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解説記事2014年06月23日 【税制改正解説】 平成26年度における国際課税関係の改正~国際課税原則の見直し(2014年6月23日号・№551)

税制改正解説
平成26年度における国際課税関係の改正~国際課税原則の見直し
 竹内 徹

第一 改正の背景

 外国法人等に対する課税原則については、国内法においていわゆる総合主義(全所得主義)を採用してきているが、他方で、租税条約においては恒久的施設に帰属する利得についてのみ内国法人等と同様に総合課税するという「帰属主義」を採用してきている。
 また、OECDにおいては、モデル租税条約新7条(以下「新7条」という)が2010年に導入された。具体的には、①恒久的施設の果たす機能及び事実関係に基づいて、外部取引、資産、リスク、資本を恒久的施設に帰属させ、②恒久的施設と本店等との内部取引を認識し、③その内部取引が独立企業間価格で行われたものとして、恒久的施設に帰属すべき利得を算定するアプローチ(Authorised OECD Approach、以下「AOA」という)が採用されている。
 この新7条の導入によって、我が国の国内法をAOAに基づく帰属主義へ見直す機運が高まってきた。
 この見直しの主な意義としては、租税条約と国内法が帰属主義に統一されることによって、二元化されていた課税原則が簡素でかつ国際的に調和のとれた税制に近づくこととなり、その結果として対内・対外投資に好影響を及ぼすことが期待されることなどがある。
 以上を踏まえれば、帰属主義に即して国内法を見直すことは時代の要請と言え、我が国もOECDの主要メンバーとして、新7条が目指す二重課税・二重非課税の排除を実現するよう進めていくこととされた。
 以下、帰属主義への見直しに伴う法人税関係の改正について、解説を行う。

第二 法人税法関係

Ⅰ 外国法人

1 帰属主義に基づく外国法人課税の仕組み
 我が国に支店等の恒久的施設を有する外国法人については、独立企業原則の考え方に基づき、恒久的施設帰属所得について法人税の課税対象とされることとなった。恒久的施設を有する外国法人の恒久的施設に帰属しない国内源泉所得については、恒久的施設帰属所得とは分離して課税することとされた。

2 国内源泉所得  帰属主義への見直しに伴い、法人税における国内源泉所得は次の(1)(4)までとなった。
(1)恒久的施設帰属所得  外国法人の恒久的施設がその外国法人から独立して事業を行う事業者であるとしたならば、恒久的施設が果たす機能、恒久的施設において使用する資産、恒久的施設と外国法人の本店等との間の内部取引(注)その他の状況を勘案して、恒久的施設に帰せられるべき所得とされ、恒久的施設の譲渡により生ずる所得が含まれる(法法138①一)。
(注)恒久的施設と本店等との間で行われた資産の移転、役務の提供その他の事実で、独立の事業者の間で同様の事実があったとしたならば、これらの事業者の間で、資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引が行われたと認められるものをいう(法法138②)。
(2)国内にある資産の運用・保有による所得  利子・配当等の投資所得に関する国内源泉所得(所法161①八~十一及び十三~十六)(恒久的施設帰属所得に該当するものを除く。)は、帰属主義への移行により、所得税の源泉徴収のみで課税関係を終了させることから、国内源泉所得の範囲から除かれている(法法138①二)。
(3)国内資産譲渡所得  国内不動産、国内不動産関連株式及び事業譲渡類似株式の譲渡所得その他の譲渡所得に限定された(法法138①三、法令178)。
(4)人的役務提供事業の対価等  人的役務提供事業の対価(法法138①四)、国内不動産等の貸付け対価(法法138①五)及びその他その源泉が国内にある所得(法法138①六)の範囲については、従前から変更はない。

3 課税標準  帰属主義の下では、我が国で事業活動を行う外国法人の課税標準を、「恒久的施設帰属所得」及び「恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得」の2区分とし、これらの所得を通算しないこととされた(法法141)。

4 恒久的施設帰属所得に係る所得の金額
(1)恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の原則
 恒久的施設帰属所得に係る所得の金額は、恒久的施設を通じて行う事業に係る益金の額から損金の額を控除した金額とされる(法法142①)。
 そして、益金の額又は損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、恒久的施設を通じて行う事業につき、内国法人の各事業年度の所得計算の規定に準じて計算した場合に益金の額又は損金の額となる金額とされる(法法142②)。
 内国法人の各事業年度の所得計算の規定に準じて計算する場合の留意点は、以下のとおりである。
 ① 各事業年度の所得の金額の計算
 イ 収益の額及び費用・損失の額
 当期の益金の額及び損金の額となる収益の額及び費用・損失の額は、恒久的施設を通じて行う事業に係るものに限られる(法令184①一)。
 ロ 債務確定基準  内部取引に係る販売費、一般管理費その他の費用については、債務の確定しないものであっても、その事業年度の損金の額に算入することとされている(法法142③一)。
 ハ 本店配賦経費  外国法人の恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算上損金の額に算入する販売費、一般管理費その他の費用には、外国法人の恒久的施設を通じて行う事業とそれ以外の事業に共通するこれらの費用につき、一定の合理的と認められる基準を用いて恒久的施設を通じて行う事業に配分した金額が含まれる(法法142③二、法令184②)。
 ニ 資本等取引  本店から恒久的施設への支店開設資金の供与や恒久的施設から本店への利益送金その他これらに類する事実が含まれる(法法142③三)。
 ② 棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法、減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法、繰延資産の償却費の計算及びその償却の方法  帰属主義への見直しに伴い、外国法人の恒久的施設を通じて行う事業に係るものに限ることとされた(法令184①四~六)。
 ③ 役員給与の損金不算入  損金算入の対象となる使用人については、帰属主義への見直しに伴い、外国法人の恒久的施設を通じて行う事業のために常時勤務する者に限ることとされた(法令184①八)。
 ④ 寄附金の損金不算入  資本金基準における資本金等の額は、外国法人の資本金等の額にその外国法人の貸借対照表に計上されている総資産の帳簿価額のうちに恒久的施設を通じて行う事業に係る資産の帳簿価額の占める割合を乗じて計算した金額とされる。また、所得基準における所得の金額は、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額とされる(法令184①九)。
 ⑤ 外国の法人税額等の損金不算入  帰属主義への見直しに伴い、我が国の法人税等に加えて損金不算入とされる外国の法人税等は当該外国法人の本店所在地国で課された法人税等に相当するもののみとされた(法令184①十)。
 ⑥ 貸倒引当金  貸倒引当金の設定対象となる金銭債権には、恒久的施設と本店等との間の内部取引に係る金銭債権に相当するものは含まれないこととされる(法令184①十四)。
 ⑦ 内部取引により取得した資産  外国法人の本店等と恒久的施設との間で恒久的施設が資産を取得する内部取引が行われた場合には、その内部取引の時に資産を取得したものとして、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算に関する法人税に関する法令の規定を適用することとされる(法令184⑥)。
(2)還付金等の益金不算入
 ① 法人税等の還付金の益金不算入
 納付の際に損金算入されなかった租税公課が還付された場合又はその還付を受けるべき金額を未納の国税等に充当した場合には、その還付等を受ける金額は、その外国法人のその事業年度の恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととされる(法法142の2①)。
 ② 外国税額の減額部分の益金不算入  控除対象外国法人税の額が外国税額の控除後において減額された場合には、その減額された部分については、その外国法人のその事業年度の恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算上、益金の額に算入しないこととされる(法法142の2②)。
(3)保険会社の投資資産及び投資収益
 ① 概要
 外国保険会社である外国法人の恒久的施設に係る投資資産の額が、恒久的施設に帰せられるべき投資資産の額に満たない場合には、その満たない部分に相当する金額(投資資産不足額)に係る収益の額を、恒久的施設を通じて行う事業に係る収益の額として、恒久的施設帰属所得の計算上、益金の額に算入することとされる(法法142の3、法令187)。
 ② 投資資産の範囲  保険料として収受した金銭その他の資産を保険契約に基づく将来の債務に備えるために運用する場合のその運用資産をいう(法法142の3①、法規60の5)。
 ③ 恒久的施設に帰せられるべき投資資産の額 【算式(法令187①④)】


 ④ 益金の額に算入すべき投資収益の額  投資資産不足額に、その外国法人全体の投資資産の運用利回りとして合理的な方法により計算した割合を乗じて計算した金額を、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算上、益金の額に算入する(法令187②)。
 ⑤ 適用除外  投資資産不足額が恒久的施設に帰せられるべき投資資産の額の10%以下である場合等に該当し、その該当する旨を記載した書類及びその計算に関する書類を保存している場合には、この措置は適用しない(法法142の3②③)。
(4)恒久的施設に帰せられるべき資本に対応する負債の利子の損金不算入
 ① 概要
 恒久的施設の計上した自己資本の額が恒久的施設に帰せられるべき資本の額に満たない場合には、恒久的施設を通じて行う事業に係る負債利子の額のうちその満たない部分に対応する金額は、恒久的施設帰属所得の計算上、損金の額に算入しないこととされる(法法142の4)。
 ② 恒久的施設に帰せられるべき資本の額  資本配賦法又は同業法人比準法のいずれかの方法によって計算することとされる(法令188)。
 イ 資本配賦法 (イ)算式(法令188②一)

(ロ)外国法人の自己資本の額
 外国法人の自己資本の額は、当期の簿価純資産の平均残高とされ(法令188②一イ(1)(2))、銀行・証券会社等の場合には銀行法等に相当する外国の法令による自己資本規制上の自己資本の額とされる(法令188②一ロ)。
(ハ)外国法人の資産の額・恒久的施設に帰せられるべき資産の額
 信用リスク、市場リスク、業務リスク及びその他のリスク(発生し得る危険)を勘案した金額(危険勘案資産額)とされる(法令188②一)。
(ニ)リスク算定に係る基準日の特例
 危険勘案資産額は事業年度終了の時の金額とされているが、一定の要件を満たす場合には、事業年度終了の日前6ヶ月以内の一定の日の危険勘案資産額を用いることができる(法令188⑦⑧)。
(ホ)簡便法
 銀行・証券会社及び保険会社以外の内国法人については、外国法人の資産の額及び恒久的施設に帰せられるべき資産の額について、上記(ハ)の危険勘案資産額に代えて、事業年度終了時の資産の帳簿価額を用いて恒久的施設に帰せられるべき資本の額を計算することができる(法令188③一)。
(へ)連結ベースの資本配賦法
  a 外国法人の自己資本がマイナスの場合等には連結ベースの自己資本の額及び資産の額を用いることとされる(法令188④)。
  b 連結ベースの自己資本がマイナスとなる場合には、連結ベースの資本配賦法を用いることができない(法令188⑥)。
 ロ 同業法人比準法 (イ)算式(法令188②二)

(ロ)恒久的施設に帰せられる資産の額
  a 外国法人の事業年度終了の時の恒久的施設に帰せられる資産の額について発生し得る危険を勘案して計算した金額(危険勘案資産額)である(法令188②二イ・ロ)。
  b なお、一定の要件を満たす場合には、事業年度終了の日前6ヶ月以内の一定の日の危険勘案資産額を用いることができる(法令188⑦⑧)。
(ハ)比較対象法人の純資産の額
 国内で同種の事業を行う法人(比較対象法人)の比較対象事業年度の純資産の額とされる(法令188②二イ(1))。
 なお、銀行・証券会社については比較対象法人の比較対象事業年度終了時の我が国又は外国の銀行法等による自己資本規制上の自己資本の額とされる(法令188②二ロ(1))。
(ニ)比較対象法人の総資産の額
 比較対象法人の比較対象事業年度終了時の総資産の額について、発生し得る危険を勘案して計算した金額である(法令188②二イ(2)、ロ(2))。
(ホ)簡便法
 銀行等の金融機関及び保険会社以外の外国法人については、上記(ロ)の金額について恒久的施設の資産の帳簿価額の平均残高とし、上記(ハ)及び(ニ)の金額について比較対象法人の比較対象事業年度終了時の貸借対照表に計上されている純資産の額及び総資産の額とすることができる(法令188③二)。
 ハ 計算方法の選定・変更  資本配賦法及び同業法人比準法との選択は任意とされている。ただし、いったん選択した方法は、特段の事情がない限り、継続適用する必要がある(法令188⑨)。
 ③ 損金不算入額の計算 【算式】

(5)外国銀行等の資本に係る負債の利子の損金算入 【算式(法法142の5)】

(6)法人税額から控除する外国税額の損金不算入  外国税額控除を選択した場合には、内国法人の外国税額控除と同様に、その外国法人税額について損金不算入とされる(法法142の6)。
(7)本店配賦経費に関する書類保存がない場合の本店配賦経費の損金不算入  上記(1)①ハについては、その配分に関する計算の基礎となる書類等の保存がない場合には、損金算入が認められない(法法142の7①、法規60の10)。
 なお、これらの書類の保存がない場合であっても、その保存がなかったことについてやむを得ない事情があると認められるときには、その書類の提出があった場合に限り、損金算入が認められる(法法142の7②)。
(8)恒久的施設の閉鎖・再進出に係る取扱い  恒久的施設を有する外国法人が恒久的施設を有しないこととなった場合には、その時点で恒久的施設に帰せられる資産の含み損益やその時点で繰り延べられている損益を恒久的施設帰属所得として課税することとされた。
 ① 時価評価損益の計上 
イ 恒久的施設を有する外国法人が恒久的施設を有しないこととなる場合(恒久的施設の他の者への譲渡又は適格合併等により恒久的施設を有しないこととなる場合を除く。)には、恒久的施設を有しないこととなる日の属する事業年度終了時に恒久的施設に帰せられる資産の時価評価損益を、恒久的施設を有しないこととなる日の属する事業年度の恒久的施設帰属所得に係る所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされている(法法142の8)。
ロ イの時価評価による評価損益が計上された後の資産の帳簿価額は、その評価損益相当額を増減した金額とされる(法令190④)。
 ② 繰り延べた損益の計上 イ 恒久的施設において国庫補助金又は保険差益に係る特別勘定等を設けている場合には、恒久的施設を有しないこととなる日の属する事業年度において取り崩して、益金の額に算入する(法法10の3③、法令14の11⑤)。
ロ 恒久的施設において長期割賦販売等につき繰り延べた収益の額及び費用の額がある場合には、恒久的施設を有しないこととなる日の属する事業年度において益金の額及び損金の額に算入する(法法142②、法令184①二十一ロ)。
ハ その他繰り延べた一定の損益を、恒久的施設を有しないこととなる日の属する事業年度において益金の額又は損金の額に算入する(法令184⑤による読替後の法令121の5①、133の2⑤、139の4⑩)
 ③ 貸倒引当金、返品調整引当金  貸倒引当金勘定及び返品調整引当金勘定への繰入れについては、外国法人の国内事業終了年度(国内に恒久的施設を有する外国法人が国内に恒久的施設を有しない外国法人に該当することとなった場合におけるその該当する日の属する事業年度をいう。)においては認められない(法令184①十四ロ、十五)。
 ④ 繰越欠損金  恒久的施設を有しない外国法人が恒久的施設を有することとなる場合(過去のいずれかの事業年度で恒久的施設を有していた場合に限る。)には、過去に有していた恒久的施設帰属所得に係る繰越欠損金は、使用できないこととされている(法法10の3④)。

5 恒久的施設非帰属国内源泉所得に係る所得の金額  恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得に係る所得の金額は、恒久的施設帰属所得の計算(資本配賦に対応する利子損金不算入等の恒久的施設帰属所得計算に特有の規定を除く。)に準じて計算することとされる(法法142の9、法令191)。

6 欠損金
(1)恒久的施設を有する外国法人
 マイナスの所得である欠損金についても、恒久的施設帰属所得に係る欠損金と恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得に係る欠損金に区分され、それぞれ、恒久的施設帰属所得に係る所得及び恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得に係る所得から控除される(法法141一イ、法法142②、法令184①十七)。
(2)恒久的施設を有しない外国法人  恒久的施設を有しない外国法人の課税標準である恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得から控除されるべき欠損金額は、恒久的施設帰属所得以外の国内源泉所得に係る欠損金となる(法法141一ロ、法法142の9、法令191)。

7 税額の計算
(1)法人税額の計算の概要
 帰属主義への見直しに伴い、外国法人の課税標準は、恒久的施設を有する外国法人については二つの課税標準(恒久的施設帰属所得及びそれ以外の国内源泉所得)を有することとされ、恒久的施設を有しない外国法人については一つの課税標準(国内源泉所得)を有することとされた。これに伴い、各課税標準に対応する法人税の税率について上記ののとおり整備が行われた(法法143①②)。

(2)外国税額の控除
 ① 基本的な考え方
 外国法人の本店所在地国以外の第三国と我が国における二重課税を調整するため、外国法人の恒久的施設のための外国税額控除制度が設けられた(法法144の2)。
 一括限度額方式、繰越控除等の基本的な仕組みは、内国法人における外国税額控除と同様とされている。
 ② 控除限度額の計算の基礎となる国外源泉所得の範囲  恒久的施設に帰属する利子・配当といった各種所得について源泉地の判定をした場合に、国外で生じたものと認められる所得とされる(法法144の2④、法令199)。
 なお、租税条約において国外源泉所得につき異なる定めがある場合には、その租税条約の適用を受ける外国法人については、国外源泉所得は、その異なる定めがある限りにおいて、その租税条約に定めるところによることとされる(法法144の2⑤)。
 ③ 控除の対象となる外国法人税  恒久的施設帰属所得につき課される外国法人税の額とされる。ただし、通常行われる取引として認められない取引に係る外国法人税等は、控除の対象とならない(法法144の2①、法令195①~⑤)。

Ⅱ 内国法人(外国税額の控除について)

1 国外源泉所得
(1)国外源泉所得の定義
 国外事業所等帰属所得、国外資産の運用・保有所得、国外資産の譲渡所得、外国法人の発行する債券の利子及び外国法人から受ける配当等と積極的に規定する形式とし、新たに「国外源泉所得」を定義することとされた(法法69④、法令145の2~145の15)。
(2)各種国外源泉所得の内容  国外源泉所得は、具体的には、次に掲げる16種類に区分して定められている。
① 国外事業所等帰属所得
 内国法人が国外事業所等を通じて事業を行う場合において、その国外事業所等がその内国法人から独立して事業を行う事業者であるとしたならば、その国外事業所等が果たす機能、その国外事業所等において使用する資産、その国外事業所等とその内国法人の本店等との間の内部取引(注)その他の状況を勘案して、その国外事業所等に帰せられるべき所得(その国外事業所等の譲渡により生ずる所得を含み、⑭に該当するものを除く。以下「国外事業所等帰属所得」という。)とされる(法法69④一、法令145の2)。
(注)内国法人の国外事業所等と本店等との間で行われた資産の移転、役務の提供その他の事実で、独立の事業者の間で同様の事実があったとしたならば、これらの事業者の間で、資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引が行われたと認められるものをいう(法法69⑥)。
② 国外資産の運用・保有所得(法法69④二、法令145の3)
③ 国外資産の譲渡所得(法法69④三、法令145の4)
④ 国外において行う人的役務の提供事業の対価(法法69④四、法令145の5)
⑤ 国外にある不動産等の貸付けによる対価(法法69④五)
⑥ 利子等及びこれに相当するもののうち一定のもの(法法69④六)
⑦ 配当等及びこれに相当するもののうち一定のもの(法法69④七)
⑧ 国外において業務を行う者に対する貸付金利子(法法69④八)
⑨ 国外において業務を行う者から受ける使用料又は対価(法法69④九)
⑩ 国外において事業を行う者からその国外において行う事業の広告宣伝のために賞として支払を受ける金品その他の経済的な利益(法法69④十、法令145の8)
⑪ 国外にある営業所を通じて締結した外国保険業者の締結する保険契約に基づいて受ける年金(法法69④十一、法令145の9)
⑫ 国外にある営業所が受け入れた定期積金に係る給付補塡金等(法法69④十二)
⑬ 国外において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約(これに準ずる契約を含む。)に基づいて受ける利益の分配(法法69④十三)
⑭ 国内及び国外にわたって船舶又は航空機による運送の事業を行うことにより生ずる所得のうち、国外において行う業務につき生ずべき所得(法法69④十四、法令145の11)
⑮ 租税条約の規定により相手国等において租税を課することができることとされる所得のうち相手国等において外国法人税が課されるもの(法法69④十五、法令145の12)
⑯ ①から⑮までに掲げるもののほかその源泉が国外にある所得(法法69④十六)
(3)国外事業所等帰属所得への該当性の優先  上記②から⑬まで及び⑯に掲げる所得には上記①に掲げる所得は含まれないものとされる(法法69⑤)。

2 国外所得金額の計算
(1)国外所得金額
 国外源泉所得に係る所得についてのみ法人税を課するものとした場合に課税標準となるべき当該事業年度の所得の金額とされ、国外事業所等に帰せられるべき資本に対応した利子の損金不算入相当額等について加減算の調整を行う必要がある(法法69①、法令141の2①)。
(2)国外事業所等帰属所得の認識時期  内国法人全体としての所得の認識の有無に関わらず、国外事業所等を独立した事業者であるとした場合に所得認識されるべき時期に認識する必要がある。
(3)国外事業所等が内部取引により取得した資産  国外事業所等と本店等との間で国外事業所等における資産の購入その他資産の取得に相当する内部取引がある場合には、その内部取引の時にその内部取引に係る資産を取得したものとして、国外所得金額の計算を行うこととされる(法令141の2②)。
(4)内外共通費用の配分  当期の所得金額の計算上損金算入された販売費・一般管理費その他の費用のうち国外源泉所得を生ずべき業務とそれ以外の業務の双方に関連して生じたものの額(共通費用)がある場合は、一定の合理的と認められる基準によって、国外所得金額計算上の損金の額として配分される(法令141の2③)。
(5)国外事業所等に帰せられるべき資本の額に対応する負債利子の加算調整
 ① 概要
 内国法人の国外事業所等を通じて行う事業に係る負債の利子の額のうち、その国外事業所等に係る自己資本の額が当該国外事業所等に帰せられるべき資本の額に満たない場合のその満たない金額に対応する部分の金額を、国外所得金額の計算上、加算調整することとされている(法令141の2①一)。
 ② 加算調整額の計算の基礎となる負債利子額  上記による加算調整額の計算の基礎となる負債の利子の額は、通常の利子の額、内部取引における国外事業所等から本店等に対する支払利子及び共通費用の配分により国外源泉所得の金額の計算上の損金の額として配分された利子の額から、減算調整されるべき利子の額を控除した金額とされる(法令141の2⑤)。
 ③ 国外事業所等に係る自己資本の額  国外事業所等に係る資産の帳簿価額の平均残高から負債の帳簿価額の平均残高を控除した金額とされる(法令141の2①一)。この帳簿価額は、会計帳簿に記載した金額による(法令141の2⑫)。
 ④ 国外事業所等に帰せられるべき税制上の資本の額  次のいずれかの方法により計算した金額とされる。
 イ 資本配賦法 (イ)算式(法令141の2⑥一)

(ロ)内国法人の自己資本の額
 内国法人の自己資本の額は、当期の簿価純資産の平均残高とされ(法令141の2⑥一イ(1)(2))、銀行・証券会社等の金融機関の場合には銀行法等の法令による自己資本規制上の自己資本の額とされる(法令141の2⑥一ロ)。
(ハ)内国法人の資産の額・国外事業所等に帰せられるべき資産の額
 内国法人の資産の額及びその国外事業所等に帰せられるべき資産の額は、信用リスク、市場リスク、業務リスク及びその他のリスク(発生し得る危険)を勘案した金額(危険勘案資産額)とされる(法令141の2⑥一)。
(ニ)リスク算定に係る基準日の特例
 一定の要件を満たす場合には、事業年度終了の日前6ヶ月以内の一定の日の危険勘案資産額を用いることができる(法令141の2⑦⑧)。
(ホ)簡便法
 銀行等の金融機関及び保険会社以外の内国法人については、上記(ハ)の危険勘案資産額に代えて、当該事業年度終了時の資産の帳簿価額を用いて計算することができる(法令141の2⑨一)。
 ロ 同業法人比準法 (イ)算式(法令141の2⑥二)

(ロ)国外事業所等に帰せられる資産の額
 内国法人の事業年度終了の時の国外事業所等に帰せられる資産の額について発生し得る危険を勘案して計算した金額(危険勘案資産額)である(法令141の2⑥二イ・ロ)。
(ハ)比較対象法人の純資産の額
 比較対象法人の比較対象事業年度の純資産の額とされる(法令141の2⑥二イ(1))。
 なお、銀行・証券会社等については比較対象法人の比較対象事業年度終了時の我が国又は外国の銀行法等による自己資本規制上の自己資本の額とされる(法令141の2⑥二ロ(1))。
(ニ)比較対象法人の総資産の額
 比較対象法人の比較対象事業年度終了時の総資産の額について、発生し得る危険を勘案して計算した金額である(法令141の2⑥二イ(2)、ロ(2))。
(ホ)簡便法
 銀行等の金融機関及び保険会社以外の内国法人については、上記(ロ)の金額について当該事業年度のその国外事業所等に帰せられる資産の帳簿価額の平均残高とし、上記(ハ)及び(ニ)の金額について比較対象法人の比較対象事業年度終了時の貸借対照表に計上されている純資産の額及び総資産の額とすることができる(法令141⑨二)。
 ハ 計算方法の選定・変更  各国外事業所等ごとに、資本配賦法と同業法人比準法のいずれの方法を選択。ただし、いったん選択した方法は、特段の事情がない限り、継続適用する必要がある(法令141の2⑩)。
 ⑤ 加算調整額の計算 【算式】

 ⑥ 適用要件  この加算調整は、確定申告書等に計算明細を添付し、かつ、国外事業所等に帰せられるべき資本の額の計算の基礎となる事項を記載した書類の保存がある場合に限り、適用することとされる(法令141の2⑬)。
(6)銀行等の資本に係る負債の利子の減算調整  銀行・証券会社等の金融機関を営む内国法人が銀行法等に基づく規制上の自己資本とされる負債につき支払う利子のうち、前記(5)で計算したその国外事業所等に帰せられるべき資本の額に対応する部分の金額は、国外所得金額の計算上、減算調整する(法令141の2①二)。
【算式】

(7)保険会社の国外事業所等に係る投資収益の額の減算調整
 ① 概要
 保険会社である内国法人の国外事業所等が計上した投資資産の額が、その国外事業所等に帰せられるべき投資資産の額を上回る場合には、その上回る部分に相当する金額(投資資産超過額)に係る収益の額を、国外所得金額の計算上、減算調整することとされる(法令141の2①三)。
 ② 投資資産の範囲  保険料として収受した金銭その他の資産を保険契約に基づく将来の債務に備えるために運用する場合のその運用資産をいう(法令141の2①三、法規60の5)。
 ③ 国外事業所等に帰せられるべき投資資産の額 【算式(法令141の2⑯ )】

 ④ 減算調整額の計算  投資資産超過額に、内国法人の投資資産に係る運用利回りとして合理的な方法により計算した割合を乗じて計算した金額とされる(法令141の2⑰)。
 ⑤ 適用除外  投資資産超過額が国外事業所等に帰せられるべき投資資産の額の10%以下である場合等に該当し、その該当する旨を記載した書類及びその計算に関する書類を保存している場合には、この国外所得金額の減算調整は不要とされる(法令141の2⑱⑲)。
(8)国外事業所等の閉鎖時の時価評価等の不適用  外国税額控除における国外所得の算定においては、国外事業所等の閉鎖時の時価評価損益や繰り延べた損益の計上は行わないこととされる。
(9)国外所得金額の計算に関する書類の添付  外国税額控除の適用を受ける場合には、確定申告書等に国外所得金額の計算に関する明細を記載した書類を添付しなければならない(法令141の2 )。

3 控除限度額  内国法人の各事業年度の所得に対する法人税の額に、その事業年度の所得金額のうちにその事業年度の調整国外所得金額の占める割合を乗じて計算した金額とされる(法令142①)。この「調整国外所得金額」とは、内国法人の各事業年度において生じた国外所得金額から非課税国外所得の金額を控除した金額をいう(法令142③)。

4 外国税額控除の対象とならない外国法人税の額  外国税額控除の対象とならない外国法人税の額に、次のものが追加された。
(1)内部支払に対する源泉課税  国外事業所等から本店等への支払につき、国外事業所等の所在する国において、その支払に係る金額を課税標準として課される外国法人税の額は、外国税額控除の対象から除外される(法令142の2⑦四)。
(2)租税条約の限度税率超過分等  条約相手国で課される外国法人税の額のうち租税条約の規定(その外国法人税の軽減又は免除に関する規定に限る。)による限度税率超過部分(又は免除することとされる額)に相当する金額は、外国税額控除の対象から除外される(法令142の2⑧五)。

第三 租税特別措置法(法人税)関係

Ⅰ 外国法人の内部取引に係る課税の特例(移転価格税制)

 外国法人の本店等と恒久的施設の間の内部取引についても、外国法人等の設定した内部取引の価格が独立企業間価格と異なることにより、恒久的施設帰属所得に係る所得の金額が過少となる場合には、内部取引の価格を独立企業間価格に引き直して課税することとされた(措法66の4の3①)。

Ⅱ 国外支配株主等に係る負債の利子等の課税の特例(過少資本税制)
 法人税法において資本の配賦に基づいて恒久的施設の支払利子の損金算入を制限する措置が導入されることに伴い、外国法人の恒久的施設に対しては、過少資本税制を適用しないこととされた(旧措法66の5⑩)。

Ⅲ 関連者等に係る純支払利子等の課税の特例(過大支払利子税制)
 過大支払利子税制は、関連者への純支払利子等の額のうち調整所得金額の一定割合(50%)を超える部分の金額につき当期の損金の額に算入しないという制度である(措法66の5の2①)。今回の改正により、外国法人に係る本制度の適用について、所要の整備が行われた(措法66の5の2⑨一イロ⑩⑪、措令39の13の2 )。

Ⅳ 内国法人の国外所得金額の計算の特例(国外所得金額計算上の移転価格税制)
 外国税額控除の適用を受ける内国法人の本店等と国外事業所等との間の内部取引の対価の額とした額が独立企業間価格と異なることにより外国税額控除の控除限度額の計算における国外所得金額が過大となる場合には、当該国外所得金額の計算については、その内部取引は独立企業間価格によるものとされた(措法67の18①)。

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