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解説記事2016年07月04日 【SCOPE】 顧問先が粉飾決算で経営破綻、取引先が顧問税理士に賠償請求(2016年7月4日号・№649)

粉飾を見抜けなかったことに過失があるか否か
顧問先が粉飾決算で経営破綻、取引先が顧問税理士に賠償請求

 粉飾決算により経営破綻した破産会社の取引先企業(原告)が破産会社の顧問税理士(被告)に対し、粉飾決算を見抜けなかったことに過失があったなどと主張して回収不能となった売掛債権約2億円の損害賠償を請求していた税賠事件で、顧問税理士側が完全勝訴する判決が下された(東京地裁平成28年3月25日判決)。本件の粉飾は、破産会社の代表者が単独で実行していたもので、架空の仕入割戻しを未収入金として計上するというもの。裁判所は、顧問税理士が未収入金の存在に疑問を持ち、未収入金が回収できない理由などを代表者に確認していた点を重視。代表者の説明は不合理ではなく、それ以上の疑問を抱かなかったことはやむを得ないなどと指摘し、顧問税理士に過失はなかったと判断した。

赤字決算を避ける目的で、破産会社の代表者が単独で粉飾を実行

多額の未収入金計上も大部分は実態なし
 問題となった粉飾は、破産会社の代表者が赤字決算を避けるために単独で行っていたもので、破産会社の取引先企業に対する架空の仕入割戻しを計上するとともに、これに見合う未収入金を計上するというもの。代表者から仕入割戻しの金額などが書かれた書面を受け取っていた顧問税理士は、法人税の申告の際に下表の未収入金を申告していたものの、その大部分は架空のものであった。

 なお、粉飾発覚の約2年前に実施された破産会社に対する税務調査の際に代表者は、顧問税理士から仕入割戻しについての資料を求められたため、取引先企業名義の書類を改ざんして、申告書に記載された未収入金に見合う仕入割戻しの金額などを記載した書類を偽造したうえで、顧問税理士に交付していた。
未回収の売掛債権約2億の損害賠償を請求  破産会社に継続して商品を納入していた取引先企業は、破産会社の倒産(破産手続き開始決定)により、約2億2,619万円の売掛債権が回収不能となった。
 取引先企業は、この回収不能額の損害賠償を顧問税理士に対し請求する訴訟のなかで、破産会社の正しい財務内容などを把握できていれば破産会社との取引を早期に打ち切ることができ、未回収の売掛債権に関する損害を回避することができたと指摘。
 また、取引先企業は、顧問税理士は破産会社の粉飾決算の事実を容易に知り得た立場にあり、故意または過失により粉飾決算に加功したことは明らかであると指摘し、顧問税理士に対し回収不能となった売掛債権相当額の損害賠償を請求した。

代表者に疑問点を確認していた点を重視、顧問税理士に過失なし
 裁判所は、顧問税理士は平成19年から急激に増加していた未収入金が本当に存在するのかについて疑問を持ち、未収入金が回収できない理由を代表者に確認し、代表者からその説明を受けていた点を指摘。代表者の説明(リーマンショックに続く不景気で仕入割戻しを実行してもらえず累積して未収入金が増大している旨)は不合理というほどのものではなく、このような説明を信用したことに過失があるということはできないと判断した。
 また、裁判所は、代表者が未収入金の存在を証明する内容の取引先企業名義の書類を偽造してまで顧問税理士に交付していた点を指摘。一見すれば取引先企業発行の書類の様にも見えるため、その内容を信じて顧問税理士が未収入金の存在を信じたとしても過失があるとはいえないと判断した。
 さらに、裁判所は、未収入金が存在するか否かについて税理士という立場からいきなり取引先企業に問い合わせることは難しかったというのも得心できないわけではないと指摘。未収入金が回収できない理由を代表者に確認していたのであれば、過失があったということはできないとした。
 そのうえで、裁判所は、破産会社代表者による虚偽の説明や偽造された書面の交付があったことにより、顧問税理士がそれ以上の疑問を抱かなかったことはやむを得ないというべきであると判断し、取引先企業の顧問税理士に対する損害賠償請求を斥けた。

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