解説記事2015年09月21日 【SCOPE】 ゴルフ場の固定資産評価めぐり運営会社敗訴が相次ぐ(2015年9月21日号・№611)
収益還元法による評価は適正な時価に当たらず
ゴルフ場の固定資産評価めぐり運営会社敗訴が相次ぐ
ゴルフ場の固定資産税評価額をめぐり、その評価額を不服とするゴルフ場運営会社が地方自治体に対し評価額の見直しを求めていた税務訴訟で相次いで判決が下された。宮崎県内にあるゴルフ場が問題となった事件で宮崎地裁と福岡高裁は、宮崎県A市が決定した固定資産税評価額は適法であると判断したうえで、評価額を不服とする運営会社の請求を斥ける判決を下した(平成26年5月28日地裁判決・同年10月3日高裁判決)。また、東京都内にあるゴルフ場が問題となった事件で東京地裁は、東京都B市が決定した固定資産税評価額は適法であると判断した(平成27年7月21日判決)。スコープでは、ゴルフ場の固定資産税評価額が問題となった2つの税務訴訟を紹介する。
来場者減少や収入減などに関する補正をしなかった点に不合理なし
最初に紹介する事件は、宮崎県A市にゴルフ場をもつ原告運営会社がA市に対し、ゴルフ場の固定資産税評価額の見直しを求めたもの。宮崎県A市は、総務省(旧自治省)の「固定資産税評価基準」などをもとに、本件ゴルフ場の固定資産税評価額を約13億円(土地約7億円、家屋約6億円)と決定し、固定資産課税台帳に登録した(以下「本件登録価格」)。
これに対し原告運営会社は、本件訴訟のなかで、宮崎県内の経済状況の悪化やゴルフ場の収入減少などの個別事情を考慮せず、位置・利用状況および需給事情等による補正をしなかった本件登録価格は違法であるなどと主張した。
また、原告運営会社は、①民事再生申立てにより原告運営会社株式が4億円で売却されたこと、②不動産鑑定士による鑑定評価額が約2億円であることを踏まえれば、本件登録価格がゴルフ場の適正な時価を上回ることは明らかであるため、本件登録価格の決定価格は違法であると主張した。
民事再生による売却価額も時価に当たらず 宮崎地裁は、本件ゴルフ場と他のゴルフ場を比較し価額の均衡が確保されているとしたうえで位置・利用状況等による補正をしなかった宮崎県A市の判断は原告運営会社が指摘する個別事情(本件ゴルフ場の来場者数・客単価・収入の減少、A市内の主要なゴルフ場と比較して来場者数が少ないことなど)を考慮しても何ら不合理ではないと判断した。
本件登録価格が本件ゴルフ場の適正な時価を上回るか否かに関し宮崎地裁は、民事再生手続きにおける不動産売却価額は正常な条件の下に成立する取引価格とはいえないため、これを適正な時価と認めることはできないと指摘。また、宮崎地裁は、原告運営会社が主張する不動産鑑定士による評価額(約2億円)は最高裁平成18年7月7日判決が否定した収益還元法に依拠しているため、これを適正な時価と認めることもできないと指摘したうえで、本件ゴルフ場に関し宮崎県A市が決定した固定資産税評価額(約13億円)は適法であると判断した。
この宮崎地裁の判断内容は、控訴審である福岡高裁判決でも全面的に支持されている。
宅地隣接のゴルフ場、山林比準方式を採用しなかった点に違法なし
次に紹介する事件は、東京都B市にゴルフ場をもつ原告運営会社がB市に対し、ゴルフ場の固定資産税評価額の見直しを求めたもの。B市は、総務省(旧自治省)の「固定資産税評価基準」や「ゴルフ場の用に供する土地の評価の取扱いについて」(以下「ゴルフ場通知」)などをもとに、東京都から市街化区域と指定されている本件ゴルフ場(土地)が市街地近郊ゴルフ場(下囲参照)に該当するとしたうえで、固定資産税評価額を約64億円と決定した(以下「本件登録価格」)。
これを不服とする原告運営会社は、本件訴訟のなかで、ゴルフ場の付近に山林が存在する場合には、周辺地域の大半が宅地化されていても、市街地近郊以外ゴルフ場に関する山林比準方式(山林の取得価額にゴルフ場造成費を加えたもの)を用いるべきであると主張。原告運営会社は、宅地比準方式により算定された本件登録価格は山林比準方式の価格を上回るため違法であると主張した。
ゴルフ場通知等に従った本件登録価格は適法 東京地裁は、総務省(旧自治省)のゴルフ場通知のなかで、市街化区域内に所在し、または市街化区域に囲まれているゴルフ場については原則として市街地近郊ゴルフ場として取り扱うものと規定されている点を指摘。このゴルフ場通知の評価方法に関し東京地裁は、固定資産税評価基準とともに、その評価方法は一般的な合理性を有するものということができると認定した。そのうえで、東京地裁は、固定資産税評価基準およびゴルフ場通知に従い本件ゴルフ場を市街地近郊ゴルフ場として決定した本件登録価格は適正な時価であると推認するのが相当であると判断した。
また、本件ゴルフ場を山林比準方式により評価すべきとする原告運営会社の主張に対し東京地裁は、ゴルフ場通知は市街地近郊ゴルフ場については近傍の宅地の評価額を基礎とするとしており、近傍に山林がある場合の取扱いについて言及がない点などを指摘。東京地裁は、東京都B市が近傍の山林の評価額を基礎として本件ゴルフ場の評価をしなかったとしても、それがゴルフ場通知に反する取扱いになるとはいえないと判断。原告運営会社の主張を斥けた。
ゴルフ場の固定資産評価めぐり運営会社敗訴が相次ぐ
ゴルフ場の固定資産税評価額をめぐり、その評価額を不服とするゴルフ場運営会社が地方自治体に対し評価額の見直しを求めていた税務訴訟で相次いで判決が下された。宮崎県内にあるゴルフ場が問題となった事件で宮崎地裁と福岡高裁は、宮崎県A市が決定した固定資産税評価額は適法であると判断したうえで、評価額を不服とする運営会社の請求を斥ける判決を下した(平成26年5月28日地裁判決・同年10月3日高裁判決)。また、東京都内にあるゴルフ場が問題となった事件で東京地裁は、東京都B市が決定した固定資産税評価額は適法であると判断した(平成27年7月21日判決)。スコープでは、ゴルフ場の固定資産税評価額が問題となった2つの税務訴訟を紹介する。
来場者減少や収入減などに関する補正をしなかった点に不合理なし
最初に紹介する事件は、宮崎県A市にゴルフ場をもつ原告運営会社がA市に対し、ゴルフ場の固定資産税評価額の見直しを求めたもの。宮崎県A市は、総務省(旧自治省)の「固定資産税評価基準」などをもとに、本件ゴルフ場の固定資産税評価額を約13億円(土地約7億円、家屋約6億円)と決定し、固定資産課税台帳に登録した(以下「本件登録価格」)。
これに対し原告運営会社は、本件訴訟のなかで、宮崎県内の経済状況の悪化やゴルフ場の収入減少などの個別事情を考慮せず、位置・利用状況および需給事情等による補正をしなかった本件登録価格は違法であるなどと主張した。
また、原告運営会社は、①民事再生申立てにより原告運営会社株式が4億円で売却されたこと、②不動産鑑定士による鑑定評価額が約2億円であることを踏まえれば、本件登録価格がゴルフ場の適正な時価を上回ることは明らかであるため、本件登録価格の決定価格は違法であると主張した。
民事再生による売却価額も時価に当たらず 宮崎地裁は、本件ゴルフ場と他のゴルフ場を比較し価額の均衡が確保されているとしたうえで位置・利用状況等による補正をしなかった宮崎県A市の判断は原告運営会社が指摘する個別事情(本件ゴルフ場の来場者数・客単価・収入の減少、A市内の主要なゴルフ場と比較して来場者数が少ないことなど)を考慮しても何ら不合理ではないと判断した。
本件登録価格が本件ゴルフ場の適正な時価を上回るか否かに関し宮崎地裁は、民事再生手続きにおける不動産売却価額は正常な条件の下に成立する取引価格とはいえないため、これを適正な時価と認めることはできないと指摘。また、宮崎地裁は、原告運営会社が主張する不動産鑑定士による評価額(約2億円)は最高裁平成18年7月7日判決が否定した収益還元法に依拠しているため、これを適正な時価と認めることもできないと指摘したうえで、本件ゴルフ場に関し宮崎県A市が決定した固定資産税評価額(約13億円)は適法であると判断した。
この宮崎地裁の判断内容は、控訴審である福岡高裁判決でも全面的に支持されている。
宅地隣接のゴルフ場、山林比準方式を採用しなかった点に違法なし
次に紹介する事件は、東京都B市にゴルフ場をもつ原告運営会社がB市に対し、ゴルフ場の固定資産税評価額の見直しを求めたもの。B市は、総務省(旧自治省)の「固定資産税評価基準」や「ゴルフ場の用に供する土地の評価の取扱いについて」(以下「ゴルフ場通知」)などをもとに、東京都から市街化区域と指定されている本件ゴルフ場(土地)が市街地近郊ゴルフ場(下囲参照)に該当するとしたうえで、固定資産税評価額を約64億円と決定した(以下「本件登録価格」)。
これを不服とする原告運営会社は、本件訴訟のなかで、ゴルフ場の付近に山林が存在する場合には、周辺地域の大半が宅地化されていても、市街地近郊以外ゴルフ場に関する山林比準方式(山林の取得価額にゴルフ場造成費を加えたもの)を用いるべきであると主張。原告運営会社は、宅地比準方式により算定された本件登録価格は山林比準方式の価格を上回るため違法であると主張した。
ゴルフ場通知等に従った本件登録価格は適法 東京地裁は、総務省(旧自治省)のゴルフ場通知のなかで、市街化区域内に所在し、または市街化区域に囲まれているゴルフ場については原則として市街地近郊ゴルフ場として取り扱うものと規定されている点を指摘。このゴルフ場通知の評価方法に関し東京地裁は、固定資産税評価基準とともに、その評価方法は一般的な合理性を有するものということができると認定した。そのうえで、東京地裁は、固定資産税評価基準およびゴルフ場通知に従い本件ゴルフ場を市街地近郊ゴルフ場として決定した本件登録価格は適正な時価であると推認するのが相当であると判断した。
また、本件ゴルフ場を山林比準方式により評価すべきとする原告運営会社の主張に対し東京地裁は、ゴルフ場通知は市街地近郊ゴルフ場については近傍の宅地の評価額を基礎とするとしており、近傍に山林がある場合の取扱いについて言及がない点などを指摘。東京地裁は、東京都B市が近傍の山林の評価額を基礎として本件ゴルフ場の評価をしなかったとしても、それがゴルフ場通知に反する取扱いになるとはいえないと判断。原告運営会社の主張を斥けた。
市街地近郊ゴルフ場、固定資産税評価額の算定方法は? |
市街地近郊ゴルフ場とは、ゴルフ場取得後において価格事情に変動があったことにより、その取得に要した費用の額を用いることが適当でないゴルフ場のうち、その周辺の地域の大半が宅地化されているゴルフ場のことである(ゴルフ場通知参照)。その評価額は、ゴルフ場の近傍の宅地の評価額などをもとにした算式により算定される(宅地比準方式)。 |
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