解説記事2016年08月01日 【SCOPE】 宗教法人が営むビル型納骨堂は固定資産税等の課税対象?(2016年8月1日号・№653)
「境内建物」には該当せず
宗教法人が営むビル型納骨堂は固定資産税等の課税対象?
宗教法人が都内で運営するビル型の納骨堂(建物及びその敷地)が固定資産税等の課税対象になるか否かが争われた事件で東京地裁は平成28年5月24日、東京都の課税処分を適法とする判決を下した。本件の納骨堂事業に対し裁判所は、利用者の宗旨宗派を問わないとされていることや実際に他の宗旨宗派の僧侶等による法要などが例外的とはいえない割合で行われていることなどを指摘。専ら宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状況にあるとは認められないことから、非課税対象となる「境内建物及び境内地」には該当しないと判断した。敗訴した宗教法人は控訴を断念したため、本判決は確定済みだ。
地裁、専ら宗教団体の主たる目的の実現のための使用とは認められず
地方税法では、宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法3条に規定する「境内建物及び境内地」に対し固定資産税や都市計画税を課税することができない旨が規定されている(地法348②三、702の2②)。本件で問題となったのは、曹洞宗を宗派とする原告宗教法人が運営するビル型の納骨堂(本件建物及びその敷地)が非課税となる「境内建物及び境内地」に該当するか否かである。
納骨堂がある本件建物は、地上5階・地下1階の建物で、各階には納骨庫や参拝施設のほか、法要施設(礼拝施設)や会食施設が設けられている。これに対し東京都は、本件建物のうち1階の事務室部分及び5階の本堂・寺務所・庫裏部分を非課税と判断する一方で、それ以外の部分(2階の参拝室・倉庫等、3階の納骨庫・参拝室・副本堂等、4階の客殿及び和室・倉庫等)を課税対象と判断し(図表1参照)、宗教法人に対し固定資産税と都市計画税の賦課決定処分を行っていた。
これを不服とする原告宗教法人は、本件建物では納骨された遺骨の供養、勤行、読経、法要又は布教などの宗教的活動が原告宗教法人により専ら行われているのであるから、本件建物及びその敷地は宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地に該当すると主張し、固定資産税等の課税処分の取り消しを裁判所に対し求めた。
裁判所は、まず地方税法348条2項3号が規定する「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法3条に規定する境内建物及び境内地」に関する法令解釈を示したうえで(図表2参照)、その非課税規定に該当するか否かの判断は本件建物及びその敷地の実際の使用状況について一般の社会通念に基づいて外形的、客観的にこれを行うべきであるという判断を示した。
そして東京都が課税対象と判断した部分について裁判所は、本件建物に関する事実認定(図表3参照)を踏まえ、①本件納骨堂の使用者は宗旨宗派を問わないとされていること、②原告宗教法人以外の宗旨宗派の僧侶等が主宰する法要等の儀式行事が行われることが施設使用料を支払うことで許容され、実際にそれが例外的とはいえない割合で行われていること、③民間業者(A社)を通じて広く利用者を募集していることに照らすと、原告宗教法人が専ら宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態にあるとは認められないと指摘。
そのうえで裁判所は、「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法3条に規定する境内建物及び境内地」に該当しないことから、固定資産税及び都市計画税の課税処分は適法であると判断した。
宗教法人が営むビル型納骨堂は固定資産税等の課税対象?
宗教法人が都内で運営するビル型の納骨堂(建物及びその敷地)が固定資産税等の課税対象になるか否かが争われた事件で東京地裁は平成28年5月24日、東京都の課税処分を適法とする判決を下した。本件の納骨堂事業に対し裁判所は、利用者の宗旨宗派を問わないとされていることや実際に他の宗旨宗派の僧侶等による法要などが例外的とはいえない割合で行われていることなどを指摘。専ら宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状況にあるとは認められないことから、非課税対象となる「境内建物及び境内地」には該当しないと判断した。敗訴した宗教法人は控訴を断念したため、本判決は確定済みだ。
地裁、専ら宗教団体の主たる目的の実現のための使用とは認められず
地方税法では、宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法3条に規定する「境内建物及び境内地」に対し固定資産税や都市計画税を課税することができない旨が規定されている(地法348②三、702の2②)。本件で問題となったのは、曹洞宗を宗派とする原告宗教法人が運営するビル型の納骨堂(本件建物及びその敷地)が非課税となる「境内建物及び境内地」に該当するか否かである。
納骨堂がある本件建物は、地上5階・地下1階の建物で、各階には納骨庫や参拝施設のほか、法要施設(礼拝施設)や会食施設が設けられている。これに対し東京都は、本件建物のうち1階の事務室部分及び5階の本堂・寺務所・庫裏部分を非課税と判断する一方で、それ以外の部分(2階の参拝室・倉庫等、3階の納骨庫・参拝室・副本堂等、4階の客殿及び和室・倉庫等)を課税対象と判断し(図表1参照)、宗教法人に対し固定資産税と都市計画税の賦課決定処分を行っていた。

これを不服とする原告宗教法人は、本件建物では納骨された遺骨の供養、勤行、読経、法要又は布教などの宗教的活動が原告宗教法人により専ら行われているのであるから、本件建物及びその敷地は宗教法人が専らその本来の用に供する境内建物及び境内地に該当すると主張し、固定資産税等の課税処分の取り消しを裁判所に対し求めた。
裁判所は、まず地方税法348条2項3号が規定する「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法3条に規定する境内建物及び境内地」に関する法令解釈を示したうえで(図表2参照)、その非課税規定に該当するか否かの判断は本件建物及びその敷地の実際の使用状況について一般の社会通念に基づいて外形的、客観的にこれを行うべきであるという判断を示した。
【図表2】「境内建物及び境内地」(地法348②三)に関する裁判所の法令解釈 |
①当該宗教法人にとって、宗教の教義をひろめ、儀式行事を行い、信者を教化育成するという主たる目的のために必要な、本来的に欠くことのできない建物、工作物及び土地で、宗教法人法第3 条各号に列挙されたようなものであり、かつ、②当該宗教法人が、当該境内建物及び境内地を、専ら、宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態にあるものをいうと解すべきである。 |
そして東京都が課税対象と判断した部分について裁判所は、本件建物に関する事実認定(図表3参照)を踏まえ、①本件納骨堂の使用者は宗旨宗派を問わないとされていること、②原告宗教法人以外の宗旨宗派の僧侶等が主宰する法要等の儀式行事が行われることが施設使用料を支払うことで許容され、実際にそれが例外的とはいえない割合で行われていること、③民間業者(A社)を通じて広く利用者を募集していることに照らすと、原告宗教法人が専ら宗教団体としての主たる目的を実現するために使用している状態にあるとは認められないと指摘。
【図表3】本件建物(納骨堂事業)に関する裁判所の事実認定 |
① 昭和28年に設立認可を受けた原告宗教法人は平成21年及び平成26年に宗教法人規則を一部変更し、都内で公益事業として納骨堂事業を行うことを定めたこと ② 宗旨宗派を問わず、原告宗教法人の檀家となることなく本件納骨堂の使用権を取得することができ、使用権の取得者は納骨庫(3階・地下1階)に保管された遺骨収蔵厨子を参拝室(2階・3階)で参拝できるほか、一定の施設利用料を支払うことにより3階副本堂等を使用して原告宗教法人以外の宗旨宗派の僧侶等が法要等の宗教的儀式を執り行うことが認められていること ③ 客殿部分(4階)は法要前の待合・会食・僧侶控室・セミナーや参拝後の休憩等に使用され、パントリーやダムウェイター(1階)は飲食物の配膳運送のために使用されるものであること ④ 他宗派および無宗派の者からの収入として240万円を計上していること ⑤ 本件建物で行われた法要の約15%は原告宗教法人以外の宗旨宗派によるものであること ⑥ 納骨堂の使用権の販売業務をA社(民間業者)のみに委託し、宗旨宗派を問わず広く使用者を募集していたこと など |
そのうえで裁判所は、「宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法3条に規定する境内建物及び境内地」に該当しないことから、固定資産税及び都市計画税の課税処分は適法であると判断した。
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