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解説記事2015年11月30日 【税務マエストロ】 対価性の判断(その1)(2015年11月30日号・№620)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
対価性の判断(その1)
#151 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会税務審議部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学准教授

次回のテーマ
#152 米国デラウエア州LPSと「法人」該当性①
PwC税理士法人
品川克己
税制改正や、中国進出企業の増加に伴い、国際課税上のリスクは高まっている。国際課税の第一人者がそのリスクを検証する。

マエストロの解説  「対価を得て行われる取引」とは、資産の譲渡等(行為)に対して何らかの反対給付を受けることをいうので、無償による取引は、原則として課税の対象とはならない(消基通5-1-2)。よって、贈与や寄付などの無償取引は、対価性がないことから課税対象外取引に区分されることになる。
 ところで、無償取引を課税対象取引から除外することをもって、有償取引がすべて課税対象取引になるという意味ではない。対価性の有無を判断するときは、単に有償取引であるということだけでなく、その対価が反対給付として受けたものであるかどうかということをしっかりと見極めることが重要なのである。
 今月は、国内取引の課税対象要件のうち、「対価性の判断」について確認する。


1 基本通達における例示  消費税法基本通達では、対価性のない取引として次のようなものを例示しているので、まずはその内容について検討する。
剰余金の配当(消基通5-2-8)
寄附金、祝金、見舞金等(消基通5-2-14)
保険金、共済金等(消基通5-2-4)
補助金、奨励金、助成金等(消基通5-2-15)
 まず、剰余金の配当であるが、これは勘定科目でいうところの「受取配当金」のことである。株式配当金は、株主または出資者としての地位に基づいて受けるものであり、株主が資産の譲渡等を行い、その対価として受けるものではないので課税の対象とはならない。ちなみに、銀行預金の利息については課税の対象(非課税)となる。銀行に「現金」という資産を貸し付け、その対価、つまりリース料として利息を受け取るわけであるから、これは資産の貸付けに係る対価として課税の対象となるのである(課税対象取引になったうえで、第2ステップの判定で非課税取引に区分されるという意味である)。
 決算書の表示では、「受取利息配当金」といったように、受取利息と受取配当金は兄弟のような取扱いをすることが多いわけであるが、消費税の世界では受取利息と受取配当金は赤の他人となることに注意しなければならない。具体的には、課税売上割合の計算上、受取利息は分母に計上するのに対し、受取配当金はいっさい関係させないことになるのである。
 寄附金、祝金、見舞金などのように相手方から一方的に収受するもの、火災などがあったことにより、保険会社やJAなどから収受する保険金や共済金、国や地方公共団体から設備投資などのために収受する補助金、奨励金、助成金などは、いずれも資産の譲渡等により受ける対価とは異質なものであり、課税の対象とはならない。
 ただし、実際は資産の譲渡対価となるべき金銭を寄附金等の名目で受領したとしても、その受領した金銭は当然に寄附金ではなく、資産の譲渡対価の一部として認識することとなるので注意が必要だ。時価100の資産を30で譲渡し、別途70の寄附金を受領した場合には、資産の譲渡対価は30ではなく、100になるということである。

2 損害賠償金(消基通5-2-5)  損害賠償金は、心身または資産につき加えられた損害につき受けるものであるから資産の譲渡等の対価には該当しない。注意してほしいのは、「損害賠償金」という名目だけで単純に課税区分は判断できないということである。
 消費税法基本通達では、損害賠償金の取扱いについて、図2のような例示を示している。


 例えば、自動車の運転中に軽微な接触事故に遭い、キズの付いた車を加害者に引き渡したうえで損害賠償金をもらうような場合には、その損害賠償金の実態はキズの付いた車の譲渡代金であり、課税の対象となる。
 新たな発明をしたりデザインを考案したような場合には、他人に勝手に商品化されることを防ぐために、発明者や考案者は特許庁に特許権や意匠権の登録申請を行う。本来であれば、特許料などを権利者に払わなければこれらの権利を利用した商売はできないわけであるが、実際には無許可で模造品の販売などをする輩が後を絶たないのが現状である。特許を侵害された場合には、権利者は当然のことながら加害者に損害賠償請求をすることになるわけであるが、この場合に加害者から収受する賠償金の実態は、無許可で利用(侵害)された特許や意匠権などの使用料であり、課税の対象となるものである。
 店舗などの賃貸借契約に伴い、借家人の明渡し遅滞により、家主が契約に基づいて借家人から損害賠償金を収受するような場合には、その損害賠償金の実態は契約に基づく割増家賃であり、課税の対象となる。

3 タックスアンサー&質疑応答事例  建物の賃貸借契約に伴う違約金や原状回復費用、割増賃料の取扱いについて、国税庁タックスアンサーと質疑応答事例の内容を紹介する。

〇建物賃貸借契約の違約金など(国税庁タックスアンサーNo.6261)
 建物の賃貸人は建物の賃貸借の契約期間の終了以前に入居者から解約の申入れにより中途解約の違約金として数か月分の家賃相当額を受け取る場合があります。この違約金は、賃貸人が賃借人から中途解約されたことに伴い生じる逸失利益を補てんするために受け取るものですから、損害賠償金として課税の対象とはなりません。
 また、賃借人が立ち退く際に、賃貸人が賃借人から預っている保証金の中から原状回復工事に要した費用相当額を受け取る場合があります。賃借人には立退きに際して原状に回復する義務がありますので、賃借人に代わって賃貸人が原状回復工事を行うことは、賃貸人の賃借人に対する役務の提供に当たります。
 したがって、賃貸人が受け取る工事費に相当する額は、賃貸人の賃借人に対する役務の提供の対価となりますので、課税の対象となります。
 なお、賃貸借契約の契約期間終了後においても入居者が立ち退かない場合に、店舗及び事務所等の賃貸人がその入居者から規定の賃貸料以上の金額を受け取ることがあります。この場合に受け取る金額は、入居者が正当な権利なくして使用していることに対して受け取る割増し賃貸料の性格を有していますので、その全額が店舗及び事務所等の貸付けの対価として課税されることになります(消基通5-2-5)。
<解説>  数字を使って解説する。仮に1か月分の店舗家賃が108(税込)で、中途解約の場合には3か月分の家賃を受領する取り決めになっている場合には、324(108×3)が課税対象外収入となる。違約金324に消費税相当額が含まれているかどうかということは課税区分の判断に関係ない。
 また、契約期間終了後に入居者が立ち退かない場合には、規定賃料の3倍に相当する家賃を受領する取り決めになっている場合には、規定賃料を超える2倍の家賃(108×2=216)が課税対象外収入になるのではなく、324(108×3)全額が課税収入となる。
 どちらも契約に基づく金銭ではあるものの、中途解約の場合には物件の貸付対価ではないことから課税対象外収入となるのに対し、割増賃料の場合には、収受する賃料の全額が課税収入になるということである。
 賃貸借契約締結時に賃借人から収受する礼金や権利金は家賃と認識するので、契約期間や中途解約如何に関わらず、受領時に家賃収入を計上する(消基通6-13-9)。そうすると、このタックスアンサーに載っている中途解約時に受領する違約金は、契約に基づくものである限り、過去に受領した賃料の修正割増部分と認識することもできそうな気もするのだが……。
 なお、このタックスアンサーにおける原状回復工事と割増賃料に関する取扱いについては、上記の質疑応答事例に類似する事例が掲載されているので参照されたい。

○違約入居者から受け取る割増賃貸料(質疑応答事例:資産の譲渡の範囲11)
【照会要旨】  賃貸事務所の入居者が契約条件に従わない場合等には退去を求め、期限までに退去しない場合には規定の賃貸料の3倍に相当する額の賃貸料を徴収することとしていますが、この規定の賃貸料を超える部分の金額は損害賠償金又は違約金的なものとして、事務所の貸付けの対価には該当しないと考えてよいでしょうか。
【回答要旨】  規定の賃貸料の3倍に相当する額の賃貸料は、事務所の賃貸借契約に基づき賃貸期間に応じて徴収されるものであり、契約条件に違反した場合等、一定の要件に該当する場合における割増料金としての性格を有するものと認められます。したがって、その全額が事務所の貸付けの対価に該当することとなります(基通5-2-5)。
(参考)  供給契約に違反する受給形態等による電気、ガスの受給、電車等の不正乗車等についても通常の料金の3倍に相当する額の料金、運賃等を徴収する場合がありますが、いずれもその全額が対価の額となります。

○建物賃貸借に係る保証金から差し引く原状回復工事費用(質疑応答事例:資産の譲渡の範囲12)
【照会要旨】  当社はマンションの賃貸を行っており、貸付けに当たって保証金を徴しておき、賃借人が退居する際には、当社において原状回復工事を行い、これに要した費用相当額をその保証金から差し引いて、残額を返還することとしています。
 この保証金から差し引くこととなる原状回復工事に要した費用相当額は課税の対象となりますか。
【回答要旨】  建物の賃借人には、退去に際して原状に回復する義務があることから、賃借人に代わって賃貸人が原状回復工事を行うことは賃貸人の賃借人に対する役務の提供に該当します。
 したがって、保証金から差し引く原状回復工事に要した費用相当額は課税の対象となります。

4 キャンセル料の取扱い  次のような金銭を収受する行為は、対価性のない取引として課税の対象とはならない。
① 心身または資産につき加えられた損害の発生に伴い、その損害の補てん等として支払いを受ける損害賠償金
② 土地建物等の売買契約において、その契約が破棄されたことにより違約金として没収した手付金
③ ホテルの予約破棄(キャンセル)に伴い没収した予約金
 ただし、キャンセル料などと称するもののすべてが課税対象外取引となるわけではない。例えば、解約または取消しなどの手続にあたり、その事務手数料として収受する部分については、対価を得て行われる役務の提供として課税対象取引に組み込まれることになるのである(消基通5-5-2)。
 解約手数料、取消手数料、払戻手数料などと称して収受するもので、課税の対象となる金銭には次のようなものがある。
① 航空機の搭乗券を予約した後にこれをキャンセルした場合に、航空会社が収受する払戻手数料
② 上記の他、解約または取消し等に伴い、事務手数料として収受する金額

5 会費、組合費、入会金(消基通5-5-3~5-5-5・11-2-6~11-2-7)  同業者団体、組合等が受ける会費や組合費、入会金については、その同業者団体、組合等がその構成員に対して行う役務の提供等の間に明白な対価関係があるかどうかによって判断することとされている。
 つまり、会費等を収受する同業者団体等が課税売上げとして認識しているならば、これを支払う事業者サイドでも仕入税額控除の対象とすることができ、これとは逆に、同業者団体等が売上げとして認識していないのであるならば、これを支払う事業者サイドでも、仕入税額控除の対象とすることはできないということである。
 しかし、会費等を支払う事業者側で、同業者団体等の処理を把握することは現実問題として容易なことではない。そこで、課税の対象とならない会費等の場合には、これを収受する同業者団体等は、その旨をその構成員に通知することが義務付けられている。
(1)会費、組合費等の具体的な取扱い  団体としての通常の業務運営のために経常的に要する費用を分担させ、その団体の存立を図るというようないわゆる通常会費については、その同業者団体、組合等がその構成員に対して行った役務の提供等の間に明白な対価関係がないことから課税の対象とはならない。しかし、名目が会費等とされている場合であっても、実質的に出版物の購読料、映画・演劇等の入場料、職員研修の受講料または施設の利用料等と認められるときは、その実質により判断すべきことから課税の対象とされることになる(図3参照)。


(2)入会金の具体的な取扱い  ゴルフクラブ、宿泊施設その他レジャー施設を会員に利用させることを目的とする団体が、その施設を会員に利用させるために収受する入会金(返還しないものに限る。)は、役務提供に係る対価と認められることから課税の対象となる。
 なお、脱退にあたり返還される入会金については、単なる預り金であり、課税の対象とはならない(図4参照)。

※会費、組合費、入会金に関する質疑応答事例については次回以降に紹介する予定である。

記事に関連するお問い合わせ先 記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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