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解説記事2015年04月20日 【新会計基準解説】 改正実務対応報告第31号「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」の概要(2015年4月20日号・№591)

新会計基準解説
改正実務対応報告第31号「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」の概要
 企業会計基準委員会 客員研究員 神谷陽一

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成27年3月11日、改正実務対応報告第31号「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」(以下、「本実務対応報告」という。)を公表した。本実務対応報告の原文については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/lease_2015/index.shtml)より入手可能である。
 本稿では、本実務対応報告の改正部分の概要を紹介する。なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

Ⅱ 改正の概要

1 改正の経緯
 日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)に基づき実施する施策として、新たなスキーム(以下、「本リース・スキーム」という。)によるリース取引が導入されたことを受けて、ASBJは、平成26年6月30日に実務対応報告第31号「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い」を公表した。当該実務対応報告において、契約変更時の借手の会計上の取扱いについて別途定めることとしていたことから、その公表後に、ASBJにおいて、当該取扱いについて検討を行うこととなった。

2 実務対応報告の改正の概要
(1)ファイナンス・リース取引かどうかの再判定
 ① 再判定を行う時点
 本実務対応報告では、リース取引開始日後にリース取引の契約内容が変更された場合のファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かの再判定にあたっては、契約変更日に、契約変更後の条件に基づいてリース取引開始日に遡って、本リース・スキームのリース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかの判定を行う(脚注1)としている。
〈ASBJにおける検討の過程〉  ASBJにおける検討の過程においては、リース契約が変更された場合に契約変更後のリース取引がファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かの再判定を行うアプローチとして、以下の2つのアプローチがあり得るとされていた。
・A法:契約変更後の条件に基づいてリース取引開始日に遡って再判定を行うアプローチ
・B法:契約変更日から将来に向かって再判定を行うアプローチ
 この点について、個々のリース取引ごとの契約変更の要因やリース料の設定方法によって2つのアプローチを使い分けることに関しては、ASBJの検討の過程で、本実務対応報告が本リース・スキームに限定した取扱いを示すものであることを踏まえると過度に複雑な取扱いとなることを懸念する意見が示された。さらに、多くのケースでは、契約変更によってリース取引開始日におけるリース物件に関するコストについて借手と貸手との間の負担関係に変更が生じたと想定されることから、契約変更の結果としてリース取引開始日からのリース期間にわたって借手が負担することとなったリース物件の当該コストを反映して再判定をすべきとの意見も示された。このような考え方からは、リース取引開始日に遡って再判定を行うアプローチ(A法)がより適切と考えられる。
 また、契約変更日から将来に向かって再判定を行うアプローチ(B法)においては、再判定において契約変更日におけるリース物件の見積現金購入価額を入手することが必要と考えられる。この点については、本リース・スキームにおいてそのような見積現金購入価額を入手することは、多くの場合に実務上困難であると指摘されてきた。
 以上を踏まえ、本実務対応報告では、契約変更後の条件に基づいてリース取引開始日に遡ってファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かの再判定を行うアプローチ(A法)を採用している。
 ② 割引率
 本実務対応報告では、ファイナンス・リース取引かどうかの再判定を行うにあたって、借手が現在価値基準を適用する場合において現在価値の算定のために用いる割引率について、借手が契約変更後の条件に基づいた場合のリース取引開始日における貸手の計算利子率を知り得るかどうかに応じて、以下のように規定している。
・知り得るときは、契約変更後の条件に基づいてリース取引開始日における貸手の計算利子率
・知り得ないときは、契約変更後の条件に基づいてリース取引開始日における借手の追加借入に適用されていたであろうと合理的に見積られる利率
〈ASBJにおける検討の過程〉  ASBJにおける検討の過程においては、(1)①において、A法を採用することを前提として、ファイナンス・リース取引かどうかの再判定を行うにあたって借手が現在価値基準を適用する場合において用いる割引率として、複数のアプローチが検討された。ここで、ファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かの再判定をリース取引開始日に遡って行うとしていることを踏まえると、借手が現在価値基準を適用する場合において用いる割引率としては、契約変更後の条件に基づいた場合のリース取引開始日の時点のものを用いることが整合的であると考えられる。
 そこで、本実務対応報告では、この再判定を行うにあたって、借手が現在価値基準を適用する場合において用いる割引率は、契約変更後の条件に基づいた場合のリース取引開始日における貸手の計算利子率を知り得るときには当該利率とし、知り得ないときは契約変更後の条件に基づいた場合のリース取引開始日における借手の追加借入に適用されていたであろうと合理的に見積られる利率としている。後者の具体例としては、企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下「リース適用指針」という。)第95項に準じて、契約変更後のリース期間と同一の期間におけるスワップレートに借手の信用スプレッドを加味した利率や新規長期借入金等の利率のような利率の中からその企業にとって適当と認められるものを用いて契約変更日において事後的に推定することが考えられる。
 なお、本リース・スキーム上、契約変更後において、契約変更後の条件に基づいてリース取引開始日における貸手の計算利子率に関する情報を、貸手が借手へ通知することは通常、想定されないと考えられる。
(2)オペレーティング・リース取引からファイナンス・リース取引への変更  本実務対応報告では、リース取引開始日後にリース取引の契約内容が変更された結果、オペレーティング・リース取引からファイナンス・リース取引となるリース取引については、契約変更日より通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うものとし、契約変更日に、リース物件とこれに係る債務を、リース資産及びリース債務として以下に示す価額で計上する(原則として①のとおりとする。ただし、当該リース資産及びリース債務の価額を②のとおりとすることもできる)としている。
① リース資産及びリース債務をそれぞれ(ア)、(イ)のとおり算定された価額とし、リース資産とリース債務との差額は損益として処理する。
(ア)リース資産
 契約変更後の条件に基づくリース取引開始日からの将来のリース料(残価保証がある場合は、残価保証額を含む。)を(1)②に示す割引率を用いて割り引いた現在価値とリース取引開始日における借手の見積現金購入価額とのいずれか低い額から、リース取引開始日から契約変更日までの減価償却累計額相当額を控除した価額による。
(イ)リース債務
 契約変更後の条件に基づく契約変更日からの将来のリース料(残価保証がある場合は、残価保証額を含む。)を(1)②に示す割引率を用いて割り引いた現在価値による。
② リース資産及びリース債務を①(イ)に従って算定された価額にて同額で計上する。
 なお、本実務対応報告では、本リース・スキームにおける所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース適用指針第23項から第30項の方法に準じて会計処理し、所有権移転ファイナンス・リース取引については、リース適用指針第38項から第44項の方法に準じて会計処理するものとしている。
〈ASBJにおける検討の過程〉  ASBJにおける検討の過程においては、本リース・スキーム上、契約内容の変更の結果として生じるリースの分類の推移として最も検討の必要性が高いと考えられるオペレーティング・リースからファイナンス・リースへ分類が変わるケースを中心に、契約変更時の会計処理について検討が行われた。
 まず、当該ケースを対象とした場合、契約変更日においてリース資産及びリース債務を測定する方法として、以下の2通りの会計処理が検討された。
・1法:リース取引開始日に遡ってファイナンス・リース取引の会計処理をしたかのように測定する。
・2法:契約変更日以降に生じるリース料等の条件に基づき、測定する。
 (1)①において、ファイナンス・リース取引かどうかの再判定をリース取引開始日に遡って行うこと(A法)を踏まえると、参照するリース期間を合わせるという観点から、契約変更時の会計処理としては、1法を採用することが整合的であると考えられたことから、本実務対応報告においては、契約変更日においてリース資産及びリース債務を測定する方法として、1法の考え方が採用されている。
 次に、本実務対応報告では、リース契約の変更の結果、オペレーティング・リース取引からファイナンス・リース取引となるリース取引について、契約変更日に、リース物件とこれに係る債務を、リース資産及びリース債務として計上し、両者の差額を損益として処理する方法を原則的な取扱いとしている。これは、以下の理由によるものである。
・ファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かの再判定をリース取引開始日に遡って行うとしていることを踏まえると、参照するリース期間を合わせるという観点から、リース取引開始日に遡ってファイナンス・リース取引の会計処理をしたかのようにリース資産とリース債務を測定するのが整合的であると考えられる。
・本リース・スキームにおける契約内容の変更は、一般的には、遡及適用が求められる会計方針の変更や修正再表示が求められる過去の誤謬の訂正とは異なる性格を有するものであり、また、当該契約内容の変更によるリース資産とリース債務との差額は将来の期間に影響を与えるものとは考えられないため、その影響額を当該契約内容の変更の発生時の損益として会計処理するのが適切であると考えられる。
 ただし、本実務対応報告が本リース・スキームに限定した取扱いを示すものであることを踏まえ、実務上のより簡便的な手法として、リース資産の価額をリース債務の価額と同額とし、両者の差額を発生させない方法も認めることとしている。

3 適用時期  本実務対応報告は公表日以後適用するとしている。これは、本リース・スキームの実際の運用が開始されていること、また、本実務対応報告は、本リース・スキームにおけるリース取引に係る実務上の取扱いをより明確にするものであり、特段の周知期間は必要ないと考えられるためである。

Ⅲ おわりに
 本件の議論においては、本リース・スキームにおける契約内容の変更のみに着目しており、一般的なリース取引における契約内容の変更について包括的な検討を行ったわけではない。本実務対応報告において規定しているリース契約の変更の取扱いは、本リース・スキームにおけるリース取引のみに適用されるものであり、本リース・スキーム以外におけるリース取引の契約の変更には適用されないことに留意が必要である。

脚注
1 本実務対応報告第3項では、本リース・スキームにおいて、リース取引がファイナンス・リース取引に該当するかどうかについては、その他のリース取引と同様に、リース適用指針第5項の要件に基づいて判定すべきであり、具体的な判定は、リース適用指針第9項に従う、としている。

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