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解説記事2014年12月15日 【未公開裁決事例紹介】 訴訟で株主の地位確定も役員報酬は損金算入できず(2014年12月15日号・№575)

未公開裁決事例紹介
訴訟で株主の地位確定も役員報酬は損金算入できず
課税要件事実の変動はないと判断

○株主地位確認請求等訴訟により確定したのは現代表者の株主たる地位であるため、役員報酬等を損金の額に算入することはできないとされた事例(平成26年1月8日裁決)。審判所は、本件訴訟により役員報酬支給決議等が有効であると判断されたものではないから、改めて本件役員報酬等が遡って発生したとみるべき理由はなく、役員報酬等の損金算入の要因となる「その申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実」たる課税要件事実を変動させることにはならないと判断した。

事案の概要  本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、法人税の確定申告を行った後に、請求人の株主についての地位確認請求等訴訟の判決により、役員改選決議及び役員報酬支給決議は有効であることが確定したことから、これらの決議に基づく役員報酬の額や新たに役員となった者が支出したとする費用の額は請求人の損金の額に含まれるとして法人税の更正の請求を行ったのに対し、原処分庁が、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行ったことから、請求人が、同処分の一部の取消しを求めた事案である。

基礎事実  以下の事実は、請求人と原処分庁との間に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人は、不動産の売買、賃貸、仲介、管理等を目的として平成7年3月22日に設立された法人である。
ロ 請求人の発行済株式(以下「本件株式」という。)は、その全部を所有する請求人の代表取締役であった××が××に死亡したことから、××の妻である××並びに××の子である××及び××(以下、××、××及び××を併せて「××」という。)が相続した。
  また、××の弟である××は、平成21年5月20日に、請求人の代表取締役に就任した。
ハ ××は、××の知人である××との間で、本件株式の全部を××に10,000,000円で売却することなどを内容とする契約(以下「本件株式売買契約」という。)を締結し、平成21年7月23日付の売買契約書を取り交わした。
  そして、平成21年7月28日に、××から××に対して、本件株式の売買代金として10,000,000円が支払われた。
ニ 請求人の役員については、平成21年7月23日に、次のとおり、変更の登記が行われた。
 なお、商業登記簿に記載された各役員の辞任及び就任の年月日は、いずれも平成21年7月21日であった。
ホ 上記ニの役員の変更の登記は、平成21年7月21日付の「臨時株主総会議事録」及び「取締役会議事録」に基づいて行われたもので、当該臨時株主総会議事録及び当該取締役会議事録には、要旨以下の記載がある。
(イ)臨時株主総会議事録の記載内容
 A 平成21年7月21日午前10時から、請求人の本店会議室において、臨時株主総会(以下「本件7月総会」という。)を開催した。
 B ××から本日をもって代表取締役及び取締役を辞任したい旨、××及び××から本日をもって取締役を辞任したい旨の辞任届の提出並びに××から本日をもって監査役を辞任したい旨の辞任届の提出があり、同人らの辞任を承認した。
 C 新たに取締役として××、××、××(以下、これら3名を併せて「××3名」という。)を選任し、新たに監査役として××を選任した(以下、この決議事項を「本件7月役員改選決議」という。)。
 D 本件7月総会の出席取締役として、××、××、××、××、××及び××の記名及び押印がされている。
(ロ)取締役会議事録の記載内容
 A 平成21年7月21日午前11時から、請求人の本店において取締役会(以下「本件取締役会」という。)を開催し、新たに代表取締役として××を選任した(以下、この決議事項を「本件取締役会決議」という。)。
 B 本件取締役会の出席取締役として、××3名の記名及び押印がされている。
へ ××の代理人弁護士は、××に対して、平成21年7月30日付の「通知並びに請求書」と題する書面を内容証明郵便により送付し、同書面には要旨以下の記載がある。
(イ)本件株式売買契約は錯誤等により無効である。
(ロ)本件7月総会が開催された事実がないにもかかわらず、その議事録を偽造し、また、××ほかの辞任届を偽造し、これらの書類を変更登記申請の附属書類として××へ提出した違法行為がある。
(ハ)本件7月総会の決議に係る役員変更の登記の抹消回復を請求する。
ト ××及び××の代理人弁護士は、平成21年8月12日付で、「職務執行停止等仮処分申立書」を××に提出し、当該申立書の内容は、要旨以下のとおりであり、その申立ての理由は、上記への(ロ)の事実があり、本件7月総会の決議不存在確認の訴えを提起する予定で、本案判決確定に至るまで取締役の職務執行を停止させる必要があるというものであった。
(イ)請求人において、××は取締役兼代表取締役の、××及び××は取締役の、××は監査役の各職務をそれぞれ執行してはならない。
(ロ)請求人は、上記(イ)の4名に各職務を執行させてはならない。
(ハ)職務執行停止期間中の職務代行者の選任を求める。
チ 平成21年8月14日に××が賃借しているマンションにおいて同人を議長として臨時株主総会(以下「本件8月総会」という。)が開催されたとする次の「臨時株主総会議事録」という書面には、要旨以下の記載がある。
(イ)開催時刻午前10時と記載された書面
  取締役である××、××、及び××を解任することを承認した。
(ロ)開催時刻午前10時30分と記載された書面
 ××、××(当該書面上は「×」の字は「×」の字が使用されている。)、××及び××(以下、これら4名を併せて「××4名」という。)を取締役に選任した(以下、上記(イ)の決議事項を併せて「本件8月役員改選決議」というが、本件8月役員改選決議に基づく役員の変更の登記はされていない。)。
(ハ)開催時刻午前11時と記載された書面
  ××に月800,000円、××(当該書面上は「×」の字は「×」の字が使用されている。)に月500,000円、××に月500,000円及び××に月650,000円を、それぞれ平成21年8月から役員報酬として支給することを承認した(以下、この決議事項を「本件役員報酬支給決議」という。)。
リ ××は、××に、上記トの仮処分申立書について、要旨次の内容の仮処分決定(以下「本件仮処分決定」という。)をした。
(イ)本案判決確定に至るまで、請求人において、××は取締役兼代表取締役の、××及び××は取締役の、××は監査役の各職務をそれぞれ執行してはならない。
(ロ)上記(イ)の職務執行停止期間中、請求人は、上記(イ)の4名に各職務を執行させてはならない。
(ハ)上記(イ)の職務執行停止期間中、弁護士××以下(「××」という。)を請求人の取締役兼代表取締役職務代行者に、ほか3名の弁護士を請求人の取締役職務代行者又は監査役代行者に選任する。
ヌ ××は、請求人の職務代行者に就任することを承諾し、××以後、請求人の取締役兼代表取締役職務代行者として職務を執行した。
ル ××、××、××及び××は、平成21年12月24日に、請求人及び××を被告として、請求の趣旨を次のとおりとする訴訟(以下「本件訴訟」という。)を××に提起した。
(イ)××と××との間の本件株式売買契約が無効であることを確認する。
  なお、平成22年7月8日に、××及び××が、請求人の株主であることの確認を求めて訴訟を提起しており、当該訴訟は、本件訴訟と併合審理されている(以下「本件株主の地位確認請求」という。)。
(ロ)請求人の平成21年7月21日に開催されたとされる本件7月総会において、取締役として××3名を、監査役として××を選任する決議が存在しないことを確認する(以下「本件7月役員改選決議不存在確認請求」という。)。
(ハ)請求人の平成21年7月21日に開催されたとされる本件取締役会において、××を代表取締役に選任する旨の決議が無効であることを確認する(以下「本件取締役会決議無効確認請求」という。)。
ヲ 請求人は、本件事業年度の決算において、××4名に対する役員報酬の額を費用及び未払金に計上せず、本件事業年度の法人税の確定申告において、××4名に対する役員報酬の額を損金の額に算入していない。
  なお、本件事業年度において、××4名に対して役員報酬は支払われていなかった。
ワ 本件訴訟は、××の××第一審判決後、第一審原告及び第一審被告の双方が控訴し(「本件訴訟」については、以下、控訴審における訴訟を含む。)、××に××控訴審判決(以下「本件判決」という。)が言い渡され、本件判決は、同月30日に確定した。
  なお、本件判決の主文は、要旨次のとおりであった。
(イ)平成21年7月21日午前10時から請求人の本店会議室において開催されたとされる本件7月総会における××3名をそれぞれ取締役に、××を監査役に選任する本件7月役員改選決議が不存在であることを確認する。
(ロ)平成21年7月21日午前11時から請求人の本店において開催されたとされる本件取締役会における××を代表取締役に選任する本件取締役会決議が無効であることを確認する。
(ハ)××のその余の控訴並びに××及び××の控訴(本件株主の地位確認請求)を棄却する。
カ 請求人は、本件判決により、係争中であった請求人の株主の地位についての確認が行われたことから、本件事業年度に発生する××4名に対する役員報酬の額17,150,000円と、経費の額2,588,563円の損金算入を求めて本件更正の請求をした。
  なお、請求人は、本件事業年度の決算において、上記経費の額を計上せず、本件事業年度の法人税の確定申告において、当該経費の額を損金の額に算入していない。
ヨ そして、請求人は、上記カの役員報酬の額17,150,000円(以下「本件役員報酬額」という。)及び経費の額2,588,563円のうち2,213,489円(以下「本件経費額」といい、本件役員報酬額と併せて「本件役員報酬額等」という。)の損金算入を求めて審査請求をした。

争点および主張  本事案の争点は、通則法第23条第2項第1号に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実が、本件判決により、当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとして、本件役員報酬額等が本件事業年度の損金の額に算入されるか否か。当事者の主張は、のとおり。

【表】争点 本件役員報酬額等が本件事業年度の損金の額に算入されるか否か
原 処 分 庁 請 求 人
 次のとおり、本件更正の請求は認められず、本件事業年度において本件役員報酬額等の損金算入はできない。
イ 本件判決により生じた事実は、本件株式売買契約が有効であるとする事実にすぎず、本件役員報酬額等を本件事業年度の損金の額に算入することに関連性を有するものではないことから、本件判決によって、本件事業年度の課税標準等又は税額等の計算の基礎となる課税要件事実に変動は生じておらず、本件判決は通則法第23条第2項第1号に規定する判決には当たらない。
ロ そして、本件事業年度において、××4名は何ら職務執行をしておらず、また、請求人は、××4名に対して役員報酬の支給をしていないことから、本件事業年度において本件役員報酬額を損金の額に算入すべき理由はない。
 次のとおり、本件更正の請求が認められ、本件事業年度において本件役員報酬額等の損金算入ができる。
イ 本件判決により、××の請求人の株主としての地位が確定し、これに伴い、本件8月総会における本件8月役員改選決議及び本件役員報酬支給決議が有効であることが確定し、本件役員報酬額に係る役員報酬請求権も有効であることが確定したのであり、また、実質的に役員としての活動を行うために要するものとして××及び××が支出した本件経費額も正当化され、請求人の業務に関連する費用となったのであるから、請求人の課税標準等及び税額等の変更が本件判決によって見込まれることとなったのは明らかである。
  また、通則法第23条第2項第1号の規定の趣旨は、納税者の権利救済のみちを更に拡充することにあり、同号に規定する判決とは、広く課税標準等又は税額等の計算について変更が見込まれる事実について判断がされた判決であると解すべきであり、これを本件についてみると、本件判決により請求人の課税標準等及び税額等の変更が見込まれることとなるから、本件判決は、同号に規定する判決に当たる。
ロ そして、本件役員報酬額は、報酬月額及び各月の支給日について定められたものであって、法人税法第34条《役員給与の損金不算入》第1項第1号の定期同額給与の要件を満たすものであること、本件役員報酬額を実際に支払っていなかったことについては、株主の地位が係争中であり、また、本件仮処分決定があったという理由が存すること、役員の職務執行が停止されたことは役員報酬請求権の確定に影響を及ぼさないこと、及び職務執行が停止された役員は、その停止期間中も職務代行者に対して経営の助言等、職務の補佐を行っていたことから、本件役員報酬額は、本件事業年度の損金の額に算入される。

審判所の判断
(1)法令解釈
 通則法第23条第2項の規定が設けられた趣旨は、納税申告時には予想し得なかった事由が後発的に発生し、これにより課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更を生じ税額の減額をすべき場合にも更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に過酷な結果が生じる場合等があると考えられることから、例外的に、一定の場合に更正の請求を認めることによって、保護されるべき納税者の救済のみちを拡充したものであると解される。そして、この趣旨からすれば、同項第1号にいう「判決」とは、申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実の存否、効力等が直接、審判の対象とされた訴訟において、当該事実と異なることを確定したものであると解するのが相当である。
(2)認定事実  請求人の提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
 イ 本件判決の内容について  本件判決における××の判断は、要旨次のとおりであった。
(イ)本件株主の地位確認請求について
 A ××は、本件株式売買契約を締結した当時、××は本件株式の価格を10,000,000円と理解ないし認識していなかったとして、本件株式売買契約は不成立である旨主張する。しかし、本件株式売買契約を締結する経過に係る事実及び売買契約書の記載からすると、××が本件株式の価格を10,000,000円と理解し認識して本件株式売買契約を締結したことは明らかである。
 B 本件株式売買契約により、××は××に対して本件株式の所有権を譲渡し、これを喪失したものである。そうすると、××の本件株式の所有権確認に係る請求はいずれも理由がない。
(ロ)本件7月役員改選決議不存在確認請求について
 A ××は、請求人を代理して、実際には開催されていないにもかかわらず、平成21年7月21日に本件7月総会を開催して本件7月役員改選決議をしたとして、同月23日、請求人の登記簿の役員に関する事項欄の記載の変更登記を申請し、登記簿にその旨記載されたことが認められ、本件7月役員改選決議が不存在であることは明らかである。
 B 本件7月総会が行われたとされる平成21年7月21日時点では、××は本件株式を取得していなかったのであり、本件7月役員改選決議が同日の時点で株主の意思に基づくものとして有効になると解することができないことは明らかである。
(ハ)本件取締役会決議無効確認請求について
 A ××は、請求人を代理して、実際には開催されていないにもかかわらず、平成21年7月21日に本件取締役会を開催して本件取締役会決議をしたとして、同月23日、請求人の登記簿の役員に関する事項欄の記載の変更登記申請をし、登記簿にその旨記載されたことが認められ、本件取締役会決議が無効であることは明らかである。
 B 平成21年7月23日に××の2階の待合室で取締役会が開催され本件取締役会決議がされたと解する余地があるとしても、××が主張する参集した取締役は、本件7月役員改選決議で取締役に選任された者であり、本件7月役員改選決議が不存在であることは、上記(ロ)のAのとおりであるから、この点からしても、本件取締役会決議は無効である。
 ロ 本件訴訟における本件8月総会に係る両決議の審理の状況について  本件訴訟において、請求人又は××から、本件8月役員改選決議及び本件役員報酬支給決議に関する事実についての主張は一切なかった。
 また、本件判決においては、原告適格の判断に関して、本件7月役員改選決議が不存在であって、「他に新たな取締役が選任されたことを認めるに足りる証拠がない」として、当時、取締役としての任期が終了等している××、××及び××には、会社法第346条《役員等に欠員を生じた場合の措置》によりなお取締役としての権利義務を有するとの判断がされた。
 したがって、本件8月総会において決議された事項は、本件訴訟において審理の対象とされていなかったものと認められる。
(3)当てはめ
 イ 通則法第23条第2項第1号の「その申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実」等について
 通則法第23条第2項第1号は、「その申告等に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実」(以下「申告等計算基礎事実」という。)について、その「事実に関する訴えについての判決」により、その申告等計算基礎事実が「当該計算の基礎としたところと異なること」が確定したときを一つの要件として規定し、一定期間において、その要件に該当することを理由として同条第1項の規定による更正の請求をすることができる旨規定している。
 本件は、本件更正の請求によって本件事業年度において本件役員報酬額等の損金算入を求めるものであることからすると、本件における申告等計算基礎事実とは、本件事業年度の確定申告に係る課税標準の計算の基礎に関する事実であることから、本件役員報酬額等についての損金算入に関する要因となる事実を指すものと認められる。
 すなわち、本件においては、本件事業年度の確定申告における本件役員報酬額等についての損金算入に関する要因となる事実が、本件判決によって、当該確定申告における事実と異なることが確定したと認められる場合には通則法第23条第2項第1号の要件を満たすことになり、そして、通則法及び課税の実体的要件である納税義務者、課税物件、帰属、課税標準、税率等について、法人税法などの各租税実体法の各課税要件を満たすことにより税額等が過大となった場合に、更正の請求が認められることになる。
 そこで、まず、本件事業年度における本件役員報酬額等についての損金算入に関する要因となる事実として、請求人がその主張において根拠として示す本件8月役員改選決議及び本件役員報酬支給決議について、以下において、これら両決議に関する事実を踏まえ、本件役員報酬額等についての損金算入に関する要因となる事実が異なることが確定したか否かを検討する。
 ロ 本件判決と本件8月役員改選決議及び本件役員報酬支給決議との関係について (イ)本件判決は、本件7月役員改選決議の不存在及び本件取締役会決議の無効を確認するものであるとともに、××が本件株式売買契約は無効であるとして本件株式の所有権の確認を求めた訴えに対し、本件株式売買契約により本件株式の所有権は譲渡されたとして、棄却されたものである。
(ロ)また、本件訴訟は、本件8月役員改選決議の内容及び本件役員報酬支給決議の内容を含め両決議自体が存在したか否かの事実は、請求人又は××から一切主張等されなかったのであるから、本件訴訟において、本件8月役員改選決議及び本件役員報酬支給決議の存否については、直接、審理の対象とされていなかったことは明らかである。そして、本件訴訟において、審理の対象とされ、本件判決により確定したのは、飽くまで本件株式についての××の株主たる地位であり、本件判決によって、本件8月役員改選決議及び本件役員報酬支給決議が有効であると判断されたものではないから、改めて本件役員報酬額等が遡って発生したとみるべき理由はない。したがって、本件判決によって、本件役員報酬額等についての損金算入に関する要因となる申告等計算基礎事実たる課税要件事実を変動させることにはならないから、本件更正の請求は認められない。
(ハ)請求人は、本件判決により、××の請求人の株主としての地位が確定し、これに伴い、××を株主として行われた本件8月総会における本件8月役員改選決議及び本件役員報酬支給決議が有効であることが確定したのであるから、本件更正の請求は認められる旨主張するが、本件判決と本件8月役員改趣決議及び本件役員報酬支給決議との関係については、上記(ロ)のとおりであるから、請求人の主張には理由がない。
 ハ 本件役員報酬額等について  請求人は、本件役員報酬額は、法人税法第34条第1項第1号の定期同額給与の要件を満たすものであり、本件役員報酬額を支払っていなかったのは係争中であったこと、役員の職務執行停止は役員報酬請求権の確定に影響を及ぼさないこと等から、本件役員報酬額は、本件事業年度の損金の額に算入される旨、本件判決の確定によって、実質的に請求人の役員としての活動が正当化され、その活動を行うために支出した本件経費額も本件事業年度の損金の額に算入できる旨主張する。
 しかしながら、上記ロの(ロ)のとおり、本件役員報酬額等についての損金算入に関しては、本件判決により、申告等計算基礎事実が異なることにはならないのであるから、その損金算入の適否すなわち税額等が過大であるかなどの実体的要件についての判断をするまでもなく、請求人の主張を採用することはできない。
 ニ 小括  本件更正の請求については、上記ロ及びハのとおり、通則法第23条第2項第1号に規定する課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実が、本件判決により、当該計算の基礎としたところと異なることが確定したことにはならないから、本件更正の請求により、本件事業年度において本件役員報酬額等を損金の額に算入することはできない。

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