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解説記事2015年07月20日 【税制改正解説】 平成27年度における所得税関係の改正について(2015年7月20日号・№603)

税制改正解説
平成27年度における所得税関係の改正について
 櫻井秀樹

はじめに

 「デフレ脱却・経済再生」の実現、地方創生への取組み、経済再生と財政健全化の両立、国境を越えた取引等に係る課税の国際的調和、震災からの復興支援等の観点から、法人税率の引下げ、未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置の創設、地方創生に取り組むための投資促進税制の創設、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設、消費税率引上げの施行日の変更、国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税の見直し、租税特別措置の見直し等所要の措置を講ずることを内容とした「所得税法等の一部を改正する法律」は国会における審議を経て平成27年3月31日に参議院本会議にて可決・成立し、同日に関係政省令とともに公布され、原則として4月1日から施行されている。
 以下、これらの改正内容について、その概要を紹介する。

Ⅰ 所得税法等の改正

1 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等の創設
 株式等のキャピタルゲインについては、株式等の売却等により実現した時点で、株式を売却した納税者が居住している国において課税されることが原則となっている。こうした仕組みを利用して、巨額の含み益を有する株式を保有したまま国外転出し、キャピタルゲイン非課税国において売却することにより課税逃れを行うことが可能となっている。
 そうした課税逃れを防止する観点から、主要国の多くが国外転出時点の未実現の所得(含み益)を国外転出前の居住地国で課税するようになってきている。
 平成26年9月に公表されたBEPS(税源侵食と利益移転)プロジェクトの行動計画第1段報告書においても、行動6「租税条約の濫用防止」の中で、国外転出時における未実現のキャピタルゲインに対する課税が、租税回避防止措置として位置づけられている。
 そこで、日本においても、主要国と足並みを揃え、一定の国外転出者に対して、国外転出直前に対象資産を譲渡して同時に買い戻したとみなして、その未実現のキャピタルゲインに課税する譲渡所得等の課税の特例を創設することとされた。
(1)国外転出をする場合の譲渡所得等の特例  ① 国外転出をする居住者が、その国外転出の時において有価証券等を有する場合には、その者の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その国外転出の時に、その時における価額等により、その有価証券等の譲渡があったものとみなして所得税が課税されることとされた(所法60の2①)。
 ② 国外転出をする居住者が、その国外転出の時において決済していない信用取引若しくは発行日取引又はデリバティブ取引(以下「未決済信用取引等」という。)に係る契約を締結している場合には、その者の事業所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その国外転出の時に、その時に決済をしたものとみなして算出した利益の額又は損失の額等が生じたものとみなして所得税が課税されることとされた(所法60の2②③)。
 ③ 国外転出の日の属する年分の所得税につき上記①又は②の課税を受けるべき個人が、その国外転出の日から5年を経過する日までに帰国をした場合等には、その国外転出の時に有していた有価証券等又は契約を締結していた未決済信用取引等のうち、その帰国の時まで引き続き有し、又は決済していないものについては、その個人の国外転出の日の属する年分の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、そのみなされた有価証券等の譲渡及び未決済信用取引等の決済の全てがなかったものとすることができることとされた(所法60の2⑥)。
(2)贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例  ① 居住者の有する有価証券等が、贈与、相続又は遺贈(以下「贈与等」という。)により非居住者に移転した場合には、その居住者の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その贈与等の時に、その時における価額に相当する金額により、その有価証券等の譲渡があったものとみなして所得税が課税されることとされた(所法60の3①)。
 ② 居住者が締結している未決済信用取引等に係る契約が、贈与等により非居住者に移転した場合には、その居住者の事業所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その贈与等の時に、その未決済信用取引等を決済したものとみなして算出した利益の額又は損失の額に相当する金額が生じたものとみなして所得税が課税されることとされた(所法60の3②③)。
 ③ 贈与等の日の属する年分の所得税につき上記①又は②の課税を受けるべき居住者から、その贈与等により有価証券等又は未決済信用取引等に係る契約の移転を受けた非居住者である受贈者又は同一の被相続人から相続若しくは遺贈により財産を取得した全ての非居住者(以下「受贈者等」という。)が、その贈与等の日から5年を経過する日までに帰国をした場合等には、その受贈者等がその帰国の時まで引き続き有している有価証券等又は決済していない未決済信用取引等については、この制度による課税を受けた居住者の贈与等の日の属する年分の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、そのみなされた有価証券等の譲渡及び未決済信用取引等の決済の全てがなかったものとすることができることとされた(所法60の3⑥)。
(3)国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予  国外転出をする居住者でその国外転出の時に有している有価証券等又は契約を締結している未決済信用取引等について国外転出時課税(上記(1)①又は②の課税)の適用を受けた者がその国外転出の日の属する年分の所得税で確定申告により納付すべきものの額のうち、これらの資産(その年分の所得税に係る確定申告期限まで引き続き有し、又は決済をしていないものに限る。)に係る納税猶予分の所得税額に相当する所得税については、その居住者が、その国外転出の時までに納税管理人の届出をし、かつ、その年分の所得税に係る確定申告期限までにその納税猶予分の所得税額に相当する担保を供した場合に限り、その国外転出の日から5年を経過する日(届出書を提出した場合には、10年を経過する日)まで、その納税の猶予を受けることができることとされた(所法137の2①)。
(4)贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予
 ① 贈与があった場合の納税の猶予
  贈与により非居住者に移転した有価証券等又は未決済信用取引等に係る契約について贈与等時譲渡益課税(上記(2)①又は②の課税)の適用を受けた者がその贈与の日の属する年分の所得税で確定申告又は準確定申告により納付すべきものの額のうち、これらの資産(当該年分の所得税に係る確定申告期限まで引き続き有し、又は決済をしていないものに限る。)に係る贈与納税猶予分の所得税額に相当する所得税については、その適用を受けた者が、その年分の所得税に係る確定申告期限までにその贈与納税猶予分の所得税額に相当する担保を供した場合に限り、その贈与の日から5年を経過する日まで、その納税の猶予を受けることができることとされた(所法137の3①)。
 ② 相続・遺贈があった場合の納税の猶予   相続又は遺贈により非居住者に移転した有価証券等又は未決済信用取引等に係る契約について贈与等時譲渡益課税(上記(2)①又は②の課税)の適用を受けた者の全ての相続人がその相続の開始の日の属する年分の所得税で死亡の場合の準確定申告により納付すべきものの額のうち、これらの資産(その年分の所得税に係る確定申告期限まで引き続き有し、又は決済をしていないものに限る。)に係る相続等納税猶予分の所得税額に相当する所得税については、その年分の所得税に係る確定申告期限までに、その相続人がその相続等納税猶予分の所得税額に相当する担保を供し、かつ、その相続又は遺贈によりこれらの資産を取得した非居住者の全てが納税管理人の届出をした場合に限り、その相続の開始の日から5年を経過する日(届出書を提出した場合には、10年を経過する日)まで、その納税の猶予を受けることができることとされた(所法137の3②)。
(5)相続により取得した有価証券等の取得費の額に変更があった場合等の修正申告及び更正の請求の特例
 ① 修正申告の特例
  居住者が相続又は遺贈により取得した有価証券等の譲渡をした場合において、その譲渡の日以後にその相続又は遺贈に係る被相続人のその相続の開始の日の属する年分の所得税について上記(1)③又は(2)③の課税の取消しがあったことにより、その被相続人が国外転出の時に課税された有価証券等の取得価額の減額等がされ、かつ、その居住者のその譲渡の日の属する年分の所得税の税額に不足額がある等の修正申告をすべき事由が生じた場合には、その居住者は、その被相続人の所得税の課税の取消しに係る更正の請求に基づく更正があった日から4月以内に、その譲渡の日の属する年分の所得税についての修正申告書を提出し、かつ、その期限内にその修正申告書の提出により納付すべき税額を納付しなければならないこととされた(所法151の2①)。
 ② 更正の請求の特例   居住者が相続又は遺贈により取得した有価証券等の譲渡をした場合において、その譲渡の日以後にその相続又は遺贈に係る被相続人のその相続の開始の日の属する年分の所得税について上記(1)③又は(2)③の課税の取消しがあったことにより、その被相続人が国外転出の時に課税された有価証券等の取得価額の増額等がされ、かつ、その居住者のその譲渡の日の属する年分の確定申告書又は決定に係る所得金額や税額等が過大となるときは、その居住者は、その被相続人の所得税の課税の取消しに係る更正の請求に基づく更正があった日から4月以内に、税務署長に対し、その譲渡の日の属する年分の所得税について更正の請求をすることができることとされた(所法153の4①)。
※ この制度は、居住者が平成27年7月1日以後に国外転出をする場合又は同日以後の贈与、相続又は遺贈について適用される(改正法附則7、8)。

2 国外居住親族に係る扶養控除等の書類の添付等義務化  非居住者である親族に係る扶養控除等について、次の改正が行われた。
(1)確定申告において、非居住者である親族(以下「国外居住親族」という。)に係る扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除又は障害者控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金等関係書類を確定申告書に添付し、又は確定申告書の提出の際に提示しなければならないこととされた(所法120③、所令262②、所規47の2④⑤)。ただし、既に下記(2)又は(3)により添付し、又は提示したこれらの書類については、確定申告書に添付又は提示を要しないこととされている(所令262②ただし書)。
(2)給与等又は公的年金等の源泉徴収において、国外居住親族に係る扶養控除、配偶者控除又は障害者控除(以下「扶養控除等」という。)の適用を受ける居住者は、親族関係書類を扶養控除等申告書等に添付し、又はその申告書等の提出の際に提示しなければならないこととされた(所法194①②④、195①②④、203の5①~③等)。
(3)給与等の年末調整において、国外居住親族に係る扶養控除等の適用を受ける居住者は、送金等関係書類を扶養控除等申告書に添付し、又はその申告書の提出の際に提示しなければならないこととされ、国外居住親族に係る配偶者特別控除の適用を受ける居住者は、親族関係書類及び送金等関係書類を配偶者特別控除申告書に添付し、又はその申告書の提出の際に提示しなければならないこととされた(所法194⑤⑥、所令316の2③、所規73の2②)。
※ (1)の改正は、平成28年分以後の所得税に係る確定申告書を提出する場合について適用される(改正法附則10)。
 (2)及び(3)の改正は、平成28年1月1日以後に支払うべき給与等又は公的年金等について適用される(改正法附則12①、13①)。

3 家事関連費等の必要経費不算入制度の改正
(1)
国外転出をする場合の譲渡所得等の特例等の創設に伴い、国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税及び贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税で一定の金額に相当するものを、その者の事業所得の金額の計算上必要経費に算入しないこととされている所得税から除外された(所法45①二、所令97①三、四)。
(2)不当景品類及び不当表示防止法の規定により課される課徴金及び延滞金は、必要経費に算入されないこととされた(所法45①十二)。
※ (1)の改正は、平成27年7月1日から施行される(改正法附則1二イ)。
 (2)の改正は、不当景品類及び不当表示防止法の一部を改正する法律(平成26年法律第118号)の施行の日以後に行われた行為に係る課徴金及び延滞金について適用される(改正法附則6)。

4 資産の譲渡とみなされる行為となる借地権の設定の判定方法の見直し  大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の規定により大深度地下の使用の認可を受けた事業と一体的に施行される事業(その認可を受けた事業に係る事業計画書に記載されたものに限る。)により設置される施設又は工作物の全部の所有を目的とする地下について上下の範囲を定めた借地権の設定がされた場合において、その設定の対価として支払を受ける金額が、その土地の価額の2分の1に相当する金額にその土地における地表から大深度(同法に規定する大深度をいう。)までの距離のうちにその借地権の設定される範囲のうち最も浅い部分の深さからその大深度までの距離の占める割合を乗じて計算した金額の10分の5に相当する金額を超えるときは、その設定は資産の譲渡とみなされる行為に該当し、その設定の対価に係る所得を譲渡所得として課税することとされた(所令79①三)。
※ 平成27年4月1日以後に行う区分地上権等の設定について適用される(改正所令附則6)。

5 貸倒引当金制度の改正  簡便法による実質的に債権とみられない金額の計算に用いられる基準年が、平成27年及び平成28年とされた(所令145②)。
※ 平成27年分以後の所得税について適用し、平成26年分以前の所得税については従前どおりとされている(改正所令附則7①)。

6 資産に係る控除対象外消費税額等の必要経費算入の改正  控除対象外消費税額等が特定課税仕入れに係るものである場合には、課税売上割合に準ずる割合が80%未満の年においても、その特定課税仕入れに係る控除対象外消費税額等が生じた年においてその全額を必要経費に算入することとされた(所令182の2②二)。
※ 平成27年分以後の所得税について適用し、平成26年分以前の所得税については、従前どおりとされている(改正所令附則9①)。

Ⅱ 租税特別措置法等(金融・証券税制関係)の改正

1 未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税の創設
 非課税口座内上場株式等に係る非課税措置(NISA)は、これまで投資に関心のなかった個人の株式市場への参加を促進することを目的として平成26年から導入されている。しかしながら、NISAの利用実態を見ると、非課税口座を開設している者はこれまでも比較的多くの株式投資を行っていた高齢者層に偏っているのが現状である。そこで、若年者層への投資のすそ野拡大を図るとともに、高齢者層から若年者層への世代間の資産移転を促すことを目的として、投資対象者を20歳未満の者に限定した未成年者口座内上場株式等に係る非課税措置が創設された。
(1)配当所得の非課税  金融商品取引業者等の営業所に未成年者口座を開設している居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、次の未成年者口座内上場株式等の区分に応じそれぞれ次に定める期間内に支払を受けるべき未成年者口座内上場株式等の配当等(その金融商品取引業者等が国内における支払の取扱者であるものに限る。)については、所得税を課さないこととされた(措法9の9①)。
 ① 非課税管理勘定に係る未成年者口座内上場株式等……その未成年者口座にその非課税管理勘定を設けた日から同日の属する年の1月1日以後5年を経過する日までの間
 ② 継続管理勘定に係る未成年者口座内上場株式等……その未成年者口座にその継続管理勘定を設けた日からその未成年者口座を開設した者がその年1月1日において20歳である年の前年12月31日までの間
(2)譲渡所得等の非課税  金融商品取引業者等の営業所に未成年者口座を開設している居住者等が、上記(1)①又は②の未成年者口座内上場株式等の区分に応じて定める期間内に、その未成年者口座内上場株式等のその未成年者口座管理契約に基づく譲渡をした場合には、その譲渡による譲渡所得等については、所得税を課さないこととされた(措法37の14の2①)。
(3)未成年者口座  上記の未成年者口座とは、居住者等(その年1月1日において20歳未満である者又はその年中に出生した者に限る。)が、非課税の適用を受けるため、一定の事項を記載した未成年者口座開設届出書に、未成年者非課税適用確認書又は未成年者口座廃止通知書を添付して、これをその金融商品取引業者等の営業所の長に提出をして、その金融商品取引業者等との間で締結した未成年者口座管理契約に基づき平成28年4月1日から平成35年12月31日までの間に設定された上場株式等の振替記載等に係る口座をいう(措法37の14の2⑤一)。
 この未成年者口座に設けられる非課税管理勘定には、その勘定の設定の日から同日の属する年の12月31日までの期間内にその金融商品取引業者等への買付けの委託等により取得した上場株式等で、その期間内に受け入れた上場株式等の取得対価の額の合計額が80万円を超えないものその他一定の上場株式等のみを受け入れることができる(措法37の14の2⑤二、三)。
※ 平成28年1月1日以後に未成年者非課税適用確認書の交付申請書の提出がされ、平成28年4月1日以後に開設される未成年者口座について適用される(措法37の14の2⑤一、⑫)。

2 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税の改正
(1)
非課税口座に設けられる各年分の非課税管理勘定に受け入れることができる上場株式等の取得対価の額の限度額が、120万円(改正前:100万円)に引き上げられた(措法37の14⑤二)。
(2)非課税適用確認書の交付申請書の記載事項等の金融商品取引業者等の営業所の長から所轄税務署長への提供方法について、光ディスク等を提出する方法が廃止され、電子情報処理組織(e-Tax)を使用する方法に一本化された(措法37の14⑨⑬⑯⑲ 、措令25の13の2④、25の13の3②)。
(3)金融商品取引業者等の営業所の長が所轄税務署長の承認を受けた場合に当該所轄税務署長以外の税務署長に提供することができる事項の範囲に、次に掲げる事項が追加された(措法37の14、措令25の13)。
① 居住者等から提出を受けた非課税口座異動届出書の記載事項 
② 居住者等から提出を受けた非課税口座移管依頼書の記載事項 
③ 金融商品取引業者等に事業譲渡等があった場合の提供事項 
(4)居住者等が平成29年から平成35年までの各年(その年1月1日において居住者等が20歳である年に限る。)の1月1日において金融商品取引業者等の営業所に未成年者口座を開設している場合には、その未成年者口座を開設している金融商品取引業者等に非課税口座が開設されることとされた(措法37の14 )。
(5)非課税口座に設けられる各年分の非課税管理勘定に受け入れることができる上場株式等の範囲に、その非課税口座が開設されている金融商品取引業者等に開設されている未成年者口座に係る未成年者口座内上場株式等が追加された(措法37の14⑤二、措令25の13⑨、措規18の15の3④)。
※ (1)の改正は、平成28年1月1日以後に設けられる非課税管理勘定について適用し、同日前に設けられた非課税管理勘定については従前どおりとされている(改正法附則69①)。
  (2)の改正は、平成27年4月1日以後に提供する申請事項等について適用し、同日前に提供する申請事項等については従前どおりとされている(改正法附則69③、改正措令附則23②、24)。
  (3)の改正は、平成27年4月1日以後に所轄税務署長に提供する提供事項について適用し、同日前に所轄税務署長に提供した提供事項については従前どおりとされている(改正法附則69④)。
  (4)及び(5)の改正は、平成28年1月1日から施行される(改正法附則1四ハ)。

3 上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例等の改正  上場株式等に係る譲渡所得等の課税の特例等の対象となる上場株式等及び特定公社債について、次の措置が講じられた。
(1)上場株式等の範囲に、特定受益証券発行信託の受益権で公募のものが追加された(措法8の4①四、8の5①五、9の3四、9の3の2①四、37の11②三の二)。
(2)発行する社債が特定公社債となる金融商品取引業を行う法人の範囲から、第一種少額電子募集取扱業者が除外された(措法37の11②十三)。
※ 平成28年1月1日以後に行う上場株式等の譲渡等について適用される(措法8の4①、8の5①、9の3、9の3の2①、37の11①)。

4 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例等の改正
(1)
金融商品取引業者等の営業所の長は既に特定口座を開設している居住者等から重ねて提出がされた特定口座開設届出書であっても、その特定口座が課税未成年者口座である場合に提出がされた特定口座開設届出書及び課税未成年者口座として特定口座を開設するために提出がされた特定口座開設届出書については、受理することができることとされた(措法37の11の3⑤)。
(2)特定口座間の上場株式等の移管をする場合には、移管の依頼を受けた移管元の金融商品取引業者等の営業所の長は、依頼に係る特定口座内保管上場株式等の全てを、国外における振替口座簿に類するものに記載又は記録をして、移管先の特定口座に移管することができることとされた(措令25の10の2⑪)。
(3)特定口座に受入れ可能な上場株式等の範囲について、次の措置が講じられた。
 ① 特定口座に受入れ可能な上場株式等の範囲に、次の上場株式等が追加された。
  イ 贈与、相続又は遺贈により取得したその被相続人等の開設していた未成年者口座に係る未成年者口座内上場株式等であった上場株式等で、その相続等口座からその相続等口座が開設されている金融商品取引業者等に開設されている相続人等の特定口座へ移管されるもの(措令25の10の2⑮三)
  ロ 新株予約権のうち、その金融商品取引業者等に開設された非課税口座に係る非課税口座内上場株式等であるもの又はその金融商品取引業者等に開設された未成年者口座である未成年者口座内上場株式等であるものの行使により取得する上場株式等で、その行使等により取得する上場株式等の全てを、その行使等の時に、その特定口座に係る振替口座簿に記載又は記録をする方法により受け入れるもの(措令25の10の2⑮十二)
  ハ 未成年者口座から特定口座への移管により受け入れる上場株式等(措令25の10の2⑮二十六、措規18の11⑱)
  ニ 課税未成年者口座である特定口座に係る特定口座内保管上場株式等で、未成年者口座等廃止事由が生じたことによりその特定口座が廃止された場合等にその特定口座からその特定口座が開設されている金融商品取引業者等に開設されているその特定口座以外の特定口座への振替の方法により受け入れるもの(措令25の10の2⑮二十七)
 ② 特定口座に受け入れることができる生命保険会社の相互会社から株式会社への組織変更によりその社員に割り当てられた上場株式等で特別口座において管理されているものについて、次の措置が講じられた(措令25の10の2⑮二十二)。
  イ その上場株式等の特定口座への受入れは、その組織変更による割当ての日から10年以内に行われるものに限ることとされた。
  ロ その上場株式等の範囲に、その上場株式等の株式の分割、株式無償割当て又は取得条項付株式の取得事由の発生により取得した上場株式等(その組織変更による割当ての日から10年以内に受け入れる同一銘柄のものに限る。)が追加された。 
(4)出国口座内保管上場株式等を特定口座に移管しようとする居住者で国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用を受けたものは、特定口座開設届出書の提出をする際、国外転出をした者が帰国をした場合等の更正の請求の特例に基づく更正の請求を行ったかどうか等を証する書類を提出しなければならないこととされた(措令25の10の5②三、措規18の13③)。
(5)出国口座から特定口座に移管することができる上場株式等の範囲に、その出国口座が開設されている金融商品取引業者等と締結した累積投資契約に基づき取得した公社債投資信託の受益権でその公社債投資信託の収益分配金のみが当該受益権と同一銘柄の受益権の購入の対価に充てられるものが追加された(措規18の13④)。
(6)平成28年1月1日から同年12月31日までの間の特定公社債等の特定口座への受入れに関する経過措置について、国外で発行された公社債投資信託又は証券投資信託以外の投資信託の受益権で受入一般取得上場株式等に該当するものについては、受益証券基準価額帳に記載される受益証券基準価額に類する価額により特定口座に受け入れることができることとされた(平成25年5月改正措規附則2②)。
※ (1)の改正は、平成28年1月1日から施行される(改正法附則1四ハ)。
  (2)の改正は、平成27年4月1日以後に行う移管について適用し、同日前に行った移管については、従前どおりとされている(改正措令附則18①)。
  (3)①イの改正は、平成28年1月1日以後に特定口座に受け入れる贈与、相続又は遺贈により取得した上場株式等について適用し、同日前に特定口座に受け入れた贈与、相続又は遺贈により取得した上場株式等については従前どおりとされている(改正措令附則18②)。
  (3)①ロの改正は、平成28年1月1日以後の新株予約権の行使により特定口座に受け入れる上場株式等について適用し、同日前の新株予約権の行使により特定口座に受け入れた場株式等については、従前どおりとされている(改正措令附則18④)。
  (3)①ハの改正は、平成28年1月1日以後に特定口座に受け入れる未成年者口座内上場株式等について適用される(改正措令附則18⑦)。
  (3)①ニの改正は、平成28年1月1日以後に課税未成年者口座である特定口座以外の特定口座に受け入れる特定口座内保管上場株式等について適用される(改正措令附則18⑧)。
  (3)②の改正は、平成27年4月1日以後に特定口座に受け入れる割当株式について適用し、同日前に特定口座に受け入れた割当株式については従前どおりとされている(改正措令附則18⑤)。
  (4)の改正は、平成27年7月1日以後に提出をする出国口座内保管上場株式等移管依頼書について適用し、同日前に提出をした出国口座内保管上場株式等移管依頼書については従前どおりとされている(改正措令附則20①)。
  (5)の改正は、平成28年1月1日以後に出国をする場合について適用し、同日前に出国をした場合については従前どおりとされている(改正措規附則12)。
  (6)の改正は、平成28年1月1日から施行される(平成25年5月改正措規附則1)。

5 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例の改正  適用対象となる特定新規株式の範囲に、国家戦略特別区域法に規定する認定区域計画に定められている特定事業を行う株式会社により発行される株式で国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律附則第1条第1号に掲げる規定の施行の日から平成30年3月31日までの間に発行されるものが追加された(措法41の19①四)。
※ 平成27年分以後の所得税について適用し、平成26年分以前の所得税については従前どおりとされている(改正法附則54)。

6 金融機関等の受ける利子所得等に対する源泉徴収の不適用の改正  特例の対象となる金融商品取引業者等の範囲から第一種少額電子募集取扱業者を除外することとされた(措令3の3⑥)。
※ 金融商品取引業者等が金融商品取引法等の一部を改正する法律(平成26年法律第44号)の施行の日(平成27年5月29日)以後に支払を受けるべき公社債の利子等について適用し、金融商品取引業者等が同日前に支払を受けるべき公社債の利子等については従前どおりとされている(改正措令附則7)。

7 配当所得の改正  配当所得について、投資法人の金銭の分配の適用を明確にするとともに、次の見直しが行われた。
(1)投資法人の金銭の分配について、出資等減少分配以外のものが配当等の対象とされるとともに、出資等減少分配がみなし配当等の生ずる基因となる発行法人の資本の払戻しとされた(所法24①、25①三)。
(2)配当等とみなす金額について、みなし配当等が生ずる基因となる自己株式の取得事由から株式併合に反対する株主の買取請求に基づくものを除外することとされた(所令61①九)。
※ (1)の改正は、平成27年4月1日以後に支払を受けるべき配当等について適用し、同日前に支払を受けるべき配当等については従前どおりとされている(改正法附則4)。
  (2)の改正は、会社法の一部を改正する法律(平成26年法律第90号)の施行の日(平成27年5月1日)以後に生ずる事由について適用し、同日前に生じた事由については従前どおりとされている(改正所令附則5)。

8 生命保険契約等の一時金の支払調書制度の改正  生命保険契約等の一時金の支払調書について、保険契約の契約者変更があった場合には、契約変更前の契約者の氏名等、保険金等の支払時の契約者の払込保険料等及び契約変更回数を記載することとされた(所規86①、87①)。
※ 平成30年1月1日以後に支払の確定する生命保険金等で同日以後に契約者の変更が行われたものについて適用される(改正所規附則17、18)。

9 所得税法及び租税特別措置法等の規定による本人確認方法の改正  所得税法及び租税特別措置法等の規定による本人確認の方法について、次の措置が講じられた。
(1)本人確認書類の提示に代えて、個人が電子情報処理組織を使用して、電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律に規定する署名用電子証明書を送信する方法によることができることとされた(所法224、措法37の11の3④、国外送金等調書法3①等)。
(2)本人確認書類の範囲に、官公署等から発行された書類で金融機関等に提示する日前6月以内に作成されたもの(有効期間等があるものにあっては、提示する日において有効なもの)が追加された(所規7③、81の6②、措規18の12④)。
※ (1)の改正は、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成25年法律第28号。以下「番号整備法」という。)附則第3号に掲げる規定の施行の日(平成28年1月1日)以後に提出する申告書等について適用し、同日前に提出した申告書等については従前どおりとされている(改正法附則3、15~19、68、69、101)。
  (2)の改正は、番号整備法附則第3号に掲げる規定の施行の日(平成28年1月1日)以後に告知又は提示する書類について適用される(改正所規附則1六、改正措規附則1六)。

Ⅲ 租税特別措置法等(所得税関係の土地・住宅税制関係)の改正

1 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除等の適用期限の延長
 住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除等の以下の措置の適用期限が平成31年6月30日まで1年6月延長された(措法41①⑩、41の3の2①⑤、41の19の2①、41の19の3①③、41の19の4①、震災税特法13の2①)。
(1)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除
(2)特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例
(3)既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除
(4)既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除
(5)認定住宅の新築等をした場合の所得税額の特別控除
(6)東日本大震災の被災者等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の控除額に係る特例

2 優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例の改正  適用対象に、国家戦略特別区域法の認定区域計画に定められている特定事業又はその特定事業の実施に伴い必要となる施設を整備する事業(これらの事業のうち、産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に特に資するものとして一定のものに限る。)を行う者に対する土地等の譲渡で、その譲渡に係る土地等がこれらの事業の用に供されるものが追加された(措法31の2②八の二)。
※ 個人が国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律附則第1条第1号に掲げる規定の施行の日以後に行う優良住宅地等のための譲渡に該当する譲渡につい
て適用される(改正法附則67①)。

3 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例等の改正  簡易証明制度の適用対象に、一団地の復興再生拠点市街地形成施設の整備に関する事業の用に供する土地等である旨を証する書類が追加された(措規14⑤四の九)。
※ 個人が福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律(平成27年法律第20号)の施行の日(平成27年5月7日)以後に行う資産の譲渡について適用される(改正措規附則9①)。

4 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除の改正
(1)
適用対象となる特定の民間住宅地造成事業等のための土地等の譲渡について、適用期限が平成29年12月31日まで3年延長された(措法34の2②三)。
(2)適用対象となる国土利用計画法による規制区域内の土地等が地方公共団体等に買い取られる場合の確定申告書に添付すべき買取りに係る書類の発行者として、政令指定都市の長が追加された(措規17の2 ①二十二)。
※ (2)の改正は、個人が平成27年4月1日以後に行う土地等の譲渡について適用される(改正措規附則9②)。

5 特定駐留軍用地内の土地を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例の改正(改正後:特定駐留軍用地等を譲渡した場合の譲渡所得の課税の特例)  適用対象に、沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法の規定により指定された特定駐留軍用地跡地についての買取協議に基づく土地の譲渡が追加された(沖特令34の3①)。
※ 個人が平成27年4月1日以後に行う特定駐留軍用地跡地の譲渡について適用される(改正沖特令附則2)。

6 特定の事業用資産の買換え等の場合の譲渡所得の課税の特例の改正  適用対象となる長期所有の土地、建物等から国内にある土地、建物、機械装置等への買換えについて、次のとおり見直しが行われた上、その適用期限が平成29年3月31日まで2年3月延長された(措法37①③④、37の4)。
(1)適用対象となる買換資産から機械装置が除外された(措法37①表九)。
(2)地域再生法の集中地域以外の地域から集中地域への買換えに係る課税の繰延べ割合(改正前:100分の80)が、100分の75(特定業務施設の集積の程度が特に著しく高い集中地域への買換えの場合には、100分の70)に引き下げられた(措法37⑨)。
※ (1)の改正は、平成27年1月1日以後に譲渡資産の譲渡をし、かつ、同日以後に買換資産を取得する場合について適用される(改正法附則67③)。
  (2)の改正は、個人が地域再生法の一部を改正する法律(平成27年法律第49号)の施行の日以後に譲渡資産の譲渡をし、かつ、同日以後に買換資産の取得をする場合について適用される(改正法附則67④)。

7 土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例の改正  適用除外とされる都市計画法の開発許可を受けて行う1,000㎡以上の宅地造成事業に係る土地の譲渡が国土利用計画法の規制区域として指定された区域内の土地を同法の規定による許可を受けて行われたものである場合における確定申告書に添付すべき許可の通知に係る書類の発行者として、政令指定都市の長が追加された(措規11①四ロ(1))。
※ 平成27年4月1日から施行されている(改正措規附則1)。

8 確定申告等における住民票の写し等の添付省略  住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除等のその適用の際に確定申告書等に住民票の写し等を添付することとされている特例について、一定の場合を除き、その添付を要しないこととされた(措規13の4等)。
※ 番号整備法附則第3号に掲げる規定の施行の日(平成28年1月1日)の属する年分以後の所得税について適用することとされている(改正措規附則8)。

Ⅳ 租税特別措置法等(事業所得等の特例関係その他)の改正

1 山林所得に係る森林計画特別控除の改正
 山林の伐採又は譲渡に係る収入金額(当該伐採又は譲渡に関し、伐採費、運搬費、仲介手数料などの費用を要したときは、当該費用を控除した金額)が2,000万円を超える者の2,000万円を超える部分(改正前:3,000万円を超える者の3,000万円を超える部分)の控除率が10%相当額とされた上で、適用期限が平成30年まで3年延長された(措法30の2①)。
※ 平成28年分以後の所得税について適用し、平成27年分以前の所得税については、従前どおりとされている(改正法附則66)。

2 相続財産に係る譲渡所得の課税の特例の改正  本特例の適用対象となる相続財産から「相続により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例」のみなし譲渡益課税の適用資産が除外されるとともに、申告要件の見直しが行われた(措法39②③④⑦)。
※ 平成27年7月1日から施行される(改正法附則1二)。

3 簡素な給付措置(臨時福祉給付金)及び子育て世帯に対する臨時特例給付措置(子育て世帯臨時特例給付金)の非課税措置の改正
(1)
住民基本台帳に記録されている者等のうち、市町村民税が課されていないもの等に対して平成27年度の予算における臨時福祉給付金給付事業費補助金を財源として市町村又は特別区から給付される給付金(臨時福祉給付金)については、所得税を課さないこととされた(措法41の8一ロ、措規19の2⑥)。
(2)児童手当法による児童手当の給付の支給を受ける者等に対して平成27年度の一般会計予算における子育て世帯臨時特例給付金給付事業費補助金を財源として市町村又は特別区から給付される給付金(子育て世帯臨時特例給付金)については、所得税を課さないこととされた(措法41の8二ロ、措規19の2⑪)。
※ 平成27年分以後の所得税について適用し、平成26年分以前の所得税については従前どおりとされている(改正法附則54)。

4 公益社団法人等に寄附をした場合の所得税額の特別控除の改正  実績判定期間においてその設置する学校等の定員等の総数が5,000に満たない事業年度(以下「特定事業年度」という。)を有する学校法人及び社会福祉法人に係るいわゆるパブリック・サポート・テストの絶対値要件について、次の改正が行われた(措令26の28の2①二イ(2)、三イ(2))。
(1)実績判定期間内の判定基準寄附者数が年平均100人以上とする要件の判定に用いる当該判定基準寄附者数は、特定事業年度における判定基準寄附者数に5,000を乗じてこれを当該定員等の総数で除して計算した数とされた。
(2)実績判定期間内の各事業年度における当該判定基準寄附者からの寄附金の額の総額に12を乗じてこれを当該実績判定期間の月数で除して得た金額が30万円以上であることが要件に追加された。
※ 平成27年分以後の所得税について適用し、平成26年分以前の所得税については、従前どおりとされている(改正措令附則2)。

5 試験研究を行った場合の所得税額の特別控除の改正
(1)
試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制について、税額控除の適用を受けることができる限度額がその年分の調整前事業所得税額の25%相当額とされた(措法10①②)。
(2)特別試験研究費の額に係る税額控除制度について、青色申告書を提出する事業者の各年分において特別試験研究費の額がある場合には、次の金額の合計額の税額控除ができる措置とされた。ただし、税額控除額については、その年分の調整前事業所得税額の5%相当額を限度とされる(措法10③)。
 ① 特別試験研究費の額のうち特別試験研究機関等と共同して行う試験研究又は特別試験研究機関等に委託する試験研究に係る試験研究費の額の30%相当額
 ② 特別試験研究費の額のうち上記①以外のものの20%相当額
 なお、この措置の対象となる特別試験研究費の額には、試験研究費の総額に係る税額控除制度及び中小企業技術基盤強化税制における税額控除額の計算の基礎となった特別試験研究費の額を含めないこととされた。
 さらに、本制度の対象となる試験研究の範囲が見直された。
(3)繰越税額控除限度超過額に係る税額控除制度及び繰越中小企業者税額控除限度超過額に係る税額控除制度が廃止された(旧措法10③⑤)。
(4)試験研究を行った場合の所得税額の特別控除の特例が、適用期限(平成27年分)の到来をもって廃止された(旧措法10の2)。
※ (1)(3)の改正は、平成28年分以後の所得税について適用し、平成27年分以前の所得税については従前どおりとされている(改正法附則57①)。
  (4)の改正は、平成27年分以前の所得税については従前どおりとされている(改正法附則58)。

6 エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除制度の改正  即時償却に係る措置について、対象資産から太陽光発電設備を除外した上で、その適用期限が平成28年3月31日まで1年延長された(措法10の2①一、⑥)。
※ 個人が平成27年4月1日以後に取得等をする特定エネルギー環境負荷低減推進設備について適用し、同日前に取得等をした特定エネルギー環境負荷低減推進設備等については、従前どおりとされている(改正法附則59)。

7 地方活力向上地域において特定建物等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除の創設  青色申告書を提出する事業者で地域再生法の一部を改正する法律の施行の日から平成30年3月31日までの間に地方活力向上地域特定業務施設整備計画について認定を受けたものが、その認定を受けた日から同日の翌日以後2年以内に、地方活力向上地域内において、その認定を受けた地方活力向上地域特定業務施設整備計画に記載された地域再生法の特定業務施設に該当する建物等及び構築物で、一定の規模以上のものの取得等をして、その事業の用に供した場合には、その取得価額の15%(その地方活力向上地域特定業務施設整備計画が移転型計画である場合には、25%)相当額の特別償却とその認定の日が次の期間のいずれに含まれるかに応じそれぞれ次の金額の税額控除との選択適用ができる措置が創設された(措法10の4)。
(1)地域再生法の一部を改正する法律の施行の日から平成29年3月31日までの期間 その取得価額の4%(その地方活力向上地域特定業務施設整備計画が移転型計画である場合には、7%)相当額
(2)平成29年4月1日から平成30年3月31日までの期間 その取得価額の2%(その地方活力向上地域特定業務施設整備計画が移転型計画である場合には、4%)相当額
※ 地域再生法の一部を改正する法律(平成27年法律第49号)の施行の日から施行することとされている(改正法附則1十一)。

8 雇用者の数が増加した場合の所得税額の特別控除の改正
(1)地方事業所基準雇用者数に係る措置の追加
 青色申告書を提出する事業者で地域再生法の認定事業者であるものが、地域再生法の一部を改正する法律の施行の日から平成30年3月31日までの間に地域再生法の地方活力向上地域特定業務施設整備計画の認定を受けた場合のその認定を受けた日の属する年以後3年内の各年において、雇用の増加に係る要件のうち基準雇用者割合が10%以上又は適用年の前年の12月31日における雇用者の数が零であることとの要件以外の要件を満たす場合で、かつ、雇用保険法の適用事業を行っているときは、20万円(基準雇用者割合が10%以上又は適用年の前年の12月31日における雇用者の数が零である場合には、50万円)に地方事業所基準雇用者数を乗じて計算した金額の税額控除ができる措置が追加された(措法10の5②)。
(2)地方事業所特別基準雇用者数に係る措置の追加  青色申告書を提出する事業者で地域再生法の認定事業者であるもののうち、上記(1)の措置の適用を受ける又は受けたものが、その適用を受ける年以後の各年で同法の地方活力向上地域特定業務施設整備計画の認定を受けた日の属する年以後3年内の各年において、雇用保険法の適用事業を行っている場合には、30万円に地方事業所特別基準雇用者数を乗じて計算した金額の税額控除ができる措置が追加された(措法10の5③)。
※ 地域再生法の一部を改正する法律(平成27年法律第49号)の施行の日の属する年分以後の所得税について適用することとされている(改正法附則61①)。

9 国内の設備投資額が増加した場合の機械等の特別償却又は所得税額の特別控除制度の廃止  本制度は適用期限(平成27年)の到来をもって廃止された(旧措法10の5の2)。
※ 個人が平成27年以前に取得等をした生産等資産については従前どおりとされている(改正法附則62)。

10 特定中小企業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除の改正(改正後:特定中小事業者が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除)  次の見直しが行われた上で、適用期限が平成29年3月31日まで2年延長された。
(1)特定中小事業者の範囲から、認定経営革新等支援機関を除くこととされた(措法10の5の2①)。
(2)経営改善設備について、認定経営革新等支援機関等による経営の改善に関する指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類に経営の改善に資する資産として記載されたものに限ることとされた(措法10の5の2①)。
※ 個人が平成27年4月1日以後に取得等をする経営改善設備について適用し、同日前に取得等をした経営改善設備については従前どおりとされている(改正法附則63)。

11 雇用者給与等支給額が増加した場合の所得税額の特別控除の改正  次の年分における増加促進割合の要件が次のとおり引き下げられた(措法10の5の3①、②五)。
(1)平成29年……4%(中小事業者である場合には、3%)以上(改正前:5%以上)
(2)平成30年……5%(中小事業者である場合には、3%)以上(改正前:5%以上)
※ 平成28年1月1日から施行することとされている(改正法附則1四)。

12 特定設備等の特別償却制度の改正  船舶の特別償却制度について、次の見直しが行われた上で、その適用に係る対象船舶の指定期限が平成29年3月31日まで2年延長された(措法11①表二、措令5の8③、昭和48年5月大蔵省告示第69号別表2、平成27年3月国土交通省告示第473号)。
(1)対象となる外航船舶について、国際総トン数1万トン未満の外航船舶が除外されるとともに、経営合理化・環境負荷低減要件の見直しが行われた。
(2)対象となる内航船舶について、経営合理化・環境負荷低減要件の見直しが行われた。
※ 個人が平成27年4月1日以後に取得等をする船舶について適用し、同日前に取得等をした船舶については従前どおりとされている(改正法附則64①、改正措令附則13①)。

13 特定農産加工品生産設備等の特別償却制度の改正(改正後:特定農産加工品生産設備の特別償却制度)  新用途米穀加工品等製造設備の特別償却制度が適用期限(平成27年3月31日)の到来をもって廃止された(旧措法11の3②、旧措令6の2③~⑤、旧措規5の14②)。
※ 個人が平成27年4月1日前に取得等をした新用途米穀加工品等製造設備については、従前どおりとされている(改正法附則64②)。

14 特定地域における工業用機械等の特別償却制度の改正
(1)
過疎地域に係る措置の適用期限が平成29年3月31日まで2年延長された(措令6の3①一)。
(2)振興山村に係る措置について、山村振興法の特定振興山村市町村が作成する特定山村振興計画に記載された区域及び事業に係る割増償却措置に改組された(措法12③表四、措令6の3⑫四、⑬四、⑳~ 、措規5の15⑦⑨)。
(3)半島振興対策実施地域に係る措置について、半島振興法の認定産業振興促進計画に記載された区域及び事業に係る措置に改組された(措法12③表一、措令6の3⑫一、⑬一、⑭⑮ 、措規5の15⑤⑨)。
(4)離島振興対策実施地域及び奄美群島に係る措置の適用期限が平成29年3月31日まで2年延長された(措法12③二、三、措令6の3⑫二、三)。
※ (2)の改正は、個人が平成27年4月1日以後に取得等をする産業振興機械等について適用し、個人が同日前に取得等をした工業用機械等については従前どおりとされている(改正法附則64③④)。
  (3)の改正は、個人が平成27年4月1日以後に取得等をする産業振興機械等について適用し、個人が同日前に取得等をした産業振興機械等については従前どおりとされている(改正法附則64④⑤、改正措令附則13③、改正措規附則6①)。

15 医療用機器等の特別償却制度の改正(改正後:医療用機器の特別償却制度)  次の見直しが行われた上で、適用期限が平成29年3月31日まで2年延長された(措法12の2①)。
(1)高度な医療の提供に資する機器に係る措置について、対象設備機器の見直しが行われた(平成27年3月厚生労働省告示第229号)。
(2)医療の安全の確保に資する機器に係る措置が本制度から除外された(旧措法12の2①二、旧措令6の4③、平成25年3月厚生労働省告示第95号)。
※ (1)の改正は、平成27年4月1日から適用することとされている(平成27年3月厚生労働省告示第229号前文)。
  (2)の改正は、個人が平成27年4月1日前に取得等をした医療用機器等については従前どおりとされている(改正法附則64⑦)。

16 支援事業所取引金額が増加した場合の3年以内取得資産の割増償却制度の廃止  本制度は、適用期限(平成27年)の到来をもって廃止された(旧措法13の2、旧措令6の7、旧措規5の17)。
※ 個人が平成27年以前の各年において支援事業所取引金額がある場合において、その年における支援事業所取引金額の合計額がその年の前年における支援事業所取引金額の合計額を超えるときにおけるその年の12月31日において有する3年以内取得資産については従前どおりとされている(改正法附則64⑧)。

17 次世代育成支援対策に係る基準適合認定を受けた場合の建物等の割増償却制度の改正(改正後:次世代育成支援対策に係る基準適合認定を受けた場合の次世代育成支援対策資産の割増償却制度)  次の見直しが行われた上で、適用期限が平成30年3月31日まで3年延長された(措法13の2①)。
(1)適用対象となる個人の範囲に、特例基準適合認定を受けた個人が追加された。
(2)適用対象となる資産が、基準適合認定又は特例基準適合認定に係る一般事業主行動計画に記載された建物、建物附属設備、車両運搬具及び器具備品で、次世代育成支援対策に資する一定のものとされた。
(3)次世代育成支援対策資産の区分に応じ割増償却割合の見直しが行われた。
※ 平成27年4月1日以後に基準適合認定又は特例基準適合認定を受ける個人の平成27年以後の各年の12月31日において有する次世代育成支援対策資産について適用し、平成27年4月1日前に基準適合認定を受けた個人の平成27年以前の各年の12月31日において有する特定建物等については従前どおりとされている(改正法附則64⑨)。

18 特定再開発建築物等の割増償却制度の改正(改正後:特定都市再生建築物等の割増償却制度)  次の見直しが行われた上で、適用期限が平成29年3月31日まで2年延長された。
(1)本制度の適用対象から、都市再開発法の市街地再開発事業によって建築される施設建築物に係る措置が除外された(旧措法14の2②一、旧措令7の2②③、旧措規6の2⑤一)。
(2)都市再生特別措置法の認定計画等に基づく都市再生事業により整備される建築物に係る措置について、都市再生緊急整備地域のうち特定都市再生緊急整備地域以外の地域内において行われる都市再生事業により整備される建築物の割増償却割合が引き下げられた(措法14の2①、②一ロ)。
(3)雨水貯留浸透利用施設に係る措置について、適用対象となる資産の見直しが行われた(措法14の2②三)。
※ (1)の改正は、個人が平成27年4月1日前に取得又は新築をした建築物については従前どおりとされている(改正法附則64⑪、改正措令附則13⑤、改正措規附則6②)。
  (2)の改正は、個人が平成27年4月1日以後に取得又は新築をする特定都市再生建築物等について適用し、個人が同日前に取得又は新築をした建築物については従前どおりとされている(改正法附則64⑩⑪、改正措令附則13⑤、改正措規附則6②)。
  (3)の改正は、個人が水防法等の一部を改正する法律(平成27年法律第22号)の施行の日以後に取得又は新築をする特定都市再生建築物等について適用し、個人が同日前に取得又は新築をした構築物又は機械及び装置については従前どおりとされている(改正法附則64⑫⑬、改正措令附則13⑥、改正措規附則6③)。

19 倉庫用建物等の割増償却制度の改正  本制度の対象となる倉庫用建物の面積要件及び容積要件が見直された上で、適用期限が平成29年3月31日まで2年延長された(措法15①、措令8②一~三)。
※ 個人が平成27年4月1日以後に取得等をする倉庫用建物等について適用し、個人が同日前に取得等をした倉庫用建物等については従前どおりとされている(改正措令附則13⑦)。

20 農業経営基盤強化準備金制度の改正  次の見直しが行われた上で、適用期限が平成29年3月31日まで2年延長された。
(1)本制度の対象となる個人の範囲に、認定新規就農者である個人が追加された(措法24の2①)。
(2)本制度の対象となる交付金等から環境保全型農業直接支援対策交付金(地方公共団体がこれと一体的に交付するものを含む。)が除外された(措規9の3①、旧農業経営基盤強化促進法施行規則25の2四)。
※ (1)の改正は、平成27年分以後の所得税について適用し、平成26年分以前の所得税については従前どおりとされている(改正法附則54)。
  (2)の改正は、個人が平成27年4月1日以後に交付を受ける交付金等について適用し、個人が同日前に交付を受けた交付金等については従前どおりとされている(改正措規附則7)。

21 農用地等を取得した場合の課税の特例の改正  本特例の対象となる特定農業用機械等が、農業用の機械装置、器具備品、一定の農業用施設である建物及びその附属設備、構築物並びにソフトウェアとされた(措法24の3①)。
※ 個人が平成27年4月1日以後に取得等をする特定農業用機械等について適用し、個人が同日前に取得等をした特定農業用機械等については従前どおりとされている(改正法附則65)。

22 特定の基金に対する負担金等の必要経費算入の特例の改正  本特例の対象となる負担金の範囲から、独立行政法人農畜産業振興機構法第10条第2号に掲げる業務のうち畜産業の振興に資する事業に係る業務に係る基金に充てるための負担金が除外された(旧措令18の4②四、旧措規9の9)。
※ 個人が平成27年3月31日以前に支出した負担金については、従前どおりとされている(改正措令附則14)。

23 福島再開投資等準備金制度の創設  福島復興再生特別措置法の改正に伴い、避難解除等区域復興再生推進事業実施計画の認定を受けた事業者が、その認定に係る避難解除等区域復興再生推進事業実施計画に記載された避難解除等区域復興再生推進事業を実施するために必要な資金の調達に要する期間(以下「積立期間」という。)内の日を含む各年において、その避難解除等区域復興再生推進事業実施計画に係る避難解除等区域復興再生推進事業の用に供する施設又は設備の新設、増設、更新又は修繕に要する費用の支出に充てるため、その避難解除等区域復興再生推進事業実施計画に記載されたその支出に充てるために積み立てる資金の総額の2分の1相当額以下の金額を福島再開投資等準備金として積み立てたときは、その積み立てた金額は、その年分の必要経費に算入できる制度が創設された(震災税特法11の3の2①)。
 この準備金は、企業立地促進区域において機械等を取得した場合の特別償却制度の適用を受ける場合にはその適用を受ける特定機械装置等の特別償却実施額に相当する金額を取り崩すこととされているほか、その積立期間の末日の翌日以後2年を経過する日の属する年(以下「基準年」という。)の翌年分から3年間でその基準年の12月31日における準備金残高の均等額を取り崩して、総収入金額に算入することとされている(震災税特法11の3の2③④)。
※ 福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律(平成27年法律第20号)の施行の日(平成27年5月7日)から施行されている(改正法附則1十七)。

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