解説記事2014年06月16日 【税制改正解説】 平成26年度における消費税・間接諸税関係の改正について(2014年6月16日号・№550)
税制改正解説
平成26年度における消費税・間接諸税関係の改正について
根本浩之
はじめに
デフレ状況からの脱却と経済再生、税制抜本改革の着実な実施及び震災からの復興支援などの観点から、国税に関し、所要の施策を講ずるため、その内容を織り込んだ「所得税法等の一部を改正する法律案」は、平成26年2月4日に国会に提出された。その後、同法案は同月28日に衆議院を通過し、3月20日に参議院本会議において可決・成立し、同月31日に公布された。
以下、この改正による間接税関係の改正について説明する。
Ⅰ 消費税関係の改正
1 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し
(1)改正前の制度の概要 簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度である。
具体的には、その納税地の所轄税務署長に「簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者は、その基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が5千万円以下の課税期間について、売上げに係る消費税額に、事業の種類の区分に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額とみなし、売上げに係る消費税額から控除できることとされている(消法37)。
みなし仕入率を適用する業種区分及びみなし仕入率は、次の表1のとおりとされている(消令57)。
(2)改正の内容 簡易課税制度の在り方については、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(以下「抜本改革法」という。)第7条第1号ニ(税制に関する抜本的な改革及び関連する諸施策に関する措置)において「消費税の簡易課税制度の仕入れに係る概算的な控除率については、今後、更なる実態調査を行い、その結果も踏まえた上で、その水準について必要な見直しを行う。」と規定されるとともに、会計検査院からも同様の指摘を受けていた。
このため、財務省において簡易課税制度の適用対象となる規模の事業者における仕入率の実態調査を実施したところ、「金融業及び保険業」及び「不動産業」においては、現行のみなし仕入率と実際の仕入率との間の乖離が大きいことが判明したことから、平成26年度税制改正においては、これらの調査の結果を踏まえ、次の見直しが行われた。
① みなし仕入率の引下げ 現在、第4種事業に該当している「金融業及び保険業」を第5種事業(みなし仕入率50%)とするとともに、第5種事業に該当している「不動産業」を新たに設ける第6種事業(みなし仕入率40%)とし、それぞれのみなし仕入率を10%引き下げることとされた(消令57①⑤)。
② 「75%ルール」等の所要の規定の整備 簡易課税制度による仕入控除税額の計算に当たっては、いわゆる「75%ルール」の仕組みがあるが、第6種事業が設けられたことに伴い適用区分の変更の改正等が行われた(消令57②~④)。
(3)適用関係 上記改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から適用し、同日前に開始した課税期間については、改正前の制度を適用することとされている。
ただし、平成26年10月1日前に簡易課税制度選択届出書を提出している事業者であって、平成27年4月1日以後に開始する課税期間が簡易課税制度の強制適用を受ける課税期間である場合(消法37⑤)には、簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の末日の翌日以後に開始する課税期間から適用することとされている(改正消令附則1二、4)。
2 輸出物品販売場制度の見直し
(1)改正前の制度の概要 税務署長の許可を受けた輸出物品販売場を経営する事業者が、外国人旅行者等の非居住者(以下「外国人旅行者」という。)に対して、当該外国人旅行者がその出国の際に持ち出す物品(最終的に輸出される物品)を所定の手続により譲渡した場合には、消費税を免除することとされている(消法8)。
輸出物品販売場における資産の譲渡は、国内において資産の譲渡を行うものであるが、外国人旅行者がその出国の際に国外へ持ち出すことを前提とした販売であり、その実質は輸出取引と変わることがないと考えられることから、所定の手続を行って販売される一定の物品については、輸出取引と同様に消費税が免除されている。
ただし、免税販売の対象となる物品は、通常生活の用に供する物品のうち、国内で消費されやすい消耗品(食料品、飲料類、たばこ、薬品類及び化粧品類並びにフィルム、電池その他の消耗品)以外の物品(以下「一般物品」という。)に限定されている(消令18①)。
なお、輸出物品販売場を経営する事業者が外国人旅行者に対して免税で販売できる一般物品は、次に掲げる全ての要件を満たして販売するものに限られる。
イ その外国人旅行者が所持する旅券等の提示を受けること
ロ その旅券等に購入の事実を記載した書類(以下「購入記録票」という。)の貼付け等を行うこと
ハ その外国人旅行者から、免税購入した物品をその購入後において輸出する旨を誓約する書類(以下「購入者誓約書」という。)の提出を受けること
(2)改正の内容 平成25年3月、「観光は日本の力強い経済を取り戻すための極めて重要な成長分野であり、経済を立て直し、近隣諸国以上に魅力あふれる観光立国に向けて強力に施策を推進する」という目的のもと、内閣総理大臣が主宰し全閣僚で構成する観光立国推進会議が立ち上がった。同会議において同年6月に取りまとめられた「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」においては、外国人旅行者向け消費税免税制度について、「外国人旅行者の利便性や執行上の観点も踏まえた上で、税制改正要望の過程において、制度の見直しも含め検討する。」とされ、日本再興戦略(平成25年6月閣議決定)においても同様の記述がされた。
こうした状況を踏まえ、平成26年度税制改正において議論が行われ、輸出物品販売場制度について次の見直しが行われた。
① 免税対象物品の拡大 上記(1)イ及びロの要件に加え、輸出物品販売場を経営する事業者が、次に掲げる全ての要件を満たして外国人旅行者に販売する消耗品が、免税販売の対象物品に加えられた。
(イ)金額要件
新たに免税販売が認められる消耗品については、商業量に達すると考えられる取引を禁止することによって国内での横流しといった不正を防止する観点から、同一店舗で1日に販売する消耗品の合計額が50万円(税抜価額)を超えない範囲内のものに限ることとされた(消令18①)。
また、事業者の事務負担等に配慮する観点から1万円(税抜価額)とされている下限金額については、その場で消費されやすいという消耗品の性質を踏まえ、一般物品とは別枠で設定するとともに、その水準については、観光立国の推進や地域経済の発展といった本改正の政策目的及び免税店の地方拡大、地方の土産物店等における販売の実態を踏まえ、5千円(税抜価額)とされた(消令18⑦)。
(ロ)購入者の誓約
食品類であれば一定の消費期限があること、長期滞在する場合には一定の日用消耗品が必要になると考えられること等を踏まえ、長期滞在する外国人旅行者による消耗品の購入を制限する観点から、消耗品を免税購入する外国人旅行者が、その購入から30日以内に輸出(出国)することを誓約する書類の提出を受けることが要件とされた(消令18②二イ)。
(ハ)特殊包装
消費されやすいという消耗品の性質に鑑み、税関において出国前に消費していないことを簡易に確認できるようにするとともに、国内での消費を牽制するための措置として、特殊な包装を施した状態で購入者に引き渡すことが免税販売の要件とされた(消令18②二ロ)。この特殊包装の具体的な方法については、国土交通大臣と経済産業大臣が財務大臣と協議して指定することとされた(平成26年経済産業省・国土交通省告示第6号)。
② 一般物品に係る不正を防止するための措置の追加 一般物品については、既存の上記(1)イ~ハの要件に加え、国内での横流しを防止・牽制する観点から、その外国人旅行者に対して同一店舗で1日に販売する一般物品の額が100万円を超える場合には、その外国人旅行者の所持する旅券等の写しの提出を受けるとともに、その提出を受けた事業者は、その譲渡を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間当該旅券等の写しを保存しなければならないこととされた(消令18②一ハ、⑧、消規7①)。
③ 免税手続の簡素化 今般の改正においては、免税手続のIT化の妨げとならないようにする観点から、省令で定められていた購入記録票及び購入者誓約書の様式を廃止するとともに、購入記録票及び購入者誓約書に記載すべき事項のみが規定されることとなった(消規6①~⑥)。また、事務の簡素化に資する観点から、品目等が記載された明細書等を購入記録票等に貼り付け、割印することによって、その明細書等に記載されている事項の購入記録票等への記載を省略することができることとされている(消規6⑦)。
④ その他 (イ)割印
現行制度においては、消費税法基本通達において、旅券等と当該旅券等に貼り付けた購入記録票との間等に割印することを免税販売の要件としている(消費税法基本通達8-1-7)が、今回の改正においては、当該割印の重要性に鑑み、当該割印の要件が政令に規定された(消令18②一イ)。
(ロ)一般物品と消耗品とが一の商品を構成している場合
一般物品と消耗品とが組み合わさって一つの商品を構成している場合には、当該商品については、消耗品として取り扱うこととされた(消令18④)。
(ハ)基地内輸出物品販売場に関する規定の整備
今般の改正に伴い、合衆国軍隊の構成員等が基地内輸出物品販売場において免税購入する場合の手続等についても上述イ及びハと同様の改正が行われている(消令18②三、四)。
(3)適用関係 上記改正は、平成26年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について適用される(改正消令附則1一、2)。
3 課税売上割合の計算方法に係る見直し 有価証券等の譲渡を行った場合における課税売上割合の計算については、その取引の特殊性に鑑み、資産の譲渡対価の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額に算入する特例措置が設けられているが、類似の金融取引である金銭債権の譲渡については、このような特例は設けられていなかった。しかし、近年の金融市場の発展に伴い、資金調達等の手段として、貸付債権のファンド等への売却、住宅ローン債権や割賦債権等の証券化に伴う債権譲渡など様々な形で金銭債権の譲渡が行われるようになり、そのような事業を行う事業者については課税売上割合が著しく低下し消費税の納付税額が増加する等、円滑な債権譲渡を妨げるおそれがあるとの指摘が各方面からなされていた。
そこで平成26年度税制改正においては、課税売上割合の計算上、消費税法施行令第9条第1項第4号に規定する金銭債権の譲渡(同令第48条第2項第2号の規定の適用を受ける金銭債権の譲渡を除く。以下同じ。)については、有価証券等の譲渡と同様に、その譲渡対価の額の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額(分母)に算入することとされた(消令48⑤)。
この改正は、平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡について適用される(改正消令附則1、3)。
4 その他の改正
(1)難病新法の規定に基づく特定医療費の支給に係る医療の非課税範囲への追加 難病の患者に対する医療等の施策を総合的に推進する観点から、新たに難病の患者に対する医療等に関する法律(以下「難病新法」という。)が制定され、難病新法第5条第1項に規定する指定難病の患者等に対して、同項に規定する指定特定医療につき特定医療費を支給することとされたことを踏まえ、「難病新法の規定に基づく特定医療費の支給に係る医療」を消費税法施行令第14条(療養、医療等の範囲)に位置付けることとされた(消令14七)。
この改正は、難病新法の施行の日(平成27年1月1日)から適用される(改正消令附則1三四)。
(2)児童福祉法の規定に基づく小児慢性特定疾病医療費の支給に係る医療の非課税範囲への追加 児童福祉法の改正(児童福祉法の一部を改正する法律。以下「改正児童福祉法」という。)において、小児慢性特定疾病(児童福祉法6の2①)にかかっている児童のうちその疾病の程度が一定以上である者の保護者に対して、その医療に要した費用につき小児慢性特定疾病医療費(同法19の2①)を支給することとされたことを踏まえ、当該「小児慢性特定疾病医療費の支給に係る医療」を消費税法施行令第14条(療養、医療等の範囲)に位置付けることとされた(消令14九)。
この改正は改正児童福祉法の施行の日(平成27年1月1日)から適用される(改正消令附則1三・四)。
(3)子ども・子育て支援法の施行に伴う所要の規定の整備 子ども・子育て支援法の施行に伴い、同法第27条から第30条の規定に基づく「施設型給付費(特例施設型給付費)」又は「地域型保育給付費(特例地域型保育給付費)」の支給に係る事業として行われる資産の譲渡等のうち、現行の消費税法令(消法別表1七ロ、十一イ、消令14の3一前段)により非課税とされる資産の譲渡等以外のものを、社会福祉事業等に類するものとして位置付け、消費税を非課税とすることとされた(消令14の3六)。
この改正は子ども・子育て支援法の施行の日から適用される(改正消令附則1五)。
(4)身体障害者用物品の指定 消費税においては、身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する一定の身体障害者用物品の譲渡、貸付け等が非課税とされている(消法別表1十)。
今回の改正では、非課税物品として指定されている「視覚障害者用携帯型歩行支援装置」の性状、構造又は機能について、超音波を利用して障害物を検知するものが加えられたほか、技術革新等に伴い既に製造、流通のなくなった「盲人用カセットテープレコーダー」について削除するとともに、既に非課税物品に指定されている物品で個別製品名が掲げられているものについて、バージョンアップ等に伴う所要の改正が行われている。
この改正は、平成26年4月1日から適用される(平成26年厚生労働省告示第162号)。
Ⅱ 酒税関係の改正
入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例措置の改正 平成26年4月1日から消費税率(地方消費税率を含む。)が8%に引き上げられることを踏まえ、入国者が携帯して輸入する対象酒類の最近の通関実態等を勘案し、本特例の対象酒類のうち、ウイスキー及びブランデーの特例税率を600,000円/kl(現行:500,000円/kl)に引き上げるとともに、ウイスキー等に係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成27年3月31日まで1年延長されることから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成27年3月31日まで1年延長することとされた(措法87の5)。
この改正は、平成26年4月1日以後に、入国者が携帯し又は別送して輸入するウイスキー及びブランデーについて適用される(改正法附則1)。
Ⅲ たばこ税関係の改正
入国者が輸入する紙巻たばこに係るたばこ税の税率の特例措置の改正 平成26年4月1日から消費税率(地方消費税率を含む。)が8%に引き上げられることを踏まえ、入国者が携帯して輸入する紙巻たばこの最近の通関実態等を勘案し、本特例の適用を受ける紙巻たばこに係る特例税率を1,000本につき11,000円(現行:10,500円)に引き上げるとともに、紙巻たばこに係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成27年3月31日まで1年延長されることから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成27年3月31日まで1年延長することとされた(措法88の2)。
この改正は、平成26年4月1日以後に、入国者が携帯し又は別送して輸入する紙巻たばこについて適用される(改正法附則1)。
(注)これにより、本特例の適用を受ける紙巻たばこに係る税負担は、たばこ税及びたばこ特別税を合わせて1,000本につき11,500円となる。
Ⅳ 石油石炭税関係の改正
1 非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置の創設
(1)制度創設の背景 原油等を精製する過程においては、ガソリン等の石油製品以外に、品質・性状が安定しないこと等から製品として販売できないガス(いわゆる「非製品ガス」)が一定程度不可避的に発生する。
石油石炭税は、精製後の石油製品ではなく、当該石油製品の原料となった原油等に対し、その採取場からの移出又は保税地域からの引取りの段階で課税されるため、当該原油等から精製される非製品ガスにも石油石炭税が課税された状態となっている。このため、非製品ガスに対する石油石炭税の課税分は最終的に他の石油製品の価格に転嫁されることとなり、石油製品そのものに対してのみ石油石炭税が課税される輸入石油製品と比較した場合、石油石炭税に係る税負担の面でバランスが取れていない状況にある。そこで、平成26年度税制改正においては、石油製品等を精製する過程で発生する非製品ガスに係る石油石炭税相当額を還付する特例措置が創設された。
(2)制度の概要 石油精製業者が、平成29年3月31日までに、製造場(その製造場の所在地を所轄する税務署長の承認を受けた製造場に限る。)において課税済みの原料から非製品ガス(石油及び歴青油並びにこれらの調製品等の製造に伴い副次的に製造されるものであって、販売(販売以外の授与を含む。)の用に供するもの以外のものをいう。以下同じ。)を製造した場合には、非製品ガスの数量に1kl当たり2,800円に相当する金額を乗じて得た金額を非製品ガスを製造した石油精製業者に還付することとされた(措法90の6の3)。
また、還付の申請は、非製品ガスを製造した後1年以内に、製造場の所在地の所轄税務署長に対して行うこととされている。
なお、偽りその他不正の行為により、この還付措置による還付を受け、又は受けようとした者は、10年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされた(措法90の7①)。
(3)適用関係 上記改正は、平成26年4月1日から施行される。なお、「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」が段階的に実施されることに伴い、還付の計算の基礎となる税率について、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間は1kl当たり2,540円とする経過措置が講じられた(改正措令附則36)。
2 その他の改正
(1)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例に係る軽減措置の延長 「特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減」について、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の3の3)。
(注)なお、地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例が段階的に実施されることに伴い、還付の計算の基礎となる税率について、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間は1kl当たり2,540円とする経過措置が講じられた(改正法附則133)。
(2)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例に係る還付措置の延長 「特定の石油製品を特定の運送又は農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付」について、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の3の4)。
(注)なお、地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例が段階的に実施されることに伴い、還付の計算の基礎となる税率について、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間は1kl当たり2,540円とする経過措置が講じられた(改正法附則133)。
(3)輸入農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税措置の延長 「輸入農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税」について、小売価格の引下げ効果の実態調査の結果等を踏まえ、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の4)。
(4)国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置の延長 「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付」について、小売価格の引下げ効果の実態調査の結果等を踏まえ、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の6)。
(注)なお、地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例が段階的に実施されることに伴い、還付の計算の基礎となる税率について、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間は1kl当たり2,540円とする経過措置が講じられた(改正法附則134)。
Ⅴ 航空機燃料税関係の改正
1 航空機燃料税の税率の特例措置の延長 我が国の国内航空ネットワークの回復・充実を図る観点から、「航空機燃料税の税率の特例」について、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の8)。
2 沖縄路線航空機に積み込まれた航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長等 沖縄の更なる観光振興を図り、本土から沖縄本島に来訪する観光客を沖縄県内の離島への誘客することが必要であるとの観点から、「沖縄路線航空機に積み込まれた航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置」の対象に沖縄県の区域内の各地間を航行する航空機を追加するとともに、適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の8の2)。
3 特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長 「離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例」について、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の9)。
Ⅵ 自動車重量税関係の改正
1 自動車重量税の税率の特例の改正
(1)改正の内容 自動車重量税については、抜本改革法第7条、平成25年度与党税制改正大綱及び民間投資活性化等のための税制改正大綱において、財源を確保しつつ、一層のグリーン化等の観点から燃費性能等に応じて軽減する、との方針が示されたところである。
これらの方針の下、経年車は、現在購入した車に比べ、CO2排出量などの環境負荷が大きいことも踏まえ、エコカー減税の拡充の財源の確保及び一層のグリーン化を図る観点から、自動車重量税の税率の特例について、自家用の検査自動車のうち、新車新規登録から13年を経過したもの(新車新規登録から18年を経過したものを除く。以下「13年超経年車」という。)に係る自動車重量税の税率について、見直しを行うこととされた。なお、税率の見直しに当たっては、急激な負担増とならないよう、次の表2のとおり2段階で行うこととされた(措法90の11の3)。
(2)適用関係 自動車重量税の税率の特例についての改正は、平成26年4月1日以後に自動車検査証の交付等を受ける13年超経年車について適用される(措法90の11の3)。
2 自動車重量税の免税等の特例措置の改正 エコカー減税(環境性能に優れた自動車に係る負担を時限的に免除・軽減する措置)については、抜本改革法第7条等で示された方針を受け、平成26年4月1日からの消費税率の引上げの前後における駆け込み需要、反動減の緩和や自動車重量税の更なるグリーン化を推進する観点から、平成26年4月1日以後に初めて自動車検査証の交付を受けた免税対象車について、2回目の車検時に係る自動車重量税を免除(改正前は50%軽減)することとされた(措法90の12④)。
3 被災自動車等に係る自動車重量税の還付措置の延長 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では自動車自体が滅失してしまうケースが数多く発生したことから、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(以下「震災税特法」という。)において、被災した一定の検査自動車に係る自動車重量税の還付措置が創設され、その後、本特例措置の対象に二輪の小型自動車、届出軽自動車等が追加するなどの拡充が行われている。
「被災自動車等に係る自動車重量税の還付」については、平成25年度における申請状況等を考慮し、その適用期限を2年延長し、平成28年3月31日までの措置とされた(震災税特法45)。
4 被災自動車等の使用者であった者が取得する自動車に係る自動車重量税の免税措置の延長 震災税特法においては、被災使用者が、平成23年3月11日から平成26年4月30日までの間に検査自動車又は届出軽自動車を取得し当該検査自動車又は当該届出軽自動車について自動車検査証の交付等(平成23年3月11日以後最初に受けるものに限る。)を受ける場合に、自動車重量税を免除することとされた(旧震災税特法46①)。
「被災自動車等の使用者であった者が取得する自動車に係る自動車重量税の免税」については、平成25年度における適用状況等を考慮し、その適用期限を2年延長し、平成28年4月30日までの措置とされた(震災税特法46)。
Ⅶ 印紙税関係の改正
独立行政法人中小企業基盤整備機構が作成する不動産の譲渡に関する契約書等の印紙税の非課税措置の延長 震災税特法においては、独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う仮設施設整備事業に係る業務に関して作成する不動産の譲渡に関する契約書又は請負に関する契約書(建設工事の請負に係る契約に基づき作成されるものに限る。)のうち、東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の施行の日(平成23年5月2日)から平成27年3月31日までの間に作成するものについては、印紙税を課さないこととされていた(旧震災税特法52)。
平成26年度税制改正においては、本特例措置について2年延長することとされ、平成29年3月31日までの措置とされた(震災税特法52)。
平成26年度における消費税・間接諸税関係の改正について
根本浩之
はじめに
デフレ状況からの脱却と経済再生、税制抜本改革の着実な実施及び震災からの復興支援などの観点から、国税に関し、所要の施策を講ずるため、その内容を織り込んだ「所得税法等の一部を改正する法律案」は、平成26年2月4日に国会に提出された。その後、同法案は同月28日に衆議院を通過し、3月20日に参議院本会議において可決・成立し、同月31日に公布された。
以下、この改正による間接税関係の改正について説明する。
Ⅰ 消費税関係の改正
1 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し
(1)改正前の制度の概要 簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度である。
具体的には、その納税地の所轄税務署長に「簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者は、その基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が5千万円以下の課税期間について、売上げに係る消費税額に、事業の種類の区分に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額とみなし、売上げに係る消費税額から控除できることとされている(消法37)。
みなし仕入率を適用する業種区分及びみなし仕入率は、次の表1のとおりとされている(消令57)。
(2)改正の内容 簡易課税制度の在り方については、社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(以下「抜本改革法」という。)第7条第1号ニ(税制に関する抜本的な改革及び関連する諸施策に関する措置)において「消費税の簡易課税制度の仕入れに係る概算的な控除率については、今後、更なる実態調査を行い、その結果も踏まえた上で、その水準について必要な見直しを行う。」と規定されるとともに、会計検査院からも同様の指摘を受けていた。
このため、財務省において簡易課税制度の適用対象となる規模の事業者における仕入率の実態調査を実施したところ、「金融業及び保険業」及び「不動産業」においては、現行のみなし仕入率と実際の仕入率との間の乖離が大きいことが判明したことから、平成26年度税制改正においては、これらの調査の結果を踏まえ、次の見直しが行われた。
① みなし仕入率の引下げ 現在、第4種事業に該当している「金融業及び保険業」を第5種事業(みなし仕入率50%)とするとともに、第5種事業に該当している「不動産業」を新たに設ける第6種事業(みなし仕入率40%)とし、それぞれのみなし仕入率を10%引き下げることとされた(消令57①⑤)。
② 「75%ルール」等の所要の規定の整備 簡易課税制度による仕入控除税額の計算に当たっては、いわゆる「75%ルール」の仕組みがあるが、第6種事業が設けられたことに伴い適用区分の変更の改正等が行われた(消令57②~④)。
(3)適用関係 上記改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間から適用し、同日前に開始した課税期間については、改正前の制度を適用することとされている。
ただし、平成26年10月1日前に簡易課税制度選択届出書を提出している事業者であって、平成27年4月1日以後に開始する課税期間が簡易課税制度の強制適用を受ける課税期間である場合(消法37⑤)には、簡易課税制度の適用を開始した課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の末日の翌日以後に開始する課税期間から適用することとされている(改正消令附則1二、4)。
2 輸出物品販売場制度の見直し
(1)改正前の制度の概要 税務署長の許可を受けた輸出物品販売場を経営する事業者が、外国人旅行者等の非居住者(以下「外国人旅行者」という。)に対して、当該外国人旅行者がその出国の際に持ち出す物品(最終的に輸出される物品)を所定の手続により譲渡した場合には、消費税を免除することとされている(消法8)。
輸出物品販売場における資産の譲渡は、国内において資産の譲渡を行うものであるが、外国人旅行者がその出国の際に国外へ持ち出すことを前提とした販売であり、その実質は輸出取引と変わることがないと考えられることから、所定の手続を行って販売される一定の物品については、輸出取引と同様に消費税が免除されている。
ただし、免税販売の対象となる物品は、通常生活の用に供する物品のうち、国内で消費されやすい消耗品(食料品、飲料類、たばこ、薬品類及び化粧品類並びにフィルム、電池その他の消耗品)以外の物品(以下「一般物品」という。)に限定されている(消令18①)。
なお、輸出物品販売場を経営する事業者が外国人旅行者に対して免税で販売できる一般物品は、次に掲げる全ての要件を満たして販売するものに限られる。
イ その外国人旅行者が所持する旅券等の提示を受けること
ロ その旅券等に購入の事実を記載した書類(以下「購入記録票」という。)の貼付け等を行うこと
ハ その外国人旅行者から、免税購入した物品をその購入後において輸出する旨を誓約する書類(以下「購入者誓約書」という。)の提出を受けること
(2)改正の内容 平成25年3月、「観光は日本の力強い経済を取り戻すための極めて重要な成長分野であり、経済を立て直し、近隣諸国以上に魅力あふれる観光立国に向けて強力に施策を推進する」という目的のもと、内閣総理大臣が主宰し全閣僚で構成する観光立国推進会議が立ち上がった。同会議において同年6月に取りまとめられた「観光立国実現に向けたアクション・プログラム」においては、外国人旅行者向け消費税免税制度について、「外国人旅行者の利便性や執行上の観点も踏まえた上で、税制改正要望の過程において、制度の見直しも含め検討する。」とされ、日本再興戦略(平成25年6月閣議決定)においても同様の記述がされた。
こうした状況を踏まえ、平成26年度税制改正において議論が行われ、輸出物品販売場制度について次の見直しが行われた。
① 免税対象物品の拡大 上記(1)イ及びロの要件に加え、輸出物品販売場を経営する事業者が、次に掲げる全ての要件を満たして外国人旅行者に販売する消耗品が、免税販売の対象物品に加えられた。
(イ)金額要件
新たに免税販売が認められる消耗品については、商業量に達すると考えられる取引を禁止することによって国内での横流しといった不正を防止する観点から、同一店舗で1日に販売する消耗品の合計額が50万円(税抜価額)を超えない範囲内のものに限ることとされた(消令18①)。
また、事業者の事務負担等に配慮する観点から1万円(税抜価額)とされている下限金額については、その場で消費されやすいという消耗品の性質を踏まえ、一般物品とは別枠で設定するとともに、その水準については、観光立国の推進や地域経済の発展といった本改正の政策目的及び免税店の地方拡大、地方の土産物店等における販売の実態を踏まえ、5千円(税抜価額)とされた(消令18⑦)。
(ロ)購入者の誓約
食品類であれば一定の消費期限があること、長期滞在する場合には一定の日用消耗品が必要になると考えられること等を踏まえ、長期滞在する外国人旅行者による消耗品の購入を制限する観点から、消耗品を免税購入する外国人旅行者が、その購入から30日以内に輸出(出国)することを誓約する書類の提出を受けることが要件とされた(消令18②二イ)。
(ハ)特殊包装
消費されやすいという消耗品の性質に鑑み、税関において出国前に消費していないことを簡易に確認できるようにするとともに、国内での消費を牽制するための措置として、特殊な包装を施した状態で購入者に引き渡すことが免税販売の要件とされた(消令18②二ロ)。この特殊包装の具体的な方法については、国土交通大臣と経済産業大臣が財務大臣と協議して指定することとされた(平成26年経済産業省・国土交通省告示第6号)。
② 一般物品に係る不正を防止するための措置の追加 一般物品については、既存の上記(1)イ~ハの要件に加え、国内での横流しを防止・牽制する観点から、その外国人旅行者に対して同一店舗で1日に販売する一般物品の額が100万円を超える場合には、その外国人旅行者の所持する旅券等の写しの提出を受けるとともに、その提出を受けた事業者は、その譲渡を行った日の属する課税期間の末日の翌日から2月を経過した日から7年間当該旅券等の写しを保存しなければならないこととされた(消令18②一ハ、⑧、消規7①)。
③ 免税手続の簡素化 今般の改正においては、免税手続のIT化の妨げとならないようにする観点から、省令で定められていた購入記録票及び購入者誓約書の様式を廃止するとともに、購入記録票及び購入者誓約書に記載すべき事項のみが規定されることとなった(消規6①~⑥)。また、事務の簡素化に資する観点から、品目等が記載された明細書等を購入記録票等に貼り付け、割印することによって、その明細書等に記載されている事項の購入記録票等への記載を省略することができることとされている(消規6⑦)。
④ その他 (イ)割印
現行制度においては、消費税法基本通達において、旅券等と当該旅券等に貼り付けた購入記録票との間等に割印することを免税販売の要件としている(消費税法基本通達8-1-7)が、今回の改正においては、当該割印の重要性に鑑み、当該割印の要件が政令に規定された(消令18②一イ)。
(ロ)一般物品と消耗品とが一の商品を構成している場合
一般物品と消耗品とが組み合わさって一つの商品を構成している場合には、当該商品については、消耗品として取り扱うこととされた(消令18④)。
(ハ)基地内輸出物品販売場に関する規定の整備
今般の改正に伴い、合衆国軍隊の構成員等が基地内輸出物品販売場において免税購入する場合の手続等についても上述イ及びハと同様の改正が行われている(消令18②三、四)。
(3)適用関係 上記改正は、平成26年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について適用される(改正消令附則1一、2)。
3 課税売上割合の計算方法に係る見直し 有価証券等の譲渡を行った場合における課税売上割合の計算については、その取引の特殊性に鑑み、資産の譲渡対価の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額に算入する特例措置が設けられているが、類似の金融取引である金銭債権の譲渡については、このような特例は設けられていなかった。しかし、近年の金融市場の発展に伴い、資金調達等の手段として、貸付債権のファンド等への売却、住宅ローン債権や割賦債権等の証券化に伴う債権譲渡など様々な形で金銭債権の譲渡が行われるようになり、そのような事業を行う事業者については課税売上割合が著しく低下し消費税の納付税額が増加する等、円滑な債権譲渡を妨げるおそれがあるとの指摘が各方面からなされていた。
そこで平成26年度税制改正においては、課税売上割合の計算上、消費税法施行令第9条第1項第4号に規定する金銭債権の譲渡(同令第48条第2項第2号の規定の適用を受ける金銭債権の譲渡を除く。以下同じ。)については、有価証券等の譲渡と同様に、その譲渡対価の額の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額(分母)に算入することとされた(消令48⑤)。
この改正は、平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡について適用される(改正消令附則1、3)。
4 その他の改正
(1)難病新法の規定に基づく特定医療費の支給に係る医療の非課税範囲への追加 難病の患者に対する医療等の施策を総合的に推進する観点から、新たに難病の患者に対する医療等に関する法律(以下「難病新法」という。)が制定され、難病新法第5条第1項に規定する指定難病の患者等に対して、同項に規定する指定特定医療につき特定医療費を支給することとされたことを踏まえ、「難病新法の規定に基づく特定医療費の支給に係る医療」を消費税法施行令第14条(療養、医療等の範囲)に位置付けることとされた(消令14七)。
この改正は、難病新法の施行の日(平成27年1月1日)から適用される(改正消令附則1三四)。
(2)児童福祉法の規定に基づく小児慢性特定疾病医療費の支給に係る医療の非課税範囲への追加 児童福祉法の改正(児童福祉法の一部を改正する法律。以下「改正児童福祉法」という。)において、小児慢性特定疾病(児童福祉法6の2①)にかかっている児童のうちその疾病の程度が一定以上である者の保護者に対して、その医療に要した費用につき小児慢性特定疾病医療費(同法19の2①)を支給することとされたことを踏まえ、当該「小児慢性特定疾病医療費の支給に係る医療」を消費税法施行令第14条(療養、医療等の範囲)に位置付けることとされた(消令14九)。
この改正は改正児童福祉法の施行の日(平成27年1月1日)から適用される(改正消令附則1三・四)。
(3)子ども・子育て支援法の施行に伴う所要の規定の整備 子ども・子育て支援法の施行に伴い、同法第27条から第30条の規定に基づく「施設型給付費(特例施設型給付費)」又は「地域型保育給付費(特例地域型保育給付費)」の支給に係る事業として行われる資産の譲渡等のうち、現行の消費税法令(消法別表1七ロ、十一イ、消令14の3一前段)により非課税とされる資産の譲渡等以外のものを、社会福祉事業等に類するものとして位置付け、消費税を非課税とすることとされた(消令14の3六)。
この改正は子ども・子育て支援法の施行の日から適用される(改正消令附則1五)。
(4)身体障害者用物品の指定 消費税においては、身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する一定の身体障害者用物品の譲渡、貸付け等が非課税とされている(消法別表1十)。
今回の改正では、非課税物品として指定されている「視覚障害者用携帯型歩行支援装置」の性状、構造又は機能について、超音波を利用して障害物を検知するものが加えられたほか、技術革新等に伴い既に製造、流通のなくなった「盲人用カセットテープレコーダー」について削除するとともに、既に非課税物品に指定されている物品で個別製品名が掲げられているものについて、バージョンアップ等に伴う所要の改正が行われている。
この改正は、平成26年4月1日から適用される(平成26年厚生労働省告示第162号)。
Ⅱ 酒税関係の改正
入国者が輸入するウイスキー等に係る酒税の税率の特例措置の改正 平成26年4月1日から消費税率(地方消費税率を含む。)が8%に引き上げられることを踏まえ、入国者が携帯して輸入する対象酒類の最近の通関実態等を勘案し、本特例の対象酒類のうち、ウイスキー及びブランデーの特例税率を600,000円/kl(現行:500,000円/kl)に引き上げるとともに、ウイスキー等に係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成27年3月31日まで1年延長されることから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成27年3月31日まで1年延長することとされた(措法87の5)。
この改正は、平成26年4月1日以後に、入国者が携帯し又は別送して輸入するウイスキー及びブランデーについて適用される(改正法附則1)。
Ⅲ たばこ税関係の改正
入国者が輸入する紙巻たばこに係るたばこ税の税率の特例措置の改正 平成26年4月1日から消費税率(地方消費税率を含む。)が8%に引き上げられることを踏まえ、入国者が携帯して輸入する紙巻たばこの最近の通関実態等を勘案し、本特例の適用を受ける紙巻たばこに係る特例税率を1,000本につき11,000円(現行:10,500円)に引き上げるとともに、紙巻たばこに係る関税を無税とする関税暫定措置法の適用期限が平成27年3月31日まで1年延長されることから、これに併せて、本特例の適用期限についても平成27年3月31日まで1年延長することとされた(措法88の2)。
この改正は、平成26年4月1日以後に、入国者が携帯し又は別送して輸入する紙巻たばこについて適用される(改正法附則1)。
(注)これにより、本特例の適用を受ける紙巻たばこに係る税負担は、たばこ税及びたばこ特別税を合わせて1,000本につき11,500円となる。
Ⅳ 石油石炭税関係の改正
1 非製品ガスに係る石油石炭税の還付措置の創設
(1)制度創設の背景 原油等を精製する過程においては、ガソリン等の石油製品以外に、品質・性状が安定しないこと等から製品として販売できないガス(いわゆる「非製品ガス」)が一定程度不可避的に発生する。
石油石炭税は、精製後の石油製品ではなく、当該石油製品の原料となった原油等に対し、その採取場からの移出又は保税地域からの引取りの段階で課税されるため、当該原油等から精製される非製品ガスにも石油石炭税が課税された状態となっている。このため、非製品ガスに対する石油石炭税の課税分は最終的に他の石油製品の価格に転嫁されることとなり、石油製品そのものに対してのみ石油石炭税が課税される輸入石油製品と比較した場合、石油石炭税に係る税負担の面でバランスが取れていない状況にある。そこで、平成26年度税制改正においては、石油製品等を精製する過程で発生する非製品ガスに係る石油石炭税相当額を還付する特例措置が創設された。
(2)制度の概要 石油精製業者が、平成29年3月31日までに、製造場(その製造場の所在地を所轄する税務署長の承認を受けた製造場に限る。)において課税済みの原料から非製品ガス(石油及び歴青油並びにこれらの調製品等の製造に伴い副次的に製造されるものであって、販売(販売以外の授与を含む。)の用に供するもの以外のものをいう。以下同じ。)を製造した場合には、非製品ガスの数量に1kl当たり2,800円に相当する金額を乗じて得た金額を非製品ガスを製造した石油精製業者に還付することとされた(措法90の6の3)。
また、還付の申請は、非製品ガスを製造した後1年以内に、製造場の所在地の所轄税務署長に対して行うこととされている。
なお、偽りその他不正の行為により、この還付措置による還付を受け、又は受けようとした者は、10年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科することとされた(措法90の7①)。
(3)適用関係 上記改正は、平成26年4月1日から施行される。なお、「地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例」が段階的に実施されることに伴い、還付の計算の基礎となる税率について、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間は1kl当たり2,540円とする経過措置が講じられた(改正措令附則36)。
2 その他の改正
(1)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例に係る軽減措置の延長 「特定の用途に供する石炭に係る石油石炭税の軽減」について、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の3の3)。
(注)なお、地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例が段階的に実施されることに伴い、還付の計算の基礎となる税率について、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間は1kl当たり2,540円とする経過措置が講じられた(改正法附則133)。
(2)地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例に係る還付措置の延長 「特定の石油製品を特定の運送又は農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付」について、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の3の4)。
(注)なお、地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例が段階的に実施されることに伴い、還付の計算の基礎となる税率について、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間は1kl当たり2,540円とする経過措置が講じられた(改正法附則133)。
(3)輸入農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税措置の延長 「輸入農林漁業用A重油に係る石油石炭税の免税」について、小売価格の引下げ効果の実態調査の結果等を踏まえ、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の4)。
(4)国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付措置の延長 「国産農林漁業用A重油に係る石油石炭税の還付」について、小売価格の引下げ効果の実態調査の結果等を踏まえ、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の6)。
(注)なお、地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例が段階的に実施されることに伴い、還付の計算の基礎となる税率について、平成26年4月1日から平成28年3月31日までの間は1kl当たり2,540円とする経過措置が講じられた(改正法附則134)。
Ⅴ 航空機燃料税関係の改正
1 航空機燃料税の税率の特例措置の延長 我が国の国内航空ネットワークの回復・充実を図る観点から、「航空機燃料税の税率の特例」について、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の8)。
2 沖縄路線航空機に積み込まれた航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長等 沖縄の更なる観光振興を図り、本土から沖縄本島に来訪する観光客を沖縄県内の離島への誘客することが必要であるとの観点から、「沖縄路線航空機に積み込まれた航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置」の対象に沖縄県の区域内の各地間を航行する航空機を追加するとともに、適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の8の2)。
3 特定離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例措置の延長 「離島路線航空機に積み込まれる航空機燃料に係る航空機燃料税の税率の特例」について、その適用期限を3年延長し、平成29年3月31日までの措置とされた(措法90の9)。
Ⅵ 自動車重量税関係の改正
1 自動車重量税の税率の特例の改正
(1)改正の内容 自動車重量税については、抜本改革法第7条、平成25年度与党税制改正大綱及び民間投資活性化等のための税制改正大綱において、財源を確保しつつ、一層のグリーン化等の観点から燃費性能等に応じて軽減する、との方針が示されたところである。
これらの方針の下、経年車は、現在購入した車に比べ、CO2排出量などの環境負荷が大きいことも踏まえ、エコカー減税の拡充の財源の確保及び一層のグリーン化を図る観点から、自動車重量税の税率の特例について、自家用の検査自動車のうち、新車新規登録から13年を経過したもの(新車新規登録から18年を経過したものを除く。以下「13年超経年車」という。)に係る自動車重量税の税率について、見直しを行うこととされた。なお、税率の見直しに当たっては、急激な負担増とならないよう、次の表2のとおり2段階で行うこととされた(措法90の11の3)。
(2)適用関係 自動車重量税の税率の特例についての改正は、平成26年4月1日以後に自動車検査証の交付等を受ける13年超経年車について適用される(措法90の11の3)。
2 自動車重量税の免税等の特例措置の改正 エコカー減税(環境性能に優れた自動車に係る負担を時限的に免除・軽減する措置)については、抜本改革法第7条等で示された方針を受け、平成26年4月1日からの消費税率の引上げの前後における駆け込み需要、反動減の緩和や自動車重量税の更なるグリーン化を推進する観点から、平成26年4月1日以後に初めて自動車検査証の交付を受けた免税対象車について、2回目の車検時に係る自動車重量税を免除(改正前は50%軽減)することとされた(措法90の12④)。
3 被災自動車等に係る自動車重量税の還付措置の延長 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では自動車自体が滅失してしまうケースが数多く発生したことから、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(以下「震災税特法」という。)において、被災した一定の検査自動車に係る自動車重量税の還付措置が創設され、その後、本特例措置の対象に二輪の小型自動車、届出軽自動車等が追加するなどの拡充が行われている。
「被災自動車等に係る自動車重量税の還付」については、平成25年度における申請状況等を考慮し、その適用期限を2年延長し、平成28年3月31日までの措置とされた(震災税特法45)。
4 被災自動車等の使用者であった者が取得する自動車に係る自動車重量税の免税措置の延長 震災税特法においては、被災使用者が、平成23年3月11日から平成26年4月30日までの間に検査自動車又は届出軽自動車を取得し当該検査自動車又は当該届出軽自動車について自動車検査証の交付等(平成23年3月11日以後最初に受けるものに限る。)を受ける場合に、自動車重量税を免除することとされた(旧震災税特法46①)。
「被災自動車等の使用者であった者が取得する自動車に係る自動車重量税の免税」については、平成25年度における適用状況等を考慮し、その適用期限を2年延長し、平成28年4月30日までの措置とされた(震災税特法46)。
Ⅶ 印紙税関係の改正
独立行政法人中小企業基盤整備機構が作成する不動産の譲渡に関する契約書等の印紙税の非課税措置の延長 震災税特法においては、独立行政法人中小企業基盤整備機構が行う仮設施設整備事業に係る業務に関して作成する不動産の譲渡に関する契約書又は請負に関する契約書(建設工事の請負に係る契約に基づき作成されるものに限る。)のうち、東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の施行の日(平成23年5月2日)から平成27年3月31日までの間に作成するものについては、印紙税を課さないこととされていた(旧震災税特法52)。
平成26年度税制改正においては、本特例措置について2年延長することとされ、平成29年3月31日までの措置とされた(震災税特法52)。
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