解説記事2015年05月25日 【新会計基準解説】 改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」について(2015年5月25日号・№595)
新会計基準解説
改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」について
企業会計基準委員会 専門研究員 淡河貴絵
Ⅰ はじめに
企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成27年3月26日に、改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「平成27年改正実務対応報告」という。)を公表した(脚注1)。本稿では、平成27年改正実務対応報告の概要を紹介する。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。
Ⅱ 改正の経緯
平成25年3月29日に開催された第261回企業会計基準委員会において、基準諮問会議からASBJに対して、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)の見直しについて、新規テーマとして提言された。これを受けて、平成27年改正実務対応報告では、①平成26年1月に改正された、米国におけるFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)のTopic 350「無形資産-のれん及びその他」(以下「FASB-ASC Topic 350」という。)への対応、②平成25年9月に改正された企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)への対応、及び③退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理の明確化を行っている。
平成27年改正実務対応報告は、平成26年12月24日に公開草案を公表し、広くコメント募集を行った後、寄せられたコメントを検討したうえで公表に至ったものである。
Ⅲ 改正の範囲
本実務対応報告の見直しにあたっては、本実務対応報告を公表した平成18年以後に新規公表又は改正された国際財務報告基準(IFRS)及び米国会計基準の主なものについて、本実務対応報告の「当面の取扱い」において「当該修正額に重要性が乏しい場合を除き、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社の会計処理を修正しなければならない」とされている項目(以下「修正項目」という。)に追加すべき項目があるか否かを検討した。この結果、国際財務報告基準第9号「金融商品」(以下「IFRS第9号」という。)における、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資の公正価値の変動におけるノンリサイクリング処理等を修正項目へ追加するかどうかが検討されたが、IFRS第9号については、現状、欧州及び米国の在外子会社では基本的に用いられておらず、影響が少ないと考えられること、及び我が国の会計基準に共通する考え方と異なる場合に他の修正項目等との整合性を図った上で修正項目とするか否か等を整理することには時間を要することから、今回の改正は前述した3つとしている。
なお、IFRS第9号における、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資の公正価値の変動におけるノンリサイクリング処理等を修正項目として追加するか否かについては、今後検討を行う予定である。
Ⅳ 平成27年改正実務対応報告の概要
本実務対応報告は、連結財務諸表を作成する場合、同一環境下で行われた同一性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計方針は、原則として統一しなければならないとしたうえで、「当面の取扱い」として、在外子会社の財務諸表が、IFRS又は米国会計基準に準拠して作成されている場合には、それらを連結決算手続上利用することとし、「当面の取扱い」に示された修正項目について、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社の会計処理を修正することとしている。
平成27年改正実務対応報告では、当該修正項目のうち、のれんの償却に関する取扱い及び退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理に関する取扱いについて明確化を図るとともに、平成25年9月の連結会計基準の公表により、少数株主損益の会計処理の取扱いについての国際的な会計基準との差異がなくなったことに伴う改正を行い、当該修正項目は4項目とされている。
1 のれんの償却に関する取扱い 米国会計基準では、原則としてのれんは償却されないが、平成26年1月にFASBからFASB-ASC Topic 350の改正が公表され、非公開会社(脚注2)はのれんを10年間(脚注3)(又は、より短い期間で償却することが適切である場合には、10年より短い期間)の定額法により償却する代替的な会計処理を選択できるようになった(脚注4)(FASB-ASC Topic 350-20-15-4、FASB-ASC Topic350-20-35-63)。代替的な会計処理を選択する場合、適用初年度の期首に存在するすべてののれんは、将来に向かって適用され、償却処理を行うこととなるとされている。また、代替的な会計処理を選択する場合、平成26年12月15日より後に開始する事業年度及び平成27年12月15日より後に開始する事業年度に含まれる期間に新しく認識したのれんに適用される。なお、早期適用は認められている。
これを受けて、平成27年改正実務対応報告では、「当面の取扱い」において修正項目の一つとして示されている「(1)のれんの償却」に関する取扱いを改正し、在外子会社においてのれんを償却していない場合に、連結決算手続上、当該のれんを償却することを明確にした。
したがって、米国子会社(非公開会社)が従来どおりのれんを償却していない場合には、連結決算手続上、日本基準に基づいて20年以内の効果の及ぶ期間にわたって償却することとなる。一方、米国子会社(非公開会社)がのれんを償却している場合には、通常、当該子会社を支配している親会社の意図を反映して償却しているものと考えられ、連結決算手続上、特段の修正は不要と考えられる。
なお、平成27年改正実務対応報告の適用初年度の期首に連結財務諸表において計上されているのれんのうち、在外子会社が平成26年1月に改正されたFASB-ASC Topic 350に基づき償却処理を選択したのれんについては、経過的な取扱いを設けている(詳細は「4.適用時期等」を参照)。
2 少数株主損益(脚注5)の会計処理に関する取扱い 平成27年改正前の本実務対応報告では、「当面の取扱い」の「(6)少数株主損益の会計処理」において、「在外子会社における当期純利益に少数株主損益が含まれている場合には、連結決算手続上、当該少数株主損益を加減し、当期純利益が親会社持分相当額となるよう修正する。」ことが修正項目の一つとして示されていた。
しかしながら、平成25年9月に改正された連結会計基準において、従来の「少数株主損益調整前当期純利益」を「当期純利益」として表示し、「親会社株主に帰属する当期純利益」を区分して内訳表示又は付記することとされた。この結果、前述した「(6)少数株主損益の会計処理」に関する取扱いについて、国際的な会計基準との差異がなくなったことに伴い、修正項目としていた当該項目を削除している。
3 退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理に関する取扱い 平成27年改正前の本実務対応報告では、「当面の取扱い」の「(2)退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理(脚注6)」において、在外子会社が退職給付会計における数理計算上の差異(再測定)の金額をその他の包括利益で認識し、ノンリサイクリング処理している場合に、連結決算手続上、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」(以下「退職給付会計基準」という。)に従い、当該金額を平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に処理する方法(発生した期に全額を処理する方法を継続して採用することも含む。)により、当期の損益とすることが修正項目の一つとして示されていた。
この点、上述したノンリサイクリング処理以外の差異についてまで、退職給付会計基準に従った修正を求める趣旨ではなく、修正項目は、従来から修正項目としていた部分に限られることを明確にするため、退職給付会計基準を参照する文言を削除する等の改正を行った。
したがって、在外子会社が、上述したノンリサイクリング処理以外の事項について、退職給付会計基準(日本基準)と異なる会計処理を行っている場合に、連結決算手続上、当該事項に関する特段の修正は不要と考えられる。
4 適用時期等 平成27年改正実務対応報告は、平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用するものとしている。ただし、平成25年9月に改正された連結会計基準における当期純利益等の表示についての適用が平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首からであることに鑑み、今回の改正により削除された「(6)少数株主損益の会計処理」に関する取扱いを除き、平成27年改正実務対応報告の公表後最初に終了する連結会計年度の期首から適用することができるものとしている。
なお、平成27年改正実務対応報告の適用初年度の期首に連結財務諸表において計上されているのれんのうち、在外子会社が平成26年1月に改正されたFASB-ASC Topic 350に基づき償却処理を選択したのれんについては、実務上の便宜を図るため、経過的な取扱いを定めている。本実務対応報告は、原則として在外子会社の財務諸表がIFRS又は米国会計基準に準拠して作成されている場合には、当面の間、必要な修正を加えた上でそれらを連結決算手続上利用することができるものとしている一方で、米国会計基準が改正されても適用初年度の期首に計上されているのれんについて連結上は何も変わっていない。これらを勘案し、適用初年度の期首における当該のれんの取扱いについては、企業結合ごとに以下のいずれかの方法を適用するものとしている。
① 連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間に基づき償却する。
② 在外子会社が採用する償却期間が連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間を下回る場合に、当該償却期間に変更する。この場合、変更後の償却期間に基づき将来にわたり償却する。
また、平成27年改正実務対応報告を早期適用する場合、連結会計年度中の第2四半期連結会計期間以降からも適用することができるものとし、この場合であっても、上記の経過的な取扱いは、連結会計年度の期首に遡って適用するものとしている。
Ⅴ おわりに
平成27年改正実務対応報告の公表に併せて、企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」及び実務対応報告第24号「持分法適用会社の会計処理に関する当面の取扱い」の修正が行われていることに留意が必要である。
脚注
1 平成27年改正実務対応報告の全文については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/zaigai2015/zaigai_2015_1.pdf)を参照のこと。
2 FASB-ASC Topic 350-20-65-2では、「Private Company」として、公開企業、非営利事業体及び従業員給付制度以外の事業体と定義されており、本稿では「非公開会社」と表記している。
3 のれんの償却期間の上限を10年とした理由は、企業結合で取得した資産および負債の重要な部分は、一般的に10年後までに完全に使用される、又は履行されると考えられるため、例えば、事業が年3%で成長すると仮定し、割引率が15%の場合には、キャッシュ・フローの現在価値の約70%が最初の10年間で創出されると説明されている(FASB-ASC Topic 350 BC17)。
4 代替的な会計処理を選択適用できるものとした背景に、下記が挙げられている。
・非公開会社の財務諸表利用者の多くはのれん及びのれんに関する減損損失を考慮せずに非公開会社の財政状態及び経営成績の分析を行っていること
・作成者や監査人からのれんの減損テストの実施に係るコストと複雑性に関する懸念が示されていること
5 平成25年9月の連結会計基準の改正により、「少数株主利益」は、「非支配株主に帰属する当期純利益」とされている。
6 「費用処理」には、費用の減額処理又は費用を超過して減額した場合の利益処理が含まれる(退職給付会計基準第11項)。
改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」について
企業会計基準委員会 専門研究員 淡河貴絵
Ⅰ はじめに
企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成27年3月26日に、改正実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「平成27年改正実務対応報告」という。)を公表した(脚注1)。本稿では、平成27年改正実務対応報告の概要を紹介する。なお、文中の意見にわたる部分は筆者の私見であることをあらかじめ申し添える。
Ⅱ 改正の経緯
平成25年3月29日に開催された第261回企業会計基準委員会において、基準諮問会議からASBJに対して、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)の見直しについて、新規テーマとして提言された。これを受けて、平成27年改正実務対応報告では、①平成26年1月に改正された、米国におけるFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)のTopic 350「無形資産-のれん及びその他」(以下「FASB-ASC Topic 350」という。)への対応、②平成25年9月に改正された企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)への対応、及び③退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理の明確化を行っている。
平成27年改正実務対応報告は、平成26年12月24日に公開草案を公表し、広くコメント募集を行った後、寄せられたコメントを検討したうえで公表に至ったものである。
Ⅲ 改正の範囲
本実務対応報告の見直しにあたっては、本実務対応報告を公表した平成18年以後に新規公表又は改正された国際財務報告基準(IFRS)及び米国会計基準の主なものについて、本実務対応報告の「当面の取扱い」において「当該修正額に重要性が乏しい場合を除き、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社の会計処理を修正しなければならない」とされている項目(以下「修正項目」という。)に追加すべき項目があるか否かを検討した。この結果、国際財務報告基準第9号「金融商品」(以下「IFRS第9号」という。)における、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資の公正価値の変動におけるノンリサイクリング処理等を修正項目へ追加するかどうかが検討されたが、IFRS第9号については、現状、欧州及び米国の在外子会社では基本的に用いられておらず、影響が少ないと考えられること、及び我が国の会計基準に共通する考え方と異なる場合に他の修正項目等との整合性を図った上で修正項目とするか否か等を整理することには時間を要することから、今回の改正は前述した3つとしている。
なお、IFRS第9号における、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資の公正価値の変動におけるノンリサイクリング処理等を修正項目として追加するか否かについては、今後検討を行う予定である。
Ⅳ 平成27年改正実務対応報告の概要
本実務対応報告は、連結財務諸表を作成する場合、同一環境下で行われた同一性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計方針は、原則として統一しなければならないとしたうえで、「当面の取扱い」として、在外子会社の財務諸表が、IFRS又は米国会計基準に準拠して作成されている場合には、それらを連結決算手続上利用することとし、「当面の取扱い」に示された修正項目について、連結決算手続上、当期純利益が適切に計上されるよう当該在外子会社の会計処理を修正することとしている。
平成27年改正実務対応報告では、当該修正項目のうち、のれんの償却に関する取扱い及び退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理に関する取扱いについて明確化を図るとともに、平成25年9月の連結会計基準の公表により、少数株主損益の会計処理の取扱いについての国際的な会計基準との差異がなくなったことに伴う改正を行い、当該修正項目は4項目とされている。
1 のれんの償却に関する取扱い 米国会計基準では、原則としてのれんは償却されないが、平成26年1月にFASBからFASB-ASC Topic 350の改正が公表され、非公開会社(脚注2)はのれんを10年間(脚注3)(又は、より短い期間で償却することが適切である場合には、10年より短い期間)の定額法により償却する代替的な会計処理を選択できるようになった(脚注4)(FASB-ASC Topic 350-20-15-4、FASB-ASC Topic350-20-35-63)。代替的な会計処理を選択する場合、適用初年度の期首に存在するすべてののれんは、将来に向かって適用され、償却処理を行うこととなるとされている。また、代替的な会計処理を選択する場合、平成26年12月15日より後に開始する事業年度及び平成27年12月15日より後に開始する事業年度に含まれる期間に新しく認識したのれんに適用される。なお、早期適用は認められている。
これを受けて、平成27年改正実務対応報告では、「当面の取扱い」において修正項目の一つとして示されている「(1)のれんの償却」に関する取扱いを改正し、在外子会社においてのれんを償却していない場合に、連結決算手続上、当該のれんを償却することを明確にした。
したがって、米国子会社(非公開会社)が従来どおりのれんを償却していない場合には、連結決算手続上、日本基準に基づいて20年以内の効果の及ぶ期間にわたって償却することとなる。一方、米国子会社(非公開会社)がのれんを償却している場合には、通常、当該子会社を支配している親会社の意図を反映して償却しているものと考えられ、連結決算手続上、特段の修正は不要と考えられる。
なお、平成27年改正実務対応報告の適用初年度の期首に連結財務諸表において計上されているのれんのうち、在外子会社が平成26年1月に改正されたFASB-ASC Topic 350に基づき償却処理を選択したのれんについては、経過的な取扱いを設けている(詳細は「4.適用時期等」を参照)。
2 少数株主損益(脚注5)の会計処理に関する取扱い 平成27年改正前の本実務対応報告では、「当面の取扱い」の「(6)少数株主損益の会計処理」において、「在外子会社における当期純利益に少数株主損益が含まれている場合には、連結決算手続上、当該少数株主損益を加減し、当期純利益が親会社持分相当額となるよう修正する。」ことが修正項目の一つとして示されていた。
しかしながら、平成25年9月に改正された連結会計基準において、従来の「少数株主損益調整前当期純利益」を「当期純利益」として表示し、「親会社株主に帰属する当期純利益」を区分して内訳表示又は付記することとされた。この結果、前述した「(6)少数株主損益の会計処理」に関する取扱いについて、国際的な会計基準との差異がなくなったことに伴い、修正項目としていた当該項目を削除している。
3 退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理に関する取扱い 平成27年改正前の本実務対応報告では、「当面の取扱い」の「(2)退職給付会計における数理計算上の差異の費用処理(脚注6)」において、在外子会社が退職給付会計における数理計算上の差異(再測定)の金額をその他の包括利益で認識し、ノンリサイクリング処理している場合に、連結決算手続上、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」(以下「退職給付会計基準」という。)に従い、当該金額を平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に処理する方法(発生した期に全額を処理する方法を継続して採用することも含む。)により、当期の損益とすることが修正項目の一つとして示されていた。
この点、上述したノンリサイクリング処理以外の差異についてまで、退職給付会計基準に従った修正を求める趣旨ではなく、修正項目は、従来から修正項目としていた部分に限られることを明確にするため、退職給付会計基準を参照する文言を削除する等の改正を行った。
したがって、在外子会社が、上述したノンリサイクリング処理以外の事項について、退職給付会計基準(日本基準)と異なる会計処理を行っている場合に、連結決算手続上、当該事項に関する特段の修正は不要と考えられる。
4 適用時期等 平成27年改正実務対応報告は、平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用するものとしている。ただし、平成25年9月に改正された連結会計基準における当期純利益等の表示についての適用が平成27年4月1日以後開始する連結会計年度の期首からであることに鑑み、今回の改正により削除された「(6)少数株主損益の会計処理」に関する取扱いを除き、平成27年改正実務対応報告の公表後最初に終了する連結会計年度の期首から適用することができるものとしている。
なお、平成27年改正実務対応報告の適用初年度の期首に連結財務諸表において計上されているのれんのうち、在外子会社が平成26年1月に改正されたFASB-ASC Topic 350に基づき償却処理を選択したのれんについては、実務上の便宜を図るため、経過的な取扱いを定めている。本実務対応報告は、原則として在外子会社の財務諸表がIFRS又は米国会計基準に準拠して作成されている場合には、当面の間、必要な修正を加えた上でそれらを連結決算手続上利用することができるものとしている一方で、米国会計基準が改正されても適用初年度の期首に計上されているのれんについて連結上は何も変わっていない。これらを勘案し、適用初年度の期首における当該のれんの取扱いについては、企業結合ごとに以下のいずれかの方法を適用するものとしている。
① 連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間に基づき償却する。
② 在外子会社が採用する償却期間が連結財務諸表におけるのれんの残存償却期間を下回る場合に、当該償却期間に変更する。この場合、変更後の償却期間に基づき将来にわたり償却する。
また、平成27年改正実務対応報告を早期適用する場合、連結会計年度中の第2四半期連結会計期間以降からも適用することができるものとし、この場合であっても、上記の経過的な取扱いは、連結会計年度の期首に遡って適用するものとしている。
Ⅴ おわりに
平成27年改正実務対応報告の公表に併せて、企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」及び実務対応報告第24号「持分法適用会社の会計処理に関する当面の取扱い」の修正が行われていることに留意が必要である。
脚注
1 平成27年改正実務対応報告の全文については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/zaigai2015/zaigai_2015_1.pdf)を参照のこと。
2 FASB-ASC Topic 350-20-65-2では、「Private Company」として、公開企業、非営利事業体及び従業員給付制度以外の事業体と定義されており、本稿では「非公開会社」と表記している。
3 のれんの償却期間の上限を10年とした理由は、企業結合で取得した資産および負債の重要な部分は、一般的に10年後までに完全に使用される、又は履行されると考えられるため、例えば、事業が年3%で成長すると仮定し、割引率が15%の場合には、キャッシュ・フローの現在価値の約70%が最初の10年間で創出されると説明されている(FASB-ASC Topic 350 BC17)。
4 代替的な会計処理を選択適用できるものとした背景に、下記が挙げられている。
・非公開会社の財務諸表利用者の多くはのれん及びのれんに関する減損損失を考慮せずに非公開会社の財政状態及び経営成績の分析を行っていること
・作成者や監査人からのれんの減損テストの実施に係るコストと複雑性に関する懸念が示されていること
5 平成25年9月の連結会計基準の改正により、「少数株主利益」は、「非支配株主に帰属する当期純利益」とされている。
6 「費用処理」には、費用の減額処理又は費用を超過して減額した場合の利益処理が含まれる(退職給付会計基準第11項)。
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