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解説記事2015年05月18日 【新会計基準解説】 改正企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」等について(2015年5月18日号・№594)

新会計基準解説
改正企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」等について
 企業会計基準委員会 専門研究員 竹田恵子

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成27年3月26日に、以下の企業会計基準等(以下「本会計基準等」という。)の改正を公表した。
・改正企業会計基準第1号
「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(以下「自己株式等会計基準」という。)
・改正企業会計基準適用指針第2号
「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」(以下「自己株式等会計適用指針」という。)
・改正実務対応報告第30号
「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第30号」という。)
 本稿では、改正内容の概要を紹介する。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。

Ⅱ 改正の概要

1 改正の経緯
 平成26年3月26日に「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」(平成26年内閣府令第19号)が施行され、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「財務諸表等規則」という。)等が改正された。当該改正は、平成25年6月20日に企業会計審議会が公表した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」を踏まえて、単体開示の簡素化を図ったものである。主な改正内容は、以下のとおりである。
・連結財務諸表作成会社のうち、会計監査人設置会社は特例財務諸表提出会社とされ、会社法の要求水準に合わせた新たな個別財務諸表の様式によることや、一定の注記については会社計算規則の規定をもって注記できる。
・連結財務諸表作成会社においては、連結開示において十分な情報が開示されている場合には、一定の注記については単体開示を免除する。
 この単体開示の簡素化に係る財務諸表等規則等の改正に関連して、ASBJが公表した会計基準(適用指針、実務対応報告を含む。以下「会計基準等」という。)における注記の定めについて、実務上の取扱いを明示する観点から開示内容の見直しを行ったものである。

2 ASBJが公表した会計基準等と財務諸表等規則等との関係  財務諸表等規則第1条第1項では、金融商品取引法における適用の一般原則として、以下のとおり定めている。
・金融商品取引法の規定により提出される財務諸表の用語、様式及び作成方法は、外国会社等の特例を除き、財務諸表等規則の定めるところによるものとする。
・財務諸表等規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従う。
 また、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として、以下が該当すると定めている。
・企業会計審議会により公表された企業会計の基準(財務諸表等規則第1条第2項)
・ASBJが作成及び公表を行った企業会計基準のうち、公正かつ適切な手続の下に作成及び公表が行われたものと認められ、一般に公正妥当な企業会計の基準として認められることが見込まれるものとして金融庁長官が定めるもの(財務諸表等規則第1条第3項)
 上記の財務諸表等規則第1条第3項を受けて、ASBJがこれまで作成及び公表した会計基準は、金融庁長官から一般に公正妥当な企業会計の基準として指定を受けている(脚注1)。
 これらの財務諸表等規則等における規定により、ASBJが定めた会計基準等による注記の定めよりも詳細な規定が財務諸表等規則等により規定されている場合(例えば、会計基準がある項目の注記を連結財務諸表及び個別財務諸表の区別なく開示を求めているケースで、財務諸表等規則では連結財務諸表において同一の内容を開示している場合には財務諸表には当該注記を記載することは要しないとしているケース)では、財務諸表等規則等の規定に従うこととなる。
 一方、単体開示の簡素化に係る財務諸表等規則等の改正によって、ASBJの会計基準等で定めがあるものの、財務諸表等規則等では規定がない項目、かつ、単体開示の簡素化により開示されなくなった項目について、開示の要否が明確でないとの意見が聞かれた。このため、単体開示の簡素化による財務諸表等規則の改正事項に関連する会計基準等の開示の定めと財務諸表等規則の規定とを個別に照合し、解釈上明確でない可能性がある論点の抽出を行い、本会計基準等では以下の項目について改正を行っている。
・決議後消却手続を完了していない自己株式が貸借対照表日にあり、その帳簿価額又は株式数に重要性がある場合の個別財務諸表における注記
・個別財務諸表における無償で取得した自己株式の数に重要性がある場合の注記
・従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引を行った場合の個別財務諸表における一株当たり情報及び株主資本等変動計算書の注記

3 本会計基準等の概要
(1)決議後消却手続を完了していない自己株式が貸借対照表日にあり、その帳簿価額又は株式数に重要性がある場合の個別財務諸表における注記
 単体開示の簡素化に係る財務諸表等規則の改正に伴い、財務諸表等規則において、個別株主資本等変動計算書における自己株式に関する注記は、「財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、記載することを要しない。」と規定されている(財務諸表等規則第107条第2項)。
 当該改正を踏まえ、自己株式等会計基準では、個別財務諸表における決議後消却手続を完了していない自己株式に関する注記の取扱いについて、自己株式に関する注記が個別財務諸表において開示されない中で、当該注記のみの開示を求める趣旨ではないことを明らかにするため、「取締役会等による会社の意思決定によって自己株式を消却する場合に、決議後消却手続を完了していない自己株式が貸借対照表日にあり、当該自己株式の帳簿価額又は株式数に重要性があるときは、その自己株式の帳簿価額、種類及び株式数を、連結貸借対照表及び個別貸借対照表に注記する」としていた定めを改正し、注記の記載箇所を貸借対照表から株主資本等変動計算書に変更した上で、個別株主資本等変動計算書の注記事項として自己株式の種類及び株式数に関する事項を記載していない場合には、当該注記は不要とした。
(2)個別財務諸表における無償で取得した自己株式の数に重要性がある場合の注記  単体開示の簡素化に係る財務諸表等規則の改正に伴い、財務諸表等規則において、個別株主資本等変動計算書における自己株式に関する注記は、「財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、記載することを要しない。」と規定されている(財務諸表等規則第107条第2項)。
 当該改正を踏まえ、自己株式等会計適用指針では、個別財務諸表における無償で取得した自己株式に関する注記の取扱いについて、自己株式に関する注記が個別財務諸表において開示されない中で、当該注記のみの開示を求める趣旨ではないことを明らかにするため、「無償で取得した自己株式の数に重要性がある場合は、その旨及び株式数を連結財務諸表及び個別財務諸表に注記する」としていた定めを改正し、個別株主資本等変動計算書の注記事項として自己株式の種類及び株式数に関する事項を記載していない場合には、当該注記は不要とした。
(3)従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引を行った場合の個別財務諸表における一株当たり情報及び株主資本等変動計算書の注記  単体開示の簡素化に係る財務諸表等規則等の改正に伴い、財務諸表等規則において、財務諸表提出会社が連結財務諸表を作成している場合には、1株当たり当期純損益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益に関する注記並びに自己株式に関する注記を記載することを要しないこととなった(財務諸表等規則第95条の5の2第3項、第95条の5の3第4項及び第107条第2項)。
 当該改正を踏まえ、実務対応報告第30号では、個別財務諸表における従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する1株当たり情報に関する注記の取扱い及び自己株式に関する注記の取扱いについて、以下の改正を行っている。
 ① 1株当たり情報に関する注記  1株当たり当期純利益の算定上、信託に残存する自社の株式を、期中平均株式数の計算において控除する自己株式に含めている旨を注記としていた定めを改正し、注記事項として1株当たり情報に関する注記を記載していない場合には、当該注記は不要とした。
 ② 自己株式に関する注記  1株当たり純資産額の算定上、当期首及び当期末の自己株式数に含まれる信託が保有する自社の株式数、当期に増減した自己株式数に含まれる信託が取得又は売却、交付した自社の株式数、信託が保有する自社の株式に対する配当金額を、株主資本等変動計算書に注記するとしていた定めを改正し、連結株主資本等変動計算書又は個別株主資本等変動計算書の注記事項として自己株式の種類及び株式数に関する事項、並びに配当に関する事項を記載していない場合には、当該注記は不要とした。

4 適用時期  本会計基準等は、公表日以後最初に終了する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用することとした。

Ⅲ おわりに
 今回の本会計基準等の改正は、単体開示の簡素化に係る財務諸表等規則等の改正に伴い、関連する会計基準等について個別財務諸表における開示の要否を明確にするために行われたものである。したがって、単体開示の簡素化に係る財務諸表等規則等の改正に伴う明確化以外の新たな取扱いは規定していないことに留意が必要である。

脚注
1 なお、ASBJが公表した企業会計基準適用指針及び実務対応報告の準拠性については、平成14年5月17日にASBJの設立9団体より公表された「(財)財務会計基準機構・企業会計基準委員会から公表される企業会計基準等の取扱い(準拠性)について」において、ASBJが公表する企業会計基準適用指針及び実務対応報告については、企業会計基準に対する詳細規定や解釈規定、あるいは補足・補完規定と位置付けられ、企業会計基準と一体性を有するものであることから、同様にこれらは市場関係者が準拠し、あるいは判断の拠り所となるものである、とされている。

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