解説記事2016年06月20日 【SCOPE】 営利目的で毎週・大量購入も、外れ馬券は必要経費に該当せず(2016年6月20日号・№647)
地裁、一般的な馬券購入行為の範囲内と指摘
営利目的で毎週・大量購入も、外れ馬券は必要経費に該当せず
当たり馬券の払戻金の課税関係が問題となる税務訴訟事件が相次ぐなか、納税者が敗訴する判決が下されていたことが明らかとなった(東京地裁平成28年3月4日判決)。
本件で納税者は、営利目的で毎週かつ大量(年1500回~20~0回、3年間で約2億6,000万円)に馬券を購入していたことなどから、本件払戻金は雑所得であり、外れ馬券も必要経費に含まれると主張していた。これに対し東京地裁は、本件納税者の馬券購入行為が一般的な馬券購入行為と質的に異なるものであるとはいえないなどと指摘。本件払戻金を一時所得としたうえで外れ馬券は必要経費に該当しないと判断し、納税者の請求を棄却した(敗訴した納税者は控訴を提起している)。
年1500回以上・3年間で2億円以上の馬券を購入も、収支はマイナス
当たり馬券の払戻金の課税関係をめぐっては、馬券の払戻しによる所得を「雑所得」と判断するとともに、外れ馬券を含むすべての馬券の購入代金が必要経費に該当すると判断した東京高裁平成28年4月21日判決(本誌641号4頁参照)が記憶に新しい(なお逆転敗訴した国側は最高裁に対し上告受理申立てを行っている)。
今回紹介する事案も、馬券の払戻金に関する所得区分と外れ馬券の必要経費性が問題となったものだ。
ほぼ毎週ごとに数十万円から数百万円購入 事実関係をみると、馬主としての事業所得等がある本件納税者は、ほぼ毎週(土日)ごとに数十万円から数百万円に及ぶ馬券を購入し、その購入回数は1年あたり1500回から2000回であった。
また、払戻金の獲得回数は1年当たり100回から200回であり、ほぼすべての開催日で払戻金を獲得していた。
ただ、別件東京高裁判決の納税者および別件最高裁判決(平成27年3月10日)の納税者とは異なり、本件納税者の年単位ベースの損益は赤字であった(表参照)。
外れ馬券は経費対象外、約500万円を課税 課税当局は、本件払戻金を一時所得と認定するとともに、外れ馬券は必要経費に該当しないと判断したうえで、本件納税者に対し約500万円の課税処分を行った。
これに対し本件納税者は、大量かつ継続的な馬券購入行為によって継続的、恒常的に払戻金を得ていたことから、本件払戻金は「営利を目的とする継続行為」から生じた所得であると指摘。そのうえで本件納税者は、本件払戻金は雑所得であると主張するとともに、外れ馬券を含むすべての馬券の購入代金が必要経費に該当すると主張し、課税処分の取消しを求めた。
地裁、馬券購入が一体の経済活動の実態を有するものとは認められず
東京地裁は、3年間ほぼすべての土日において馬券を購入し払戻しを受け、購入金額や払戻金額の合計が1億円を超える年もあるなど多額であり、年単位の購入回数が1500回から2000回であったことなどを考慮しても、本件納税者の馬券購入行為が一般的な馬券購入行為と質的に異なるものであるということはできないなどと指摘。
この点などを踏まえ地裁は、本件納税者の馬券購入行為は行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮しても、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するものということはできないため、本件払戻金は一時所得に該当すると判断した。
また、外れ馬券の必要経費性については、一時所得である本件払戻金から控除されるのは的中馬券の購入代金に限られると指摘し、外れ馬券の購入代金は必要経費に該当しないと判断した。
なお、地裁判決で敗訴した本件納税者は、控訴を提起している。
営利目的で毎週・大量購入も、外れ馬券は必要経費に該当せず
当たり馬券の払戻金の課税関係が問題となる税務訴訟事件が相次ぐなか、納税者が敗訴する判決が下されていたことが明らかとなった(東京地裁平成28年3月4日判決)。
本件で納税者は、営利目的で毎週かつ大量(年1500回~20~0回、3年間で約2億6,000万円)に馬券を購入していたことなどから、本件払戻金は雑所得であり、外れ馬券も必要経費に含まれると主張していた。これに対し東京地裁は、本件納税者の馬券購入行為が一般的な馬券購入行為と質的に異なるものであるとはいえないなどと指摘。本件払戻金を一時所得としたうえで外れ馬券は必要経費に該当しないと判断し、納税者の請求を棄却した(敗訴した納税者は控訴を提起している)。
年1500回以上・3年間で2億円以上の馬券を購入も、収支はマイナス
当たり馬券の払戻金の課税関係をめぐっては、馬券の払戻しによる所得を「雑所得」と判断するとともに、外れ馬券を含むすべての馬券の購入代金が必要経費に該当すると判断した東京高裁平成28年4月21日判決(本誌641号4頁参照)が記憶に新しい(なお逆転敗訴した国側は最高裁に対し上告受理申立てを行っている)。
今回紹介する事案も、馬券の払戻金に関する所得区分と外れ馬券の必要経費性が問題となったものだ。
ほぼ毎週ごとに数十万円から数百万円購入 事実関係をみると、馬主としての事業所得等がある本件納税者は、ほぼ毎週(土日)ごとに数十万円から数百万円に及ぶ馬券を購入し、その購入回数は1年あたり1500回から2000回であった。
また、払戻金の獲得回数は1年当たり100回から200回であり、ほぼすべての開催日で払戻金を獲得していた。
ただ、別件東京高裁判決の納税者および別件最高裁判決(平成27年3月10日)の納税者とは異なり、本件納税者の年単位ベースの損益は赤字であった(表参照)。

外れ馬券は経費対象外、約500万円を課税 課税当局は、本件払戻金を一時所得と認定するとともに、外れ馬券は必要経費に該当しないと判断したうえで、本件納税者に対し約500万円の課税処分を行った。
これに対し本件納税者は、大量かつ継続的な馬券購入行為によって継続的、恒常的に払戻金を得ていたことから、本件払戻金は「営利を目的とする継続行為」から生じた所得であると指摘。そのうえで本件納税者は、本件払戻金は雑所得であると主張するとともに、外れ馬券を含むすべての馬券の購入代金が必要経費に該当すると主張し、課税処分の取消しを求めた。
地裁、馬券購入が一体の経済活動の実態を有するものとは認められず
東京地裁は、3年間ほぼすべての土日において馬券を購入し払戻しを受け、購入金額や払戻金額の合計が1億円を超える年もあるなど多額であり、年単位の購入回数が1500回から2000回であったことなどを考慮しても、本件納税者の馬券購入行為が一般的な馬券購入行為と質的に異なるものであるということはできないなどと指摘。
この点などを踏まえ地裁は、本件納税者の馬券購入行為は行為の期間、回数、頻度その他の態様、利益発生の規模、期間その他の状況等の事情を総合考慮しても、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するものということはできないため、本件払戻金は一時所得に該当すると判断した。
また、外れ馬券の必要経費性については、一時所得である本件払戻金から控除されるのは的中馬券の購入代金に限られると指摘し、外れ馬券の購入代金は必要経費に該当しないと判断した。
なお、地裁判決で敗訴した本件納税者は、控訴を提起している。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.