解説記事2015年10月26日 【SCOPE】 平成28年4月1日から国税不服申立制度が変わる(2015年10月26日号・№615)
国税当局の調査事務などにも影響
平成28年4月1日から国税不服申立制度が変わる
平成28年4月より国税不服申立制度が見直される。改正行政不服審査法が平成28年4月1日に施行されることに伴い、国税通則法も同日に改正されることになるからだ。今回の改正では、納税者の選択により、「異議申立て」をせずに直接審査請求をすることが可能になる。そのほか、証拠書類の閲覧・謄写の範囲が拡大されるなど、国税当局の調査事務などにも影響を与えることになる。
施行日前の行政処分は従前の制度で
平成26年6月13日に公布された「行政不服審査法」(平成26年法律第68号)及び「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成26年法律第69号)の施行日については、公布の日から2年以内とされていたが、平成28年4月1日からとなることが分かった(本誌614号12頁参照)。なお、施行日前になされた行政処分については従前のままとされている。
同法の改正は、行政処分に関して国民が行政庁に不服を申し立てる制度について、救済手段の充実・拡大の観点から制定後50年ぶりの抜本的な見直しとなるもの。行政不服審査法では、不服申立ての手続を「審査請求」に一元化することや審査請求期間を3か月に延長するなどの改正が行われている。また、同法の整備法では、行政不服審査法の特例等を定める約350の法律が改正されている。このうちの1つの法律が国税通則法であり、これにより国税不服申立制度が大幅に見直されることになった。
直接審査請求が可能に 現行の国税不服申立制度では、処分に不服がある納税者は、青色申告者等の一部の例外を除き、原則として税務署長等の原処分庁に対して異議申立てをし、異議決定を経なければ国税不服審判所長に対して審査請求をすることはできない。訴訟を提起するまでには、「異議申立て」と「審査請求」の2段階を経なければならないわけだが、改正後は、納税者の選択により、異議申立てをせずに直接審査請求をすることが可能になる(図参照)。事実認定ではなく、法令解釈で争う場合であれば直接審査請求することも有力な選択肢となる。また、これまで通り、「異議申立て」(名称が「再調査の請求」に変更)を行うことも可能だ。審査請求期間については、処分があったことを知った日の翌日から「3月以内」(現行は2月以内)に延長される。一方、「再調査の請求」(現行の「異議申立て」)からの審査請求期間についてはこれまでと同じく、異議決定書の謄本の送達があった日の翌日から「1月以内」となる。
証拠書類の閲覧・謄写の範囲が拡大へ そのほか、現行制度では、請求人及び参加人は、原処分庁(税務署長等)から提出された書類その他の物件について、閲覧請求権が認められているが、今回の改正では担当審判官の職権収集資料も閲覧することが可能になる。国税審判官は職権で自ら事実関係を調査することができるが、その際の収集資料を閲覧することが可能になる。審理の透明性が確保されることになりそうだ。また、これらの書類等については謄写(コピー)請求権も認められる。現在は、請求人が閲覧資料を書き写すなどの作業が行われているようだが、謄写が可能になることになり、利便性の向上が図られることになる。
国税当局の対応は? 国税当局は、今回の国税不服申立制度の見直しにより、従来のような実地による事実確認や証拠収集を行う機会が減少することが見込まれると想定。調査事務及び審理事務にも多大な影響を及ぼすものであるとの認識を持っているようだ。
このため、制度の改正趣旨や見直し後の制度に適切に対応できるよう各種研修等を段階的に実施するなどの準備をすでに行っている。
平成28年4月1日から国税不服申立制度が変わる
平成28年4月より国税不服申立制度が見直される。改正行政不服審査法が平成28年4月1日に施行されることに伴い、国税通則法も同日に改正されることになるからだ。今回の改正では、納税者の選択により、「異議申立て」をせずに直接審査請求をすることが可能になる。そのほか、証拠書類の閲覧・謄写の範囲が拡大されるなど、国税当局の調査事務などにも影響を与えることになる。
施行日前の行政処分は従前の制度で
平成26年6月13日に公布された「行政不服審査法」(平成26年法律第68号)及び「行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成26年法律第69号)の施行日については、公布の日から2年以内とされていたが、平成28年4月1日からとなることが分かった(本誌614号12頁参照)。なお、施行日前になされた行政処分については従前のままとされている。
同法の改正は、行政処分に関して国民が行政庁に不服を申し立てる制度について、救済手段の充実・拡大の観点から制定後50年ぶりの抜本的な見直しとなるもの。行政不服審査法では、不服申立ての手続を「審査請求」に一元化することや審査請求期間を3か月に延長するなどの改正が行われている。また、同法の整備法では、行政不服審査法の特例等を定める約350の法律が改正されている。このうちの1つの法律が国税通則法であり、これにより国税不服申立制度が大幅に見直されることになった。
直接審査請求が可能に 現行の国税不服申立制度では、処分に不服がある納税者は、青色申告者等の一部の例外を除き、原則として税務署長等の原処分庁に対して異議申立てをし、異議決定を経なければ国税不服審判所長に対して審査請求をすることはできない。訴訟を提起するまでには、「異議申立て」と「審査請求」の2段階を経なければならないわけだが、改正後は、納税者の選択により、異議申立てをせずに直接審査請求をすることが可能になる(図参照)。事実認定ではなく、法令解釈で争う場合であれば直接審査請求することも有力な選択肢となる。また、これまで通り、「異議申立て」(名称が「再調査の請求」に変更)を行うことも可能だ。審査請求期間については、処分があったことを知った日の翌日から「3月以内」(現行は2月以内)に延長される。一方、「再調査の請求」(現行の「異議申立て」)からの審査請求期間についてはこれまでと同じく、異議決定書の謄本の送達があった日の翌日から「1月以内」となる。

「異議申立て」は「再調査の請求」に名称変更も内容は変わらず |
「異議申立て」の名称が「再調査の請求」に変更される。これは名称のみの変更であり、内容自体はこれまでと同じである。従来の税務署長等の行った更正や決定、滞納処分などについて不服があるときに、これらの処分を行った税務署長等に対して不服を申し立てる場合の手続に変更はない。 |
証拠書類の閲覧・謄写の範囲が拡大へ そのほか、現行制度では、請求人及び参加人は、原処分庁(税務署長等)から提出された書類その他の物件について、閲覧請求権が認められているが、今回の改正では担当審判官の職権収集資料も閲覧することが可能になる。国税審判官は職権で自ら事実関係を調査することができるが、その際の収集資料を閲覧することが可能になる。審理の透明性が確保されることになりそうだ。また、これらの書類等については謄写(コピー)請求権も認められる。現在は、請求人が閲覧資料を書き写すなどの作業が行われているようだが、謄写が可能になることになり、利便性の向上が図られることになる。
国税当局の対応は? 国税当局は、今回の国税不服申立制度の見直しにより、従来のような実地による事実確認や証拠収集を行う機会が減少することが見込まれると想定。調査事務及び審理事務にも多大な影響を及ぼすものであるとの認識を持っているようだ。
このため、制度の改正趣旨や見直し後の制度に適切に対応できるよう各種研修等を段階的に実施するなどの準備をすでに行っている。
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