カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2014年09月22日 【未公開裁決事例紹介】 裁決の拘束力は再更正と排斥理由との比較で判断(2014年9月22日号・№563)

未公開裁決事例紹介
裁決の拘束力は再更正と排斥理由との比較で判断
受入手数料は資金贈与、資産の譲渡に該当せず

○裁決の拘束力が及ぶか否かの判断は、当初更正処分が裁決によって排斥された理由と再更正処分の理由との比較によって行うものとされた事例(仙裁(法)平25第4号)。

基礎事実
 イ 請求人等の概要
 請求人は、昭和50年1月28日に×××××××××××××として記帳整理及び決算書類の調製受託等の業務(以下、これらの業務を総称して「記帳代行業務」という。)を主たる目的に設立された同族会社であり、平成11年8月20日に現在の商号に変更され、本件各事業年度における主たる業務は不動産賃貸業であった。
 ×××××は、平成6年4月20日に×××××××××××として記帳代行業務を主たる目的に設立された同族会社であり、平成22年9月3日に現在の商号に変更され、同月6日の株主総会の決議により解散した。
 ロ 営業収益手数料について (イ)平成7年1月11日付譲渡契約書
 ×××××(甲)と請求人(乙)との間で作成された平成7年1月11日付譲渡契約書には、要旨次のとおり記載されている。
第1条 甲は乙より、乙の契約顧問先をすべて譲り受けるものとする。
第2条 甲は、乙に対して、営業収益手数料として甲の利益分を乙に支払うものとする。
第3条 甲は乙の借入金及び債務について、保証するものとする。
第4条 上記以外は甲乙協議の上決定する。
(ロ)営業収益手数料の経理処理
 請求人は、本件各事業年度において、上記(イ)の契約に基づき×××××から営業収益手数料(以下「本件受入手数料という。)を受領したとして受入手数料勘定に計上し、本件受入手数料から消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)に相当する額(以下「本件消費税等相当額」という。)をそれぞれ差し引いた額を法人税の所得金額の計算上益金の額に算入した。
 ハ 前回裁決の要旨 (イ)本件青色取消処分
 原処分庁が請求人に帰属するとした平成18年12月期の218,937,139円の債務免除は、明らかに請求人に帰属するとまでは認められないことから、当該債務免除が請求人に帰属することを前提とする本件青色取消処分はその前提を欠き、青色取消通知書の「取消しの基因となった事実」の記載は、付記すべき理由の要件を欠くものと認められる。
 したがって、本件青色取消処分は違法であり、取り消すのが相当である。
(ロ)本件各当初更正処分
 上記(イ)のとおり、本件青色取消処分が取り消されることに伴い、請求人が提出した本件各事業年度の確定申告書は青色の申告書と認められ、本件各当初更正処分に係る更正通知書には更正の理由が付記されるべきところ、当該更正通知書にはその更正の理由が付記されていないことから、本件各当初更正処分はいずれも法令の要件を欠く違法な処分であり、取り消すべきである。
 ニ 本件各再更正処分の更正理由の要旨  本件各再更正処分に係る更正通知書には、本件受入手数料について、役務の提供の事実が認められないことから、消費税法上の課税資産の譲渡等の対価の額に該当せず、本件消費税等相当額は収益計上すべきものと認められるので、本件各事業年度の所得金額に加算した旨それぞれ記載されている。

争点および主張  本事案の主な争点は、(1)本件各再更正処分は、通則法第102条第1項の規定に反し、違法であるか否か。(2)本件消費税等相当額は、法人税の所得金額の計算上益金の額に算入すべきか否か。当事者の主張はのとおり。

【表】争点1 本件各再更正処分は、通則法第102条第1項の規定に反し、違法であるか否か
原 処 分 庁 請 求 人
 本件各再更正処分は、次のとおり、通則法第102条第1項の規定には反しておらず、適法である。
 通則法第102条第1項は、裁決は、関係行政庁を拘束すると規定しており、裁決の拘束力は、取消しの裁決の実効性を保障するために認められる効力であるから、その効力は、裁決の主文及び主文と不可分一体をなす理由について生ずるものであると解される。
 また、不服審査基本通達102-2のただし書は、裁決で排斥された処分の根拠以外の別個の理由があるときは、原処分庁は、当該裁決にかかわらず、当該別個の理由に基づいて再更正処分ができる旨定めている。 
 前回裁決において事実認定の判断が示されているのは、請求人に対する債務免除の帰属についてのみであり、その他の是否認事項については、理由付記の不備を理由に取り消され、判断されていない。
 したがって、前回裁決の主文と不可分一体をなす取消理由は本件青色取消処分の取消しに伴う更正の理由付記の不備であるのに対し、本件各再更正処分の理由は、前回裁決の取消理由とは異なる関係会社との取引について収益計上すべきであるとしたものであるから、本件各再更正処分は適法である。
 本件各再更正処分は、次のとおり、通則法第102条第1項の規定に反し、違法であり、取り消されるべきである。
 通則法第102条第1項は、裁決は、関係行政庁を拘束すると規定している。すなわち、原処分を取り消すとの裁決があった場合、その裁決自体の効力によって、原処分は当然に取り消され、その後再び原処分庁が裁決で取り消された処分と同様の処分をすることはできない。 
 通則法第102条第1項の趣旨は、原処分庁が裁決で取り消された処分と同様の処分をすることを禁じることによって、裁決の趣旨を速やかに実現し、当事者その他利害関係人の信頼を保護し、法的安定を図ることにある。かかる趣旨から考えれば、当落拘束力は手続の違法に関しても及ぶと解するべきであり、本件のように、裁決において理由の記載がないとして取り消された更正処分については、裁決がなされたときの客観的事情と同じ事情の下において、改めて理由を付して再更正処分を行うことはできないと解するべきである。
 不服審査基本通達102-2のただし書は、「当該裁決で排斥された処分の根拠以外に別個の理由があるとき」を前提に、裁決の拘束力の例外として再更正処分の余地を定めており、その例外は、本件各当初更正処分の理由と本件各再更正処分の理由との比較により判断される。
 本件各再更正処分は、本件各当初,更正処分の内容を踏襲し、いずれもその理由は「役務の提供等の事実はない」というものであり、同一の理由であることは明らかである。

【表】争点2 本件消費税等相当額は、法人税の所得金額の計算上益金の額に算入すべきか否か
原 処 分 庁 請 求 人
(1)次のとおり、本件受入手数料は、×××××において寄附金に該当し、消費税法上の課税資産の譲渡等の対価の額に該当せず、本件消費税等相当額は益金の額に算入される。
 イ 平成14年1月1日から同年12月31日までの事業年度以後、記帳代行業務は×××××の従業員により行われており、本件各事業年度において、請求人が×××××から業務を委託された事実又は×××××に対する役務提供の事実はなく、本件受入手数料には対価性がない。
  したがって、本件受入手数料は、×××××から請求人に対する資金贈与と認めるのが相当である。
 ロ 請求人は、法人税法第11条に従い、実質所得者である請求人において課税所得計算を行ってきた旨主張するが、同条は、収益の法法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受しない場合について規定しているところ、×××××は、請求人から顧問先との契約関係を引き継ぎ、記帳代行業務を行い、その報酬を受領したのであるから、×××××が単なる名義人とは認められず、同条の適用はない。
(2)請求人は、本件受入手数料は、請求人と×××××への同一所得に対する二重課税である旨主張するが、法人税法はそれぞれの法人に適用されるものである。
  したがって、本件受入手数料を支出した×××××においては寄附金と認められることから、一定の基準額を超える金額は損金の額に算入されず、本件受入手数料を受領した請求人においては受贈益として益金の額に算入されることとなる。
(1)次のとおり、本件受入手数料は、×××××との契約に基づく正当な対価として受け取っているものであり、本件消費税等相当額は益金の額に算入されない。
 イ 平成7年1月11日付譲渡契約書は、両社の関係を具現化したものであり、当該契約に従えば、記帳代行業務から生ずる収益は形式的には×××××に帰属するものの、一方で、×××××は記帳代行業務に係る事業の譲渡対価として残存利益を全て請求人に支払う義務を負っている。
  したがって、本件受入手数料は、契約に基づく正当な対価であり、利益供与には当たらない。
 ロ 上記イで述べたとおり、記帳代行業務から生ずる収益に基づく経済的利益を最終的に享受しているのは×××××ではなく請求人であることは明白である。
  したがって、法人税法第11条に従い、長年、実質的所得者である請求人が課税所得計算を行ってきたものである。


(2)本件各再更正処分は、本件受入手数料について、請求人においては益金として課税されており、実際に課税所得が生じていない×××××に対しても 寄附金認定による課税を行うことは、 不当な二重課税といわざるを得ない。
  記帳代行業務から生ずる所得は一つのみであるところ、それを請求人においては益金として、×××××においては寄附金認定することにより二度も課税所得とされることは、同一所得に対する二重課税である。

 当事者の主張は、別紙のとおりである。

審判所の判断
(1)争点1(本件各再更正処分は、通則法第102条第1項の規定に反し、違法であるか否か。)について
 イ 法令解釈
 通則法第102条第1項は、裁決は、関係行政庁を拘束すると規定しているところ、これは、原処分の取消し又は変更をした裁決の実効性を保障するため、かかる裁決がされた場合には、原処分庁を含む関係行政庁は、同一の事情の下でその裁決で排斥された原処分の理由と同じ理由で同一人に対し同一内容の処分をすることは許されないものと解される。
 また、不服審査基本通達102-2のただし書においては、裁決で排斥された原処分の根拠以外の別個の理由があるときは、原処分庁は、当該裁決にかかわらず、当該別個の理由に基づいて再更正処分をすることができると定めており、通則法第102条第1項の趣旨を踏まえたこの定めは、当審判所においても相当と認められる。
 ロ 当てはめ (イ)本件各当初更正処分の取消理由は、本件青色取消処分が前回裁決によって取り消されたため、本件各当初更正処分の更正通知書には更正の理由が付記されていることが必要であるにもかかわらず、更正の理由が付記されていないことから、本件各当初更正処分はいずれも法令の要件を欠く違法な処分であるとされている。
 一方、本件各再更正処分の更正の理由は、本件受入手数料について、役務の提供の事実が認められないことから、消費税法上の課税資産の譲渡等の対価の額に該当せず、本件消費税等相当額は収益計上すべきものと認められるので、本件各事業年度の所得金額に加算すべきであるとされている。
 以上のことから、本件各当初更正処分が前回裁決で排斥された理由と本件各再更正処分の更正の理由は異なるものと認められ、本件各再更正処分は、本件各当初更正処分が前回裁決で排斥された理由と別個の理由に基づく処分であると認められる。
 したがって、本件各再更正処分は、通則法第102条第1項の規定に反しない。
(ロ) 請求人の主張について
 請求人は、裁決の拘束力の例外は、本件各当初更正処分の理由と本件各再更正処分の理由が別個である場合には認められるが、本件各当初更正処分と本件各再更正処分は、いずれも本件受入手数料について役務の提供が認められないとの同一の理由であることから、通則法第102条第1項の規定に反し、違法である旨主張する。
 しかしながら、裁決の拘束力が及ぶか否かの判断は、当初更正処分が裁決によって排斥された理由と再更正処分の理由との比較によって行うものであるところ、前回裁決は、本件各当初更正処分の更正通知書に理由の付記の不備があることを理由に取り消したものであって、本件受入手数料についての役務の提供の事実の有無を判断して取り消したものではない。
  したがって、請求人の主張には理由がない。
(2)争点2(本件消費税等相当額は、法人税の所得金額の計算上益金の額に算入すべきか否か。)について
 イ 法令解釈
(イ)法人税法第22条第2項は、内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額について、無償による資産の譲受けも当該事業年度の収益の額とすると規定しているところ、法人が対価性のない金銭その他の資産の贈与を受けた場合の受贈益も当該事業年度の収益の額に含まれると解される。
(ロ)消費税法第2条第1項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨、また、消費税法第4条第1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、消費税を課する旨それぞれ規定しているところ、法人が受けた受贈益は対価性がないことから、資産の譲渡等に該当せず、消費税等の課税の対象とはされないと解される。
 ロ 認定事実  原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、次の事実が認められる。
(イ)「請求人は、設立以来、記帳代行業務を営んでいたが、平成7年に記帳代行業務に係る顧問先との契約関係を×××××に引き継ぎ、記帳代行業務に従事していた従業員は平成13年12月までの間そのまま在籍させ、当該顧問先に係る記帳代行業務を×××××から受託していたが、平成14年1月に当該従業員全員を×××××に転籍させた。
(ロ)×××××は、本件各事業年度において、同社の従業員が従事して記帳代行業務を営んでおり、その収入を同社の収益として計上していたが、請求人に記帳代行業務に係る業務等を委託した事実はなく、また、ほかに請求人から記帳代行業務に係る役務の提供を受けた事実もない。
 ハ 当てはめ (イ)請求人は、本件受入手数料について、上記ロの(ロ)のとおり経理処理しているところ、記帳代行業務については、上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、平成14年1月以後は×××××の従業員により行われており、本件各事業年度において、×××××が請求人に記帳代行業務に係る業務等を委託した事実及びその他請求人から記帳代行業務に係る役務の提供を受けた事実はないことから、本件受入手数料は対価性があるとは認められない。
  したがって、本件受入手数料は、請求人が×××××から対価性のない資金を贈与されたもの(受贈益)と認めるのが相当である。
  そうすると、本件受入手数料は、上記イの(ロ)のとおり、消費税法上の資産の譲渡等に該当せず、消費税等の課税の対象とはされないことから、本件各事業年度の本件消費税等相当額は、それぞれ法人税の所得金額の計算上益金の額に算入されることとなる。
(ロ)請求人の主張について
A 請求人は、平成7年1月11日付譲渡契約書は、×××××との間で法人税法第11条に規定する実質所得者課税の原則の適用を目的として作成したものであり、記帳代行業務から生ずる収益は形式的には×××××帰属するものの、一方で、×××××は記帳代行業務に係る事業の譲渡対価として残存利益を全て請求人に支払う義務を負っている以上、記帳代行業務から生ずる収益に基づく経済的利益を最終的に享受しているのは請求人であり、実質所得者課税の原則に沿うものであることから、本件受入手数料は利益供与には当たらない旨主張する。
  しかしながら、×××××は、上記ロの(イ)及び(ロ)のとおり、請求人から顧問先との契約関係を引き継ぎ、当該顧問先に係る記帳代行業務を請求人から転籍した従業員により自ら行い、その収入を同社の収益として計上していたのであるから、同社が法律上の単なる名義人であるとは認められず、記帳代行業務に係る経済的利益は正に同社が享受していたと認められる。
  したがって、請求人の主張には理由がない。
B また、請求人は、×××××からの本件受入手数料は益金として課税されていることから、これを支出した×××××に対しても寄附金認定による課税を行うことは、同一所得に対する二重課税である旨主張する。
  しかしながら、法人税法は、それぞれの法人に適用されるものであり、寄附金を支出した法人においては、一定の基準額を超える金額は法人税の所得金額の計算上損金の額に算入されず(法人税法第37条《寄附金の損金不算入》第1項)、当該寄附金を受領した法人においては、受贈益として法人税の所得金額の計算上益金の額に算入すべきであるから、同一所得に対する二重課税である旨の請求人の主張は採用することができない。
(3)本件各再更正処分について  本件受入手数料は、受贈益に該当するものと認められ、本件消費税等相当額を本件各事業年度の益金の額に算入した上で法人税の所得金額を計算すると、いずれも別表の「本件処分」欄の金額と同額となるから、本件各再更正処分は、いずれも適用である。
(4)その他  原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によってもこれを不相当とする理由は認められない。よって、主文のとおり裁決する。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索