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解説記事2014年11月03日 【ニュース特集】 民法(債権関係)の見直しに関する重要ポイント(2014年11月3日号・№569)

これだけは知っておきたい!
民法(債権関係)の見直しに関する重要ポイント

 民法の債権関係の規定がおよそ120年ぶりに改正される。法務省の法制審議会の民法(債権関係)部会は8月26日、「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」を決定した。残された課題である定型約款の取扱いも含め、来年1月に要綱案を決定。政府は、2月に開催予定の法制審議会において要綱を法務大臣に答申する。その後、通常国会に民法改正案を提出する方針だ。要綱仮案での見直し項目は約200にのぼっているが、このうち、取り急ぎ知っておくべき民法(債権関係)の重要項目について紹介する。例えば、税理士報酬の消滅時効は現行の10年から5年に短縮されるなど、税理士にとっても見逃せない改正項目があるので要チェックだ。


税理士報酬の消滅時効は5年に短縮
 今回の民法(債権関係)の見直しで大きな改正の1つといえるのが消滅時効の取扱いだ。このうち、職業別の複雑な短期消滅時効(民法170条~174条)については、すべて削除されることになっているので留意したい。
 例えば、現行、弁護士報酬は時効期間「2年」との規定があるが、同じ士業である税理士や司法書士等の報酬については規定がないため、原則の「10年」とされているなど、アンバランスとの指摘がある。また、一般の国民には自己の債権の時効期間が何年であるのかは判断が困難であり、適用の有無を巡る裁判も多い。もともと職業別の短期消滅時効はフランス民法に由来する規定であるが、そのフランスでは1~3年という区別に合理性が乏しいとの理由で2008年に削除されているものである。
 今回の改正では、職業別の短期消滅時効の規定を削除し、時効期間をシンプルに統一。権利を行使することができる時から「10年」という時効期間は維持しながら、権利を行使することができることを知った時から「5年」という時効期間を追加する(図表1参照)。この場合、いずれか早い方の経過で時効が完成することになる。例えば、税理士報酬などについては、契約の際に支払日が分かることから現行の「10年」から「5年」に短縮されることになる。

 なお、今回の改正に併せて商事時効「5年」(商法522条)も廃止される。

中小企業、第三者保証を頼む際には?
 中小企業向けの融資においては、主債務者の信用補完などの観点から第三者保証は重要な役割を担っている。しかし、個人的な付き合いなどから保証人となってしまったばかりに想定外の多額の保証債務の履行を求められることにより、生活が破たんするなどの事例が後を絶たない。
 今回の見直しにおいて、事業用資産の第三者保証に関しては、原則として禁止するのが相当であるとしつつも、一定の例外を除き、契約の締結に先立ち、締結日前の1か月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示している必要があるとし、公証人がその保証意思を確認しなければ効力を生じないこととされた。第三者保証を付けるには、公証人役場に行く必要が生じることになり、従来のように軽い気持ちで保証人になることに対する一定の歯止めにはなるかもしれない。
 なお、一定の例外とは、①主たる債務者が法人である場合の理事、取締役、執行役等、②主たる債務者が法人である場合の総社員又は総株主の議決権の過半数を有する者、③主たる債務者が個人である場合の共同事業者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者とされている。これらの者については、公証人による意思確認なしに第三者保証をすることができる。

売上債権を担保に融資を受けることが可能に
 債権譲渡の禁止特約が付された場合であっても、債権譲渡による資金調達が可能になる。現行、債権者と債務者との間で債権譲渡を禁止する特約をした場合、それに違反する債権譲渡は原則として無効となる。例えば、中小企業が大企業と取引した場合、商品を納入したとしても代金の支払いは数か月先だ。中小企業にとっては当座の資金繰りに苦慮するケースもあり、売上債権を担保に金融機関から融資を受けたいものの、債権譲渡の禁止特約により資金調達ができない状況にある。
 今回の見直しでは、「当事者間に債権の譲渡禁止特約がある場合であっても、これに反する債権譲渡の効力は妨げられない」旨の規定が設けられる(図表2参照)。これにより、中小企業等(債権者)は売上債権を担保に金融機関から融資を受けることが可能になる。

 一方、取引先の企業(債務者)は、債権が譲渡された場合であっても、譲渡人(元の債権者)に弁済すれば免責されることになる。

>分かりやすい民法へ、120年ぶりの改正
 民法は1896年に制定されたが、債権関係の規定についてはほとんど見直しが行われていない状況。今回の見直しは、この約120年の間に社会・経済が大きく変化していることや、一般の国民にも分かりやすいものにするため、国民の日常生活や経済活動にかかわりの深い契約に関する規定を中心に行われるものである(7頁参照)。
 例えば、消滅時効制度の見直し、法定利率の見直し、保証人保護の方策、賃貸借終了時の原状回復や敷金に関するルールの明確化、売主の瑕疵担保責任に関するルールの明確化などが行われる。

>定型約款は継続審議
 今回、「要綱案」ではなく、「要綱仮案」とされたのは、定型約款の取扱いについて保留され、継続審議とされたからだ。約款は、電気・ガス、交通、保険等のほか、新たなサービスやネットビジネスなど、多様な取引に不可欠なものだが、民法には約款に関する規定が存在しない。このため、今回の民法改正では、現代の取引社会の実情を踏まえ、定型約款を用いた取引の安定性確保を図るため、定型約款の定義や契約締結後における定型約款の一方的変更の要件などを規定するか否かで検討が続けられている。来年1月には定型約款の取扱いの可否も含め、民法(債権関係)部会で要綱案として決定する予定だ。

【参考】「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」の概要(法務省)
第1 公序良俗(民法第90条関係)
仮案のポイント
□ 判例を踏まえ、字句の修正(「事項を目的とする」の削除)のみを行う。
▼ 民法90条から派生する「暴利行為」の法理(判例)の明文化は、見送る。
【参照条文】
民法90条
 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

第3 意思表示
仮案のポイント
□ 民法93条(心裡留保)に関しては、判例を踏まえ、心裡留保(戯れ言)による意思表示の無効は善意の第三者に対して主張できない旨を明文化する。【仮案第3-1】
□ 民法95条(錯誤)に関しては、判例を踏まえ、次のような見直し等を行う。【仮案第3-2】
①錯誤(勘違い)による意思表示はどのような場合に効力を否定できるのか(要件)を具体的に明文化する。
②錯誤による意思表示の効果を、無効から取消しに改める。
③錯誤による意思表示の取消しは善意無過失の第三者に対して主張できない旨を明文化する。
▼ 相手方の行為(不実表示など)によって動機の錯誤が引き起こされた場合に関する特則規定の新設は、見送る。
□ 民法96条(詐欺)に関しては、判例を踏まえ、詐欺による意思表示の取消しを善意無過失の第三者(現在は条文上「善意の第三者」)に主張できない旨等を明文化する。【仮案第3-3】
【参照条文】 
民法95条
 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
その他
・意思表示の効力発生時期(民法97条)に関して、一般的な解釈論を踏まえ、対話者と隔地者を区別しないで、相手方への到達時に効力を生ずる旨を明確化する等の見直しを行う。【仮案第3-4】
・意思能力に関する規律の新設(仮案第2)に伴い、意思表示の受領能力(民法98条の2)に関して所要の規定を整備する。【仮案第3-5】

第7 消滅時効                          
仮案のポイント
□ 職業別の複雑な短期消滅時効の規定(民法170条から174条まで)を削除するなど、時効期間をシンプルに統一化する。【仮案第7-1~3】
□ 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効(民法724条)に関して、長期20年の期間制限が除斥期間(判例)ではなく時効である旨を明記する。【仮案第7-4】
□ 生命・身体の侵害による損害賠償請求権の時効期間について、債務不履行による場合と不法行為による場合とを合わせて長期化する方向の特則(短期5年・長期20年で統一)を設ける。【仮案第7-5】
□ 時効の中断・停止事由について、用語の修正も含めて時系列で分かりやすく再編成する観点から、「中断」は「完成猶予+更新」に、「停止」は「完成猶予」にそれぞれ改める(例えば、訴訟によって時効完成を阻止する場面においては、訴え提起によってまず「完成猶予」の効力が生じ、その後の勝訴判決の確定によって「更新」の効力が生ずるものとする)。【仮案第7-6】
その他
・現在は時効の中断事由である仮差押え・仮処分について、時効の完成猶予(停止)の効力のみを有するものと改める。【仮案第7-6(3)】
・天災等による時効の完成猶予(停止)の期間について、現在の2週間から3か月に伸長する。【仮案第7-6(7)】
・争いのある権利について当事者間で協議を行う旨の書面による合意があることを、新たな時効の完成猶予(停止)の事由とする。【仮案第7-6(8)】
・消滅時効の援用をすることができる者に関して、判例を踏まえ、保証人、物上保証人等が含まれることを明文化する。【仮案第7-7】

第9 法定利率
仮案のポイント
□ 法改正時の法定利率を年3%に引き下げるとともに、法改正後の法定利率に関して、3年を一期とする緩やかな変動制(過去5年間の短期貸付の平均利率の比較で1%以上の差が生じた場合に、1%刻みで変動)を導入する。【仮案第9-1・2】
□ 死亡被害者等の逸失利益の算定に用いる中間利息控除の割合についても、変動制の法定利率を適用する旨の規定を設ける。【仮案第9-3】

第18 保証債務
仮案のポイント
□ 根保証(民法465条の2以下)に関して、貸金等債務が含まれていないもの(例えば、賃貸借の保証)であっても、①極度額の定めを必要とし、②主債務者や保証人が死亡した場合等にはその時点で保証を打ち切りとする旨の見直しを行う。【仮案第18-5】
□ 事業用の貸金債務の保証に関しては、「経営者」が保証人となる場合を除き、あらかじめ公証人の面前での意思確認の手続を経ていなければ、保証契約を無効とする。【仮案第18-6(1)】
□ 事業用の債務の保証を委託する場合に、主たる債務者は、保証人に対し自己の財産や収支の状況等を説明する義務を負う旨の規定を設ける。【仮案第18-6(2)】
□ 債権者は、保証人に対し、主たる債務者の債務不履行の有無や期限の利益を喪失した旨等の情報提供をする義務を負う旨の規定を設ける。【仮案第18-6(3)(4)】
その他
・保証債務に附従性(民法448条)に関して、判例を踏まえ、主債務の内容が保証契約の締結後に加重されても保証人の負担は加重されない旨を明文化する。【仮案第18-1】
・保証人の求償権に関して、所要の規定を整備する。【仮案第18-3】

第19 債権譲渡
仮案のポイント
□ 債権譲渡を活用した資金調達を容易にする観点から、当事者間に債権の譲渡禁止特約がある場合であっても、これに反する債権譲渡の効力が妨げられない旨(債務者保護は別途手当て)の規定等を設ける。【仮案第19-1】
▼ 債権譲渡の対抗要件に関して、民法上の通知・承諾とともに債権譲渡登記の制度が併存している現状を維持することとし、登記への一元化は見送る。
その他
・判例を踏まえ、将来発生する債権についても譲渡することができる(その対抗要件は通常の債権譲渡と同様になる)旨の規定を整備する。【仮案第19-2・3】
・異議をとどめない承諾の規定(民法468条1項)を削除し、債務者対抗要件を備えるまでに債務者が有していた抗弁等について、原則として譲受人にも対抗できるものとする。【仮案第19-4】

第26 契約に関する基本原則
仮案のポイント
□ 契約自由の原則を明文化することとし、法令に特別の定めがある場合を除き、①契約をするかどうかを自由に決定できること、②書面作成等の方式を備えなくても契約が成立しうること、③契約の内容を自由に決定できることを定める。【仮案第26-1】
▼ 契約交渉の段階においても信義則が適用される旨(判例)の明文化は、見送る。
▼ 著しい事情変更があった場合の解除権(判例)の明文化は、見送る。
その他
・判例を踏まえ、契約成立の時に債務の履行が不能であったことは損害賠償の請求を妨げない旨を明文化する。【仮案第26-2】

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