コラム2016年01月11日 【年頭所感】 年頭所感 服部昭三 中原 広(2016年1月11日号・№625)
年頭所感
2016
新年の御挨拶を申し上げます
中原 広 国税庁長官
平成28年の年頭に当たり、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。
国税庁の使命は「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ことです。このため、国税庁におきましては、今年も引き続き、納税者サービスの充実に向けた施策の実施に努めるとともに、適正な申告を行った納税者に不公平感を与えないよう、悪質な納税者には厳正な姿勢で臨むなど適正・公平な課税・徴収の実現に努めてまいります。
年も改まり、平成27年分の所得税、復興特別所得税及び消費税の確定申告の時期を迎えます。国税庁では、引き続き、e-TaxなどICTを利用した自宅等からの申告の拡大のための諸施策を推進しています。国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」では、画面案内に従って入力することで、計算誤りのない申告書を簡単に作成できるようにしております。また、本年の確定申告から、給与所得者又は公的年金所得者の方が、より分かりやすく入力できるように専用の作成画面を新設しました。初めての方でも操作がしやすい画面としておりますので、是非とも御利用いただき、早めの申告と納税をお願いしたいと思います。
次に、本年の特に留意すべき課題を申し上げます。
第一に、納税者利便の向上と行政効率化のための取組がございます。
まず、社会保障・税番号制度について、国税庁は、個人番号及び法人番号の利活用機関であると同時に、法人番号の付番機関となっていることから、昨年秋に法人番号の指定・通知・公表を行いました。個人番号及び法人番号の利用が開始される本年以降は、順次、申告書や法定調書などの税務関係書類に番号を記載していただくことになります。国税庁では、制度の円滑な導入・定着に向けて、引き続き、周知・広報に積極的に取り組むとともに、番号を効果的に利活用してまいります。また、法令等を遵守し、納税者の皆様の個人番号の適正な取扱いを徹底してまいります。
次に、e-Taxについては、更なる利便性の向上を図るため、本年4月から法人向けに次の二つの施策を実施します。一つ目は、法令の改正により、確定申告時に添付していただく書類のうちこれまでe-Taxで送信できなかったものについて、スキャナ等でイメージ化(画像化)したデータをe-Taxで送信できるようにします。二つ目に、e-Taxに対応していない形式で作成された法人税申告の財務諸表等のデータについて受付可能なデータに変換するプログラムを、市販会計ソフト開発業者に提供いたします。詳細については、e-Taxホームページをご覧ください。国税庁では、添付書類のイメージデータによる提出を個人向けにも拡大する等、e-Taxの一層の普及及び定着に向けた取組を今後更に推進してまいりますので、御理解と御協力をお願いします。
第二に、適正・公平な課税・徴収の実現について申し上げます。
まず、税務調査については、悪質な事案には厳正な対応を行うほか、社会・経済状況の変化に応じ、富裕層や国際的な事案にも積極的に取り組んでまいります。中でも、富裕層への対応については、情報収集・分析機能を強化する観点から、平成26年7月より、東京、大阪、名古屋の各国税局にプロジェクトチームを設置しています。このプロジェクトチームでの取組を踏まえて、全国的な実施体制の整備を図っていくこととしています。
また、相続税については、平成27年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係るものを対象に、基礎控除額の引下げなどの改正が行われました。本改正に係る申告期限の到来に伴い、これまで以上に多くの問合せや御相談をいただいております。引き続き、改正相続税法の周知・広報に取り組むとともに、納税者からの相談に対して丁寧かつ適切に対応してまいります。
さらに、国際課税の分野では、昨年秋に公表されたOECD/G20によるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの最終報告書において、多国籍企業の活動実態を把握するための国別報告書の提出を含む移転価格税制の文書化や相互協議の実効性の向上などの勧告が行われました。これを受け、昨年11月のアジア税務長官会合においても、国別報告書の実施に向けた各国の取組状況や留意すべき事項などについて、議論を行いました。国税庁といたしましても、最終報告書の勧告内容を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な対応を検討するとともに、引き続き国際的な議論に積極的に参画してまいりたいと考えております。
徴収については、滞納の未然防止が重要であり、賦課・徴収両部門間で連携を図りながら、期限内納付についての周知・広報や、納期限前後の納付指導等に一層取り組んでまいります。また、滞納整理に当たっては、大口・悪質事案などに重点的に取り組むとともに、滞納者個々の実情に即しつつ、法令等に基づき適切な対応をしてまいります。
第三に、納税者の権利救済に関しましては、国税通則法における国税不服申立制度への対応があります。行政不服審査法の抜本的な改正に伴い、不服申立前置の見直しや不服申立期間の延長等を内容とする改正が行われ、本年4月から施行されます。国税庁においては、改正法施行までに、法令解釈通達の改正など、必要な準備を進め、国税不服申立制度の適正かつ円滑な実施に向けて取り組んでまいります。
第四に、酒税行政の課題について申し上げます。酒税及び酒類行政については、酒税の保全を図るための免許制度の下で、酒税の適正な賦課・徴収のほか、酒類業の健全な発達に向けた取組を行っております。本年も引き続き、酒類を取り巻く環境の変化に対応しながら、酒類の安全性の確保、酒類の公正な取引環境の整備、未成年者飲酒防止などの社会的要請に、的確に対応してまいります。
また、昨年10月に、国内で造られたワインに関する表示ルールの策定や全ての日本産酒類の地理的表示制度の改正を行いました。さらに、昨年末には、この地理的表示制度の改正を踏まえ、日本酒全体のブランド価値の向上を図るなどの観点から、国レベルの地理的表示として「日本酒」を指定いたしました。今後は、これらの制度も活用しながら、「酒類業の健全な発達」を担う官庁として、酒類業の振興にしっかり取り組んでまいります。
以上、年頭に当たり、国税庁の任務を遂行する上での課題について考えを申し述べました。引き続き、皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
結びに、皆様と御家族のご多幸を祈念いたしまして、年頭の御挨拶とさせていただきます。

2016
新年の御挨拶を申し上げます
中原 広 国税庁長官
平成28年の年頭に当たり、謹んで新年の御挨拶を申し上げます。
国税庁の使命は「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」ことです。このため、国税庁におきましては、今年も引き続き、納税者サービスの充実に向けた施策の実施に努めるとともに、適正な申告を行った納税者に不公平感を与えないよう、悪質な納税者には厳正な姿勢で臨むなど適正・公平な課税・徴収の実現に努めてまいります。
年も改まり、平成27年分の所得税、復興特別所得税及び消費税の確定申告の時期を迎えます。国税庁では、引き続き、e-TaxなどICTを利用した自宅等からの申告の拡大のための諸施策を推進しています。国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」では、画面案内に従って入力することで、計算誤りのない申告書を簡単に作成できるようにしております。また、本年の確定申告から、給与所得者又は公的年金所得者の方が、より分かりやすく入力できるように専用の作成画面を新設しました。初めての方でも操作がしやすい画面としておりますので、是非とも御利用いただき、早めの申告と納税をお願いしたいと思います。
次に、本年の特に留意すべき課題を申し上げます。
第一に、納税者利便の向上と行政効率化のための取組がございます。
まず、社会保障・税番号制度について、国税庁は、個人番号及び法人番号の利活用機関であると同時に、法人番号の付番機関となっていることから、昨年秋に法人番号の指定・通知・公表を行いました。個人番号及び法人番号の利用が開始される本年以降は、順次、申告書や法定調書などの税務関係書類に番号を記載していただくことになります。国税庁では、制度の円滑な導入・定着に向けて、引き続き、周知・広報に積極的に取り組むとともに、番号を効果的に利活用してまいります。また、法令等を遵守し、納税者の皆様の個人番号の適正な取扱いを徹底してまいります。
次に、e-Taxについては、更なる利便性の向上を図るため、本年4月から法人向けに次の二つの施策を実施します。一つ目は、法令の改正により、確定申告時に添付していただく書類のうちこれまでe-Taxで送信できなかったものについて、スキャナ等でイメージ化(画像化)したデータをe-Taxで送信できるようにします。二つ目に、e-Taxに対応していない形式で作成された法人税申告の財務諸表等のデータについて受付可能なデータに変換するプログラムを、市販会計ソフト開発業者に提供いたします。詳細については、e-Taxホームページをご覧ください。国税庁では、添付書類のイメージデータによる提出を個人向けにも拡大する等、e-Taxの一層の普及及び定着に向けた取組を今後更に推進してまいりますので、御理解と御協力をお願いします。
第二に、適正・公平な課税・徴収の実現について申し上げます。
まず、税務調査については、悪質な事案には厳正な対応を行うほか、社会・経済状況の変化に応じ、富裕層や国際的な事案にも積極的に取り組んでまいります。中でも、富裕層への対応については、情報収集・分析機能を強化する観点から、平成26年7月より、東京、大阪、名古屋の各国税局にプロジェクトチームを設置しています。このプロジェクトチームでの取組を踏まえて、全国的な実施体制の整備を図っていくこととしています。
また、相続税については、平成27年1月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産に係るものを対象に、基礎控除額の引下げなどの改正が行われました。本改正に係る申告期限の到来に伴い、これまで以上に多くの問合せや御相談をいただいております。引き続き、改正相続税法の周知・広報に取り組むとともに、納税者からの相談に対して丁寧かつ適切に対応してまいります。
さらに、国際課税の分野では、昨年秋に公表されたOECD/G20によるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの最終報告書において、多国籍企業の活動実態を把握するための国別報告書の提出を含む移転価格税制の文書化や相互協議の実効性の向上などの勧告が行われました。これを受け、昨年11月のアジア税務長官会合においても、国別報告書の実施に向けた各国の取組状況や留意すべき事項などについて、議論を行いました。国税庁といたしましても、最終報告書の勧告内容を円滑かつ効果的に実施できるよう、必要な対応を検討するとともに、引き続き国際的な議論に積極的に参画してまいりたいと考えております。
徴収については、滞納の未然防止が重要であり、賦課・徴収両部門間で連携を図りながら、期限内納付についての周知・広報や、納期限前後の納付指導等に一層取り組んでまいります。また、滞納整理に当たっては、大口・悪質事案などに重点的に取り組むとともに、滞納者個々の実情に即しつつ、法令等に基づき適切な対応をしてまいります。
第三に、納税者の権利救済に関しましては、国税通則法における国税不服申立制度への対応があります。行政不服審査法の抜本的な改正に伴い、不服申立前置の見直しや不服申立期間の延長等を内容とする改正が行われ、本年4月から施行されます。国税庁においては、改正法施行までに、法令解釈通達の改正など、必要な準備を進め、国税不服申立制度の適正かつ円滑な実施に向けて取り組んでまいります。
第四に、酒税行政の課題について申し上げます。酒税及び酒類行政については、酒税の保全を図るための免許制度の下で、酒税の適正な賦課・徴収のほか、酒類業の健全な発達に向けた取組を行っております。本年も引き続き、酒類を取り巻く環境の変化に対応しながら、酒類の安全性の確保、酒類の公正な取引環境の整備、未成年者飲酒防止などの社会的要請に、的確に対応してまいります。
また、昨年10月に、国内で造られたワインに関する表示ルールの策定や全ての日本産酒類の地理的表示制度の改正を行いました。さらに、昨年末には、この地理的表示制度の改正を踏まえ、日本酒全体のブランド価値の向上を図るなどの観点から、国レベルの地理的表示として「日本酒」を指定いたしました。今後は、これらの制度も活用しながら、「酒類業の健全な発達」を担う官庁として、酒類業の振興にしっかり取り組んでまいります。
以上、年頭に当たり、国税庁の任務を遂行する上での課題について考えを申し述べました。引き続き、皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
結びに、皆様と御家族のご多幸を祈念いたしまして、年頭の御挨拶とさせていただきます。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.