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解説記事2015年10月05日 【税務マエストロ】 事業者が事業として行う取引(2015年10月5日号・№612)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
事業者が事業として行う取引
#147 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#148 BEPSプロジェクトの進捗と税制改正への影響
PwC税理士法人
品川克己
税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。

マエストロの解説  国内取引の納税義務者は事業者であることから、事業者以外の者が行った取引については課税の対象とはならない。ここで「事業者」とは、個人事業者(事業を行う個人)及び法人をいう(消法2①三、四)。
 したがって、サラリーマンが自家用車を処分したとしても、サラリーマンは事業者ではないので、その売却収入に消費税が課税されることはない。また、「事業として」行う行為が課税の対象となることから、個人事業者が、マイホームのような事業と関係のない家事用資産を売却したような場合には、たとえ事業者が行った行為であってもその売却は課税の対象とはならない。なお、法人は事業活動を営むために設立されたものであるから、法人が行う行為は、そのすべてが「事業として行った行為」に該当することになる(消基通5-1-1(注))。

 今月は、国内取引の課税対象要件である「事業者が事業として行う取引」について確認する。

1 「事業として」の意義  「事業として」とは、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われることをいう(消基通5-1-1)。
 所得税の世界では、個人事業者の営む事業が事業的規模で営まれている場合には、青色事業専従者給与などの特典が認められているが、消費税の世界では、その事業の規模についてはいっさい制限は設けられていない。よって、サラリーマンが副業としてマンションの一室を他に賃貸しているような場合であっても、「事業者が事業として行ったもの」に該当することになる。
 また、所得税の世界では、個人の所得を利子所得から雑所得までの10種類に区分して、所得税の計算をすることとされている。個人事業者の場合、一般的に不動産所得と事業所得が消費税計算に関係するケースが多いのであるが、所得税の所得区分は消費税の課税対象要件とは関係がない。たとえ譲渡所得に区分するものであっても、事業用資産の売却は消費税の課税の対象になるのである。
 実務の現場では、土地や建物を譲渡した場合には、分離課税の譲渡所得として他の所得とは区分して税額計算を行うことになる。個人事業者の消費税の確定申告では、土地や建物の譲渡収入の申告漏れが散見されるようなので注意が必要だ。

具体例1
 個人事業者が店舗とその敷地を売却した場合には、店舗の売却収入は課税売上高として課税標準額の計算に算入されるとともに、課税売上割合の計算上、税抜課税売上高を分母と分子に計上することになる。
 敷地(土地)の譲渡は非課税となるので、その売却収入を課税売上割合の計算上、分母にだけ計上する。
※土地と建物の譲渡対価が区分されていない場合には、次の算式により建物の譲渡対価を算出する(消令45③)。



 なお、時価の比率に代えて、次のような割合により建物の譲渡対価を算出することも認められているようである(十訂版消費税実例回答集524頁 木村剛志著/税務研究会出版局)。 
① 相続税評価額や固定資産税評価額を基にして計算する方法
② 土地及び建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含む。)を基にして計算する方法

具体例2
 個人事業者が事業用と家事用に共用する資産を譲渡した場合には、その譲渡対価を合理的に区分し、事業用の部分に係る対価が資産の譲渡対価として消費税計算に取り込まれることになる(消基通10-1-19)。

2 事業付随行為  上記1のとおり、資産の譲渡等には、その性質上、対価を得て行われる事業付随行為が含まれる(消令2③)。消費税法基本通達5-1-7(付随行為)では、事業活動の一環として、又はこれに関連して行われる行為として次のようなものを例示として載せているが、これはあくまでも「例示」である。下記の①~⑦以外の行為であっても、事業活動の一環として、又はこれに関連して行われる行為は課税の対象となるのである。
① 職業運動家、作家、映画・演劇等の出演者等で事業者に該当するものが対価を得て行う他の事業者の広告宣伝のための役務の提供
② 職業運動家、作家等で事業者に該当するものが対価を得て行う催物への参加又はラジオ放送若しくはテレビ放送等に係る出演その他これらに類するもののための役務の提供
③ 事業の用に供している建物、機械等の売却 
④ 利子を対価とする事業資金の預入れ
⑤ 事業の遂行のための取引先又は使用人に対する利子を対価とする金銭等の貸付け
⑥ 新聞販売店における折込広告
⑦ 浴場業、飲食業等における広告の掲示
 なお、次に掲げる行為は、たとえ事業のために行うものであっても「事業付随行為」には該当しないことに注意する必要がある(消基通5-1-8)。
① 事業用資金の取得のための家事用資産の譲渡
② 買掛金や事業用借入金の代物弁済として行う家事用資産の譲渡
 ①の行為は、あくまでも「家事用資産の譲渡」であり、それが事業用資金を調達する目的であったとしても、当然に課税の対象とはならないということである。
 ②の行為は、買掛金や事業用借入金を現金で返済することに代えて、家事用資産を債権者に引き渡したということである。
 「代物弁済」は、資産を売却した代金で債務を返済するということであり、その実態はノーマルな資産の譲渡と何ら変わらないことから、代物弁済は資産の譲渡等の定義に含めることとしている(消法2①八)。
 ただし、家事用資産による代物弁済は、家事用資産の譲渡には該当するものの、「事業として」行った行為ではないので、結果として課税の対象とはならない。

3 質疑応答事例  上記12を踏まえ、国税庁のホームページに掲載されている質疑応答事例を紹介し、必要に応じて解説を加えていく。なお、国税庁のホームページで原文を確認する際は、タイトル末尾のかっこ書(目次番号)を参照されたい。
○会社員が行う建物の貸付けの取扱い(資産の譲渡の範囲1)
【照会要旨】  会社員が行う建物の貸付けは、課税の対象となるのでしょうか。
【回答要旨】  消費税の課税対象となる取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等ですから、会社員が行う建物の貸付けであっても、反復、継続、独立して行われるものであり、課税対象となります。
 なお、住宅の貸付けである場合は、非課税となります。
<解説>  本照会事例では、事業の規模についてはいっさい言及していないが、反復、継続、独立して行われるものであれば、規模に関係なく、その建物の貸付けは課税の対象となる。
 ところで、会社員が行う不動産賃貸は一般的に小規模であり、年間の課税売上高は1,000万円以下になるケースが多いものと思われる。このような事業者(免税事業者)が、新規に取得する建物などの設備投資につき、消費税の還付を受けようとする場合には、期限までに「課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者になっておく必要がある。
 「課税事業者選択届出書」は、提出日の属する課税期間の翌課税期間から効力が生ずることとされているが、新規開業などの場合には、届出書の提出日の属する課税期間から課税事業者になることが認められている(消法9④、消令20一)。
 この場合において、反復、継続、独立して賃貸している場合には、たとえ貸駐車場一台であっても、いわゆる新規開業には該当しないということに注意する必要がある。したがって、「課税事業者選択届出書」は設備投資などがある課税期間が始まる前までに提出しておかなければならないのである。

○会社員が自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却(資産の譲渡の範囲2)
【照会要旨】  会社員が自宅に太陽光発電設備を設置し、いわゆる太陽光発電による固定価格買取制度に基づき、その余剰電力を電力会社に売却している場合、課税の対象となるのでしょうか。
【回答要旨】  余剰電力の買取りは、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」に基づき、太陽光発電による電気が太陽光発電設備が設置された施設等において消費された電気を上回る量の発電をした際、その上回る部分が当該施設等に接続されている配電線に逆流し、これを一般電気事業者である電力会社が一定期間買い取ることとされているものです。
 消費税の課税対象となる取引は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等であり、個人事業者が生活の用に供している資産を譲渡する場合の当該譲渡は課税対象となりませんが、会社員が行う取引であっても、反復、継続、独立して行われるものであれば、課税対象となります。
 照会の余剰電力の売却は、会社員が事業の用に供することなく、生活の用に供するために設置した太陽光発電設備から生じた電気のうち、使い切れずに余った場合に当該余剰電力を電力会社に売却しているものであって、これは消費者が生活用資産(非事業用資産)の譲渡を行っているものであることから、消費税法上の「事業として」の資産の譲渡には該当しません。
 したがって、照会のように、事業者ではない者が生活の用に供するために設置した太陽光発電設備から生じた余剰電力の売却は、課税の対象となりません。
(注)会社員が自宅で行う太陽光発電であっても、平成24年7月以降、一定規模以上の太陽光発電設備により発電が行われる場合には、その送電された電気の全量について電力会社に売却することが可能とされています(全量売電)。
  会社員が行うこの全量売電は、電力会社との間で太陽光発電設備により発電した電気の全量を売却する旨の契約を締結し、その発電した電気を生活の用に供することなく数年間にわたって電力会社に売却するものであることから、会社員が反復、継続、独立して行う取引に該当し、課税の対象となります。
<解説>  個人が行う、いわゆる太陽光発電については、その目的により取扱いが異なることとなるようだ。つまり、そもそもが家庭用として設置した設備については、余剰電力を売却したとしても、これは生活用資産の譲渡であり、課税の対象とはしないということである。
 一方、電力会社と「全量売電」の契約を締結している場合には、その生産した電気は家庭用として使用することはできず、その全量を電力会社に売却することになる。この場合における電気の売却は事業として反復、継続、独立して行われるものであり、課税の対象となるものである(図表3参照)。


○個人事業者が所有するゴルフ会員権の譲渡(資産の譲渡の範囲3)
【照会要旨】  個人事業者がゴルフ会員権を譲渡した場合、課税の対象となるのでしょうか。
【回答要旨】  個人事業者が所有するゴルフ会員権は、会員権販売業者が保有している場合には棚卸資産に当たり、その譲渡は課税の対象となりますが、その他の個人事業者が保有している場合には生活用資産に当たり、その譲渡は課税の対象となりません(消基通5-1-1(注)1)。
<解説>  本照会事例には、「個人事業者が所有するゴルフ会員権はそもそもが事業用ではなく、生活用資産である。」という固定概念があるようだ。しかし、この考え方からすれば、個人事業者が取引先との接待ゴルフのためにゴルフ会員権を取得した場合には、そのゴルフ会員権は全額が仕入税額控除の対象とすることはできないことになってしまう。
 個人事業者が家事共用資産を取得した場合には、使用の実態に基づく使用率、使用面積割合等の合理的な基準により課税仕入れに係る支払対価の額を計算することとされている(消基通11-1-4)。よって、事業用にも使用する目的でゴルフ会員権を取得した場合には、事業使用割合を合理的に見積もって、事業用部分は課税仕入れとして取り扱うべきである。そうすると、事業用と家事用に兼用していたゴルフ会員権を譲渡した場合にも、その譲渡対価を合理的に区分したうえで、事業用の部分(対価)を課税の対象に取り込むことになろう(消基通10-1-19)。
 ところで、ゴルフ会員権のような資産の場合には、事業使用割合が年によって異なることがあり、上記通達に定める「合理的に区分する方法」が、必ずしも明らかにされていないのが実情である。
 この点について、「平成26年版 消費税法基本通達逐条解説565頁・大蔵財務協会」では、「家事共用資産を譲渡した場合の譲渡対価の区分については、譲渡時の使用割合ではなく、原則として当該資産の取得時の区分による」との解説がされている。
 この取扱いは、仕入税額控除の対象とした部分を譲渡時に課税し、帳尻を合わせるという発想なのだと思われる。そうすると、例えば取得時の使用割合が10%、譲渡時の使用割合が100%の資産であっても、譲渡対価の10%だけを売上高にカウントすればよいということになる。また、これとは逆に、取得時の使用割合が100%で、譲渡時の使用割合が10%の資産は、譲渡対価の全額を売上高に計上しなければいけないことになってしまう。
 このような取扱いは、法令や通達からはいっさい読み取ることができない。よって、私見としては、家事共用資産を譲渡した場合には、取得時の使用割合ではなく、譲渡時の使用割合により、譲渡対価をあん分するべきではないかと考えている。

○事業者の事業用固定資産の売却(資産の譲渡の範囲4)
【照会要旨】  事業に使用していた建物や機械、車両等を売却した場合は課税されるのでしょうか。
【回答要旨】  消費税の課税の対象となる取引は、「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」であり、また、その性質上事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡等も含まれます。したがって、販売用の商品だけでなく事業に使用していた建物や機械、車両等の事業用資産の譲渡についても課税されます(消法2①八、4①、消令2③、消基通5-1-1、5-1-7)。
 例えば、商品の配達用に使用していたトラックを売った場合は課税の対象となります。
○事業用及び家事用の両方に使用している資産を売却した場合の課税関係(資産の譲渡の範囲5)
【照会要旨】  個人事業者が所有する資産で、事業と家事の用途に共通して使用されるものを売却した場合の課税関係はどうなるのでしょうか。
(例)
1.店舗兼住宅の1階部分を店舗又は工場に使用し、2階部分を個人の住宅として使用している場合の建物
2.昼は事業用、夜は家庭用として使用している電話に係る電話加入権
 なお、所得税法の計算上は、家事関連費であっても業務の遂行上必要であること等の一定の要件に該当するものについては、必要経費に算入されます(所法45、所法令96)。
【回答要旨】  事業と家事の用途に共通して使用される資産であっても、譲渡すれば事業用の部分については課税の対象となります(按分)。
 ただし、例の2の課税標準は、当該課税資産の譲渡等の対価の額の全額となります。
<解説>  (例)1については1「事業として」の意義<具体例2>(16頁)を参照されたい。
 (例)2については電話加入権の売却代金の全額が課税の対象となる根拠を国税庁に問いたい。昼は事業用で夜は家庭用ということなので、「基本的に事業用資産である」という前提での説明なのだと思われるが、個人事業者の実務については、昼にプライベートな電話がかかってくることもあり、夜中に仕事の電話がかかってくることもある。「昼はどうで夜はこう」などといった杓子定規的な判断はできないのである。
 「個人事業者が所有するゴルフ会員権の譲渡(資産の譲渡の範囲3)」でも解説したように、電話加入権の譲渡時における使用割合、すなわち、所得税の申告における電話使用料金の必要経費への算入割合を電話加入権の売却金額に乗ずることにより、課税の対象となる事業用の譲渡対価を算出すればよいものと思われる。

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