会社計算規則においては、退職給付に関する注記に係る明文規定が設けられていないが、連結貸借対照表上、「退職給付引当金」の表示が「退職給付に係る負債」へ変更されたことに伴い、会社計算規則において、退職給付に係る負債の計上基準に重要性がある場合には、「その他連結計算書類の作成のための重要な事項」(102条1項3号ニ)に該当し、連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項に関する注記として記載することとなると考えられる。
 従って、ひな型の連結注記表においては「退職給付引当金の計上基準」の記載例を削除の上、「その他連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項」に記載例を新設した【記載例3参照】。なお、法務省の「会社計算規則の一部を改正する省令案」に関する意見募集の結果を踏まえ、名称を「退職給付に係る負債の計上基準」としているが、「退職給付に係る会計処理の方法」など、その他の適切な項目を付すことも考えられる。

(記載例3)その他連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項に関する注記
[記載例]
(4)その他連結計算書類の作成のための基本となる重要な事項
 ③ 退職給付に係る負債の計上基準
   退職給付に係る負債は、従業員の退職給付に備えるため、当連結会計年度末における見込額に基づき、退職給付債務から年金資産の額を控除した額を計上しております。
   会計基準変更時差異(×××百万円)は、主として○年による定額法により費用処理しております。
   過去勤務費用は、主としてその発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(○年)による定額法により費用処理しております。
   数理計算上の差異は、主として各連結会計年度の発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数(○年)による定額法(一部の連結子会社は定率法)により按分した額を、それぞれ発生の翌連結会計年度から費用処理しております。
   未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用については、税効果を調整の上、純資産の部におけるその他の包括利益累計額の退職給付に係る調整累計額に計上しております。
(記載上の注意)
 企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」を早期適用している会社においては、退職給付見込額の期間帰属方法について記載することが考えられる。この場合、以下の記載を追加することが考えられる。
 なお、退職給付債務の算定にあたり、退職給付見込額を当連結会計年度までの期間に帰属させる方法については、期間定額基準(又は給付算定式基準)によっております。
 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用について、税効果を調整の上、純資産の部に計上している旨の記載は、会社計算規則上、明示的に求められているものではない。このため、当該事項の記載の要否は、企業集団の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項かどうかを判断することになると考えられる。

 記載例の内容は、これまでの「退職給付引当金の計上基準」の記載をベースに、「均等償却」を「定額法」、「過去勤務債務」を「過去勤務費用」に変更するなどの用語の修正を行った。
 さらに、新たな記載事項として、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の連結特有の会計処理に係る記載を追加している。当該記載は、会社計算規則上、明示的に求められているものではないため、企業集団の財産又は損益の状態を正確に判断するために必要な事項かどうかを判断の上、当該事項の記載の要否を検討することになると考えられる。
 また、改正退職給付会計基準では、退職給付見込額の期間帰属方法について、「期間定額基準」と「給付算定式基準」のいずれかの方法を選択適用することとなった(改正退職給付会計基準19項)。当該定めは、平成26年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されるが、平成25年4月1日以降開始する事業年度の期首から早期適用している会社においては、退職給付見込額の期間帰属方法について記載することが考えられる。そこでひな型においては、記載上の注意として追加的な記載例を掲示している。
 なお、改正退職給付会計基準の適用初年度は、会計方針の変更に関する注記として、所要の記載が必要となることが考えられるため留意が必要である。

Ⅳ 適用時期
 改正後の会社計算規則は平成25年4月1日以降に開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用されるが、改正退職給付会計基準の適用は段階的に行われるため、計算書類及び連結計算書類の作成にあたっても留意が必要である。
 具体的には、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法の見直しならびに開示の拡充などは平成25年4月1日以降開始する事業年度の年度末に係る連結計算書類から適用される。また、退職給付債務及び勤務費用の計算方法の見直しならびに複数事業主制度の定めなどは平成26年4月1日以降開始する事業年度の期首から適用される。なお、これらについては、平成25年4月1日以降開始する事業年度の期首からの適用が可能とされている。

脚注
1 複数の退職給付制度を採用している場合において、1つの退職給付制度に係る年金資産が当該退職給付制度に係る退職給付債務を超えるときは、当該年金資産の超過額を他の退職給付制度に係る退職給付債務から控除してはならない(改正退職給付会計基準13項(注1))。

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