カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2015年04月06日 【税務マエストロ】 BEPSプロジェクトの進捗と税制改正への影響⑥(2015年4月6日号・№589)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
BEPSプロジェクトの進捗と税制改正への影響⑥
#135 品川克己
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(ディレクター)

略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職。

次回のテーマ
#136 内外判定(2) 税理士 熊王征秀 消費税率引上げ、それに伴う課税の適正化など、消費税法の改正が続く。消費税マエストロが実務ポイントを解説する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 e-mail:ta@lotus21.co.jp

マエストロの解説  平成27年度税制改正では、現在進行中のBEPSでの議論を先取りした改正がいくつか含まれている。具体的には、次の3つがBEPSプロジェクトに対応するための措置として平成27年度税制改正項目に含まれており、改正関連法案も平成27年2月17日に閣議決定、国会提出されている。
①国境を越えた役務提供に対する消費税の課税の見直し(行動計画1に対応)
②外国子会社配当益金不算入の見直し(行動計画2に対応)
③国外転出をする場合の譲渡所得等の課税の特例の創設(行動計画6に対応)

1 国境を越えた役務提供に対する消費税の課税の見直し
(1)改正の概要
 BEPS行動計画1「電子経済の課税上の課題への対処」では、海外からの電子商取引に関して、顧客の所在地国に販売店等の物理的な拠点を有していないことから法人税および消費税の課税が十分に行えないことが課題として挙げられている。2014年9月16日にBEPS行動計画の第一次提言として公表されたBEPS行動計画1に関する報告書では、電子経済がもたらす税務上の重要な課題について整理し、それらの課題に対する対応策としていくつかのオプションが提示されている。そのなかで、消費税については、海外の事業者から国境を越えて消費者に対して行われる電子商取引に関し、消費者の居住地国で課税し、海外事業者から消費税を徴収すること等が示されている。
 上記の報告書における議論を踏まえ、平成27年度税制改正では、国境を越えた役務提供に対する消費税の課税について見直し、これまで課税対象とされていなかった海外の事業者が国境を越えて行う電子書籍・音楽・広告の配信等の電子商取引について消費税の課税対象とすることとしている。消費税について具体的には以下の点が改正項目となる。
(a)電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準の見直し
(b)リバースチャージ方式の導入
(c)消費者向け電気通信役務の提供に係る仕入税額控除の制限
(d)登録国外事業者制度の創設
 上記の改正は、平成27年10月1日以後の資産の譲渡等および課税仕入れについて適用することとされている(上記(d)の登録申請は平成27年7月1日以後から可能。)。
(2)課税対象となる電子商取引の範囲  電子商取引とは、一般的に、インターネット等を通じた電子書籍や音楽・広告等の配信、クラウドサービス等の役務の提供が該当する。これまで、こうした取引は「役務の提供」と「資産の譲渡・貸付け」のどちらに該当するか不明確であったが、今回の改正では、こうした電気通信回線を介して行われるサービス提供を「役務の提供」と位置づけ、「電気通信役務の提供」として消費税の対象取引としている。しかしながら現状その範囲は必ずしも明確となっていないが、資産の譲渡等に付随して行われる役務提供や、電気通信役務の提供の前提となる「通信回線」を利用させることは含まれないこととされている。なお、ソフトウエアやシステム等の通信回線を介した提供が対象となるか否かは現在は明確にされていない。また、外国の弁護士、コンサルタント等に依頼したオピニオンや調査会社に依頼した市場調査等を電気通信回線を介して提供を受けた場合でも、実質的な役務提供が国外で完結していることから、これらは電気通信役務の提供には含まれないと考えられる。

2 電気通信役務の提供に係る内外判定基準  電気通信役務に係る内外判定基準が、これまでの「役務の提供に係る事務所等の所在地」から、「役務の提供を受ける者の所在地等」に見直されることとなる。そもそも消費税は、原則として消費が行われる場所(役務の提供が行われた場所)において課税する仕向地主義をとっているが(消法4③二)、役務の提供が行われた場所が明確でない場合(国内および国外にわたって行なわれる役務の提供など)は、役務の提供を行う事業者の事務所等の所在地を判定基準としている(消令6②七)。その結果、日本国内の者が、外国から配信される電気通信役務の提供を受けるような場合には、その電気通信役務の提供をする国外の事業者の所在地から、国外での取引に分類されることとなり、その取引(役務の提供)には消費税が課されないこととなる。したがって、電子書籍や音楽配信などの電気通信役務の提供については、それを国内事業者が行う場合には消費税が課税、同じことを国外事業者(所得税法上の非居住者である個人事業者及び法人税法上の外国法人をいう)が行う場合には消費税が課税されないこととなり、事業者間の競争条件にゆがみが生ずる結果となっていた。
 今回の改正では、この内外判定基準が見直され、電気通信役務の提供については仕向地主義として、国外事業者により国境を越えて電気通信役務の提供が行われる場合にも、国内において行われる取引として消費税が課税されることとなる。

3 事業者向け電気通信役務の提供
(1)課税方法:リバースチャージの導入
 リバースチャージとは、対象となる取引に係る消費税の納税義務を、役務の提供者となる事業者ではなく、役務の提供を受ける事業者に転換する制度である。この結果、役務の提供を受ける事業者が消費税の納税義務者となる。
 今回の改正では、リバースチャージの対象となる取引は、国外事業者が行う電気通信役務の提供のうち、役務の受益者が事業者となる電気通信役務の提供(「事業者向け電気通信役務の提供」)のみが対象となり、役務の受領者が消費者となる電気通信役務の提供(「消費者向け電気通信役務の提供」)は別の取り扱いとなる。
 この事業者向けか消費者向けかは、電気通信役務の性質又は契約条件等により判断することとされ、役務の提供を受ける者が事業者であることが明らかなもののみが「事業者向け電気通信役務の提供」となり、それ以外はすべて「消費者向け電気通信役務の提供」となる。
(2)リバースチャージの適用方法
 ① 役務の提供を行う国外事業者
 日本国内の事業者に対して電気通信役務の提供を行う国外事業者は、消費税を上乗せすることなく、そのままの金額で取引(電気通信役務の提供)を行うこととなる。ただし、その電気通信役務の提供に際し、役務の受益者となる国内の事業者に対し、その国内事業者がその消費税について納税義務者となる旨を表示する必要がある。
 ② 役務の提供を受ける国内事業者  電気通信役務の受益者となる国内事業者は、国外事業者から、消費税が上乗せされることなくその役務の提供を受けることとなるが、その役務の提供に際し、提供者である国外事業者に代わり、納税義務者となる。つまり、みずから消費税を納付するとともに、その消費税額を仕入税額控除の対象として計上することとなる(図1)。

 なお、役務の提供を受ける国内事業者が免税事業者である場合には、当該消費税の納税義務は生じないこととされる。また、所要の経過措置として、国内事業者の課税売上割合が95%以上である課税期間においては、当該電気通信役務の提供(後述、「特定課税仕入」)がなかったものとされる。つまり申告対象から除外され、納付の必要もないこととなる。したがって、結果的には課税売上割合が95%未満の場合に、国外事業者から当該電気通信役務の提供を受けた国内事業者が、リバースチャージに係る消費税額と仕入税額控除を自らの消費税申告に取込むこととなる。

4 消費者向け電気通信役務の提供
(1)課税方法:国外事業者の納税義務
 国外事業者が日本国内に向けて行う「消費者向け電気通信役務の提供」については、今回の改正による内外判定基準の結果、消費税の課税対象である国内取引となり、役務の提供を行う国外事業者が納税義務者となる。この「消費者向け電気通信役務の提供」とは、「事業者向け電気通信役務の提供」であることが明らかであるもの以外の電気通信役務の提供であり、役務の受益者が事業者であることもあり得る(図2)。

 なお、国外事業者は、消費税法をはじめ日本の法律が直接適用されない地域(管轄外)に所在することから、その国外事業者を納税義務者としても、消費税法上の申告納税義務の履行および関連する税務執行に限界があるという点が危惧されていた。こうした問題点に一定の解決を与える制度として導入されるのが「登録国外事業者制度」である。
(2)登録国外事業者制度の創設
 ① 登録国外事業者
 事業者免税点制度の適用を受けていない国外事業者であって、次の要件を満たす事業者が、納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に申請書を提出し、登録を受けることにより登録国外事業者となる。
・国内において行う電気通信役務の提供に係る事務所、事業所およびその他これらに準ずるものの所在地が国内にあること又は消費税に関する税務代理人(国税通則法第74条の9第3項第2号)があること
・国内に事務所等を有しない場合、納税管理人(国税通則法第117条第1項)を定める必要がある事業者にあっては、納税管理人を指定していること
・国税の滞納がないこと及び登録国外事業者の登録の取消しから1年を経過していること
 なお、登録申請は平成27年7月1日以後に行うことができ(制度の適用は10月1日以後に国内において行う取引)、登録国外事業者として登録された場合には、国税庁長官は、その氏名または名称、住所もしくは居所または本店もしくは主たる事務所の所在地および登録番号等について、インターネットを通じて速やかに公表することとなる。
 ② 仕入税額控除における制限  国内事業者が登録国外事業者から受けた「消費者向け電気通信役務の提供」を受けた場合には、特例的にその電気通信役務の提供に係る消費税を仕入税額控除の対象とすることができる。国外事業者から受ける電気通信役務の提供は、「事業者向け電気通信役務の提供」であることが明らかであるもの以外は、すべて「消費者向け電気通信役務の提供」とされることから、事業者が「消費者向け電気通信役務の提供」を受けることも想定され、こうした場合、原則としてはこれら電気通信役務の提供に係る消費税は、国内事業者の仕入税額控除の対象とはならないこととされている。
 また、登録国外事業者以外の国外事業者から受けた電気通信役務の提供については、国内事業者はその電気通信役務の提供に係る消費税を仕入税額控除の対象とはできないこととなる。この結果、登録国外事業者でない国外事業者は、国内における電気通信役務の提供取引について税込価格の観点から不利な状況に置かれることとなる。これが、国外事業者が登録国外事業者として登録されることを志向するインセンティブとなり、結果消費税に係る適正および公平な課税、適正な税務執行が担保されることが期待される。なお、登録国外事業者となれない事業者免税点制度の適用を受けている国外事業者との取引においては、国外事業者は消費税の申告納税義務がなく、国内事業者も仕入税額控除の対象とならないことで結果的に合理性が担保されることとなる。

この記事に関するご意見・お問合せは ta@lotus21.co.jp にお寄せください。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索