解説記事2014年05月26日 【最新判決研究】 相続税申告に係る株式評価額が誤りであることを確認した判決に基づく更正の請求の可否(2014年5月26日号・№547)
最新判決研究
相続税申告に係る株式評価額が誤りであることを確認した判決に基づく更正の請求の可否
東京地裁平成26年2月18日判決(平成24年(行ウ)第854号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)X(原告)は、平成16年11月13日、父Hが死亡したことにより、非上場会社であるT社の株式(以下「本件株式」という。)を相続した。Xは、平成17年2月25日、本件株式を総額4億9,648万円余(1株当たり642円)でHが代表取締役を務めていたK社へ譲渡(以下「本件譲渡」という。)したが、平成17年9月13日の相続税(以下「本件相続税」という。)の申告(以下「本件申告」という。)に当たって、本件株式の価額を財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)の定めに従い1株当たり1,083円(総額8億3,752万円余)と評価して課税価格を計算したため、1億7,087万円余の相続税額を過大に納付したことになった。
そこで、Xは、国税通則法(以下「通則法」という。)23条1項に基づく更正の請求(以下「当初更正の請求」という。)をしたが、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「当初処分」という。)を受けたので、当初処分の取消しを求めて不服申立てをしたが、異議決定及び裁決において当該請求がそれぞれ棄却された。
(2)そのため、Xは、平成21年8月3日、K社及びその顧問弁護士S(以下「K社ら」という。)を被告として、①主位的に、本件譲渡に当たり、K社らの虚偽の説明により不当に低い価格で本件株式を譲渡させられたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、②予備的に、HとK社との間に本件株式を譲渡する旨の合意があったとの錯誤があったため、本件譲渡が無効であるとして、不当利得返還請求権に基づき、本件株式の申告額と譲渡額との差額3億4,104万円余の支払を求める訴訟(以下「別訴」という。)を提起した。しかし、別訴に係る判決(以下「別訴判決」という。)は、「Hの生前に、HとK社の役員らとの間で、Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格、1株当たり642円)でK社に譲渡する旨の合意が成立していたこと」を認定し、Xの請求を棄却した。
かくして、Xは、平成23年1月18日、別訴判決が通則法23条2項1号にいう「判決」に当たるとし、同項に基づいて更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をしたが、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件処分」という。)を受けたので、不服申立ての前置を経て、国(被告)に対し、本件処分の取消しを求めて本訴を提起した。
二、争点と当事者の主張
1 争 点 本件更正の請求が通則法23条2項1号所定の要件を満たす適法なものかどうか。
2 Xの主張 (1)通則法23条の更正の請求の制度は、納税申告書によっていったん確定した税額に誤りがあったため、国に生じた不当利得の返還を求める趣旨のものであるが、国家財政上の要請から、その請求期間等所定の制限が設けられている。しかし、その制限規定については、最近の裁判例において納税者の権利救済を重視して弾力的に解釈される傾向にあり、かつ、平成23年の通則法の改正によって大幅に緩和されるので、本件においても、通則法23条2項1号等の規定が弾力的に解釈、適用されるべきである。
(2)Xは、本件譲渡に際し、K社から、Hとの約束どおり本件株式を1株当たり642円で譲渡してほしい旨の強い要請があったことから、十分な検討もしない状態で、1株当たり642円で本件株式を譲渡した。しかし、Xは、本件相続税においては、評価通達の定めに従って1株当たり1,083円と評価して本件申告をし、相続税を過大に納付した。そこで、Xは、本件株式を1株当たり642円で評価し直すように求めて、当初更正の請求をしたが、原処分庁、異議審理庁及び国税不服審判所長とも、1株当たり1,083円であるとして、更正をすべき理由がない旨の判断をした。
これにより、Xは、国の各機関から本件株式の1株当たりの時価が1,083円であることについてお墨付きを得たと確信し、そうであればXらがK社にだまされたものと考え、別訴を提起した。
(3)別訴判決は、HとK社との間におけるHの所有する本件株式を取得価格(平均価格)で売り渡す旨の約束(すなわち、HとK社との間に売買契約又は売買予約が成立していたこと)を認定しており、これにより、①本件相続に係る相続財産は本件株式自体ではなくその売買代金請求権であること、又は、②本件株式自体が相続財産であるとしても、HとK社との間に本件株式の売買予約が存在していたことが確定し、いずれにしても、本件相続開始時における本件株式の価額(時価)が上記取得価格(平均価格)である1株642円であったことが確定したものである。
(4)前記(1)のとおり、通則法23条2項1号に規定する「(略)事実に関する訴えについての判決」の「事実」とは、その事実により特定の課税計算の内容を明確に左右するようなものを含むものと解すべきであるところ、別訴判決は、上記のような内容のものであるから、同号に規定する「(略)事実に関する訴えについての判決」に該当する。
このように解することは、青色申告承認の取消処分の取消判決が通則法23条2項1号に規定する「判決」に当たるとした最高裁昭和57年2月23日第三小法廷判決・民集36巻2号215頁(以下「昭和57年最判」という。)、法人税申告書上の所得税額控除の記載の誤りを理由とする更正の請求につき、法人税法68条3項の趣旨に反するということはできず、通則法23条1項1号の所定の要件を満たすとした最高裁平成21年7月10日第二小法廷判決・民集63巻6号1092頁(以下「平成21年最判」という。)等の裁判例とも整合する。
(5)通則法23条2項1号に基づく更正の請求をする場合につき、同条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由が必要であると解したとしても、Xは、同項1号に基づいて当初更正の請求をしたが、それが認められなかったが故に別訴を提起し、別訴判決によってやむを得ず本件更正の請求をしたものであって、やむを得ない理由がある。
3 国の主張 (1)通則法23条2項1号にいう「判決」とは、私法行為又は行政行為上の紛争を解決することを目的とする民事事件の判決を意味しており、また、同項の規定の趣旨と各列挙事由の内容に照らすと、同項1号の「判決」に基づいて更正を請求するためには、当該訴訟が基礎事実の存否、効力等を直接の審理の対象とし、判決により基礎事実と異なることが確定されることが必要である。
(2)別訴は、Xが、①主位的に、本件譲渡契約に当たり、K社らの虚偽の説明により不当に低い価格で本件株式をK社に譲渡させられたとして、不法行為に基づく損害賠償請求を、②予備的に、Xには、HとK社との間に本件株式を取得価格でK社に譲渡する旨の合意が存在しないのに存在したとの錯誤があったため、K社との間の本件譲渡は無効であるとして、不当利得に基づく返還請求をした事案である。かかる訴えは、本件株式の帰属に係る事実の存否や効力、本件株式の時価について直接審理の対象としたものではない。
(3)Xが引用する昭和57年最判は、そもそも、Xが主張するように「青色申告承認の取消処分の取消判決が通則法23条2項1号にいう『判決』に当たる」などと明示的に判断をしたものではない。また、青色申告承認の取消処分に係る訴訟の場合には、青色申告書による申告の承認を得ているか否かという事実、すなわち、通則法23条2項1号の「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」が直接審理の対象となっており、訴訟の結果、当該計算の基礎としたところと異なることが確定することがあり得ることから、同号による更正の請求が認められる余地があるとしても、別訴においては、本件株式の帰属に係る事実の存否等が直接審理の対象とされていないのであるから、本件相続税の計算の基礎となった事実が別訴判決によって異なることが確定することはあり得ない。
(4)別訴判決は、「Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格)でK社に譲渡する旨の合意が成立したといえる」こと等を判示したものにすぎず、本件株式の時価が幾らであったかなどについて判示したものではない。
三、判決要旨
請求棄却。 (1)通則法23条2項は、申告書の時には予想し得なかった事態その他納税義務者が同条1項の更正の請求をしなかったのもやむを得ないと考えられる事由が後発的に生じたことにより、当該申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎に変動が生じた場合に、確定した租税法律関係を変動した状況に適合させるため、同条1項所定の更正の請求の期間経過後であっても更正の請求をすることを認めて、納税義務者の権利救済の途を拡充したものと解される。
そして、本件更正の請求が同号の要件を満たして適法なものであるといえるためには、別訴判決により「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた(略)事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」といえる必要があり、また、上記のような同項の制度趣旨からすれば、同条1項所定の更正の請求の期間経過後に当該理由に基づく更正の請求をすることにつきやむを得ない理由があるといえる必要があるものと解される(最高裁平成15年4月25日第二小法廷判決・裁判集民事209号689頁、以下「平成15年最判」という。)。
(2)そこで、別訴判決について見ると、別訴判決の具体的内容は次のとおりである。別訴の「争点(1)(K社に対する本件株式の譲渡に際し、虚偽の説明がされたために適正価格を大幅に下回る対価で譲渡することとなったか)」につき、「平成16年5月ころ、Hは、当時、K社の代表取締役であったMとSに対し、『東博の株を買った値段で戻すよ。』と言った。」、「平成17年7月23日ころ、(略)、Sが、Xに対し、Hが本件株式を取得した経緯を説明し、本来はK社が取得すべき株式であり、Hの本件株式取得が問題視されかねないこともあり、HがK社に戻すと言っていたことを告げた上、本件株式のK社へのHの取得価格(平均価格642円)での譲渡を要請した。また、Mは『決まっていた話なんだよな』と言った。」等の具体的な認定事実を前提として、「Hは、生前、本件株式をその取得価格(平均価格)でK社に譲渡することをK社の代表権を有するMとSに申し入れていたものである。HがK社の創業者でワンマン経営者であり、その命令は社内において絶対的であったこと、申入れの内容はMやSの意向にも合致していたことからすると、このHの申入れによって、口頭で、Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格)でK社に譲渡する旨の合意が成立したといえる。Hの死後、MとSは、これをXに説明し、その結果、Xは本件株式のK社への譲渡の具体的手続をとっているが、MとSの説明内容は、Hの生前にHとK社との間でされた合意の履行を求めるという点で何ら虚偽であったとはいえない。よって、K社が虚偽の説明をしたとするXの主張は理由がない。」と判示している。
また、別訴の「争点(2)(被告Bに職務上の注意義務違反が認められるか)」及び「争点(3)(本件株式の譲渡につきXに錯誤があったか(予備的請求原因))」についても、Xの請求はいずれも理由がないからこれを棄却するとの結論を示している。
(3)Xは、別訴判決により、①本件相続に係る相続財産は売買代金請求権であること、又は、②本件株式自体が相続財産であるとしても、亡HとK社との間に本件株式の売買予約が存在していたこと(以下、「①」、「②」は上記の①、②を指すこととする。)が確定したものであるから、別訴判決は通則法23条2項1号に規定する「判決」に該当する旨を主張する。
①について、①に係るXの主張は、別訴判決により、本件株式は本件相続開始時には既にK社に譲渡されていてHの相続財産に含まれないこと(Hの相続財産に含まれるのはK社に対する本件株式の売買代金請求権であること)が確定した旨をいうものと解される。
しかし、別訴の訴訟物は、本件相続開始後にされた本件株式の本件譲渡契約に関する虚偽の説明を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権(主位的請求)及び同契約の錯誤無効を理由とする同契約の売買代金に係る不当利得返還請求権(予備的請求)であり、本件相続開始時における本件株式の帰属自体ではなく、それと表裏一体の関係にあるといい得る権利関係でもないから、別訴判決における訴訟物に関する判断によって、本件相続開始時における本件株式の帰属が確定するものということはできない。
また、別訴判決の理由中の判断を見ても、HとK社との間で、Hの生前に、「口頭で、Hの所有する本件株式の取得価格(平均価格)でK社に譲渡する旨の合意が成立した」旨の判示はあるものの、これに先立ち、争いのない事実等として、Hの相続財産に本件株式が含まれていること及びXらが本件相続開始後である平成17年2月25日に本件株式をK社に譲渡したことを認定している。そうすると、上記判示部分は、あくまでも、本件株式がHの相続財産に含まれ、本件株式がHの生前にHからK社に譲渡されたことをいう趣旨のものとは解されない。すなわち、別訴判決は、その理由中にせよ、本件株式が本件相続開始時には既にK社に譲渡されていてHの相続財産に含まれないことを判示したものということはできない。したがって、いずれにしても、別訴判決により、本件株式がHの相続財産に含まれないことが確定したものということはできない。
(4)②に係るXの主張は、本件株式に係る売買契約の存在が本件株式の価額の評価に影響を与えるものであることを前提にして、別訴判決により、本件株式についてHとK社との間に売買予約が存在していたこと(すなわち、本件株式は本件相続開始当時売買予約による制約を受けていたこと)が確定した旨をいうものと解される。
しかし、前記のとおり、別訴の訴訟物は、本件相続開始後にされた本件株式の本件譲渡契約に関する虚偽の説明を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権(主位的請求)及び同契約の錯誤無効を理由とする同契約の売買代金に係る不当利得返還請求権(予備的請求)であり、本件相続開始時における本件株式の売買予約の存否自体ではなく、それと表裏一体の関係にあるといい得る権利関係でもないから、別訴判決における訴訟物に関する判断によって、本件相続開始時における本件株式の売買予約の存否が確定するものということはできない。
また、別訴判決の理由中の判断には、HとK社との間で、Hの生前に、「口頭で、Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格)でK社に譲渡する旨の合意が成立した」旨の判示がある。しかしながら、判決中に整理されたK社の主張において、Hとの間で本件株式の売買予約が成立していた旨の明確な主張はされておらず、K社は、「Hが平成16年5月頃に本件株式を買った値段で戻すよと言った」旨の事実を主張するにとどまっていること、その争点に対する判断においても、上記判示部分の「合意」が本件株式の売買予約の成立を意味するものであることは何ら示されていないこと、XからK社への本件株式の譲渡の原因は平成17年2月25日の本件譲渡契約であると認定されており、それが売買予約の存在を前提とした売主又は買主の予約完結権の行使によるものであることも何ら示されていないことからすると、上記判示部分は、本件譲渡契約につき、M及びSがXに対して本件株式をK社に譲渡することを要請した際の説明内容について不法行為法上違法といえるような虚偽のものと評価することはできないことや、本件譲渡契約の動機においてXに錯誤があったとは認められないことをいうための説示にすぎないものと解され(前記のとおり、上記判示部分の「合意」とは、契約の成立まで当然に意味するものではない前法律的な意味での事情を指すものと解し得る。)、HとK社との間に本件株式の売買予約が成立したことをいう趣旨のものであることが明らかであるとまではいえない。
したがって、別訴判決により、本件株式についてHとK社との間に売買予約が存在していたことが確定したものということはできない。
(5)ところで、Xは、本件申告につき、通則法23条1項所定の更正の請求の期間内である平成18年7月25日、本件申告における本件株式の評価額に誤りがあること等を理由として、当初更正の請求をしている。この当初更正の請求において、XはK社から、本件株式につきK社がHの平均取得価格(1株当たり642円)で買い戻すとの約定があったとの説明を受けたため、やむなく本件譲渡契約に応じたなどとして、本件株式の評価額は、評価通達の定めに従って算出した1株当たり1,083円ではなく、本件譲渡契約における1株当たりの譲渡価額642円とすべき旨を主張し、更に、その異議申立て及びその審査請求において、本件株式の評価額を1株当たり642円とすべき理由として、「本件株式はHがその取得時において『譲渡時(相続を含む)には当然の所有権者であるK社に平均取得価額で買戻させる』との約定があり、Xらはその説明を承知して約定を履行した」こと等を主張していた。これらの主張は、②に係るXの主張と実質的に同一であるか又は実質的に同一の事実関係に基づくものである。
そうすると、仮に別訴判決により②の事実が確定したと解するとしても、それは、Xにとって、予想し得なかった事態というよりも、むしろ当初更正の請求に係る手続当時から自ら主張していた内容に沿うものであって通則法23条1項所定の更正の請求に係る手続において②の事実を理由とする主張をすることも可能であったというべきであるから、同項所定の更正の請求の期間経過後に改めて当該理由に基づく更正の請求をすることにつき、やむを得ない理由があるということはできないと解される。
(6)Xは、別訴判決が通則法23条2項1号に規定する場合に該当すると解すべき根拠として、昭和57年最判及び平成21年最判を挙げる。
しかし、昭和57年最判は、青色申告書による法人税の確定申告につき青色申告承認の取消処分後に法人税法57条の規定による繰越欠損金の損金算入を否認して更正処分がされ、次いで青色申告承認の取消処分が課税庁により職権で取り消された場合、被処分者は、通則法23条2項の規定により減額更正の請求をすべきであって、同更正処分の無効確認訴訟において繰越欠損金の損金不算入を無効事由として主張することはできない旨を判示したものであり、そもそも、何らかの判決が同項1号に規定する「判決」に該当するかどうかを問題としたものではない。また、昭和57年最判の判示が青色申告承認の取消処分の取消判決が同号に規定する「判決」に該当することを含意しているとしても、それは、青色申告承認は青色申告に係る種々の特例の適用の要件となるものであり、青色申告承認が取り消されているか否かという事実は「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」に該当するといえるところ、青色申告承認の取消処分の取消判決がされれば、遡って青色申告承認が取り消されていないこととなり、上記事実が「当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」(同号)といえるからであると解され、そうとはいえない別訴判決の場合と状況を異にするのは明らかである。
また、平成21年最判は、法人税に係る更正の請求につき、通則法23条1項1号所定の要件を満たすかどうかについて判示したものであって、同条2項1号所定の要件を満たすかどうかについて判示したものではなく、別訴判決が同号に規定する場合に該当するかどうかの判断に直接影響を与えるものではない。
四、解説
はじめに 申告納税制度の下では、納税者は、往々にして、誤って税額を過大に納付したり、納税申告時には適法な税額であっても、その後、当該申告の前提となった法律関係が破綻して、結果的に納付した税額が過大になることがある。これらの場合には、国に不当利得が生じることになる。この不当利得の返還を求めるのが、更正の請求制度にほかならない。そのため、更正の請求制度は、申告納税制度と同時に発足し、近年、納税者の権利救済を図るために拡充され、かつ、関係規定の判例上の解釈も納税者の権利救済を重視する傾向にある(注1)。
かかる状況の中で、本件では、Xが、父Hの死亡により、本件株式を相続により取得したものの、かつてHが代表取締役を務めていたK社の役員らからHとの約束があったと言われ、1株当たり642円で譲渡したが、その後の本件申告に当たって、顧問税理士らの指導に従い、1株当たり1,083円で納税申告したため、1億7,087万円余の過大納付(国の不当利得)が生じたというものである。
そこで、Xは、一旦、当初更正の請求をするのであるが、それを否認する当初処分が行われ、不服審査の段階でも当初処分が適法とされたので、K社らに騙されたと思い、別訴を提起し、それも棄却する別訴判決が下されたため、それに基づいて本件更正の請求をしたというものである。このような更正の請求については、種々の法律問題がからむので、それらを検討した上で、本件判決の当否を検討することとする。
1 不当利得の返還と更正の請求制度 (1)前述したように、申告納税制度の下では、納税者が税額等を過大に申告・納付により、国に不当利得が生じる。このような不当利得の返還に関し、最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁)(注2)は、所得税の雑所得として課税された利息損害金債権が後日貸倒れにより回収不能となった場合の不当利得の返還に関し、次のように判示している。
「課税庁自身による前記の是正手続(編注=減額更正)が講ぜられない限り納税者が先の課税処分に基づく租税の収納を甘受しなければならないとすることは、著しく不当であって、正義公平の原則にもとるものというべきである。それゆえ、このような場合には、課税庁による是正措置がなくても、課税庁又は国は、納税者に対し、その貸倒れにかかる金額の限度においてもはや当該課税処分の効力を主張することができないものとなり、したがって、右課税処分に基づいて租税を徴収しえないことはもちろん、既に徴収したものは、法律上の原因を欠く利得としてこれを納税者に返還すべきものと解するのが相当である。」
もちろん、このような不当利得の返還は、無制限に行われるわけではなく、更正の請求制度の枠の範囲において行われるべきとするのが判例の考え方である(注3)。そして、そのような制限が必要なことは、納税者の権利救済と租税法律関係の早期安定(租税収入の確保の要請)とのバランスを図るためであると解されている(注4)。
(2)ところで、更正の請求制度が担う納税者との権利救済と租税法律関係の早期安定とのバランスは、平成23年の税制改正において、前者に大きく傾斜している。すなわち、国税通則法23条1項は、納税申告書に記載した税額等が、法律の規定に従っていなかったこと及び当該計算に誤りがあったことにより、過大納付等が生じたときには、法定申告期限から1年以内に更正の請求(通常の更正の請求)ができると定めていたところ、この請求期限を「5年以内」に延長した。更に、減額更正の期間制限についても、原則は法定申告期限から5年以内である(通法70①、改正前通法70②)が、上記期間制限の6月以内にされた更正の請求に係る減額更正については、法定申告期限から5年6月以内に延期された(注5)。
また、このような更正の請求期限等を延長しただけではなく、納税申告書の提出後においても各種の特例の適用が受けられるように、更正の請求の範囲を大幅に拡大した。その拡大は、当初申告要件を廃止する措置と控除額の制限を見直す措置である。前者については、例えば、所得税法70条に規定する純損失の繰越控除は、その適用を受けるためには、居住者が純損失の金額が生じた年分の所得税につき青色申告書等をその提出期限までに提出した場合であって、その後において連続して確定申告書を提出している場合に限られていた(改正前所法70④)が、改正後は、当該確定申告書をその提出期限までに提出しなくても、後日確定申告書さえ提出すれば当該控除を認めることとした(改正後所法70④)。このような当初申告要件の廃止は、各個別税法において21項目に及ぶ。
また、控除額の制限を見直す措置とは、例えば、法人税法68条に規定する所得税額の控除は、確定申告書に控除を受けるべき金額等の記載がある場合に限り適用され、かつ、当該記載された金額を限度とする(改正前法法68③)とされていたが、改正後は、修正申告書又は更正請求書に記載した金額についても控除されることとなった(改正後法法68③)。このような控除額制限の見直しは、各個別税法において13項目に及ぶ。
(3)このような更正の請求における納税者の権利救済の拡充は、制度面にとどまらず、関係規定の解釈についても行われるようになっている。例えば、最高裁平成21年7月10日第二小法廷判決(判例時報2056号46頁)は、法人税法上、所得税額控除は確定申告書に記載した金額を限度としていたところ(旧法法68③)、当該記載額を上回る税額の控除を認めるべき旨の更正の請求に対し、当該記載額が誤って過少に記載した場合には当該更正の請求を認めるべきであるとしている。
また、東京地裁平成21年2月27日判決(判例タイムズ1355号123頁)は、期限内申告において所得金額等の計算の基となった契約についての法定申告期限経過後の合意解除は税法上効力を有しないと解されていたところ(注6)、相続税の期限内申告書を提出した後、当事者の合意により遺産分割をやり直して更正の請求等をした事案につき、税務調査開始前等の要件を付けた上で、当該更正の請求を認めるべき旨判示している。
2 後発的事由に基づく更正の請求ができる場合の「判決」の意義 (1)前記1で述べたことは、更正の請求制度全体の傾向であるが、本件は、通則法23条2項1号に基づく更正の請求であるので、それに即して述べる。同項は、「納税申告書を提出した者又は第25条(決定)の規定による決定(〈略〉)を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合(〈略〉)には、同項(編注=1項)の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(〈略〉)をすることができる。」と定めている。そして、同項1号は、「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して2月以内」と定めている。
この「判決」の意義については、解釈上幾つかの問題がある。一つは、その判決が租税回避、節税策の失敗を繕うこと等を狙った馴れ合いによってもらたされた場合である。この点について、横浜地裁平成9年11月19日判決(税資229号663頁)は、「申告後に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について判決がされた場合であっても、右判決が当事者がもっぱら税金を免れる目的で馴れ合いによって得たものであるなど、客観的・合理的根拠を欠くものであるときは、同条2項1号の「判決」に当たらないと解すべきである。」と判示している(注7)。
また、この「判決」に該当しないとする裁判例としては、犯則所得金額を認定した刑事判決は「判決」に当たらないとした大阪地裁昭和58年12月2日判決(訟務月報30巻6号1061頁)、同平成6年10月26日判決(税資205号66頁)等、法令の解釈についての新たな判断を示した判決等を「判決」に当たらないとした京都地裁昭和56年11月20日判決(同121号374頁)(注8)等、土地の帰属を争う係争中に確定した取得時効に係る判決が「判決」に当たらないとした神戸地裁平成14年2月21日判決(税資252号順号9072)、大阪高裁平成14年7月25日判決(同252号順号9167)(注9)等がある。
(2)他方、本件にも類似する事例として、青色申告承認の取消処分の取消判決が、「判決」に該当するか否かがかつて争われたことがある。青色申告承認の取消処分は、①帳簿書類の備付け、記録又は保存が法令の定めるところに従って行われていないこと、②帳簿書類について税務署長の指示に従わなかったこと、③帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載したこと、④法人税について法定申告期限内に確定申告書を提出しなかったこと等(所法150①、法法127①)があったときに行われる。
したがって、当該取消処分の適法性(違法性)が法廷で争われる場合には、上記の取消事由の存否と取消処分の理由附記(所法150②、法127②)の当否が審理されるのであるから、当該取消判決も、当該審理の結果が示されるに過ぎない。ただ、その結果、当該取消処分後の白色扱いの納税申告又は更正において確定した税額が青色申告であったとすれば過大になることがある。
そのため、国は、かつて、当該取消判決は、通則法23条2項1号にいう「判決」に該当しないとして、当該取消判決に基づく更正の請求を否定し、それを法廷でも主張してきた。しかし、当該主張は、下級審段階で相次いで否定されるようになり(注10)、最終的には、最高裁昭和57年2月23日第三小法廷判決(民集36巻2号215頁)が、次のように判示して、その論争に結着を付けている。
「このような場合、課税庁としては、青色申告の承認の取消処分を取り消した以上、改めて課税標準額及び税額を算定し、先にした課税処分の全部又は一部を取り消すなどして、青色申告の承認の取消処分の取消によって生じた法律関係に適合するように是正する措置をとるべきであるが、被処分者である納税者としては、国税通則法23条2項の規定により所定の期間内に限り減額更正の請求ができると解するのが相当である。」
なお、上記最高裁判決は、青色申告承認の取消処分を職権で取り消した事案であるが、当該取消しも、通則法23条2号1号にいう「判決」と同様に解されている(通法23②一かっこ書)。
3 「やむを得ない理由」の存否 前記2で述べたように、通則法23条2項の規定に基づく更正の請求は、まず、ある判決が1号にいう「判決」に該当すればそれに基づいてすることができる。そして、2号では、所得その他課税物件の帰属違いによって更正又は決定があったときは、既に、当該所得を申告等をしていた者は更正の請求をできるとし、3号では、「その他当該国税の法定申告期限後に生じた前2号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき」に更正の請求ができるとしている。
これらの規定からすると、通則法23条2項に基づく更正の請求をする場合において、「やむを得ない理由」が要件とされているのは、3号に基づく更正の請求に限定されているように解される。
ところが、最高裁平成15年4月25日第二小法廷判決(訟務月報50巻7号2221頁、以下「平成15年最判」という。)は、上告人(納税者)が、自らの主導の下に、通謀虚偽表示により遺産分割協議が成立した外形を作出し、それに基づいて相続税申告を行った後、当該遺産分割協議の無効を確認する判決を得てそれに基づき通則法23条2項1号に基づく更正の請求をした事案につき、「そうすると、上告人が法23条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があるとはいえないから、同条2項1号により更正の請求をすることは許されないと解するのが相当である。」と判示した。
このように、通則法23条2項1号に基づく更正の請求においては、同条1項に定める期間内に更正の請求をしなかったことにつき「やむを得ない理由」があったことを要件とする考え方は、その後の高松高裁平成23年3月4日判決(訟務月報58巻1号216頁)等にも引き継がれている。
そのため、本件においても、本件判決は、別訴判決に基づいて更正の請求をするに当たっては、「やむを得ない理由」が必要である旨判示しているところであるが、その当否については、次に検討することとする。
4 別訴判決の「判決」該当性 (1)本件においては、Xが、父Hの死亡により、本件株式を相続により取得したものの、かつてHが代表取締役を務めていたK社の役員らからHとの約束があったということで、1株当たり642円で譲渡したが、その後の本件申告に当たって、顧問税理士らの指導に従い、1株当たり1,083円で相続税申告(本件申告)をしたため、1億7,087万円余の過大納付(国の不当利得)が生じたというものである。
そこで、Xは、一旦、当該過大納付について減額更正を求めて当初更正の請求をするのであるが、それを否認する当初処分が行われ、不服審査の段階においても、異議審理庁及び国税不服審判所から、当初処分が適法(本件株式の1株当たりの価額1,083円である。)とする異議決定及び裁決を受けたというものである。このような国の各機関の判断が正しいというのであれば、Xらは、本件株式の譲渡についてK社らに騙されたと思い、別訴を提起し、不法行為に基づく損害賠償請求権の有無等を争った。しかし、別訴判決は、HとK社との間に、「Hの申入れによって、口頭で、Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格、1株当たり642円)でK社に譲渡する旨の合意が成立していた」ことを認定し、当該損害賠償請求権の存在等を否定した。
かくして、Xは、別訴判決によって本件株式の価額が1株当たり642円であることが確定したものとして、本件更正の請求を行い、当該請求を認めなかった本件処分を不服として、前審手続を経て、本件取消訴訟を提起した。
本判決は、前述のように、別訴判決により通則法23条2号1号にいう「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」ということはできないこと、本件更正の請求をすることにつき「やむを得ない理由」があるということはないこと、平成21年最判等の裁判例の考え方は本件には適合しないこと等を判示して、Xのいずれもの主張も失当であるとして、同請求を棄却した。
(2)しかしながら、本件判決には、首肯し難い点が幾つかある。すなわち、本件においては、Xは、本件相続によって取得した本件株式に係る経済的利得が1株当たり642円であったことは紛れもない事実であり、それを1株当たり1,083円として本件申告(納付)したのであるから、それによって、1億7,087万円余の相続税額の過大納付(国の不当利得)が生じたことも否定できないところである。
そうであれば、かかる国の不当利得は、それを返還させるための更正の請求制度に基づいて返還されて然るべきであると考えられる。しかも、前記1で述べたように、近年当該更正の請求制度は、納税者の権利救済のために大幅に拡充され、関係条項について最高裁判所等が納税者の権利救済のため弾力的に解釈するようになっている。
にもかかわらず、Xの当初更正の請求に対しては、国の各機関は、実体的に、本件株式の1株当たりの価額は1,083円であるから過大納付はないとし、Xの本件更正の請求に対しては、本件の裁判所を含む国の各機関は、手続的に、別訴判決は通則法23条2項1号にいう「判決」に当たらないとして、いずれも当該請求を否定(棄却)している。
(3)特に、本件判決については、別訴判決と青色申告承認の取消処分の取消判決とをゆえなく区別しているように考えられる。けだし、前記2で述べたように、当該取消判決は、通則法23条2項1号にいう「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実」に関することを直接判断したわけではなく、当該取消判決によって当該取消処分後の白色扱いの課税関係に影響を及ぼすに過ぎない。そのことは、別訴判決についても同様に論じることができる。むしろ、別訴判決は、本件株式を1株当たり642円で譲渡せざるを得なかったことを確定させているわけであるから、その方が「計算の基礎となった事実」に直接関わっているものと考えられる。
また、本件判決は、本件更正の請求をするに当たって、「やむを得ない理由」がない旨判示している。しかし、前記3で述べたように、通則法23条2項1号に基づく更正の請求については、文理上「やむを得ない理由」が要件とされているわけではなく、平成15年最判等によって要求されているに過ぎない。しかも、それを要求している事案においては、いわゆる馴れ合い訴訟等に係るものであって、「やむを得ない理由」もないであろうから、本件と同一視することはできない。それに加え、本件のように、Xの当初更正の請求について国の各機関がそれを否定したが故に、別訴を提起せざるを得なかったという事情を考慮すること、本件更正の請求には、当然、「やむを得ない理由」があったものと解せられる。
更に、本件判決は、通則法23条1項と法人税法68条の規定について納税者の権利救済を図るために弾力的に解釈した平成21年最判の考え方が、通則法23条2項1号に基づく本件更正の請求に関係がない旨判示している。しかし、通則法23条2項各号に定める事由が法定申告期限から5年以内に生じれば同条1項の更正の請求ができるなど(注11)、1項と2項は密接に関係しているのであるから、本件判決の考え方は、余りに形式的過ぎて納得し難いものがある。
5 本判決の意義と問題点 (1)以上のように、本件においては、Xが父Hの死亡により本件株式を相続したものの、生前HとK社との間に約束があったと知らされ、本件株式を1株当たり642円でK社に譲渡したものの、本件申告において1株当たり1,083円(評価通達上の評価額)と評価して課税価格を計算したため、1億7,087万円余の過大納付が生じたものである。そのため、Xは、当初更正の請求をしたものの、課税処分及び不服審査の段階で本件株式の価額(時価)が1株当たり1,083円と認定されたため、やむを得ず別訴を提起し、別訴判決では、HとK社間に本件株式を1株当たり642円で譲渡する旨の約束があった旨認定されたので、本件更正の請求をしたものである。
結局、本件更正の請求は、本件判決によって、前述のように、適法なものを認められることはなかった。このことは、その是非はともかくとして、更正の請求をめぐる一裁判例として注目されるべきである。
(2)しかしながら、本件判決の判断については、前記4で述べたように、種々の問題点を指摘することができる。また、本件判決は、別訴判決において、本件株式についてHとK社との間に売買契約があったと認めることができず、また、売買予約があったとも認めることができないから、それらを勘案して本件株式の価額(時価)を評価することはできない旨判示している。そのような判断自体疑問はあるが、仮に、売買契約や売買予約の存在が認定できないとしても、評価通達が「財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。」(同通達1(3))と定めているところ、別訴判決がHとK社との間に口頭で本件株式を1株当たり642円で売り渡す旨の約束があったと認定され、かつ、それが実施されている事情を考慮した場合には、本件株式の価額は1株当たり642円で評価するしかないものと考えられる。いずれにしても、控訴審判決の行方が注目される。
(注1)更正の請求制度の沿革と最近の裁判例の動向については、品川芳宣「国税通則法の実務研究 第6回」税理2014年3月号174頁、同「同前 第7回」税理2014年4月号149頁、同「国税通則法の実務解説 第4回」租税研究2014年1月号117頁等参照。
(注2)この判決の評釈については、芝池義一「租税判例百選 第2判」(別冊従ジュリストNo.79)148頁等がある。
(注3)名古屋高裁昭和52年6月28日判決(訟務月報23巻7号)1242頁等参照。
(注4)盛岡地裁平成5年3月26日判決(税資194号1080頁)、東京地裁平成5年10月15日判決(同199号253頁)、東京高裁平成7年11月30日判決(同214号639頁)等参照。
(注5)このような期限延長に関する諸問題については、前出(注1)各書のほか、品川芳宣「国税通則法改正後の更正の請求をめぐる諸問題」税理2013年3月号72頁参照。
(注6)金子宏「租税法 第18版」(弘文堂 平成25年)119頁、最高裁平成10年1月27日第三小法廷判決(税資230号152頁)、大阪地裁平成12年2月23日判決(同246号908頁)、大阪高裁平成12年11月2日判決(同249号457頁)等参照。
(注7)同旨の判決については、東京高裁平成10年7月5日判決(税資237号142頁)、名古屋高裁平成2年7月18日判決(同180号85頁)、東京高裁平成3年2月6日判決(同182号297頁)等参照。
(注8)この問題については、平成18年の国税通則法の改正によって、更正の請求の対象にしている(通令6①五参照)。
(注9)同各判決については、品川芳宣「重要租税判決の実務研究 第三版」(大蔵財務協会 平成26年)31頁等参照。
(注10)岡山地裁昭和55年3月31日判決(税資110号1145頁)、広島地裁昭和56年2月26日判決(同116号388頁)、東京高裁昭和51年7月19日判決(同89号300頁)等参照。
(注11)東京高裁昭和61年7月3日判決(訟務月報33巻4号1023頁)、武田昌輔監修「DHCコンメンタール国税通則法」(第一法規・加除式)1441の3頁等参照。
相続税申告に係る株式評価額が誤りであることを確認した判決に基づく更正の請求の可否
東京地裁平成26年2月18日判決(平成24年(行ウ)第854号)
筑波大学名誉教授・弁護士 品川芳宣
一、事実
(1)X(原告)は、平成16年11月13日、父Hが死亡したことにより、非上場会社であるT社の株式(以下「本件株式」という。)を相続した。Xは、平成17年2月25日、本件株式を総額4億9,648万円余(1株当たり642円)でHが代表取締役を務めていたK社へ譲渡(以下「本件譲渡」という。)したが、平成17年9月13日の相続税(以下「本件相続税」という。)の申告(以下「本件申告」という。)に当たって、本件株式の価額を財産評価基本通達(以下「評価通達」という。)の定めに従い1株当たり1,083円(総額8億3,752万円余)と評価して課税価格を計算したため、1億7,087万円余の相続税額を過大に納付したことになった。
そこで、Xは、国税通則法(以下「通則法」という。)23条1項に基づく更正の請求(以下「当初更正の請求」という。)をしたが、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「当初処分」という。)を受けたので、当初処分の取消しを求めて不服申立てをしたが、異議決定及び裁決において当該請求がそれぞれ棄却された。
(2)そのため、Xは、平成21年8月3日、K社及びその顧問弁護士S(以下「K社ら」という。)を被告として、①主位的に、本件譲渡に当たり、K社らの虚偽の説明により不当に低い価格で本件株式を譲渡させられたとして、不法行為による損害賠償請求権に基づき、②予備的に、HとK社との間に本件株式を譲渡する旨の合意があったとの錯誤があったため、本件譲渡が無効であるとして、不当利得返還請求権に基づき、本件株式の申告額と譲渡額との差額3億4,104万円余の支払を求める訴訟(以下「別訴」という。)を提起した。しかし、別訴に係る判決(以下「別訴判決」という。)は、「Hの生前に、HとK社の役員らとの間で、Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格、1株当たり642円)でK社に譲渡する旨の合意が成立していたこと」を認定し、Xの請求を棄却した。
かくして、Xは、平成23年1月18日、別訴判決が通則法23条2項1号にいう「判決」に当たるとし、同項に基づいて更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をしたが、更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件処分」という。)を受けたので、不服申立ての前置を経て、国(被告)に対し、本件処分の取消しを求めて本訴を提起した。
二、争点と当事者の主張
1 争 点 本件更正の請求が通則法23条2項1号所定の要件を満たす適法なものかどうか。
2 Xの主張 (1)通則法23条の更正の請求の制度は、納税申告書によっていったん確定した税額に誤りがあったため、国に生じた不当利得の返還を求める趣旨のものであるが、国家財政上の要請から、その請求期間等所定の制限が設けられている。しかし、その制限規定については、最近の裁判例において納税者の権利救済を重視して弾力的に解釈される傾向にあり、かつ、平成23年の通則法の改正によって大幅に緩和されるので、本件においても、通則法23条2項1号等の規定が弾力的に解釈、適用されるべきである。
(2)Xは、本件譲渡に際し、K社から、Hとの約束どおり本件株式を1株当たり642円で譲渡してほしい旨の強い要請があったことから、十分な検討もしない状態で、1株当たり642円で本件株式を譲渡した。しかし、Xは、本件相続税においては、評価通達の定めに従って1株当たり1,083円と評価して本件申告をし、相続税を過大に納付した。そこで、Xは、本件株式を1株当たり642円で評価し直すように求めて、当初更正の請求をしたが、原処分庁、異議審理庁及び国税不服審判所長とも、1株当たり1,083円であるとして、更正をすべき理由がない旨の判断をした。
これにより、Xは、国の各機関から本件株式の1株当たりの時価が1,083円であることについてお墨付きを得たと確信し、そうであればXらがK社にだまされたものと考え、別訴を提起した。
(3)別訴判決は、HとK社との間におけるHの所有する本件株式を取得価格(平均価格)で売り渡す旨の約束(すなわち、HとK社との間に売買契約又は売買予約が成立していたこと)を認定しており、これにより、①本件相続に係る相続財産は本件株式自体ではなくその売買代金請求権であること、又は、②本件株式自体が相続財産であるとしても、HとK社との間に本件株式の売買予約が存在していたことが確定し、いずれにしても、本件相続開始時における本件株式の価額(時価)が上記取得価格(平均価格)である1株642円であったことが確定したものである。
(4)前記(1)のとおり、通則法23条2項1号に規定する「(略)事実に関する訴えについての判決」の「事実」とは、その事実により特定の課税計算の内容を明確に左右するようなものを含むものと解すべきであるところ、別訴判決は、上記のような内容のものであるから、同号に規定する「(略)事実に関する訴えについての判決」に該当する。
このように解することは、青色申告承認の取消処分の取消判決が通則法23条2項1号に規定する「判決」に当たるとした最高裁昭和57年2月23日第三小法廷判決・民集36巻2号215頁(以下「昭和57年最判」という。)、法人税申告書上の所得税額控除の記載の誤りを理由とする更正の請求につき、法人税法68条3項の趣旨に反するということはできず、通則法23条1項1号の所定の要件を満たすとした最高裁平成21年7月10日第二小法廷判決・民集63巻6号1092頁(以下「平成21年最判」という。)等の裁判例とも整合する。
(5)通則法23条2項1号に基づく更正の請求をする場合につき、同条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由が必要であると解したとしても、Xは、同項1号に基づいて当初更正の請求をしたが、それが認められなかったが故に別訴を提起し、別訴判決によってやむを得ず本件更正の請求をしたものであって、やむを得ない理由がある。
3 国の主張 (1)通則法23条2項1号にいう「判決」とは、私法行為又は行政行為上の紛争を解決することを目的とする民事事件の判決を意味しており、また、同項の規定の趣旨と各列挙事由の内容に照らすと、同項1号の「判決」に基づいて更正を請求するためには、当該訴訟が基礎事実の存否、効力等を直接の審理の対象とし、判決により基礎事実と異なることが確定されることが必要である。
(2)別訴は、Xが、①主位的に、本件譲渡契約に当たり、K社らの虚偽の説明により不当に低い価格で本件株式をK社に譲渡させられたとして、不法行為に基づく損害賠償請求を、②予備的に、Xには、HとK社との間に本件株式を取得価格でK社に譲渡する旨の合意が存在しないのに存在したとの錯誤があったため、K社との間の本件譲渡は無効であるとして、不当利得に基づく返還請求をした事案である。かかる訴えは、本件株式の帰属に係る事実の存否や効力、本件株式の時価について直接審理の対象としたものではない。
(3)Xが引用する昭和57年最判は、そもそも、Xが主張するように「青色申告承認の取消処分の取消判決が通則法23条2項1号にいう『判決』に当たる」などと明示的に判断をしたものではない。また、青色申告承認の取消処分に係る訴訟の場合には、青色申告書による申告の承認を得ているか否かという事実、すなわち、通則法23条2項1号の「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」が直接審理の対象となっており、訴訟の結果、当該計算の基礎としたところと異なることが確定することがあり得ることから、同号による更正の請求が認められる余地があるとしても、別訴においては、本件株式の帰属に係る事実の存否等が直接審理の対象とされていないのであるから、本件相続税の計算の基礎となった事実が別訴判決によって異なることが確定することはあり得ない。
(4)別訴判決は、「Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格)でK社に譲渡する旨の合意が成立したといえる」こと等を判示したものにすぎず、本件株式の時価が幾らであったかなどについて判示したものではない。
三、判決要旨
請求棄却。 (1)通則法23条2項は、申告書の時には予想し得なかった事態その他納税義務者が同条1項の更正の請求をしなかったのもやむを得ないと考えられる事由が後発的に生じたことにより、当該申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎に変動が生じた場合に、確定した租税法律関係を変動した状況に適合させるため、同条1項所定の更正の請求の期間経過後であっても更正の請求をすることを認めて、納税義務者の権利救済の途を拡充したものと解される。
そして、本件更正の請求が同号の要件を満たして適法なものであるといえるためには、別訴判決により「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた(略)事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」といえる必要があり、また、上記のような同項の制度趣旨からすれば、同条1項所定の更正の請求の期間経過後に当該理由に基づく更正の請求をすることにつきやむを得ない理由があるといえる必要があるものと解される(最高裁平成15年4月25日第二小法廷判決・裁判集民事209号689頁、以下「平成15年最判」という。)。
(2)そこで、別訴判決について見ると、別訴判決の具体的内容は次のとおりである。別訴の「争点(1)(K社に対する本件株式の譲渡に際し、虚偽の説明がされたために適正価格を大幅に下回る対価で譲渡することとなったか)」につき、「平成16年5月ころ、Hは、当時、K社の代表取締役であったMとSに対し、『東博の株を買った値段で戻すよ。』と言った。」、「平成17年7月23日ころ、(略)、Sが、Xに対し、Hが本件株式を取得した経緯を説明し、本来はK社が取得すべき株式であり、Hの本件株式取得が問題視されかねないこともあり、HがK社に戻すと言っていたことを告げた上、本件株式のK社へのHの取得価格(平均価格642円)での譲渡を要請した。また、Mは『決まっていた話なんだよな』と言った。」等の具体的な認定事実を前提として、「Hは、生前、本件株式をその取得価格(平均価格)でK社に譲渡することをK社の代表権を有するMとSに申し入れていたものである。HがK社の創業者でワンマン経営者であり、その命令は社内において絶対的であったこと、申入れの内容はMやSの意向にも合致していたことからすると、このHの申入れによって、口頭で、Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格)でK社に譲渡する旨の合意が成立したといえる。Hの死後、MとSは、これをXに説明し、その結果、Xは本件株式のK社への譲渡の具体的手続をとっているが、MとSの説明内容は、Hの生前にHとK社との間でされた合意の履行を求めるという点で何ら虚偽であったとはいえない。よって、K社が虚偽の説明をしたとするXの主張は理由がない。」と判示している。
また、別訴の「争点(2)(被告Bに職務上の注意義務違反が認められるか)」及び「争点(3)(本件株式の譲渡につきXに錯誤があったか(予備的請求原因))」についても、Xの請求はいずれも理由がないからこれを棄却するとの結論を示している。
(3)Xは、別訴判決により、①本件相続に係る相続財産は売買代金請求権であること、又は、②本件株式自体が相続財産であるとしても、亡HとK社との間に本件株式の売買予約が存在していたこと(以下、「①」、「②」は上記の①、②を指すこととする。)が確定したものであるから、別訴判決は通則法23条2項1号に規定する「判決」に該当する旨を主張する。
①について、①に係るXの主張は、別訴判決により、本件株式は本件相続開始時には既にK社に譲渡されていてHの相続財産に含まれないこと(Hの相続財産に含まれるのはK社に対する本件株式の売買代金請求権であること)が確定した旨をいうものと解される。
しかし、別訴の訴訟物は、本件相続開始後にされた本件株式の本件譲渡契約に関する虚偽の説明を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権(主位的請求)及び同契約の錯誤無効を理由とする同契約の売買代金に係る不当利得返還請求権(予備的請求)であり、本件相続開始時における本件株式の帰属自体ではなく、それと表裏一体の関係にあるといい得る権利関係でもないから、別訴判決における訴訟物に関する判断によって、本件相続開始時における本件株式の帰属が確定するものということはできない。
また、別訴判決の理由中の判断を見ても、HとK社との間で、Hの生前に、「口頭で、Hの所有する本件株式の取得価格(平均価格)でK社に譲渡する旨の合意が成立した」旨の判示はあるものの、これに先立ち、争いのない事実等として、Hの相続財産に本件株式が含まれていること及びXらが本件相続開始後である平成17年2月25日に本件株式をK社に譲渡したことを認定している。そうすると、上記判示部分は、あくまでも、本件株式がHの相続財産に含まれ、本件株式がHの生前にHからK社に譲渡されたことをいう趣旨のものとは解されない。すなわち、別訴判決は、その理由中にせよ、本件株式が本件相続開始時には既にK社に譲渡されていてHの相続財産に含まれないことを判示したものということはできない。したがって、いずれにしても、別訴判決により、本件株式がHの相続財産に含まれないことが確定したものということはできない。
(4)②に係るXの主張は、本件株式に係る売買契約の存在が本件株式の価額の評価に影響を与えるものであることを前提にして、別訴判決により、本件株式についてHとK社との間に売買予約が存在していたこと(すなわち、本件株式は本件相続開始当時売買予約による制約を受けていたこと)が確定した旨をいうものと解される。
しかし、前記のとおり、別訴の訴訟物は、本件相続開始後にされた本件株式の本件譲渡契約に関する虚偽の説明を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権(主位的請求)及び同契約の錯誤無効を理由とする同契約の売買代金に係る不当利得返還請求権(予備的請求)であり、本件相続開始時における本件株式の売買予約の存否自体ではなく、それと表裏一体の関係にあるといい得る権利関係でもないから、別訴判決における訴訟物に関する判断によって、本件相続開始時における本件株式の売買予約の存否が確定するものということはできない。
また、別訴判決の理由中の判断には、HとK社との間で、Hの生前に、「口頭で、Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格)でK社に譲渡する旨の合意が成立した」旨の判示がある。しかしながら、判決中に整理されたK社の主張において、Hとの間で本件株式の売買予約が成立していた旨の明確な主張はされておらず、K社は、「Hが平成16年5月頃に本件株式を買った値段で戻すよと言った」旨の事実を主張するにとどまっていること、その争点に対する判断においても、上記判示部分の「合意」が本件株式の売買予約の成立を意味するものであることは何ら示されていないこと、XからK社への本件株式の譲渡の原因は平成17年2月25日の本件譲渡契約であると認定されており、それが売買予約の存在を前提とした売主又は買主の予約完結権の行使によるものであることも何ら示されていないことからすると、上記判示部分は、本件譲渡契約につき、M及びSがXに対して本件株式をK社に譲渡することを要請した際の説明内容について不法行為法上違法といえるような虚偽のものと評価することはできないことや、本件譲渡契約の動機においてXに錯誤があったとは認められないことをいうための説示にすぎないものと解され(前記のとおり、上記判示部分の「合意」とは、契約の成立まで当然に意味するものではない前法律的な意味での事情を指すものと解し得る。)、HとK社との間に本件株式の売買予約が成立したことをいう趣旨のものであることが明らかであるとまではいえない。
したがって、別訴判決により、本件株式についてHとK社との間に売買予約が存在していたことが確定したものということはできない。
(5)ところで、Xは、本件申告につき、通則法23条1項所定の更正の請求の期間内である平成18年7月25日、本件申告における本件株式の評価額に誤りがあること等を理由として、当初更正の請求をしている。この当初更正の請求において、XはK社から、本件株式につきK社がHの平均取得価格(1株当たり642円)で買い戻すとの約定があったとの説明を受けたため、やむなく本件譲渡契約に応じたなどとして、本件株式の評価額は、評価通達の定めに従って算出した1株当たり1,083円ではなく、本件譲渡契約における1株当たりの譲渡価額642円とすべき旨を主張し、更に、その異議申立て及びその審査請求において、本件株式の評価額を1株当たり642円とすべき理由として、「本件株式はHがその取得時において『譲渡時(相続を含む)には当然の所有権者であるK社に平均取得価額で買戻させる』との約定があり、Xらはその説明を承知して約定を履行した」こと等を主張していた。これらの主張は、②に係るXの主張と実質的に同一であるか又は実質的に同一の事実関係に基づくものである。
そうすると、仮に別訴判決により②の事実が確定したと解するとしても、それは、Xにとって、予想し得なかった事態というよりも、むしろ当初更正の請求に係る手続当時から自ら主張していた内容に沿うものであって通則法23条1項所定の更正の請求に係る手続において②の事実を理由とする主張をすることも可能であったというべきであるから、同項所定の更正の請求の期間経過後に改めて当該理由に基づく更正の請求をすることにつき、やむを得ない理由があるということはできないと解される。
(6)Xは、別訴判決が通則法23条2項1号に規定する場合に該当すると解すべき根拠として、昭和57年最判及び平成21年最判を挙げる。
しかし、昭和57年最判は、青色申告書による法人税の確定申告につき青色申告承認の取消処分後に法人税法57条の規定による繰越欠損金の損金算入を否認して更正処分がされ、次いで青色申告承認の取消処分が課税庁により職権で取り消された場合、被処分者は、通則法23条2項の規定により減額更正の請求をすべきであって、同更正処分の無効確認訴訟において繰越欠損金の損金不算入を無効事由として主張することはできない旨を判示したものであり、そもそも、何らかの判決が同項1号に規定する「判決」に該当するかどうかを問題としたものではない。また、昭和57年最判の判示が青色申告承認の取消処分の取消判決が同号に規定する「判決」に該当することを含意しているとしても、それは、青色申告承認は青色申告に係る種々の特例の適用の要件となるものであり、青色申告承認が取り消されているか否かという事実は「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実」に該当するといえるところ、青色申告承認の取消処分の取消判決がされれば、遡って青色申告承認が取り消されていないこととなり、上記事実が「当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」(同号)といえるからであると解され、そうとはいえない別訴判決の場合と状況を異にするのは明らかである。
また、平成21年最判は、法人税に係る更正の請求につき、通則法23条1項1号所定の要件を満たすかどうかについて判示したものであって、同条2項1号所定の要件を満たすかどうかについて判示したものではなく、別訴判決が同号に規定する場合に該当するかどうかの判断に直接影響を与えるものではない。
四、解説
はじめに 申告納税制度の下では、納税者は、往々にして、誤って税額を過大に納付したり、納税申告時には適法な税額であっても、その後、当該申告の前提となった法律関係が破綻して、結果的に納付した税額が過大になることがある。これらの場合には、国に不当利得が生じることになる。この不当利得の返還を求めるのが、更正の請求制度にほかならない。そのため、更正の請求制度は、申告納税制度と同時に発足し、近年、納税者の権利救済を図るために拡充され、かつ、関係規定の判例上の解釈も納税者の権利救済を重視する傾向にある(注1)。
かかる状況の中で、本件では、Xが、父Hの死亡により、本件株式を相続により取得したものの、かつてHが代表取締役を務めていたK社の役員らからHとの約束があったと言われ、1株当たり642円で譲渡したが、その後の本件申告に当たって、顧問税理士らの指導に従い、1株当たり1,083円で納税申告したため、1億7,087万円余の過大納付(国の不当利得)が生じたというものである。
そこで、Xは、一旦、当初更正の請求をするのであるが、それを否認する当初処分が行われ、不服審査の段階でも当初処分が適法とされたので、K社らに騙されたと思い、別訴を提起し、それも棄却する別訴判決が下されたため、それに基づいて本件更正の請求をしたというものである。このような更正の請求については、種々の法律問題がからむので、それらを検討した上で、本件判決の当否を検討することとする。
1 不当利得の返還と更正の請求制度 (1)前述したように、申告納税制度の下では、納税者が税額等を過大に申告・納付により、国に不当利得が生じる。このような不当利得の返還に関し、最高裁昭和49年3月8日第二小法廷判決(民集28巻2号186頁)(注2)は、所得税の雑所得として課税された利息損害金債権が後日貸倒れにより回収不能となった場合の不当利得の返還に関し、次のように判示している。
「課税庁自身による前記の是正手続(編注=減額更正)が講ぜられない限り納税者が先の課税処分に基づく租税の収納を甘受しなければならないとすることは、著しく不当であって、正義公平の原則にもとるものというべきである。それゆえ、このような場合には、課税庁による是正措置がなくても、課税庁又は国は、納税者に対し、その貸倒れにかかる金額の限度においてもはや当該課税処分の効力を主張することができないものとなり、したがって、右課税処分に基づいて租税を徴収しえないことはもちろん、既に徴収したものは、法律上の原因を欠く利得としてこれを納税者に返還すべきものと解するのが相当である。」
もちろん、このような不当利得の返還は、無制限に行われるわけではなく、更正の請求制度の枠の範囲において行われるべきとするのが判例の考え方である(注3)。そして、そのような制限が必要なことは、納税者の権利救済と租税法律関係の早期安定(租税収入の確保の要請)とのバランスを図るためであると解されている(注4)。
(2)ところで、更正の請求制度が担う納税者との権利救済と租税法律関係の早期安定とのバランスは、平成23年の税制改正において、前者に大きく傾斜している。すなわち、国税通則法23条1項は、納税申告書に記載した税額等が、法律の規定に従っていなかったこと及び当該計算に誤りがあったことにより、過大納付等が生じたときには、法定申告期限から1年以内に更正の請求(通常の更正の請求)ができると定めていたところ、この請求期限を「5年以内」に延長した。更に、減額更正の期間制限についても、原則は法定申告期限から5年以内である(通法70①、改正前通法70②)が、上記期間制限の6月以内にされた更正の請求に係る減額更正については、法定申告期限から5年6月以内に延期された(注5)。
また、このような更正の請求期限等を延長しただけではなく、納税申告書の提出後においても各種の特例の適用が受けられるように、更正の請求の範囲を大幅に拡大した。その拡大は、当初申告要件を廃止する措置と控除額の制限を見直す措置である。前者については、例えば、所得税法70条に規定する純損失の繰越控除は、その適用を受けるためには、居住者が純損失の金額が生じた年分の所得税につき青色申告書等をその提出期限までに提出した場合であって、その後において連続して確定申告書を提出している場合に限られていた(改正前所法70④)が、改正後は、当該確定申告書をその提出期限までに提出しなくても、後日確定申告書さえ提出すれば当該控除を認めることとした(改正後所法70④)。このような当初申告要件の廃止は、各個別税法において21項目に及ぶ。
また、控除額の制限を見直す措置とは、例えば、法人税法68条に規定する所得税額の控除は、確定申告書に控除を受けるべき金額等の記載がある場合に限り適用され、かつ、当該記載された金額を限度とする(改正前法法68③)とされていたが、改正後は、修正申告書又は更正請求書に記載した金額についても控除されることとなった(改正後法法68③)。このような控除額制限の見直しは、各個別税法において13項目に及ぶ。
(3)このような更正の請求における納税者の権利救済の拡充は、制度面にとどまらず、関係規定の解釈についても行われるようになっている。例えば、最高裁平成21年7月10日第二小法廷判決(判例時報2056号46頁)は、法人税法上、所得税額控除は確定申告書に記載した金額を限度としていたところ(旧法法68③)、当該記載額を上回る税額の控除を認めるべき旨の更正の請求に対し、当該記載額が誤って過少に記載した場合には当該更正の請求を認めるべきであるとしている。
また、東京地裁平成21年2月27日判決(判例タイムズ1355号123頁)は、期限内申告において所得金額等の計算の基となった契約についての法定申告期限経過後の合意解除は税法上効力を有しないと解されていたところ(注6)、相続税の期限内申告書を提出した後、当事者の合意により遺産分割をやり直して更正の請求等をした事案につき、税務調査開始前等の要件を付けた上で、当該更正の請求を認めるべき旨判示している。
2 後発的事由に基づく更正の請求ができる場合の「判決」の意義 (1)前記1で述べたことは、更正の請求制度全体の傾向であるが、本件は、通則法23条2項1号に基づく更正の請求であるので、それに即して述べる。同項は、「納税申告書を提出した者又は第25条(決定)の規定による決定(〈略〉)を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合(〈略〉)には、同項(編注=1項)の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(〈略〉)をすることができる。」と定めている。そして、同項1号は、「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき その確定した日の翌日から起算して2月以内」と定めている。
この「判決」の意義については、解釈上幾つかの問題がある。一つは、その判決が租税回避、節税策の失敗を繕うこと等を狙った馴れ合いによってもらたされた場合である。この点について、横浜地裁平成9年11月19日判決(税資229号663頁)は、「申告後に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について判決がされた場合であっても、右判決が当事者がもっぱら税金を免れる目的で馴れ合いによって得たものであるなど、客観的・合理的根拠を欠くものであるときは、同条2項1号の「判決」に当たらないと解すべきである。」と判示している(注7)。
また、この「判決」に該当しないとする裁判例としては、犯則所得金額を認定した刑事判決は「判決」に当たらないとした大阪地裁昭和58年12月2日判決(訟務月報30巻6号1061頁)、同平成6年10月26日判決(税資205号66頁)等、法令の解釈についての新たな判断を示した判決等を「判決」に当たらないとした京都地裁昭和56年11月20日判決(同121号374頁)(注8)等、土地の帰属を争う係争中に確定した取得時効に係る判決が「判決」に当たらないとした神戸地裁平成14年2月21日判決(税資252号順号9072)、大阪高裁平成14年7月25日判決(同252号順号9167)(注9)等がある。
(2)他方、本件にも類似する事例として、青色申告承認の取消処分の取消判決が、「判決」に該当するか否かがかつて争われたことがある。青色申告承認の取消処分は、①帳簿書類の備付け、記録又は保存が法令の定めるところに従って行われていないこと、②帳簿書類について税務署長の指示に従わなかったこと、③帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載したこと、④法人税について法定申告期限内に確定申告書を提出しなかったこと等(所法150①、法法127①)があったときに行われる。
したがって、当該取消処分の適法性(違法性)が法廷で争われる場合には、上記の取消事由の存否と取消処分の理由附記(所法150②、法127②)の当否が審理されるのであるから、当該取消判決も、当該審理の結果が示されるに過ぎない。ただ、その結果、当該取消処分後の白色扱いの納税申告又は更正において確定した税額が青色申告であったとすれば過大になることがある。
そのため、国は、かつて、当該取消判決は、通則法23条2項1号にいう「判決」に該当しないとして、当該取消判決に基づく更正の請求を否定し、それを法廷でも主張してきた。しかし、当該主張は、下級審段階で相次いで否定されるようになり(注10)、最終的には、最高裁昭和57年2月23日第三小法廷判決(民集36巻2号215頁)が、次のように判示して、その論争に結着を付けている。
「このような場合、課税庁としては、青色申告の承認の取消処分を取り消した以上、改めて課税標準額及び税額を算定し、先にした課税処分の全部又は一部を取り消すなどして、青色申告の承認の取消処分の取消によって生じた法律関係に適合するように是正する措置をとるべきであるが、被処分者である納税者としては、国税通則法23条2項の規定により所定の期間内に限り減額更正の請求ができると解するのが相当である。」
なお、上記最高裁判決は、青色申告承認の取消処分を職権で取り消した事案であるが、当該取消しも、通則法23条2号1号にいう「判決」と同様に解されている(通法23②一かっこ書)。
3 「やむを得ない理由」の存否 前記2で述べたように、通則法23条2項の規定に基づく更正の請求は、まず、ある判決が1号にいう「判決」に該当すればそれに基づいてすることができる。そして、2号では、所得その他課税物件の帰属違いによって更正又は決定があったときは、既に、当該所得を申告等をしていた者は更正の請求をできるとし、3号では、「その他当該国税の法定申告期限後に生じた前2号に類する政令で定めるやむを得ない理由があるとき」に更正の請求ができるとしている。
これらの規定からすると、通則法23条2項に基づく更正の請求をする場合において、「やむを得ない理由」が要件とされているのは、3号に基づく更正の請求に限定されているように解される。
ところが、最高裁平成15年4月25日第二小法廷判決(訟務月報50巻7号2221頁、以下「平成15年最判」という。)は、上告人(納税者)が、自らの主導の下に、通謀虚偽表示により遺産分割協議が成立した外形を作出し、それに基づいて相続税申告を行った後、当該遺産分割協議の無効を確認する判決を得てそれに基づき通則法23条2項1号に基づく更正の請求をした事案につき、「そうすると、上告人が法23条1項所定の期間内に更正の請求をしなかったことにつきやむを得ない理由があるとはいえないから、同条2項1号により更正の請求をすることは許されないと解するのが相当である。」と判示した。
このように、通則法23条2項1号に基づく更正の請求においては、同条1項に定める期間内に更正の請求をしなかったことにつき「やむを得ない理由」があったことを要件とする考え方は、その後の高松高裁平成23年3月4日判決(訟務月報58巻1号216頁)等にも引き継がれている。
そのため、本件においても、本件判決は、別訴判決に基づいて更正の請求をするに当たっては、「やむを得ない理由」が必要である旨判示しているところであるが、その当否については、次に検討することとする。
4 別訴判決の「判決」該当性 (1)本件においては、Xが、父Hの死亡により、本件株式を相続により取得したものの、かつてHが代表取締役を務めていたK社の役員らからHとの約束があったということで、1株当たり642円で譲渡したが、その後の本件申告に当たって、顧問税理士らの指導に従い、1株当たり1,083円で相続税申告(本件申告)をしたため、1億7,087万円余の過大納付(国の不当利得)が生じたというものである。
そこで、Xは、一旦、当該過大納付について減額更正を求めて当初更正の請求をするのであるが、それを否認する当初処分が行われ、不服審査の段階においても、異議審理庁及び国税不服審判所から、当初処分が適法(本件株式の1株当たりの価額1,083円である。)とする異議決定及び裁決を受けたというものである。このような国の各機関の判断が正しいというのであれば、Xらは、本件株式の譲渡についてK社らに騙されたと思い、別訴を提起し、不法行為に基づく損害賠償請求権の有無等を争った。しかし、別訴判決は、HとK社との間に、「Hの申入れによって、口頭で、Hの所有する本件株式を取得価格(平均価格、1株当たり642円)でK社に譲渡する旨の合意が成立していた」ことを認定し、当該損害賠償請求権の存在等を否定した。
かくして、Xは、別訴判決によって本件株式の価額が1株当たり642円であることが確定したものとして、本件更正の請求を行い、当該請求を認めなかった本件処分を不服として、前審手続を経て、本件取消訴訟を提起した。
本判決は、前述のように、別訴判決により通則法23条2号1号にいう「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」ということはできないこと、本件更正の請求をすることにつき「やむを得ない理由」があるということはないこと、平成21年最判等の裁判例の考え方は本件には適合しないこと等を判示して、Xのいずれもの主張も失当であるとして、同請求を棄却した。
(2)しかしながら、本件判決には、首肯し難い点が幾つかある。すなわち、本件においては、Xは、本件相続によって取得した本件株式に係る経済的利得が1株当たり642円であったことは紛れもない事実であり、それを1株当たり1,083円として本件申告(納付)したのであるから、それによって、1億7,087万円余の相続税額の過大納付(国の不当利得)が生じたことも否定できないところである。
そうであれば、かかる国の不当利得は、それを返還させるための更正の請求制度に基づいて返還されて然るべきであると考えられる。しかも、前記1で述べたように、近年当該更正の請求制度は、納税者の権利救済のために大幅に拡充され、関係条項について最高裁判所等が納税者の権利救済のため弾力的に解釈するようになっている。
にもかかわらず、Xの当初更正の請求に対しては、国の各機関は、実体的に、本件株式の1株当たりの価額は1,083円であるから過大納付はないとし、Xの本件更正の請求に対しては、本件の裁判所を含む国の各機関は、手続的に、別訴判決は通則法23条2項1号にいう「判決」に当たらないとして、いずれも当該請求を否定(棄却)している。
(3)特に、本件判決については、別訴判決と青色申告承認の取消処分の取消判決とをゆえなく区別しているように考えられる。けだし、前記2で述べたように、当該取消判決は、通則法23条2項1号にいう「その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実」に関することを直接判断したわけではなく、当該取消判決によって当該取消処分後の白色扱いの課税関係に影響を及ぼすに過ぎない。そのことは、別訴判決についても同様に論じることができる。むしろ、別訴判決は、本件株式を1株当たり642円で譲渡せざるを得なかったことを確定させているわけであるから、その方が「計算の基礎となった事実」に直接関わっているものと考えられる。
また、本件判決は、本件更正の請求をするに当たって、「やむを得ない理由」がない旨判示している。しかし、前記3で述べたように、通則法23条2項1号に基づく更正の請求については、文理上「やむを得ない理由」が要件とされているわけではなく、平成15年最判等によって要求されているに過ぎない。しかも、それを要求している事案においては、いわゆる馴れ合い訴訟等に係るものであって、「やむを得ない理由」もないであろうから、本件と同一視することはできない。それに加え、本件のように、Xの当初更正の請求について国の各機関がそれを否定したが故に、別訴を提起せざるを得なかったという事情を考慮すること、本件更正の請求には、当然、「やむを得ない理由」があったものと解せられる。
更に、本件判決は、通則法23条1項と法人税法68条の規定について納税者の権利救済を図るために弾力的に解釈した平成21年最判の考え方が、通則法23条2項1号に基づく本件更正の請求に関係がない旨判示している。しかし、通則法23条2項各号に定める事由が法定申告期限から5年以内に生じれば同条1項の更正の請求ができるなど(注11)、1項と2項は密接に関係しているのであるから、本件判決の考え方は、余りに形式的過ぎて納得し難いものがある。
5 本判決の意義と問題点 (1)以上のように、本件においては、Xが父Hの死亡により本件株式を相続したものの、生前HとK社との間に約束があったと知らされ、本件株式を1株当たり642円でK社に譲渡したものの、本件申告において1株当たり1,083円(評価通達上の評価額)と評価して課税価格を計算したため、1億7,087万円余の過大納付が生じたものである。そのため、Xは、当初更正の請求をしたものの、課税処分及び不服審査の段階で本件株式の価額(時価)が1株当たり1,083円と認定されたため、やむを得ず別訴を提起し、別訴判決では、HとK社間に本件株式を1株当たり642円で譲渡する旨の約束があった旨認定されたので、本件更正の請求をしたものである。
結局、本件更正の請求は、本件判決によって、前述のように、適法なものを認められることはなかった。このことは、その是非はともかくとして、更正の請求をめぐる一裁判例として注目されるべきである。
(2)しかしながら、本件判決の判断については、前記4で述べたように、種々の問題点を指摘することができる。また、本件判決は、別訴判決において、本件株式についてHとK社との間に売買契約があったと認めることができず、また、売買予約があったとも認めることができないから、それらを勘案して本件株式の価額(時価)を評価することはできない旨判示している。そのような判断自体疑問はあるが、仮に、売買契約や売買予約の存在が認定できないとしても、評価通達が「財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。」(同通達1(3))と定めているところ、別訴判決がHとK社との間に口頭で本件株式を1株当たり642円で売り渡す旨の約束があったと認定され、かつ、それが実施されている事情を考慮した場合には、本件株式の価額は1株当たり642円で評価するしかないものと考えられる。いずれにしても、控訴審判決の行方が注目される。
(注1)更正の請求制度の沿革と最近の裁判例の動向については、品川芳宣「国税通則法の実務研究 第6回」税理2014年3月号174頁、同「同前 第7回」税理2014年4月号149頁、同「国税通則法の実務解説 第4回」租税研究2014年1月号117頁等参照。
(注2)この判決の評釈については、芝池義一「租税判例百選 第2判」(別冊従ジュリストNo.79)148頁等がある。
(注3)名古屋高裁昭和52年6月28日判決(訟務月報23巻7号)1242頁等参照。
(注4)盛岡地裁平成5年3月26日判決(税資194号1080頁)、東京地裁平成5年10月15日判決(同199号253頁)、東京高裁平成7年11月30日判決(同214号639頁)等参照。
(注5)このような期限延長に関する諸問題については、前出(注1)各書のほか、品川芳宣「国税通則法改正後の更正の請求をめぐる諸問題」税理2013年3月号72頁参照。
(注6)金子宏「租税法 第18版」(弘文堂 平成25年)119頁、最高裁平成10年1月27日第三小法廷判決(税資230号152頁)、大阪地裁平成12年2月23日判決(同246号908頁)、大阪高裁平成12年11月2日判決(同249号457頁)等参照。
(注7)同旨の判決については、東京高裁平成10年7月5日判決(税資237号142頁)、名古屋高裁平成2年7月18日判決(同180号85頁)、東京高裁平成3年2月6日判決(同182号297頁)等参照。
(注8)この問題については、平成18年の国税通則法の改正によって、更正の請求の対象にしている(通令6①五参照)。
(注9)同各判決については、品川芳宣「重要租税判決の実務研究 第三版」(大蔵財務協会 平成26年)31頁等参照。
(注10)岡山地裁昭和55年3月31日判決(税資110号1145頁)、広島地裁昭和56年2月26日判決(同116号388頁)、東京高裁昭和51年7月19日判決(同89号300頁)等参照。
(注11)東京高裁昭和61年7月3日判決(訟務月報33巻4号1023頁)、武田昌輔監修「DHCコンメンタール国税通則法」(第一法規・加除式)1441の3頁等参照。
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