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解説記事2014年08月25日 【ニュース特集】 中小企業のための改正会社法Q&A(2014年8月25日号・№559)

施行まで約半年に迫る!
中小企業のための改正会社法Q&A

 先の通常国会で成立し、6月27日に公布された「会社法の一部を改正する法律」では、社外取締役等の要件厳格化や監査等委員会設置会社制度の創設など、大企業に関連する改正項目が多い印象だが、中小企業にとっても関連する項目が少なからず存在する。改正会社法は平成27年4月あるいは5月の施行が予定されている。施行までに残された時間は約半年。今回の特集では、中小企業が知っておくべき主な内容についてQ&A形式で紹介する。

中小企業にも影響する多重代表訴訟制度
Q1
 改正会社法では、多重代表訴訟制度が創設されるとのことですが、中小企業には関係ないと考えてよいでしょうか。
A
中小企業に関係のない話ではありません。
 多重代表訴訟制度とは、親会社の株主がその子会社の取締役等の責任を追及する訴えを提起することができるというものです(参照)。企業集団における親会社株主の保護の観点から創設される運びとなっています。

 具体的には、株式会社の最終完全親会社の総株主の議決権の1%以上の議決権または発行済株式の1%以上の株式を有する株主(最終完全親会社が公開会社である場合は6か月前から引き続き1%以上の株式を有していること)は、株式会社に対し、発起人、設立時取締役、設立時監査役、取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人、清算人の責任を追及する訴えの提起を請求することができることとされています。
 しかし、企業側の濫訴になるのではないかとの懸念から対象となる株主がかなり限定されることになりました。したがって、機関投資家などの一部の株主に限定されることになりそうです。また、対象となる子会社も最終完全親会社が有する子会社株式の帳簿価額が最終完全親会社の総資産額の5分の1を超える場合とされていますので、基本的には金融機関などに代表される持ち株会社などが該当することになりそうです。
 ただし、多重代表訴訟制度は何も大企業に限った話ではありません。対象は公開会社に限られていませんので、要件さえ満たせば中小企業でも対象になるわけです。総株主の議決権の1%以上を保有する株主は、大企業よりも中小企業の方が多いと思われます。親族間で争いがあるケースなどでは特に注意が必要といえます。該当するようなケースであれば、もしもの場合に備えて子会社株式の帳簿価額を親会社の総資産額の5分の1以下にすることなども対策として考えておくべきかもしれません。

会計限定の監査役、定款の定めを登記事項に
Q2
 改正会社法では、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社については、当該定款の定めを登記事項とすることとなっています。中小企業に影響はあるのでしょうか。
A
多くの中小企業に影響があります。
 現行、中小企業(非公開会社)については、定款の定めにより、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することが認められています。この監査役の監査の範囲を会計に限定している株式会社については、「監査役設置会社」の範囲からは除外されています。一方の監査役設置会社については、登記上、監査役の氏名などが登記事項とされており、この場合、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含むものとされています(会社法911条3項17号)。登記の観点からみれば、定款の定めの有無で区別はされていないわけです。
 しかし、両者については、株主代表訴訟などで会社法上の取扱いが異なることがあるため、今回の改正では、監査役の監査の範囲を会計に限定する旨の定款の定めがある場合には、その旨を登記上も明確にすることとしたものです。ただ、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社は中小企業がほとんどです。監査役を登記にすることになれば、登録免許税も申請の件数1件につき3万円(資本金の額が1億円以下の会社については1万円)が課せられることになります。
 なお、中小企業に対する影響を少なくするため、改正会社法では経過措置が設けられています。改正会社法が施行後、最初に監査役が就任、または退任するまでの間は登記をせず、現行どおりの取扱いが認められています(改正会社法附則22条)。

詐害的会社分割、承継会社に債務の履行を請求可能に
Q3
 詐害的な会社分割については、新設分割会社の債権者は民法の規定により詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができるとの最高裁判決がありました。改正会社法では、詐害的会社分割に対してどのような見直しがあったのですか。
A
詐害的会社分割によって害される債権者の保護規定が新設されています。
 現行、債務超過の会社が新設分割を行うことにより、一部の優良資産や事業、債務を承継させた後、分割会社を清算する会社の再建手法が採られることがあります。なかには、残存債権者を害するような詐害的な会社分割とみられるものもあります。この場合、残存債権者については、分割会社に債務の履行を請求することが可能となっていますが、分割会社に優良資産などはなくなっているのが実態です。にもかかわらず、債務の履行を請求することが可能なため、債権者保護の対象外となっており、これまでその弊害が指摘されていました。
 平成24年10月12日の最高裁判決では、「新設分割設立株式会社にその債権に係る債務が承継されず、新設分割について異議を述べることもできない新設分割株式会社の債権者は、民法424条の規定により、詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができると解される」との判断を示しています。
 今回の会社法改正では、残存債権者が詐害的な会社分割に係る行為を取り消すことなく、新設会社等(承継会社)に対しても、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求することができる旨の規定を新設しています(参照)。ただし、詐害的な会社分割をしたことを知った時から2年以内に請求等をしない場合や会社分割の効力が生じた時から20年経過したときはその権利が消滅することとされています。

 なお、改正会社法の施行日前に締結された合併契約等については対象外となっています(改正会社法附則20条)。

各別の催告を受けなかった分割会社の債権者に保護規定
Q4
 会社分割に異議を述べることができる分割会社の債権者である場合において、各別の催告(会社法789条2項等)を受けなければ、債務の履行の請求はできないことになるのでしょうか。
A
催告を受けなくても分割会社等に対して債務の履行の請求をすることができます。
 吸収分割契約または新設分割計画において会社分割後に分割会社に対して債務の履行を請求することができないものとされているときであっても、分割会社に対して、分割会社が会社分割の効力が生じた日に有していた財産の価額を限度として、当該債務の履行を請求することができるようになります。また、承継会社に対しては、承継した財産の価額を限度として、当該債務の履行の請求をすることが可能になります。

人的分割における準備金は計上せず
Q5
 改正会社法では、人的分割(新設会社等が発行する株式等を分割会社の株主に割り当てる)において準備金を計上しなくてもよいことになるそうですが、どうしてですか。
A
分配可能額に関係なく剰余金の配当が行われるためです。
 分割会社が会社分割の対価として交付を受けた承継会社の株式または持分のみを配当財産として剰余金の配当をする人的分割に際しては、会社法445条4項の規定による準備金の計上は要しないことになります。
 現行、会社法445条4項が剰余金の配当に際して一定の金額の準備金を計上することを義務付けている趣旨としては、一定の金額の利益を留保させることにより損失に備えることにあるとされています。しかし、人的分割は分配可能額の有無にかかわらず剰余金の配当が行われるため、準備金の計上を義務付ける必要はなく、また、財産規制等の規定の適用を除外しながら準備金の計上のみを義務付ける理由もないからです。

公開会社になる場合には4倍規制の対象に
Q6
 これまで非公開会社が公開会社になる場合については、いわゆる4倍規制(発行可能株式総数の4分の1を下回ることができない)が適用されていませんでしたが、改正会社法の施行後は規制対象になるのですか。
A
規制対象になります。
 現行、公開会社の設立時発行株式の総数は、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができないものとされています(会社法37条3項)。4倍規制といわれるものですが、これは既存株主の持株比率の低下の限界を定めることにあるとされています。
 しかし、公開会社でない株式会社が定款の変更により公開会社となる場合については、4倍規制を定める規定はないため、今回の改正会社法において規制対象とするものです。

募集株式が譲渡制限株式の総数引受契約は総会の特別決議が必要
Q7
 募集株式が譲渡制限株式である場合、当該募集株式を引き受けようとする者が総数引受契約を締結する際、株主総会の特別決議が必要になるのでしょうか。
A
定款に別段の定めがある場合を除き株主総会の特別決議(取締役会設置会社の場合は取締役会の決議)によって、当該契約の承認を受けることが必要になります。
 募集株式が譲渡制限株式の場合、募集株式の割当てを受ける者およびその者に割り当てる募集株式の数の決定では、株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の決議を要することとされていることを踏まえてのものです。
 なお、改正会社法の施行日前に募集事項の決定があった場合の募集株式については適用対象外となっています(改正会社法附則12条)。

中小企業でも監査等委員会設置会社の採用が可能
Q8
 改正会社法では、新たな会社の機関設計である「監査等委員会設置会社制度」が創設されるとのことですが、中小企業も適用することができますか。将来的に上場することを考えています。
A
中小企業についても適用することは可能です。
 ただ、監査等委員会設置会社は、取締役3人以上で構成され、そのうち過半数は社外取締役から構成されるほか、会計監査人を置くこととされているなど、中小企業が適用するにはハードルが高いものとなっています。したがって、ご質問者のように近い将来に上場をするような企業であればよいですが、それ以外の企業はコストも含め導入するメリットは少ないといえそうです。

親会社による子会社株式の譲渡、特別決議が必要に
Q9
 改正会社法では、親会社が子会社株式を譲渡する場合、株主総会の特別決議が必要になるとの見直しがされていますが、例外規定はないのですか。
A
例外規定はあります。
 現行、親会社が一定の子会社株式等を譲渡しようとする場合、親会社の株主総会の承認を受ける旨の明文規定はありませんが、親会社が子会社株式等を譲渡することにより子会社の事業に対する支配を失う場合は、事業譲渡と実質的に同じ効果を及ぼすことになります。
 このため、改正会社法では親会社が子会社株式等を譲渡する場合には、基本的に当該譲渡の効力発生日の前日までに株主総会の特別決議による承認を受けなければならないこととされました。
 ただし、子会社株式の帳簿価額が小さいときなどは適用対象外としています。具体的には、①当該譲渡により譲り渡す株式の帳簿価額が当該株式会社の総資産額の5分の1(これを下回る場合を定款で定めた場合にはその割合)を超えないとき、②当該株式会社が効力発生日に、当該子会社の議決権の総数の過半数の議決権を有するときとされています。例外規定を設けた趣旨としては、迅速な意思決定ができずに企業集団による経営メリットを阻害することになるからです。

法令違反の場合は組織再編の差止請求が可能に
Q10
 現行、略式組織再編については株主による差止請求が認められています。改正会社法では、それ以外の組織再編についても株主の差止請求が認められることになったのですか。
A
通常の組織再編についても法令違反の場合は株主による差止請求が認められます。
 現行、略式組織再編(株式会社の総株主の議決権の10分の9以上を有している会社と当該株式会社の間の組織再編)については、当該略式組織再編が法令または定款に違反する場合などで、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は当該略式組織再編の差止請求をすることができることとされています。しかし、それ以外の組織再編に係る株主による差止請求の明文規定はありません。
 今回の改正会社法では、略式組織再編に加えてこれ以外の組織再編についても、法令または定款に違反し、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主による差止請求をすることができることとしています。ただし、簡易組織再編対価の額または承継させる資産の額が会社の資産額の5分の1以下の組織再編については、株主に及ぼす影響が少ないため、これまでと同様、差止請求の対象外となっています。

少数株主の追い出しが容易に
Q11
 新しいキャッシュ・アウトの手法である「特別支配株主の株式等売渡請求」が創設されるとのことですが、中小企業においても適用することが可能ですか。また、これまでの他のキャッシュ・アウトとの違いは何ですか。
A
公開会社に限定されていないため、中小企業においても適用が可能です。
 「特別支配株主の株式等売渡請求」とは、対象会社の総株主の議決権の10分の9以上を有する株主(特別支配株主)が、株主全員に対して所有する株式の全部を特別支配株主に売り渡すことを請求することができる制度のことです。
 現行、キャッシュ・アウト(現金を対価とする少数株主の締出し)を行うための手法としては、金銭を対価とする組織再編(株式交換等)、全部取得条項付種類株式を用いたものがありますが、前者の金銭を対価とする株式交換等については、金銭を対価として子会社株式を取得するため、非適格株式交換となり、子会社の資産について時価評価を行う必要があります。この点がデメリットとされています。
 後者の全部取得条項付種類株式については、株主に対する課税のみで課税関係が終了するため、実務では全部取得条項付種類株式によるキャッシュ・アウトが利用されているようです。ただし、株主総会の特別決議を要するため、キャッシュ・アウトを完了するまでに長期間を要し、時間的・手続的コストが大きいことがデメリットとされています。
 特別支配株主の株式等売渡請求については、株主総会の特別決議を必要としないなど、使い勝手のよい制度となります。簡単にいえば、会社側にとって出て行ってほしい少数株主を排除することが容易になります。
 このため、少数株主を保護するため、株式売渡等請求が法令に違反する場合または売渡株主に交付される対価が著しく不当である場合において、売渡株主(少数株主)が不利益を受けるおそれがあるときは差止請求を行うことができるとされています。

改正会社法に係る税制改正は?
 改正会社法に係る税制改正に関しては、施行日までには措置される予定となっています。たとえば、改正会社法では、株式併合により株式の数に1株に満たない端数が生じる場合には、反対株主は当該株式会社に対して、自己株式のうち1株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求する制度を設けることとされています。これを受け、税制改正では、会社法改正で創設される株式併合に反対する株主から端株を買い取る場合についてもみなし配当が生じない方向で見直されます。
 また、「監査等委員会設置会社」関連では、役員に対する利益連動給与の決定の手続に係る要件について、取締役会の決議において監査委員の過半数がその決議に賛成していることとするほか、使用人兼務役員とされない役員の範囲に監査等委員会の委員である取締役が追加されることになります。

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