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コラム2015年04月20日 【SCOPE】 勤務税理士の賠償責任を認めた税賠事件が決着(2015年4月20日号・№591)

1,000万円超の賠償を命じた高裁判決が確定
勤務税理士の賠償責任を認めた税賠事件が決着

 納税者から相続税の申告手続きを受任した所長税理士だけでなく、事務所内で申告書作成業務を担当した勤務税理士に対しても各1,000万円超の損害賠償を命じた高裁判決が確定したことが本誌取材により明らかとなった。一般的に、税理士資格を持たない一般事務職員が行った申告ミスは雇用主(所長税理士)が賠償責任を負うことになる。だが、本件では、申告業務の委任契約を締結していた所長税理士だけではなく、実際に申告書作成業務を行っていた勤務税理士についても税理士としての注意義務違反が認定される結果となった。本件は、会計事務所の勤務税理士であったとしても、担当した申告書作成業務に関し税理士としての責任が問われるリスクがあることを浮き彫りにしたものといえそうだ。

納税者との間に委任契約がない勤務税理士にも税賠リスクあり
 本件は、納税者が、相続税の申告業務を受任した所長税理士が相続税の申告の際に本来は控除できない債務控除を計上したことで相続税・延滞税・加算税が発生したなどと主張して、会計事務所の所長税理士および勤務税理士に対して損害賠償を請求した税賠事件だ。
 この納税者の訴えに対し東京地裁(平成26年2月13日判決)は、まず、納税者が制限納税義務者(当時の相続税法では債務控除が大幅に制限された)に該当すると判断した勤務税理士について、国籍法の確認を怠った点に注意義務違反があったと認定。
 次に、地裁は、本件遺言により納税者がすべての相続債務を承継しているため、納税者以外の相続人が相続債務を承継できないことを理由に、納税者に相続税が課されたことについては税理士の義務違反との間に因果関係が認められないとする一方で、延滞税および加算税については因果関係が認められると認定。この認定を踏まえ地裁は、債務不履行を理由として、納税者と相続税申告業務の委任契約を締結していた会計事務所の所長税理士に対し1,059万円余の損害賠償を命じるだけでなく、不法行為を理由として、実際に相続税の申告書作成業務を担当した勤務税理士に対しても1,164万円余の損害賠償を命じていた(本誌544号4頁参照)。
 地裁判決で一部敗訴した勤務税理士は、控訴審のなかで勤務税理士には個人責任が生じない旨を主張。一方の納税者は、加算税だけでなく相続税相当額も納税者が被った損害であると主張した。
 しかし、双方の主張に対し東京高裁(平成26年8月28日判決)は、地裁判決をほぼ引用するかたちで双方の控訴を棄却。高裁は、加算税および延滞税などのみを損害と認めた地裁判決を支持したうえで、所長税理士だけでなく、勤務税理士に対しても地裁判決と同額の損害賠償を命じた(本誌564号11頁参照)。判決のなかで高裁は、勤務税理士は税理士という公的資格に基づいて相続税申告に関与しており、所長税理士の単なる手足というべきではないため、勤務税理士が個人責任を負うこともやむを得ないと指摘している。
 この高裁判決に対し、所長税理士および勤務税理士は上告を提起しない一方で、損害賠償金額を不服とする納税者は上告および上告受理申立てを提起していた。
 だが、最高裁第一小法廷(白木勇裁判長)は平成27年2月5日付けで、納税者の上告棄却および上告受理申立てを受理しないことを決定したことが本誌取材により確認されている(平成26年(オ)第1827号、平成26年(受)2359号)。この結果、所長税理士だけでなく、実際の申告書の作成業務を行っていた勤務税理士に対しても損害賠償を命じた東京高裁判決が確定することになった。
 本件は、たとえ会計事務所の勤務税理士であったとしても、実際に担当した申告書作成業務に関し税理士としての責任が問われるリスク(税賠リスク)があることを浮き彫りにしたものといえそうだ。

勤務税理士(所属税理士)、本年4月1日から自らの税理士業務も可能に
 税理士事務所や税理士法人に勤務する税理士のことを勤務税理士と呼ぶことがあるが、正式名称は「所属税理士」である。所属税理士は、他の税理士事務所または税理士法人の補助者としてそれらの税理士業務に従事し、その従事する事務所等を税理士名簿に登録することで税理士となる。所属税理士は、平成27年4月1日以降から、その所属する他の税理士または税理士法人の書面による承諾を得て、他人の求めに応じ自ら税理士業務等に従事することができるようになった。

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