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解説記事2016年05月16日 【ニュース特集】 Q&Aで読み解く消費税の軽減税率通達(2016年5月16日号・№642)

ニュース特集
飲食料品に係る委託手数料は両建処理に
Q&Aで読み解く消費税の軽減税率通達

 消費税率10%引上げと同時に消費税の軽減税率制度が平成29年4月1日から導入される予定になっていることを踏まえ、国税庁は4月12日、「消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について(法令解釈通達)」(以下「軽減税率通達」)を公表している(原文は今号24頁参照)。今回の特集では、軽減税率通達の概要及びそのポイントについてQ&A形式で解説する。

◎人が食べられる工業用原材料となる食品の取扱いは?
Q1
 調味料である塩については軽減税率の対象になると思いますが、工業用原材料となる塩は軽減税率の対象になりますか。
A  消費税の軽減税率制度は、平成29年4月1日以降に行う①飲食料品(酒類を除く)及び②週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)の品目の譲渡が対象になります。①の飲食料品については、食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く)が該当します。これは、人の飲用又は食用に供されるものをいうため、ご質問の「工業用原材料として取引される塩」や「観賞用・栽培用として取引される植物及びその種子」など、人の飲用又は食用以外の用途に供するものとして取引されるため、飲食が可能であっても「飲食料品」には該当しません(軽減税率通達2)。当然のことながら、人の飲用又は食用でないものを人の飲用又は食用に供されるものとして販売したとしても軽減税率の適用はありません。
 ただし、人の飲用又は食用に供されるものとして事業者が販売した場合には、その後、購入者が人の飲用又は食用に供さなかったとしても適用税率は変更されません。軽減税率が適用される取引かどうかは、事業者が課税資産の譲渡等を行った時点で判断されるからです。

事業者から飲食料品の包装材料等を購入した場合は?
Q2
 包装材料等の事業者からお刺身等のトレイを購入する場合も、軽減税率の対象になりますか。
A  飲食料品の販売に際し使用される包装材料及び容器に関しては、それが通常必要とされているものは、包装材料等を含め、飲食料品の譲渡に該当します(軽減税率通達3)。したがって、ジュースの缶やペットボトル、スーパーなどで販売する際の刺身や精肉などのトレイなどは、販売の際に必要なものとして飲食料品とともに軽減税率の対象になります。
 しかし、包装材料等の事業者が飲料メーカーやスーパーなどに缶やペットボトル、トレイを販売する際については、飲食料品の譲渡とはならないので、標準税率となります。
 なお、贈答用の包装など、包装材料等につき別途対価を定めている場合の包装材料等の譲渡についても標準税率となります。

◎組み合わせ商品の適用税率は?
Q3
 食品と食品以外の詰め合わせ商品については、どのように適用税率を決めればよいのでしょうか。
A  食玩など、食品と食品以外の商品が一体として販売される「一体資産」に関しては、①一体資産の譲渡の対価の額(税抜価額)が1万円以下、②一体資産に含まれる食品に係る部分の価額の占める割合として合理的な方法により計算した割合が3分の2以上であることの2つの要件を満たした場合には軽減税率が適用されます。
 ただし、食品と食品以外の商品の価格が内訳で明らかにされている場合には、食品については軽減税率、食品以外の商品には標準税率が適用されることになります(軽減税率通達4)。また、食品と食品以外の商品を「よりどり3品△△円」と価格を提示し、顧客が自由に組み合わせることができる場合など、個々の商品に係る対価の額が明らかでないときは、対価の額を合理的に区分することになります。

◎一体資産の食品部分を算出する合理的な計算方法とは?
Q4
 一体資産に関しては、食品に係る部分の価額を合理的な方法により計算することとされていますが、どのような方法が認められますか。
A  一体資産の価額のうち、食品に係る部分の価額の占める割合については、事業者の合理的な計算に基づき判断することになります。例えば、①一体資産の譲渡に係る売価のうち、合理的に計算した食品の売価に占める割合、②一体資産の譲渡に係る原価のうち、合理的に計算した食品の原価に占める割合などで差し支えないとされています(軽減税率通達5)。
 原価に占める割合により計算を行う場合、当該原価が日々変動するなど、当該割合の計算が困難な場合には、前課税期間における原価の実績等により合理的に計算されている場合であれば認められます。しかし、売価又は原価とは関係のない重量、表面積、容積等といった基準のみにより計算した割合については、合理的な方法により計算した割合とは認められません。
 そのほか、他の事業者が組成した一体資産に該当する商品を仕入れた場合であれば、仕入れた段階でその仕入先が適用した税率をそのまま適用することも差し支えないとされています。
 合理的な計算方法に関しては、軽減税率通達に規定された以外にも、事業者の販売する商品や販売実態等に応じて様々な方法があるとされています。一体資産の規定は、元来、飲食料品でないものを飲食料品として軽減税率を適用しようとする者を規制する目的で作成された取扱いだからです。

◎割引券やクーポン券を利用した場合の取扱いは?
Q5
 食品と食品以外の商品に対して、顧客が割引券やクーポン券を利用した場合はどのような取扱いとなりますか。
A  食品と食品以外の商品を一括して譲渡した場合には、食品には軽減税率、食品以外の商品には標準税率が適用されることになります。この際、問題となるのは、顧客が割引券等を使用した場合。一括して値引きを行う場合には、それぞれの対価の額を合理的に区分する必要があります。商品の適用税率ごとの値引額が分からない場合には、割引券等による値引き額を当該資産の譲渡等に係る価額の比率により按分することなどが考えられます(軽減税率通達15)。
 また、レシート等において適用税率ごとの値引額又は値引額控除後の対価の額が確認できれば、これも合理的に区分しているものと認められます。

◎自動販売機や通信販売の取扱いは?
Q6
 飲食料品の譲渡であれば、自動販売機や通信販売による販売でも軽減税率が適用できますか。
A  自動販売機により行われるジュース等の販売については、単に飲食料品を販売するものであり、飲食料品の譲渡に該当するため、軽減税率の対象となります(軽減税率通達6)。
 また、インターネットを利用した通信販売であっても、販売する商品が飲食料品に該当する場合には、軽減税率の対象になります。
 なお、通信販売の場合については、消費税率の引上げに伴い、平成28年10月1日前にその販売価格の条件を提示し、又は提示する準備を完了した場合において、平成29年4月1日前に申込みを受け、提示した条件に従って平成29年4月1日以後に行われる商品の販売については、経過措置が設けられていますが、飲食料品の譲渡には、この経過措置は適用されません。この点、消費税と地方消費税を合わせた税率は8%ですが、平成29年3月31日までの税率は、消費税率6.3%、地方消費税率1.7%で合計8%、平成29年4月1日以後に適用される軽減税率は消費税率6.24%、地方消費税率1.76%で合計8%となるので留意したい点です。

◎飲食店前の椅子は飲食設備に該当するか?
Q7
 店舗だけではなく、持ち帰りでアイスクリームを販売しています。お店の外に簡易な椅子を置いており、アイスクリームを購入した顧客が利用することができます。この椅子は飲食設備に該当することになるのでしょうか。
A  軽減税率が適用されない「飲食店業等を営む者が行う食事の提供」、いわゆる外食とは、①飲食店業等を営む者がテーブル、椅子、カウンターその他の飲食に用いられる設備(飲食設備)のある場所において、②飲食料品を飲食させる役務の提供のことをいいます。食品衛生法上の飲食店業及び喫茶店営業を行う者だけでなく、①及び②の要件を満たす場合には外食に該当することになります(軽減税率通達7)。
 また、飲食設備に関しては、例えば、テーブルのみ、椅子のみ、カウンターのみであっても、飲食目的以外の施設等に設置されたテーブル等であっても、これらの設備が飲食料品の飲食に用いられるのであれば、飲食設備に該当することになります(軽減税率通達8)。飲食設備の規模や目的は問われないため、ご質問のケースも原則として飲食設備に該当することになります。
 なお、移動販売車でお弁当などを販売し、その後、顧客が公園のベンチ等で飲食するケースですが、この場合、公園のベンチ等は、飲食料品を提供する事業者と何ら関連のない設備ですので、仮にお弁当の購入者が利用したとしても飲食設備には該当しません(軽減税率通達9)。

◎コンビニでも全員の意思確認が必要?
Q8
 コンビニエンスストアのイートインコーナーでの飲食は軽減税率の対象外になるとのことですが、ファストフード店のように毎回、テイクアウト(持ち帰り)かどうかを確認する必要があるのですか。
A  テイクアウトに該当するかどうかは、飲食料品の提供を行った時、つまり販売時点において、持ち帰るかどうかを顧客に意思確認するなどの方法で判定することになります(軽減税率通達11)。仮に販売事業者が持ち帰りの際に利用している容器に入れて提供したとしても、顧客が店内で飲食するとの意思表示をしていれば標準税率となります。逆に持ち帰りと意思表示すれば、その後、仮に店内で飲食したとしても軽減税率の対象となります。
 また、厄介なのはご質問にあるようなコンビニエンスストアでのイートインコーナーでの飲食です。同スペースでの飲食は軽減税率の対象になりませんが、お弁当やドーナツなど、店内で食べることも持ち帰ることも可能な商品については特に疑問が生じます。テイクアウトにすると言った後、簡単にイートインコーナーで飲食が可能だからです。この場合も販売時点で顧客に店内か持ち帰りかの意思確認を行うことにより、軽減税率の適用対象になるかどうかを判定することになります。
 ただし、大半の商品が持ち帰りであることを前提として営業しているコンビニエンスストアの場合は、顧客全員に意思確認を行うことは現実的ではありません。
 このため、例えば、「イートインコーナーを利用する場合はお申し付けください」等の掲示をするなどの対応も可能としています。また、お酒の販売などのように店内か持ち帰りかのタッチパネルで意思確認する方法なども考えられます。

◎老人ホームの食事を他の事業者に委託している場合は?
Q9
 有料老人ホームでの食事も軽減税率の対象になるとのことですが、食事の提供を他の業者に委託している場合も軽減税率が適用されますか。
A  顧客が指定した場所で、飲食料品の提供を行う事業者が、例えば、加熱、切り分け・味付けなどの調理、盛り付け、食器の配膳、取り分け用の食器等を飲食に適する状況に配置するなどの役務を伴って飲食料品の提供をする場合には軽減税率の対象にはなりません(軽減税率通達12)。
 一方、有料老人ホームなどの飲食料品の提供に関しては、一定の要件を満たすことにより軽減税率の対象になります。具体的には、有料老人ホームの設置者又は運営者が60歳以上の者、要介護認定・要支援認定を受けている60歳未満の者又はそれらの者の配偶者に対して行う食事の提供が該当します(この場合、飲食料品の対価の額(税抜き)が一食につき640円以下であるもののうち、累計額が1,920円に達するまでの飲食料品の提供が対象)。
 なお、軽減税率が適用されるのは、有料老人ホームの設置者等が行うものが対象となるため、ご質問にあるような食事の提供を他の事業者に委託しているようなケース、つまり、設置者等と受託者との間の取引に軽減税率は適用されません(軽減税率通達13)。

◎飲食料品に係る委託販売手数料の取扱いは?
Q10
 飲食料品の販売を他の事業者に委託しています。この場合、支払っている委託販売手数料には、標準税率が適用されるということでよいのでしょうか。
 また、現在は、飲食料品の譲渡した金額から委託販売手数料を控除した残額を飲食料品の譲渡等の金額としています。軽減税率導入後もこの取扱いを継続することはできるのでしょうか。
A  軽減税率が適用されるのは、①飲食料品(酒類を除く)及び②週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)の譲渡が対象になります。したがって、飲食料品の販売を他の事業者に委託した場合の委託販売手数料については、飲食料品の譲渡に係る費用ではあるものの、飲食料品の譲渡の対価ではないため、軽減税率の対象にはなりません(軽減税率通達16)。食料品を納品するために他の事業者に運送を依頼した場合の運送費用等も同様です。
 ところで、委託販売手数料については、飲食料品を譲渡した金額から委託販売手数料を控除した残額を飲食料品の譲渡等の金額とすることが認められています(消基通10-1-12)。しかし、軽減税率導入後は、飲食料品の譲渡は軽減税率、委託販売手数料は標準税率と税率が異なることになりますので、両建処理する必要があります。

◎返品や値引きなどの取扱いは?
Q11
 当社は売上値引き額を売上から直接控除していますが、軽減税率導入後で取扱いが変わることがありますか。
A  売上、仕入に係る値引等についても、軽減税率が適用されたものを値引する場合には軽減税率が適用されます。
 現在、事業者が継続的に売上値引きについて売上から直接控除している経理処理を行っている場合には、控除後の金額を基に消費税額の計算を行うことが認められています。この取扱いは軽減税率導入後も認められますが、適用税率ごとに区分して処理することが必要になります(軽減税率通達17)。
 また、仕入から仕入値引を直接減額する方法を採用する事業者についても同様の取扱いとなっています(軽減税率通達20)。

◎税率ごとに請求書を発行することも可能?
Q12
 区分記載請求書等ですが、適用税率ごとに分けて請求書等を発行することも認められますか。
A  平成33年4月1日から「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)が導入されることになりましたが、平成29年4月1日から平成33年3月31日までの間については、経過措置として「区分記載請求書等保存方式」が導入されることとなっています。
 現行の「請求書等保存方式」では、「請求書発行者の氏名又は名称」「取引年月日」「取引の内容」「対価の額」「請求書受領者の氏名又は名称」を記載することが求められますが、「区分記載請求書等保存方式」では、これらの記載事項に加えて、「軽減対象資産の譲渡等である旨」「税率の異なるごとに区分して合計した税込対価の額」を記載する必要があります。
 「軽減対象資産の譲渡等である旨」については、客観的に明らかであるといえる程度の表示がされていれば要件を満たすとされています(軽減税率通達18)。例えば、①記号・番号等を使用する場合、②同一の請求書内で税率ごとに区分する場合のほか、ご質問にある③税率ごとに分けて請求書等を発行する場合なども認められます(図表参照)。



◎レジシステムの改修時には16桁の番号の空き容量を
Q13
 インボイス制度に関する通達はどこに記載されていますか。
A  「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)に関しては、平成33年4月1日から導入予定であるため、消費税法施行令等の公布もされていません。したがって、今回の軽減税率通達にもインボイス制度に関する内容は盛り込まれていません。
 ところで、「区分記載請求書等保存方式」の導入でレジのシステム改修を行う場合には、将来のインボイス制度を見据えた開発も一考に値するでしょう。「適格請求書等保存方式」の記載事項の要件を満たすものは、「区分記載請求書等保存方式」の要件を自ずと満たすからです。実際、「区分記載請求書等保存方式」の記載事項と異なるのは、「登録番号」「税抜価額又は税込価額を税率ごとに区分した合計額及び適用税率」「消費税額等」。このうち、「登録番号」については、平成31年4月1日から平成32年9月30日までの間に申請することになります。現時点で実際の番号がどうなるかわかりませんが、16桁以内の数字+英文字などが国税庁で検討されている模様です。レジのシステム改修の際には予め「登録番号」の空き容量を見込んでおくとよいかもしれません。

◎多数の商品名が登録できないレジの場合は?
Q14
 現在使用しているレジですが、多数の商品名等の登録ができません。例えば、発行するレシートに「野菜」「肉」「魚」などの括りや、一括して「食品」などと記載することでもよいのでしょうか。
A  「軽減対象資産の譲渡等である旨」の記載があれば、区分記載請求書等の記載事項の要件を満たしていることになります。

◎一定期間分の納品についてまとめて請求書が交付される場合は?
Q15
 取引先からは、一定期間分の納品についてまとめた請求書が交付されます。この場合、仕入税額控除が認められるのでしょうか。
A  例えば、日々の取引内容を納品書等に記載しており、これら一定期間分の納品についてまとめて請求書が交付される場合には、納品書等と請求書との相互の関連性が明確であり、かつ、これら書類全体で記載事項を満たす場合には、これらの書類をまとめて保存することで仕入税額控除の要件を満たすことになります。

◎交付を受けた請求書等に記載漏れがあった場合は?
Q16
 事業者から交付された請求書等に記載漏れがあった場合、仕入税額控除が認められますか。
A  軽減税率が導入される平成29年4月1日から平成33年3月31日までの間においては、「区分記載請求書等保存方式」の記載事項を満たした請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。
 ただし、事業者の準備が間に合わない等の理由により、記載漏れ事項があることも想定されます。このような場合を想定し、平成33年3月31日までの間であれば、交付を受けた事業者側で請求書等に追記を行うことが認められています。この点、追記が認められるのは、「軽減対象資産の譲渡等である旨」及び「税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額」とされています(軽減税率通達19)。
 なお、3万円未満の取引等については、現行どおり平成33年3月31日までは、法令の要件を満たす帳簿の保存により仕入税額控除を行うことが可能です。

◎特例計算が適用できる「困難な事情」とは?
Q17
 区分記載請求書等保存方式ができない場合に備えて、売上税額の計算の特例措置などが設けられていますが、前提として「困難な事情があるとき」とされています。困難な事情とはどの程度の理由が必要になるのですか。
A  軽減税率導入後は、「区分記載請求書等保存方式」によっても、売上を税率ごとに区分することについて「困難な事情」がある場合には、特例計算方法として、①卸売業及び小売業に係る課税仕入れ等に占める軽減対象課税資産の譲渡等にのみ要するものの割合を用いる、②通常の事業を行う連続する10営業日の課税資産の譲渡等に占める軽減対象課税資産の譲渡等の割合、③軽減対象課税資産の譲渡等の割合を50%のいずれかを用いて、当該期間の売上税額を簡便に計算することが認められています。
 この「困難な事業」については、その困難な度合や理由は問われません。事業者において何らかの事情があればよいとされています(軽減税率通達21)。当面は、消費税の期限内申告をしてもらうことが大事であるからというのがその理由となっています。

◎飲食料品の仕入が少なくても簡易課税の事後選択は可能?
Q18
 中小事業者については簡易課税制度の事後選択ができると聞きました。弊社の場合はほとんど飲食料品の仕入はありませんが、この場合でも簡易課税制度を事後選択できますか。
A  仕入税額の計算の経過措置として、中小事業者に対しては簡易課税制度の事後選択、また、大規模事業者についても平成29年4月からの1年間に限り、簡易課税制度を準用することができる特例措置が設けられています。これは、自社のシステム又は取引先のシステム整備が間に合わない場合も想定されることに対応したものですが、この特例措置を適用できるのは「著しく困難な事情があるとき」とされています。したがって、飲食料品の仕入がほとんどないケースであれば、税率を区分して計算することは可能であるため、「著しく困難な事情があるとき」には該当せず(軽減税率通達24)、簡易課税制度の事後選択等は適用できません。

◎端数処理は適用税率ごとに
Q19
 軽減税率導入後も端数処理を行うことができますか。
A  現行制度では、消費税の申告に当たり、一領収単位ごとに1円未満の端数処理を行った消費税等相当額に基づいて消費税額等の計算を行うことができます。軽減税率導入後も、一領収単位において税率の異なるごとに1円未満の端数処理を行った場合には、これまでと同様の要件のもとに税率の異なるごとに端数処理を行った後の消費税等相当額を基礎として納付すべき消費税額等の計算を行うことができます(軽減税率通達25)。また、仕入税額についても同様です。

【表】売上税額・仕入税額の計算方法の特例(平成29年4月1日~33年3月31日まで)
※次に掲げる区分に応じ、それぞれ一領収単位ごとの消費税額等相当額を基礎として計算する「積上げ計算」が認められる(一領収単位ごとに、税率別に1回の端数処理が認められる)(注1)
売上税額 仕入税額(注3)
イ 総額表示義務の対象外取引(事業者間取引等)
  税抜価格を税率別に合計し、それぞれに税率(10%、8%)を乗じて計算した円未満の端数処理後の消費税額等相当額を領収書等に明示
ロ 税込価格を基礎とした代金決済を行う取引
  税込価格を税率別に合計し、それぞれに110分の10、108分の8を乗じて計算した円未満の端数処理後の消費税額等相当額を領収書等に明示
ハ 総額表示義務の対象取引で税抜価格を基礎とした代金決済を行う取引(注2)
  (イと同様)
 課税仕入れの相手方から交付を受けた請求書等(イ~ハのいずれかの要件を満たす請求書等に限る)に、円未満の端数処理後の消費税額等相当額(税率別)が明示されており、かつ、当該消費税額等相当額を仮払い消費税として経理している場合
 上記ニ以外の課税仕入れにつき、その請求の都度、税率別の支払対価の額(税込)の合計額に、それぞれ110分の10、108分の8を乗じて計算した円未満の端数処理後(切捨て又は四捨五入に限る)の消費税額等相当額を仮払消費税として経理している場合
(注1)消費税額等相当額(地方消費税相当分を含む10%又は8%相当額をいう)の合計額に100分の78を乗じた額が国の消費税額となる。
(注2)平成26年4月1日以後に行われる取引において、税込価格で計算を行うレジを導入することが困難な事情があり、総額表示を行っている又は転嫁特措法10条1項(総額表示義務に関する消費税法の特例)の規定により税抜価格表示を行っている場合に適用される。
(注3)仕入税額の「積上げ計算」は、税抜経理方式を採用している事業者について認められる。
(出典:財務省)

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