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解説記事2014年07月07日 【税制改正解説】 平成26年度における税理士法の改正について(2014年7月7日号・№553)

税制改正解説
平成26年度における税理士法の改正について
 藤本 智

はじめに

 税理士制度について、申告納税制度の円滑かつ適正な運営に資するよう、税理士に対する信頼と納税者利便の向上を図る観点から、税理士の業務や資格取得のあり方などに関し、次の見直しが行われた。

Ⅰ 納税者利便の向上

1 租税教育への取組の推進
(1)改正の内容
 税理士会及び日本税理士会連合会の会則に記載しなければならない事項(絶対的記載事項)に、「租税に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定」が加えられた(税理士法49の2②十、49の14①一)。
 これまで税理士・税理士会は、納税者又は国民への社会貢献事業の一環として、租税教育を通じて申告納税制度の維持発展を図るため、租税教育に積極的に取り組んできたところであるが、その取組がより一層定着・発展するよう、納税者利便の向上を図る等の観点から、租税に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定を、その会則の絶対的記載事項に追加することとされた。
 なお、この租税に関する教育その他知識の普及及び啓発のための活動に関する規定は、重要な事項として、その会則の変更をするには、財務大臣の認可を受けることが必要とされている(税理士法49の2③、49の14②、税理士令7の2①、11の2①)。
(2)適用関係  上記の改正は、平成27年4月1日から適用される(改正法附則1三ト、改正税理士令附則)。

2 調査の事前通知の規定の整備
(1)改正前の制度の概要
 税務官公署の当該職員は、租税の課税標準等を記載した申告書を提出した納税義務者について、その申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時及び場所を通知してその帳簿書類を調査する場合において、その租税に関し税務代理権限証書を提出している税理士があるときは、併せてその税理士に対し調査の日時及び場所を通知しなければならないこととされている(旧税理士法34)。
 税務代理権限証書を税務官公署に提出している税理士については、納税義務者本人のために税務代理行為を行うことから、税理士法は、税理士の立場を尊重して、税務官公署の当該職員に、納税義務者に調査の日時及び場所を通知する場合には、併せて当該税理士に対して通知する義務を課している。
(注)「税務官公署」とは、国税については、国税庁、国税局、税務署を、地方税については、地方公共団体(都道府県及び市町村)の税務関係部局(税務課、税務事務所等)をいう。
(2)改正の内容  平成23年12月の国税通則法の改正により、調査の事前通知について、納税義務者に税務代理人がある場合には、納税義務者と税務代理人の双方に対して通知することとされたが(通法74の9①)、今回の改正において、納税者利便の向上を図る等の観点から、納税義務者の同意がある一定の場合に該当するときは、納税義務者への通知は、税務代理人に対してすれば足りることとされた(通法74の9⑤)。
 今回、この国税通則法の見直しに併せ、調査の通知について定める税理士法においても、同様の見直しが行われた。すなわち、税務官公署の当該職員は、租税の課税標準等を記載した申告書を提出した者について、その租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類を調査する場合において、その申告書を提出した者の同意がある一定の場合には、その申告書を提出した者への通知は、その租税に関する税務代理権限証書を提出している税理士に対してすれば足りることとされた(税理士法34②)。なお、この規定は、税理士法人についても適用される(税理士法48の16)。
 この申告書を提出した者の同意がある一定の場合とは、税務代理権限証書に、その申告書を提出した者への調査の通知は税理士に対してすれば足りる旨の記載がある場合とされている(税理士規則17の2)。
 また、今回の改正に伴い、次頁(参考)のとおり税務代理権限証書の様式が見直されている(税理士規則第八号様式)。


(3)適用関係  上記の改正は、平成26年7月1日以後にされる租税の課税標準等を記載した申告書を提出した者への通知について適用される(改正法附則136④)。
 なお、税務代理権限証書の新様式については、平成26年7月1日から適用されるが、改正前の様式による用紙は、当分の間、これを取り繕い使用することができることとされている(改正税理士規則附則①二、④)。

Ⅱ 税理士の業務の活性化・人材確保

1 報酬のある公職に就いた場合の税理士業務の停止規定等の見直し
(1)改正前の制度の概要
 税理士の登録申請があった場合に、その申請者が、報酬のある公職(国会又は地方公共団体の議会の議員の職及び非常勤の職を除く。)に就いている者に該当するときは、その職務に専念しなければならず税理士業務を行わせることは適当でないことから、日本税理士会連合会は、その登録を拒否しなければならないこととされている(旧税理士法24二)。
 また、税理士が、報酬のある公職(国会又は地方公共団体の議会の議員の職及び非常勤の職を除く。)に就いた場合には、その職にある間は税理士業務を停止しなければならないこととされている(税理士法43)。
(2)改正の内容  上記(1)のとおり、報酬のある公職に就いている者は、税理士業務を行うことにつき制限(登録の拒否、税理士業務の停止)がされているが、国会又は地方公共団体の議会の議員の職及び非常勤の職については、例外として除かれている。
 今回、税理士に求められる社会貢献をよりよく遂行できるよう、その例外事由に、「国税又は地方税の賦課又は徴収に関する事務に従事する職以外の公職であって、国家公務員法その他の法令(条例を含む。)又はその公職の服務に関する規範により税理士業務との兼業が制限されていないもの」が追加された(税理士法24二、税理士規則12の2)。
 「国税又は地方税の賦課又は徴収に関する事務に従事する職」については、普通地方公共団体の長(地方自治法149三)など、賦課・徴収権者等が納税義務者の税務代理人になることは利益相反の関係になること等から税理士業務との兼業を認めることは適当ではないとされている。また、兼業の制限のある公職としては、国家公務員(国家公務員法103①)、地方公務員(地方公務員法38①)、国務大臣等(国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範(平成13年1月6日 閣議決定))などが該当する。
 したがって、今回の改正により、例えば、兼業禁止規定がない地方公共団体の監査委員のような公職が、税理士登録の拒否事由及び税理士業務の停止事由とされる「報酬のある公職」から除かれることとなる。
(3)適用関係  上記の改正は、平成27年4月1日から適用される(改正法附則1三ト、改正税理士規則附則1)。

2 非税理士に対する名義貸しの禁止規定等の創設
(1)改正の内容
 上記1による税理士の職域の拡大に併せて、今回、非税理士に対する名義貸しの禁止規定及びその違反に対する罰則規定が設けられた(税理士法37の2、48の16、59①二、63)。
 具体的には、税理士は、税理士法第52条(税理士業務の制限)又は第53条第1項から第3項まで(名称の使用制限)の規定に違反する者に自己の名義を利用させてはならないこととされ、これに違反した者は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処することとされた(税理士法37の2、59①二)。なお、これらの規定は、税理士法人についても適用される(税理士法48の16、59①二かっこ書)。
 また、「両罰規定」の対象となる行為に、名義貸しの違反行為が追加された(税理士法63)。すなわち、事業主である法人又は個人の業務に関し、その法人の代表者又は法人若しくは個人の使用人等が、税理士法第37条の2(第48条の16において準用する場合を含む。)(非税理士に対する名義貸しの禁止)の規定に違反する行為をした場合に、その行為者を罰するほか、事業主である法人又は個人に対しても100万円以下の罰金刑を科することとされた(税理士法63)。
(2)適用関係  上記の改正は、平成27年4月1日以後にした違反行為について適用される(改正法附則1三ト、164)。

3 税理士試験の受験資格要件の緩和
(1)改正前の制度の概要
 税理士試験は、①職歴による受験資格者②学歴による受験資格者③司法試験合格者④公認会計士試験の短答式試験合格者⑤国税審議会の認定した者のいずれかに該当していれば、受験することができる(税理士法5①)。
 このうち、①職歴による受験資格者とは、次に掲げる事務又は業務に従事した期間が3年以上になる者をいう(旧税理士法5①一)。
イ 税務官公署等における事務
ロ 行政機関における特定の行政事務
ハ 銀行等金融業務を営む法人の貸付事務
ニ 法人等の会計事務
ホ 税理士業務等の補助事務
ヘ 弁理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士又は不動産鑑定士の業務
 また、例えば、税務官公署等における事務(上記イ)と税理士業務等の補助事務(上記ホ)に従事したというように上記の2以上の事務又は業務に従事した場合には、従事した期間を通算した場合に、その通算した期間が3年以上となるときは、受験資格が与えられる(旧税理士法5②)。
(2)改正の内容  今回の改正においては、幅広い層から人材を確保する等の観点から、上記(1)①の職歴による受験資格者について、その事務又は業務に従事した期間が2年以上(改正前:3年以上)になる者とすることとされた(税理士法5①一)。また、2以上の事務又は業務に従事した場合のその通算した期間についても2年以上(改正前:3年以上)となるときは、受験資格が与えられることとされた(税理士法5②)。
(3)適用関係  上記の改正は、平成27年4月1日から適用される(改正法附則1三ト)。

4 補助税理士制度の見直し
(1)改正前の制度の概要
 税理士法第2条第3項(税理士の業務)の規定により税理士又は税理士法人の補助者として常時税理士業務に従事する者は「補助税理士」として、その従事する税理士又は税理士法人が委嘱を受けた事案について、自らの名において税理士業務を行うことができることとされている(税理士法2③、旧税理士規則8二ロ、旧税理士法基本通達2-8)。
(2)改正の内容  今回の改正においては、税理士業務の活性化を図る等の観点から、補助税理士は、その使用者である税理士又は税理士法人の承諾を条件に、他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務に従事することができることとされた(税理士規則1の2②)。また、この見直しに伴い、その名称(呼称)を「所属税理士」(改正前:「補助税理士」)に改めるとともに、登録事項、税務書類等への付記等について所要の見直しが行われた。
 具体的には、次のとおり。
 ① 所属税理士の業務  登録事項について、法第2条第3項の規定により税理士又は税理士法人の補助者として「当該税理士の税理士事務所に勤務し、又は当該税理士法人に所属し、同項に規定する業務に従事する者(所属税理士)」(改正前:「常時同項に規定する業務に従事する者(補助税理士)」)に改められた(税理士規則8二ロ)。そして、法第2条第3項に定める「他の税理士又は税理士法人の補助者」として従事する税理士業務については、この所属税理士が行うものとされ、法律関係の明確化が図られた(税理士規則1の2①)。
 所属税理士の税理士業務への従事それ自体については、基本的に従前と変わるものではないが、所属税理士が他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務に従事しようとする場合には、顧客等に対する責任の所在の明確化、顧客の情報管理(守秘義務)の徹底を図る等の観点から、その使用者である税理士又は税理士法人の承諾を得ること、自らの責任において業務を行うこと等を委嘱者に対し明示することなど、次のような手続を踏むこととされた。
イ まず、所属税理士が他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務に従事しようとする場合には、その都度、あらかじめ、その使用者である税理士又は税理士法人の書面による承諾を得なければならないこととされた(税理士規則1の2②)。
  この承諾を得た所属税理士は、次に掲げる事項を記載した書面にその承諾を得たことを証する書面の写しを添付し、これを委嘱者(納税者)に対して交付するとともに、当該事項につき説明しなければならないこととされている(税理士規則1の2③)。
(イ)所属税理士である旨
(ロ)その勤務する税理士事務所の名称及び所在地又はその所属する税理士法人の名称及び勤務する事務所(当該事務所が従たる事務所である場合には、主たる事務所及び当該従たる事務所)の所在地
(ハ)その使用者である税理士又は税理士法人の承諾を得ている旨
(ニ)自らの責任において委嘱を受けて税理士業務に従事する旨
  なお、この書面の交付に当たっては、所属税理士は、当該書面に署名押印しなければならない(税理士規則1の2④)。
ロ 次に、所属税理士は、委嘱者に対して上記の説明を行った場合には、その旨を記載した書面にその委嘱者の署名押印を得るとともに、その写しをその使用者である税理士又は税理士法人に提出しなければならないこととされた(税理士規則1の2⑤⑥)。
ハ なお、所属税理士は、上記の承諾を得て自ら委嘱を受けた税理士業務が終了したとき又は承諾を得たにもかかわらず委嘱を受けるに至らなかったときは、速やかに、その使用者である税理士又は税理士法人にその旨を報告しなければならないこととされている(税理士規則1の2⑦)。
 ② 税務書類等への付記  所属税理士が他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務に従事する場合には、税務書類等に税理士である旨、その勤務する税理士事務所の名称又はその所属する税理士法人の名称に加え、「直接受任」(自らの責任において委嘱を受けて税理士業務に従事することをいう。)である旨を付記することとされた(税理士規則16③)。
 ③ 登録事項その他  所属税理士について、事務所の設置義務がないことは従前の補助税理士と同じである(税理士規則18)。その他、上記①でも述べたとおり、登録事項について所要の見直しが行われている(税理士規則8二ロ等)。
(3)適用関係  上記の改正は、平成27年4月1日から適用される(改正税理士規則附則①)。

Ⅲ 税理士制度の信頼性の向上

1 公認会計士に係る資格付与の見直し
(1)改正前の制度の概要
 税理士となる資格を有する者は、①税理士試験に合格した者、②税理士試験を免除された者、③弁護士(弁護士となる資格を有する者を含む。)、④公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。)とされている(税理士法3①)。
 なお、上記①及び②の者については、租税に関する事務又は一定水準以上の会計に関する事務に従事した期間が通算して2年以上あることが必要とされている。
(2)改正の内容  今回の改正において、税理士制度の信頼性向上に資するとともに、監査の信頼性確保にも配慮する観点から、税理士の資格について、公認会計士は、公認会計士法第16条第1項に規定する実務補習団体等が実施する研修のうち、一定の税法に関する研修を修了した公認会計士とすることとされた(税理士法3③)。
 この一定の税法に関する研修は、税理士法第6条第1号に規定する税法に属する科目について、同法第7条第1項に規定する成績を得た者が有する学識と同程度のものを習得することができるものとして国税審議会が指定する研修とされている(税理士規則1の3①)。なお、国税審議会は、その研修を指定したときは、その旨を官報をもって公告しなければならないこととされている(税理士規則1の3②)。
(3)適用関係  上記の改正は、平成29年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者について適用され、同日前に公認会計士試験に合格した者については、なお従前の例によることとされている(改正法附則136①)。

2 税理士に係る懲戒処分の適正化
(1)改正前の制度の概要
 税理士法は、懲戒処分の種類として、ⅰ)税理士業務の禁止、ⅱ)1年以内の税理士業務の停止、ⅲ)戒告を規定している(旧税理士法44)。
 懲戒処分の事由は、次のとおり。
 ① 脱税相談等をした場合の懲戒  財務大臣は、税理士が、故意に、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は税理士法第36条(脱税相談等の禁止)の規定に違反する行為をしたときは、1年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止の処分をすることができることとされている(旧税理士法45①)。
 また、税理士が、相当の注意を怠り、真正の事実に反して税務代理若しくは税務書類の作成をしたとき、又は税理士法第36条の規定に違反する行為をしたときは、戒告又は1年以内の税理士業務の停止の処分をすることができることとされている(旧税理士法45②)。
 ② 一般の懲戒  財務大臣は、上記に該当する場合を除くほか、税理士が、税理士法第33条の2第1項若しくは第2項(計算事項、審査事項等を記載した書面の添付)の規定により添付する書面に虚偽の記載をしたとき、又は税理士法若しくは国税若しくは地方税に関する法令の規定に違反したときは、税理士業務の禁止、1年以内の税理士業務の停止又は戒告のいずれかの懲戒処分をすることができることとされている(旧税理士法46)。
 ③ 税理士法人の違法行為等についての処分  財務大臣は、税理士法人が、税理士法等に違反し、又は運営が著しく不当と認められるときは、戒告し、若しくは1年以内の期間を定めて業務の全部又は一部の停止を命じ、又は解散を命じることができることとされている(旧税理士法48の20①)。
(2)改正の内容  上記(1)①の懲戒処分のうち、税理士業務の停止に係る期間が2年以内(改正前:1年以内)とされた(税理士法44二、45、46、48の20①)。
 これは、近年、税理士の懲戒処分件数が増加傾向にあることを踏まえ、税理士制度の信頼性を向上させる観点から見直すこととされたものである。なお、他士業の多く(弁護士法57①、公認会計士法29、弁理士法32、行政書士法14、司法書士法47等)においても、その業務停止に係る処分の期間が2年以内とされている。
(3)適用関係  上記の改正は、平成27年4月1日以後にした行為について適用される(改正法附則136⑤~⑦)。

3 欠格条項の追加
(1)現行制度の概要
 税理士法第3条の規定により税理士となる資格を有する者であっても、同法第4条に規定する欠格条項のいずれかに該当する者は、税理士となる資格を有しない。具体的には、次に掲げる者がこれに該当する(旧税理士法4)。
① 未成年者
② 成年被後見人、被保佐人
③ 破産者で復権を得ない者
④ 国税若しくは地方税に関する法令又はこの法律の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しないもの
⑤ 国税若しくは地方税に関する法令若しくはこの法律の規定により罰金の刑に処せられた者又は国税犯則取締法(地方税法において準用する場合を含む。)若しくは関税法(とん税法及び特別とん税法において準用する場合を含む。)の規定により通告処分(科料に相当する金額に係る通告処分を除く。)を受けた者で、それぞれその刑の執行を終わり、若しくは執行を受けることがなくなった日又はその通告の旨を履行した日から3年を経過しないもの
⑥ 国税又は地方税に関する法令及びこの法律以外の法令の規定により禁錮以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過しないもの
⑦ 懲戒処分により税理士業務を行うことを禁止された者で、当該処分を受けた日から3年を経過しないもの
⑧ 国家公務員法、国会職員法又は地方公務員法の規定により懲戒免職の処分を受け、当該処分を受けた日から3年を経過しない者
⑨ 特定の職業専門家の資格を失う懲戒処分を受けた日から3年を経過しない者
⑩ 税理士の登録を拒否された者のうち税理士法第22条第4項の規定に該当する者又は同法第25条第1項第1号の規定により税理士の登録を取り消された者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しないもの
(2)改正の内容  今回の改正において、この欠格条項に、「国家公務員法若しくは国会職員法の規定による懲戒免職を受けるべき行為をしたと認められたことにより退職手当支給制限等処分を受けた者又は地方公務員法の規定による懲戒免職の処分を受けるべき行為をしたと認められたことにより退職手当支給制限等処分に相当する処分を受けた者で、これらの処分を受けた日から3年を経過しないもの」を追加することとされた(税理士法4九)。
 上記の「退職手当支給制限等処分」とは、国家公務員退職手当法第14条第1項第3号に該当することにより同項の規定による一般の退職手当等(同法第5条の2第2項に規定する一般の退職手当等をいう。)の全部若しくは一部を支給しないこととする処分又は同法第15条第1項第3号に該当することにより同項の規定による一般の退職手当等の額の全部若しくは一部の返納を命ずる処分をいう。つまり、退職後において、公務員としての在職期間中における非行行為が発覚した場合に行われる、退職手当の支給を制限する処分又は返納を命ずる処分である。
 上記(1)⑧のとおり、改正前でも国家公務員法、国会職員法又は地方公務員法の規定によりその在任期間中に懲戒免職の処分を受けた場合については3年間の欠格期間が設けられていた。しかし、非行時が公務員であり、その事実が退職後に発覚した場合には、懲戒処分ができないことから、これまでは、同様の非行行為を行っていたにもかかわらず処分時の身分が公務員であるか否かにより著しく均衡を欠く状態となっていた。
 今回の改正においては、このような不均衡を是正するため、後記の登録拒否事由の見直しと合わせ、退職手当支給制限等処分又は退職手当支給制限等処分に相当する処分を受けた者についての欠格条項を新設することとされたものである。
(3)適用関係  上記の改正は、平成26年4月1日以後に退職手当支給制限等処分又は退職手当支給制限等処分に相当する処分を受けた者について適用される(改正法附則136②)。

4 一定の欠格事由に該当していた者に係る税理士への登録拒否事由の見直し
(1)改正前の制度の概要
 税理士となる資格を有する者が税理士となるには、日本税理士会連合会への登録が必要とされているが(税理士法18、19)、次のいずれかに該当する者は、その税理士の登録を受けることができないこととされている(旧税理士法24)。
① 懲戒処分により、弁護士、外国法事務弁護士、公認会計士、弁理士、司法書士、行政書士若しくは社会保険労務士の業務を停止された者又は不動産の鑑定評価に関する法律第5条に規定する鑑定評価等業務を行うことを禁止された不動産鑑定士で、現にその処分を受けているもの 
② 報酬のある公職(国会又は地方公共団体の議会の議員の職及び非常勤の職を除く。)についている者 
③ 不正に国税又は地方税の賦課又は徴収を免れ、若しくは免れようとし、又は免れさせ、若しくは免れさせようとした者で、その行為があった日から2年を経過しないもの 
④ 不正に国税又は地方税の還付を受け、若しくは受けようとし、又は受けさせ、若しくは受けさせようとした者で、その行為があった日から2年を経過しないもの 
⑤ 国税若しくは地方税又は会計に関する事務について刑罰法令にふれる行為をした者で、その行為があった日から2年を経過しないもの 
⑥ 心身の故障により税理士業務を行わせることが適正を欠くおそれがある者 
⑦ 税理士の信用又は品位を害するおそれがあり、その他税理士の職責に照らし税理士としての適格性を欠く者
(2)改正の内容  今回の改正において、税理士法第4条第4号から第11号まで(上記3(1)④~⑩及び今回の新設項目3(2))のいずれかに該当していた者が、その欠格期間を経過して登録の申請をしたとしても、当該申請者が「税理士業務を行わせることがその適正を欠くおそれがある」場合には、その登録が拒否されることとされた(税理士法24六ロ)。
(3)適用関係  上記の改正は、平成26年4月1日以後にされる登録申請について適用される(改正法附則136③)。

Ⅳ その他

1 事務所設置の適正化
(1)改正の内容
 今回、税理士会及び日本税理士会連合会は、登録申請書(変更登録申請書を含む。)の提出があったとき又は変更の登録が必要であるにもかかわらずその申請がないと認めるときは、その申請者又はその変更の登録を申請すべきと認める者に対して、事務所の名称及び所在地その他の登録事項に関し必要な指導又は助言を行うことができることとされた(税理士規則11の2)。
 税理士法は、「税理士は、税理士業務を行うための事務所を設けなければならない」(税理士法40①)として事務所の設置等の義務を定めているが、これまで日本税理士会連合会・税理士会においては、会員たる税理士から事務所を住所地からかなりの遠隔地に移転する登録変更の申請があった場合や、事務所の所在地等につき変更登録が必要と認められるにもかかわらずその申請がない場合等において、変更登録等について指導・確認等のできる規定がなかったこと等から、その申請等の際に必ずしも十分に適切な指導等を行うことができなかった。
 このため、今回、日本税理士会連合会が行っている登録事務の適正な履行はもとより、会員たる税理士の指導、連絡及び監督を行う日本税理士会連合会・税理士会の事務の円滑な運営を図る観点から、明文化することとされたものである。
(2)適用関係  上記の改正は、平成27年4月1日から適用される(改正税理士規則附則①)。

2 税理士証票の定期的交換
(1)改正前の制度の概要
 税理士証票は、税理士名簿に登録された者に交付され(税理士法22③)、税理士又は税理士法人が、税務代理を行う場合においてその税務代理に係る税理士が税務官公署の職員と面接するときは、これを提示しなければならないこととされている(税理士法32)。
 税理士証票については、このように税理士の登録を受けたことを公に証明するものであるため、税理士登録の抹消又は税理士業務の停止の場合の返還義務(税理士法28①)や、税理士証票を亡失又は損壊した場合の再交付(税理士規則13③)等について定めている。
 なお、日本税理士会連合会は、必要があると認めたときは税理士に交付をしている税理士証票を他の税理士証票に差し替えることができることとされている(旧税理士規則13④)。
(2)改正の内容  今回、税理士は、その所属税理士会及び日本税理士会連合会の会則で定めるところにより、定期的に税理士証票の交換をしなければならないこととされた(税理士規則13④)。
 なお、具体的な交換手続、交換期間等については、今後、各税理士会及び日本税理士会連合会の会則によって規定される。
(3)適用関係  上記の改正は、平成27年4月1日から適用される(改正税理士規則附則①)。

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