解説記事2016年02月29日 【SCOPE】 中国出資持分の譲渡をめぐる外国税額控除の適用で企業敗訴(2016年2月29日号・№632)
租税債務の確定時期が問題に
中国出資持分の譲渡をめぐる外国税額控除の適用で企業敗訴
中国出資持分の譲渡をめぐり、原告法人が中国法人(出資持分譲渡対象会社)に対し平成22年12月に送金し、同法人が平成24年1月に申告納付した中国企業所得税について原告法人の平成23年3月期で外国税額控除を適用することができるか否かが問題となった税務訴訟で、原告法人が敗訴する判決が下された(東京地裁平成27年10月8日判決)。裁判所は、中国税収徴収管理法などの規定を踏まえると、本件中国企業所得税に係る租税債務の確定時期は申告時または税務機関による納税額の査定時であると指摘。裁判所は、中国法人が申告したのは平成24年1月であるため、本件中国企業所得税額の外国税額控除は同日を含む事業年度(平成24年2月期)において認められるべきものであると判断した。
中国非居住者企業間で出資持分を譲渡、中国企業所得税の納税義務が発生
今回紹介する裁判事案で問題となったのは、原告法人がその保有する中国子会社(以下「中国法人」)の出資持分を台湾法人に売却した際に生じた譲渡益に対する中国企業所得税について、原告法人の平成23年3月期において外国税額控除を適用することができるか否かという点だ(事案の概要は図参照)。
事実関係をみると、原告法人は、その保有する中国法人の出資持分を台湾法人に対し譲渡する契約を平成22年7月5日に締結し、その台湾法人が間接支配する香港法人から平成22年12月2日に譲渡対価(1190万ドル)の支払いを受けた。その後、原告法人は、中国法人から本件中国企業所得税相当額として89万ドルの請求を受けたため、平成22年12月15日に中国法人に送金した。送金を受けた中国法人は、平成24年1月13日、本件中国企業所得税を中国税務当局に申告し、同月18日に納付した。
原告法人は、平成23年2月期の法人税確定申告の際に、中国法人に対し送金した89万ドルについて、外国税額控除を受けるものとして申告した。
これに対し税務署は、本件中国企業所得税は平成23年2月末までに中国へ納付・申告されていないことを理由に、外国税額控除の適用を否認する課税処分を行った。この課税処分を不服とする原告法人は、裁判のなかで、中国法人への送金時をもって、外国税額控除の適用要件である「納付することとなる」(法69①)場合に該当する旨などと主張し、裁判所に対し課税処分の取り消しを請求した。
譲渡対象会社に中国企業所得税を送金した事業年度での適用を認めず
原告法人の主張に対し裁判所は、まず中国の法令等を踏まえ、持分譲渡取引の双方が共に非居住者企業で、中国国外で取引する場合、所得を取得する非居住者企業が自らまたは代理人に委託して、持分が譲渡された(中国)国内企業の所在地の管轄税務機関に申告納付しなければならないため、出資持分譲渡により原告法人が取得する所得に係る中国企業所得税については申告納税の方法による課税が行われると判断した。
次に、裁判所は、中国税収徴収管理法などの規定を踏まえると、本件中国企業所得税に係る租税債務の確定時期は申告時または税務機関による納税額の査定時となると解するのが相当であるとした。
そして、裁判所は、原告法人は中国法人から請求を受け平成22年12月15日に送金しているものの、中国法人が申告したのは平成24年1月13日であるため、本件中国企業所得税額の外国税額控除は同日を含む事業年度(平成24年2月期)において認められるべきものであると判断したうえで、原告法人は平成23年2月期において外国税額控除をすることはできないと結論付けた。
中国出資持分の譲渡をめぐる外国税額控除の適用で企業敗訴
中国出資持分の譲渡をめぐり、原告法人が中国法人(出資持分譲渡対象会社)に対し平成22年12月に送金し、同法人が平成24年1月に申告納付した中国企業所得税について原告法人の平成23年3月期で外国税額控除を適用することができるか否かが問題となった税務訴訟で、原告法人が敗訴する判決が下された(東京地裁平成27年10月8日判決)。裁判所は、中国税収徴収管理法などの規定を踏まえると、本件中国企業所得税に係る租税債務の確定時期は申告時または税務機関による納税額の査定時であると指摘。裁判所は、中国法人が申告したのは平成24年1月であるため、本件中国企業所得税額の外国税額控除は同日を含む事業年度(平成24年2月期)において認められるべきものであると判断した。
中国非居住者企業間で出資持分を譲渡、中国企業所得税の納税義務が発生
今回紹介する裁判事案で問題となったのは、原告法人がその保有する中国子会社(以下「中国法人」)の出資持分を台湾法人に売却した際に生じた譲渡益に対する中国企業所得税について、原告法人の平成23年3月期において外国税額控除を適用することができるか否かという点だ(事案の概要は図参照)。

事実関係をみると、原告法人は、その保有する中国法人の出資持分を台湾法人に対し譲渡する契約を平成22年7月5日に締結し、その台湾法人が間接支配する香港法人から平成22年12月2日に譲渡対価(1190万ドル)の支払いを受けた。その後、原告法人は、中国法人から本件中国企業所得税相当額として89万ドルの請求を受けたため、平成22年12月15日に中国法人に送金した。送金を受けた中国法人は、平成24年1月13日、本件中国企業所得税を中国税務当局に申告し、同月18日に納付した。
原告法人は、平成23年2月期の法人税確定申告の際に、中国法人に対し送金した89万ドルについて、外国税額控除を受けるものとして申告した。
これに対し税務署は、本件中国企業所得税は平成23年2月末までに中国へ納付・申告されていないことを理由に、外国税額控除の適用を否認する課税処分を行った。この課税処分を不服とする原告法人は、裁判のなかで、中国法人への送金時をもって、外国税額控除の適用要件である「納付することとなる」(法69①)場合に該当する旨などと主張し、裁判所に対し課税処分の取り消しを請求した。
譲渡対象会社に中国企業所得税を送金した事業年度での適用を認めず
原告法人の主張に対し裁判所は、まず中国の法令等を踏まえ、持分譲渡取引の双方が共に非居住者企業で、中国国外で取引する場合、所得を取得する非居住者企業が自らまたは代理人に委託して、持分が譲渡された(中国)国内企業の所在地の管轄税務機関に申告納付しなければならないため、出資持分譲渡により原告法人が取得する所得に係る中国企業所得税については申告納税の方法による課税が行われると判断した。
次に、裁判所は、中国税収徴収管理法などの規定を踏まえると、本件中国企業所得税に係る租税債務の確定時期は申告時または税務機関による納税額の査定時となると解するのが相当であるとした。
そして、裁判所は、原告法人は中国法人から請求を受け平成22年12月15日に送金しているものの、中国法人が申告したのは平成24年1月13日であるため、本件中国企業所得税額の外国税額控除は同日を含む事業年度(平成24年2月期)において認められるべきものであると判断したうえで、原告法人は平成23年2月期において外国税額控除をすることはできないと結論付けた。
外国税額控除に関する更正の請求、通則法改正で範囲拡大 |
平成23年12月の通則法改正前は、外国税額控除については当初申告要件(当初申告時に適用金額を記載した場合等に限り適用可)が存在したため、外国税額控除の適用誤りについて更正の請求が認められるケースは限定的であった。この点、通則法改正により外国税額控除に関する当初申告要件が廃止されたことで、外国税額控除の適用について誤りがあった場合であっても、更正の請求によりその誤りを事後的に修正することが可能となっている(平成23年12月2日以後に申告期限が到来する事業年度分から適用)。 |
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